LPの出現が高忠実度再生のスタートと考えてよいのですが、LPの他には19センチ/4トラックのテープがあります。これはLPがステレオ化されてから間もなく発売になり、高度なオーディオファンは一度は取り憑かれたものです。
テープソース
LPは製造段階で一度テープに録音されるのですから、そのテープが直接聴けるとなれば、この方が高忠実度に近いことは当然ですから、ファンが飛びつくのは自然の成り行きです。
ただし、家庭用としては7号リール(7インチリール)が限界で、テープスピードは19センチ/秒です。そうすると片道30分でちょうどLPの片面分で、これは少し物足りない。そこで4トラックとして往復にするとLP1枚分になって商品価値も上がるという仕組みでした。
この19/4トラのテープは明らかにLPより忠実度の高い音質が得られました。
これは音溝からカートリッジが機械的な変位を拾ってくるという、際どい芸当をしないだけ音の素性が良く、録音の良いテープは本当に魅力的でした。
当然、もっとテープ幅を広げて、スピードを上げたら更に良くなるだろうということで、38センチ/2トラック仕様のテープも登場します。ただ、これは10号リールで30分しか録音できませんから、コストは高いものにつきますが、このテープデッキでオリジナルテープ(一度もコピーしていない録音済みテープ)を聴くと、相当のうるさいオーディオファンでも納得したものです。ただし、それはデジタルテープの音を聴くまででしたが。
この19/4トラのテープはLPよりも高価で、サラリーマンには負担でしたし、38/2トラのテープソースは更に高価で宝物扱いでした。
カセットテープの出現
オランダのフィリップス社が開発して、特許を無償で公開したことにより、一挙に民生用テープレコーダーのスタンダードとなりました。
なんと言っても小型で、操作(テープローディングのこと)も簡単で、誰にでも簡単に使えるのが歓迎された理由です。
日本で製品が出されたのは昭和42年(1967年)です。
このカセットテープは、元々はハイファイの音楽ソースとして考えられたものではなく、メモ代わりの録音システムだったのです。ところが使い勝手の良さから、これを音楽ソースにしようと考えるのは当然の成り行きで、メーカーは懸命の努力をしました。
このカセットの高忠実度化には幾つかの節目がありました。
◆ テープの開発
従来の酸化鉄を磁性体としたもの(ノーマルテープ)にたいして、2酸化クロームを使ったクロームテープ、更に酸化させない金属粉(純鉄)を使ったメタルテープなどです。
いずれも最大録音レベルが向上し、高域特性も良く、音楽用として広く使われるようになりました。
◆ 3ヘッドの採用
カセットはカセットハーフ(テープ収容ケース)の規格が厳重にきめられているので、録音ヘッドと再生ヘッドを共用する2ヘッド方式が主流でしたが、頑張って両者を分離した、高性能な3ヘッド方式が開発されました。
◆ ノイズリダクションシステム
カセットの弱点はノイズ量の多いことで、これは記録面積(テープ幅とテープ速度の積)が小さいという根本的な理由によります。
しかし、それでも何とか出来ないかというのが「雑音低減装置(ノイズリダクションシステム)」です。米国のドルビーシステム、dbxシステム、日本では東芝のadresシステムなどが有名です。
いずれも一長一短で、完璧というものは出現しませんでしたが、最後に出現した東芝のadresシステムが、効果の大きさ、副作用(ブリージング効果)の少なさから高い評価を受けました。
こうれらのノイズ低減装置の仕組みを簡単に言うと「音楽を濃縮ジュースのように「圧縮」し、輸送(カセットに録音すること)して、現地で水で薄める(再生するときに伸長する)」というもので、輸送中にゴミ(カセットのノイズ)が多少入っても、薄めれば分からなくなる」というものです。このような方法を「圧縮/伸長方式」と言います。
これらの頑張りによって、カセットテープもある程度の水準に達し、LPやオープンテープと比較するようなことをしなければ、音楽用として使えるまでに改良されました。
特に携帯用オーディオ(ウオークマンの類)では圧倒的で、そのような環境では十分な性能になりました。
それと同時に19/4トラテープは衰退に向かい、テープソースはカセットか、38/2トラックテープに分化してしまいます。 |