このところ、スピーカーについての投稿が幾つか見られるので、現在のHiFi用スピーカーの考え方をまとめて説明しましょう。
【スピーカーに要求される性能】
1.必要な音域をカバーすること。
一応は20Hz-20kHzを、出来れば50kHz程度までフラットに再生したいものです。周波数偏差の幅は±3dB以内。
この要求は低音の20Hz±3dBが非常に厳しく、30Hzならばまずまずというのが現状です。
2.必要な音圧レベルを出せること。
元の音楽と同じ程度の音圧レベルがリスナー席で得られることが必要です。大編成のオーケストラならば、ピーク値で110dB(SPL)程度です。
3.指向性が広いこと。
正面軸から±60度において偏差−10dB以内程度にはしたい。
4.低歪み率であること。
低音域の大振幅領域を除いては、1W入力で1%以下程度が望ましい。
【要求の実現】
このような各種の要求に対して、現実的に幅広く対応して成果を上げてきたのがダイナミックコーン型スピーカーです。
発明当初は勿論シングルコーン型でしたが、要求が高度になるとシングルコーンでは対応できなくなり、マルチ化に進みました。その理由は次の通りです。
1.低音の音域を広げ、音量を確保しようとすると振動板は大きくする必要がある。
2.振動板を大きくすると重くなって高音が出なくなり、高音が低下する。
3.更に、振動板が大きくなると
◆ 高音域で指向性が狭くなる。
◆ 分割振動が生じ、周波数特性に凹凸を生ずる。
この二つの問題から、音域を幾つかに分割してスコーカー、ツイーターなどと専用のユニットを使用するマルチ方式が普及するようになりました。すなわち
◆ 中音専用のスコーカーはせいぜい500Hzから5000Hz程度を受け持つので振動板は小型で良く、高音も出しやすく、分割振動、指向性ともに有利である。
◆ ツイーターも同様に更に小さな振動板でよいので設計も特性も有利になる。
というように、要求が高度になるとシングルコーンスピーカーでは実現は困難になり、必然的に3ウエイ、更に4ウエイの構成を取らざるを得ないようになりました。
マルチウエイ方式の唯一の問題は音像の大きさがシングルコーンに比べて少し膨らむことがあるということですが、メリットに比べるときは大きな問題ではありません。
【新型スピーカーの発明】
音域を分割して専用のユニットを作ることが可能になると、ダイナミックコーン型以外にも多くのタイプのユニットが考えられるようになりました。
◆ ホーンスピーカ
ホーンの使用によって、振動板に負荷がよくかかるようになり、立ち上がりの良い音色、高能率が実現しました。
◆ ドーム型
同じダイナミック型ですが、コーンの代わりにドーム状の振動板を使用するので分割振動を減らし、指向性を良くしました。
◆ コンデンサー型
振動板に薄い導電性の箔を使用するので高音域の特性が良く、繊細な音が特長です。
以上のように、高忠実度再生を目指して要求が厳しくなるとスピーカーはそれに応じて進化してきました。
勿論シングルコーンでも音楽は楽しめますが、それはシングルコーンがマルチ方式より勝れているのではなく、「ある条件下における選択である」と認識しなければいけません。
同様にして、現在のスピーカー製造技術では2ウエイでは十分ではなく、最低でも3ウエイ、出来れば4ウエイが望ましいものなのです。 |