HiFiオーディオ教室

audio lesson 26  「システムチューンアップ」 スピーカー 2
 前回はスコーカーにちょっとした実験をしてみたものですが、今回はウーハーの話です。

 ウーハーに関して、既製品を簡単にチューンできるということはあまりありません。それよりも重大なのは設置場所の選択です。

 ウーハーの位置による低音の出方

◆ 低音は指向性が広いので、空中に置かれたスピーカーからの音のエネルギーは、裸電球の光ように球状に八方に広がります。この状態だとリスナー席に向かうエネルギーは一番少なくなりますが、この状態を人工的につくるのが無響室です。そして、この状態を「指向係数1」の状態と言います。
◆ 次はスピーカーを広い壁面に取り付けてみます。そうすると全方向へ向かっていたエネルギーは壁の方向には行きませんから、全部が前の方に向かうことになり、半球状になった前の方は2倍のエネルギー密度になります。更に、前方のエネルギー密度が上がったことで振動板の放射インピーダンスが上がり、リスナー席の音圧は合計6dBも上昇します。(これは理論値ですから実際の実験ではそこまでは上がりませんが)
 この状態は「指向係数2」と言います。
◆ 今度は床と壁の境、すなわち、床上で、かつ壁際に置くと、エネルギーは1/4球状に放射されることになり、12dB上昇します。
 この状態は「指向係数4」です。
◆ 更に今度は完全な部屋の隅に置いてみますと指向係数は8になり、音圧は18dBも増えます。(理論値)

 このように、低音はスピーカーの設置場所によって低音の出方、別な言い方をすると、電気/音響の変換効率、或いは周波数特性が変わるのです。
 そこで、もし低音の量感が物足りないと感じたならば、スピーカーを上記のうちの、最も低音の出る状態、すなわち、部屋のコーナーに置いてみるのです。それによって低音が多くなったと感じたならば、その方向を少し追求してみます。例えばブックシェルフ型の小型スピーカーならば本棚の中に置いて、周辺を本で埋めて、「指向係数2」の状態にしてみます。

部屋とスピーカーの話し合い

 さて、ここで問題が発生します。スピーカーは一般に無響室でフラット、すなわち指向係数1の状態で平坦な特性になるように計画してあります。そうすると、スピーカーによっては壁につけたり、コーナーに置くと低音過剰になる場合があります。
 実はここから、「部屋とスピーカーの話し合い」が始まり、どこの場所が一番良いかを探すことになります。話し合い、つまり調整は「最良の置き場所」を探すことですが、次のことを覚えておきます。

@ 完全なコーナー(隅)は避ける
 ここは指向係数8で最も低音の出る場所ですが、一方、定在波を刺激しやすいという場所でもあり、経験上は音がこもった感じになり易いとして敬遠されることが多いものです。横壁から少なくとも0.3ないし0.5メートル離れます。
A 床からの距離は目線の高さ
 もう一つの距離、床からの距離はスコーカー、ツイーターの高さが、リスナーの目線の高さ、或いはその少し上になるようにします。
B 後壁との距離で調整
 結局、低音を調整する壁との話し合いは、後壁との距離を調整することとなります。

 では、具体的にどのようにするか、ですが、最初に最も万全な方法から説明します。そこから順次簡単な方法を述べます。

@ リスナー席にマイクを置いて周波数特性を測定する
 信号としてはワーブルトーンを使用し、マイクは耳の高さに設置します。この時、ランダムノイズを使用すると定在波が発生しにくくなり、観察を誤ります。測定器としては日本オーディオ社の「レスポンスチェッカー RC−1」などがあります。
A オーディオ用発振器を利用する
 オーディオ用発振器を持っている場合は、ピュアトーンなので少し分かり難いのですか、それを使用して耳で判断します。その場合、音を0.5ないし1秒程度に断続させると低音の凸凹が掴みやすいものです。
 なお、このような聴感を利用してチェックするための簡易信号発生器も市販されています。(日本オーディオ社「TS−1」など。TS−1はワーブルトーン、ピュアトーンを連続で、或いは断続で発生できる)
 耳の代わりに音圧計、騒音計を使用できるとかなり正確に低音の状態を把握できます。
B テストレコードを利用する
 機器のチェック用として20Hzないし20kHzの信号を入れたテストレコード(CD)が市販されています。それを利用する方法ですが、スイーブ信号になっているものもあり、1/3オクターブ間隔で30ポイントに分けてあるものもあります。

 以上のような手段で低音の出方がチェックできるようになったら、いよいよ最良の特性を示すように後壁との距離を決めます。
 ここで、低音の特性が素直な姿、すなわち、低下するにしても、上昇するにしてもトーンコントロールで補正できるような形ならば、対策は容易です。
 問題は、定在波によって凹凸が出来ていたらどうするかです。その対策には次の三つの方法があります。
@ 低音吸収用の分厚い壁を増設する
 一番基本的であり、一番良い方法です。(この話は専門的になりすぎるので、これ以上は専門書を読んで下さい)
A ウーハーの設置場所を前後に移動してみて、定在波の影響の少ない場所を選ぶ
 現実的に許される範囲内で動かしてみて、良い場所を探します。定在波の発生状況が大幅に変化します。
B リスナー席を移動する
 これも現実的な範囲という条件付きですが、リスナー席を移動してみます。この場合、リスナー席は部屋の正面軸の上にあるべきである、という観念を捨てて、正面軸から左右に0.5ないし1メートル程動くと良い場所が見つかることがあります。
 なお、狭い部屋の場合、スピーカーと向かい合った壁にぴったり接近してリスナー席を設置することがありますが、壁際は定在波がきつい場所なので、1メートル以上は離れたいものです。
C グラフイックイコライザーの使用
 これは最後の手段で、前述の調整を全部実施しても、まだ少し凹凸が残る、と言うようなときに使用します。注意としては、谷を補正するためにある周波数を増強するときは、6dB程度が限界であることです。それ以上補正してフラットにしても、音に嫌みな不自然さが出て、結果は良くありません。また、定在波の凹凸の補正に有効なのは通常リスナー席のワンポイントで、隣の席は逆に悪化していることもあります。
 また、増強すると、その部屋の中のその周波数のエネルギーは溢れるようになっているのですから、行き過ぎは禁物なのです。

 ということで、ウーハーを代表とするスピーカーは、その部屋の中にどのように設置されるかによって大きく全体の性能が影響を受けます。この「スピーカーの設置」こそが、腕の見せ所なのです。

(株)日本オーディオ
http://www.netlaputa.ne.jp/~nipaudio/

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