MFBはモーショナル・フイードバックの略で、振動板の動きを検出して、その検出信号でパワーアンプにフイードバックをかけるものです。当然、振動板はアンプの入力信号に忠実に動こうとしますから、究極的な高忠実度スピーカーと言うことになります。
この考え方はずいぶん昔からあって、日本では何人かのオーディオ研究家が熱心にこれに取り組み、メーカーも何度か製品化を試みました。
電気のNFBはアッという間に普及しましたが、このMFBが未だに主流にならないのは種々の技術的な困難があるためです。
【MFBの仕組み】
まず、振動板の動きを検出して電気信号にし、それを逆相でアンプの入力に戻します。もし、振動板がアンプ入力と違う動きをすると、入力信号との差分(誤差信号)がアンプに入って、振動板の動きを正しい方向に是正しようとします。この原理はアンプの電気のNFBと全く同じです。
問題は、誤差信号が常に正しく逆相であればよいのですが、周波数が高くなると位相がずれて、次第に逆相から遠ざかり、ついには正相になりますが、その時点でゲインがあると、発振状態になります。
この、位相がずれる、という現象が、振動板では意外に低い周波数から生じ、実効的にNFBとして働く範囲は広くはないのです。
そこで、一般にはウーハー、スコーカー、ツイーターと分けて、各々専用のアンプでシステムを構成します。この研究に現在熱心に取り組んでいる高橋和正氏のリポートでは、ようやく3ウエイのツイーターの10kHzまでMFB化に成功したと言うことです。
【どんな音がするか】
今春、高橋氏の3ウエイMFBの試聴会があって、聴いてきました。効果は
1.低音のローエンドが、まったくボンつきを感じさせることなしに十分低くまで伸びて、気持ちの良い低音を再生していました。
この、ローエンドが伸びるというのがMFBの最初の効能で、これだけでも大いに評価できるものです。
2.スコーカーの切れ味がホーンを思わせる感じで、一言で言うと「鮮やか」というものです。鮮度がよくて、それでいて「おとなしい音」という印象です。
その時はツイーターはまだ未着手でしたが、ウーハー、スコーカーだけでも十分に見応えのある音でした。
【検出方法】
振動板の動きを検出するには何通りかの方法があります。一番多く使われているのは、ダイナミックマイクのように、マグネットとボイスコイルを使用する方法ですが、他には、キャパシタンスの変化を利用する方法、マイクで音波から検出する方法などがあります。
現在のオーディオの最大の課題はスピーカーの高忠実度化である事ははっきりしていて、オーディオ屋はそれに打ち込んでいるわけですが、そこにブレークスルーを起こす方法があるとしたら、その一つはこのMFB技術でしょう。
理論的には優れた方式だと分かっていながら、なかなか普及しないのは次のような理由からです。
1.スピーカーには原則的に振動板の動作検出器を附けなければいけないこと。
2.アンプとスピーカーユニットは一体で、任意のスピーカー、任意のアンプを組み合わせることが出来ないこと。
3.フイードバックの調整が微妙であること。
4.そこまでの高忠実度を求めるニーズが多くはないこと。
この4の項目は意外と思われるかも知れませんが、現状でもそれなりに満足している、という人も多く、なかなか主流になる気運がこないということでもあります。しかし、一度よく調整されたMFBシステムを聴いてみると、感ずるところがあるものです。 |