HiFiオーディオ教室

audio lesson 24 室内音響」 定在波と基準振動 その2
 前回、定在波の発生原理と、それが室内で発生している場合は「基準振動(ノーマルモード)」呼ばれることを説明しました。
◆ 壁間距離が半波長に相当する周波数、及びその整数倍の周波数で定在波が発生する。距離が3.4メートルならば50Hz、及びその整数倍の周波数。
◆ 一番低い周波数の定在波を「モード1」と呼び、「モード2」は100Hz、「モード3」は150Hzである。
◆ 室内は6面の壁で囲まれているので、前後、左右、上下、の基本的な方向の定在波の他に、斜め方向の定在波も発生する。
◆ 室内の定在波は「基準振動」と呼ぶが、この周波数は計算式に部屋の長さ、幅、高さ、及び(1.0.0)(2.1.1)などというモードを指定する数値を入れると簡単に求められる。

 今回はその定在波が、オーディオにどのように関わってくるかを説明します。

音波の伝送特性

 寸法が[7.02m〕[4.09m][2.56m]の部屋の一隅から一定の音圧で音波を放射して、それが斜めに対向する他の隅にどのように伝わるかを測定したのが次の図です。



  このように、スピーカーが折角フラットな再生をしても、他の隅では定在波の存在のために周波数によって受け取る音圧は一様ではなくなります。この例では特に60Hz以下で山、谷がはっきりしていて、音階によって強弱が生じ、ハイファイ再生の方向ではありません。
 ではこのような事態を改善するにはどうすればよいかとなるわけですか、それには次のようなことを考えます。
@ 山が密集するようにする。
 山と山が隣接、密集していると一つの台地状になって、ピークが目立たなくなります。そのためには部屋を大きくすることで、例えば上の図の部屋の寸法が3倍になった仮定すると、60Hz以下の過疎地帯が20Hz以下になり、ずいぶん改善されます。20Hz以下は可聴範囲外ですから、実害は大きく後退します。(3倍になると家庭用リスニングルームではなくなりますが)
A 山の並び方を一様にする。
 山が分散して並ばずに、周波数が重なり合ってしまうことを「縮退」と言います。それを避け、かつ、並び方が平均化することが望ましいのですが、そのためには部屋の長さ、幅、高さの比率をうまく配分することです。この比率を「寸法比率」といいますが、一番小さい寸法(大抵高さですが)を1として「1:1.3:1.8」などと表します。この比率を最適値にとるということです。下図は3種類の寸法比率で、基準周波数がどのように並ぶかを見たものです。



(a)は3辺が等しいという、立方体ですが、沢山の縮退が生じ、幾つもの定在波が合体して強烈な定在波になります。
(b)は2辺が等しいというものですか、まだ方々に縮退があり、そこで強い定在波が生じています。
(c)は「1:1.12:1.25」と変化している場合です。これだと基準振動はかなりバラついているのが分かります。
 このように、部屋の形は重要な意味を持っていて、設計の段階では徹底的にチェックし、良くない寸法比率は排除するのですが、それだけでは定在波の影響を逃れることは出来ません。

 ここまでの説明では原理的な話を主にしてきましたが、今度は
20Hz-20kHzのオーディオ帯域を、ワーブルトーンを使用した実測例を示します。(加銅の実測したもの)



 500Hz以下に注目して下さい。こんなに特性の暴れているスピーカーをメーカーが発売する訳がありませんから、原因はスピーカーからリスナー席までの伝送路にあることが分かります。これでは折角フラットに仕上げたスピーカーも本来の性能を発揮することは出来ません。

 もう一つの実測例を挙げます。



 図1はスピーカーから0.5mの特性で、ほぼスピーカー自身の特性です。図2から図5までは距離が離れるにつれて特性が変化することを示したものです。図5の場所に来ると、重低音の35Hz近辺が盛り上がっていて、大太鼓などは威勢良く鳴るので一見低音が出るように感じられますが、ベースやティンパニーの領域は痩せていて、厚みのない、貧相な音になります。
 図1ではそれなりにバランスを保っていたのが、2.5m離れただけでこんな特性になるということは、スピーカーが目の前にあるだけに、なかなか信じられないものです。しかし、実測してみると実態がはっきりと分かり、大抵の人は愕然とするものです。
 では、このような状態をどうすればいいのか、という話はいずれ説明しますが、取り敢えず理解だけはしておくことが大切です。

[注−1] 平らな壁の無い部屋、例えば球形の部屋なら定在波は発生しないかというと、やはり発生します。したがって、部屋の形で定在波を発生させないという手段はないのです。オーディオ雑誌で「家具の配置で定在波を防ぐ」等と書いてあるのを見ることがありますが、それは誤りです。
[注−2] 上の図は(株)日本オーディオの「レスポンスチェッカー
RC−1」を使用して加銅が測定したものです。



【 レスポンスチェッカー RC−1】 (株)日本オーディオ
 \128,000
 右側のセクションがワーブルトーンとピュアトーンのスイーブジェネレーター。黒く立っているのがマイクで、その下の部分がマイクアンプと信号処理部。左がプリンター部。
 音響測定は勿論、アンプやフイルターなどの特性も測れる。

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