家庭用のオーディオは、CDになった現在も、依然としてディスクです。後年になってカセットテープレコーダーをオーディオソースに、という努力は大きなものでしたが、基本性能の限界があって、本気のハイファイ用ソースと認められることは遂にありませんでした。
LPの出現
長時間録音と音質の向上は蓄音機発明当時からの願いでしたが、それを可能にしたのが「ロングプレーイングレコード」、すなわち、LPです。
これは1948年(昭和23年)に米国のゴールドマークによって実用化されました。
◆ レコードの材質を硬いシェラックから、柔らかいビニールにし、音溝を微細にする。
◆ 音溝を細くすると同時に、溝のピッチを小さくして、長時間化を図る。
◆ 回転数を、シェラック盤の78回転から33・1/3に落として、長時間化を図る。録音時間も片面25分(12インチ=30センチ盤で)に達した。
◆ 材質の滑らかさから、スクラッチノイズが大幅に減少する。これで大きなダイナミックレンジが得られるようになり、ディスクによる本格的な高忠実度再生の可能性が見えてきた。
◆ その後、バリアブルピッチ録音が開発されて、12インチ盤で、最長30分の録音が実現するようになる。
こんなうまいレコードが出来て、たちまち、LPの時代になりました。
このLPの実用化はアメリカコロンビア社(CBS)だったので、競争相手のRCAは、それを追いかけてEP(エクステンデッド・プレーイングレコード)を発売します。7インチ盤45回転のもので、オートチェンジャー用であるために中心孔が大きく、通称「ドーナッツ盤」と呼ばれていました。このサイズは後にシングル盤に利用されます。
これらのLP盤がCDの出現まで続きます。
ステレオ化
次の大きな改革はステレオ化です。2チャンネル以上のステレオ方式を採用すると
◆ 音像の定位による立体的な音場の形成
◆ 音の広がり感の再現
◆ 臨場感(プレゼンス)の表現
◆ 音質の向上
というのが効果で、これも大歓迎を受け、LPレコードはアッという間にステレオ化されます。
ステレオ伝送という実験は、1933年(昭和8年)に電話回線を使ってフィラデルフィア−ワシントン間で3チャンネルの生演奏の実験が行われ、好評だったと伝えられています。
1本の音溝に2チャンネルを録音する方法は
◆ 音溝を90度のV字形にする。(こんな形 ̄\/ ̄になる)
◆ 断面を手前から見て、V字の左の壁を左チャンネル用とし、右側の壁を右チャンネル用とする。
◆ 左の壁が45度の方向、すなわち、右壁にそって動くことによって信号を記録する。その時、右の壁は動かないから、左チャンネルからだけ、音が出る。右チャンネルも同様。
◆ 左右のチャンネルの極性は逆にして録音する。そうすると同位相の信号は水平方向の動きとなり、音溝の振れを大きくできる。(上下方向はあまり大きくできない)
◆ どちらの動きも45度/45度の方向なので、この方式は「45/45」方式と名付けられた。
この方式が実用化されたのは1958年(昭和33年)で、アメリカのCBSによるものです。このステレオLPはすぐさま日本に入ってきます。
少し余談です
LPの出現からステレオ化されるまでの間は、モノラルで聴いていましたが、その当時、ようやく「ハイファイ再生」「高忠実度再生」という言葉が使われ始めました。「HiFi」はイギリス読みだと「ハイフィデリティ」アメリカ読みだと「ハイファイディリティ」で、アナウンサーが困っていたものです。
なお、LPの回転数が33・1/3という半端なものになっている理由は、映画フイルム1巻の映写時間12分間に、音声を入れたレコードが400回転するようにしたためだという話です。(400÷12=33・1/3)
初めてステレオ再生を聴いたのは昭和28年の学生最後の年にソニーの工場を見学したときです。50人ほど入るステージのある講堂のような部屋で、ソースは3チャンネルのテープでした。アメリカ軍楽隊演奏の「威風堂々」の圧倒的迫力にびっくりしたことを覚えています。 |