HiFiオーディオ教室

 AUDIO LESSON 69   「聴感で調整」  6/1
 システムの調整を耳を頼りに行おうとするのは、エンジニアの立場からするとあまりお薦めできることではありません。なるべく計測器を駆使して、最後に聴感で仕上げをする、というのが正道です、と言いたくなるのです。
 しかし、測定器、特に音響用の測定器を持っている人は少なく、多くのオーディオフアンは「結線した。鳴った」で満足してしまうことになります。 

 これでは流石に自信が持てないでしょうし、欠陥があっても気付かないことがあります。
 今回紹介する「聴感で調整」というのは、最低線の科学的調整を考えてみようというものです。

 オーディオシステムの測定は「既知の信号を入力し、出力における変化を観測する」というのが一つの原則です。例えば、歪み率の小さな正弦波をアンプに入力し、出力に現れた正弦波の波形歪み率を測定する、などです。
 この考え方を音響に適用出来ることは勿論です。20Hz〜20kHzの一定振幅の信号を入力して、リスナー席での音圧周波数特性を測定する方法などです。ところが問題は音圧周波数特性の測定となると、特性の良いマイクが必要になり、ここで困ってしまうのです。
 そこで考えたのが「耳を利用する」方法です。耳はマイクですから、その性質を呑み込んでおけば、ある程度代用できるかも知れない、と言うことです。

 さて、耳をマイク代わりに使用するとして、では、どんな信号を用意すれば耳マイクで測定が可能かと言うことです。ただ、定量的な測定ではありませんから、以降は「聴感調整」と呼ぶことにします。
 使用する信号の「波形」と「断続」を考えてみます。

■ 波形
 室内で観測用の音を出すときは「定在波」の影響を避けるために、「ワーブルトーン」を利用します。これは純音(正弦波)に周波数変調を施した「ピュル・ピュル・ピュル・・・・」という感じの音です。周波数変調は通常1/3オクターブの幅でかけます。仮に1kHzの場合ならば890Hz〜1120Hzの間をフラフラするという信号です。変調する周波数は4Hz〜16Hz程度が使われます。

■ 断続
 上記のようなワーブルトーンを「断続信号」にします。メーターで測るときは連続がよいのですが、耳の時は断続した方がよく分かります。
 ただし、この断続が案外に曲者で、単純に断続すると、信号の立ち上がり、立ち下がりの都度「カリッ」という雑音が出ます。これでは聴感が邪魔されて困ります。
 そこで、実際の断続信号は、時間をかけてゆっくりと立ち上がり、終わりもゆっくり消える、という形をとります。そうすると雑音は実用に差し支えない程度に減少します。
 図1を見てください。立ち上がりと立ち下がりがいきなりではなく、何波かにわたって、次第に増減するのがよく分かります。

図1


 断続のもう一つの要点は、オン時間とオフ時間の割合です。ここで参考とする信号発生器では
◆ 0.5秒オン/0.7秒オフ (バーストT)
◆ 0.2秒オン/0.5秒オフ (バーストU)
というように使い分けます。
 なお、電気測定で使用する「トーンバースト」は信号の波数を一定として、立ち上がりもゼロから立ち上がり、終わりもきちんとゼロに戻ります。
 音響の場合は時間一定としてバーストさせます。

写真1


 写真1はそのような信号を20Hz〜20kHz間で連続的に発生させるもので「チューンアップシグナルTS−1」という機種です。(\26,000/日本オーディオ製)
● 大きなツマミは周波数ダイヤルで、20−20kHzを3バンドで
連続して出します。バンド切換はその右上の「BAND」スイッチで行います。
● 左上の「TONE」は信号波形の選択で、「正弦波」と「ワーブルトーン」を切り換えます。
● その上の「MODE」は連続か断続かの切換です。
● その右のツマミは「音量」で、一番上のRCAピンジャックから出
力されます。出力は最大で2Vrmsです。
 全体は電池動作で、出力用のピンコードは5メートルのものが付属していて、室内の何処にでも移動して、音を聴くことが出来ます。
 
 次回にはこの信号発生器を使用した「聴感で調整」の実際を説明
します。

        

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