HiFiオーディオ教室

audio lessne 09      「リスニングルーム」
 「良い音を再生する」ための二つ目の条件「音場を整備する」に差し掛かりました。音場というのは「音のある場所」という意味ですが、転じて、リスニングルーム、試聴室などを指して「音場」ということもあります。正確な言い方ではありませんが、何となく意味は通じます。

 具体的には「建築音響的にみて、欠点のないリスニングルームを造ろう」ということです。
  
          リスニングルームの条件

 まず、リスニングルームに要求される条件を並べてみます。

1. 遮音が良いこと。
2. 音の響き方が適当であること。
3. 有害な音響現象がないこと。

 この3条件を満足する部屋ならばリスニングルームとして100点です。
 あと、できれば、適度な広さの空間が確保されていればOKです。

         第一の条件 遮音

 遮音の重要なことは、クラシックのコンサートホールに行ってみるとよく分かります。演奏が始まるとドアは閉鎖され、きっちりと外界と遮断されてしまいます。
 家庭においても、音楽に集中するためには、食器の音や子供の泣き声が聞こえてきては困ります。そのためには厚い壁、しっかりした防音ドア、防音窓が必要になります。「音楽だけを聴きたい」という願望が第一の条件です。
 
 遮音の大切さは、もう一つあって、それは「遠慮なく大きな音を出せる」ということです。
 先に説明してありますが、原音再生の条件に「原音と同じ音量」というのがあります。そうすると、大編成のオケを聴くときには音圧レベルにして110dB(ピーク値)程度の音がルームの中で発生すると考えなければなりません。となると、相当の努力をして、防音に努めることが必要です。

           第二の条件 音の響き方

 音の響き方については、、屋外では響きが少なく、浴室は響きが多いと言うと分かりやすいでしょう。専門用語では「残響時間」と言い、音楽ホールが完成したときなど、「残響時間2.2秒で、クラシック音楽に向いている」などと報道されたりします。

 この残響時間は「音源が停止してから60dB減衰するまでの時間」と定義されていますが、一律に決まっている数値ではありません。その部屋の容積、使用目的等によって変わります。
 普通の構造の6畳間ないし12畳間の居間では0.2秒−0.3秒ていどですが、音楽を楽しみたいという目的には0.4秒ないし0.5秒は欲しいのです。このような、好ましい残響時間のことを「最適残響時間」と言います。
 一般的な表現として、響きの少ない部屋を「デッドな部屋」多い部屋を「ライブな部屋」と言います。そして音楽にはライブなことが要求されます。

 ただし、温泉の大浴場のような過度の響き過ぎは禁物で、音の明瞭度、例えば歌詞が聞き取れない、などという問題になります。
 ではデッドが良いか、となると、今度は音に「潤い」がなく、痩せた、聴いていて少しも面白くない音楽になってしまいます。
 このように、残響時間というものは「長すぎても、短すぎても具合が悪い」というものなので、その中間辺りに丁度良い処があるでしょう、というのが「最適残響時間」なのです。

 この最適残響時間にも更にいろいろあって、実は設計者の考え方によって同じではありません。概して、欧米系の人はライブを好み、日本人はデッドを好む方向にあります。ただ、現在の音楽はどう聴いてもライブな空間の方が楽しめるように思われるので、私の主張は
「ライブであるべき」という方向です。
 
   第三の条件  有害な音響現象がないこと

 有害な音響現象というものには次のようなものがあります。それらが発生しては欠陥リスニングルームです、というものです。

1. 定在波
  定在波というのは、部屋の中に、特定の周波数において「音の強い場所と弱い場所の斑(まだら)模様ができる」という現象です。リスナー席の周波数特性では、低音域で大きな山、谷が生ずるという現象になります。
 この、山、谷の周波数は一つとは限らず、低音域だけでも3周波数ないし5周波数にもなり、音階がそこに差し掛かると音が大きくなったり、小さくなったりします。
 この定在波は無響室のような特別の部屋でない限り、必ず発生します。とはいうものの、有害な現象であることははっきりしているのですから、それを如何に無害に近い程度まで抑える設計が出来るか、というのが、音響設計者の腕の見せ所です。

2. フラッターエコー
  エコーは山彦のことですが、バタバタと鳥の羽ばたきのように周期の速いエコーをフラッターエコーと言います。原因は向かい合った2枚の反射性平行壁の間で、音がキャッチボールをするためです。
 この現象は日光東照宮の薬師堂の「鳴き竜」として有名です。ここでは竜の画を描いた天井と床の間で発生します。竜の頭の下で手を叩くと「カラ・カラ・カラ・・・・」と、あたかも竜が鳴いているように感じられます。
 この鳴き竜現象は別に珍しいものでなく、注意して観察すると方々で見かけるものです。
 これがリスニングルームの中で発生すると、音の輪郭が滲んだように聞こえますから、絶対に処置しなればいけません。幸い、フラッターエコーの退治は簡単で、気が付きさえすれば悩むことはありません。

3. 焦点、死点
 凹面状の壁、天井があると、その焦点の場所に特に音が集中(焦点)したり、反対側では音の薄い場所(死点)が出来たりします。
 勿論良いことではありませんので、設計の段階で排除されます。

 以上がリスニングルームの「3条件」ですが、これがきちんと守られれば、揃えたオーディオ機器が十分に能力を発揮出来ることになります。

           部屋の大きさ

  日本の住宅事情はオーディオのために希望するだけの広さを確保することをなかなか許してくれませんが、一応、並べてみましょう。
1. 16畳ないし30畳が望ましい。
 その理由は、大きな空間は原音に近い音量を出しても圧迫感が少なく、悠々とした再生ができることです。
 建築音響的には、固有振動の密度が大きくなって、低音の凹凸が少なく なるという効果もあります。
  もう一つ、定在波を抑えるための低音用吸音材を十分に使用できますから(余裕の強みです)、特性の良い部屋にできます。
2. 12畳あればまずまず。
  なんとか12畳を確保できれば、相当本気になって高忠実度再生に取り組むことができます。
3. 6畳は日本の標準サイズ。
 統計的には日本のオーディオルームは6畳が多数派です。
 しかし、6畳間の容積約25立法メートルではオーケストラのような大音量を要求されると難しい面があります。勿論、室内楽、ボーカル等では不満はありません。ただし、建築音響的には低音の処理に苦労することがあります。

               用語 

1. 「音圧のレベル」
  音圧の単位はパスカル(Pa)ですが、20μPaを基準としてデシベル表示にしたものを「音圧のレベル」と言います。
 通常の会話で65dBないし75dBていど、ステレオをガンガン鳴らすと85dBないし95dBくらいです。(ピーク値はこれより15dB程度高い)

2. 「定在波」
 進行してくる波と、反射して元の方向に戻ろうとする波が干渉して、波の強い場所と波の無い場所が、縞模様のように発生します。これが「定在波」で、波の強い場所を「腹(ループ)」、無い場所を「節(ノード)」と言います。
 音場ではこれが立体的に発生し、建築音響では「固有振動」と呼びます。
 この固有振動は完全無響室でない限り、必ず発生します。それをいかに無害化するかが、現在のオーディオ技術の最大のテーマの一つです。

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