HiFiオーディオ教室

 AUDIO LESSON 90 「オーディオの始まり−7」 4/15
 LPもフォノカートリッジの発達で爛熟期を迎え、カセットデッキも頑張っていました。そこに出現したのがデジタル録音です。

 デジタル録音はエジソン以来の最大の発明です。言うまでもなく、音波の動きをそのままなぞって記録したのがアナログ録音ですが、それを、何と、「1」と「0」の、あるいは「ある」「なし」の2種類の信号で記録するという発明でした。

 ただ、この1と0で情報を伝えるということには前例があって、古代だと狼煙(のろし)が、近代だと無線通信の「モールス符号」がそれです。この通信方法は雑音の中からでも「トン(短音)」「ツー(長音)」を耳が聴きだし、頭の中で翻訳、整理して、情報の伝達を行いました。無線通信は遠距離になると雑音が多くなって、音声は使えなくなりますが、トン・ツーならばあまり雑音に妨害されずに使えたのです。

PCM録音の出現

 PCMは「パルス・コード・モジュレーション」の略だということは、もう広く知られています。この通信方法も実は無線通信のためにフランスで考案されたもので、考案者は英国人のA・H・リーブスです。これが1937年のことですが、真空管では実現が困難で、実用化はICが出来てからでした。

 現在のPCMはこんな具合に記録します。

@ 音声の電気信号のゆるやかな電圧変化を、速いタイミングで分断して細切れにします。これを標本化と言います。例えば440Hzの音は1つの山と谷の間隔が2.27msです。それを毎秒44,100回の早さで切り刻むのです。すると1組の山と谷は約100個の細切れになってしまいます。
 このときの分断する周波数が「サンプリング周波数」で、CDでは44.1kHzです。このサンプリング周波数は、録音するアナログ信号の上限周波数の2倍以上に設定します。

A 次に、その一切れの大きさ(電圧)を測ります。これを量子化(クオンティゼーション)と言います。
 このとき、切った1片の大きさをどの程度に丁寧に示すかというのがビット数です。ビットは二進法の桁数ですから、CDのように16ビットというと16桁となります。これは2の16乗のことですから、丁寧さは「最大の山と谷の高低差を、65,536(2の16乗)通りに表現できる」ということです。

B 測った電圧値を1と0の二進法で表します。これを符号化(コーディング)と言います。

 この1(アリ)と0(ナシ)は、電灯の点滅でも、パルスの有無でも、何でもよいのですが、沢山の1または0を送らなければなりません。440Hzの1組の山谷2.27msの信号を送るのに、16桁の1と0の列を100組送らなければならないのです。そうすると1秒間に送るパルスの数は、
   44,100(細切れの数)×16(桁数)=705,600
になります。ステレオだとこの2倍ですから、従来のLPレコードやテープデッキでは歯が立ちません。

 ともかくも、これで緩やかにうねっていたアナログ信号が、1と0の二進法の数値の行列で記録されることになりました。これがアナログ信号のデジタル化です。

PCM録音のメリット

 こうして実現したデジタル録音は大きなメリットを持っていました。

@ ノイズが少ない
 これが最大の利点でしょう。アナログ録音では、絶えずノイズにつきまとわれていて、その軽減に随分精力を使わされたものです。デジタル録音では、理論的にはビット数さえ増やせば、どんどんノイズを少なくでき、16ビットのCDでは96dBのSN比を得られます。
 このことは別な言い方をすると「ダイナミックレンジが広がった」ということで、原音に大分近づいてきました。

A 広帯域化
 サンプリング周波数を高くすると高域を伸ばすことが出来ます。DVDオーディオの5Hz〜100kHz録音がいい例です。ここも原音に近づいています。

B 低歪み化
 LPレコードの波形歪みは、測定してみるとびっくりするほどの大きさですが、デジタル信号は極めて少ないのです。現行の16ビットCDの0dB録音(最大録音レベル)では0.0015%程度なのです。
 LPの内周におけるピンチ効果、トレーシング歪みは数パーセントを越えますから、随分と低歪みであることが分かります。

C 回転ムラの減少
 ワウ・フラッターというやつです。CDでも再生時には回転ムラが発生しますが、データーを一旦メモリーに入れておいて、クオーツ制御の精密なタイミングで取り出す仕組みになっています。これで回転ムラ、すなわち、時間変動はクオーツと同等の少なさになっています。

D 長時間化
 LPは30センチ盤で片面30分程度、両面で約1時間ですが、CDは75分入ります。これはベートーベンの第九がそのまま入るからとして決められたというエピソードがありますが、ユーザーには有り難い点です。

E レコードの長寿命化
 実用的に大きなメリットです。再生はレーザー光による非接触検出ですから、LPのように盤自体は摩耗しません。読みとり面に傷を付けたりしなければ、半永久的に使用できることになっています。

F 音色のクリアーさ
 人によっては好まない人もいるようですが、音色が清澄、透明で、一口で言うと「明快」であり「鮮やか」です。
 面白いのは、同じマイクでも遠距離の音源の音もはっきり録音できることです。そして、録音エンジニアに聞くと、原音に近いのはデジタル録音の方だと異口同音に答えます。

G 使い勝手の良さ
 CDについての実感的な有り難さは、針圧や埃、その他の煩わしさから解放されたこと、選曲が自由自在に行えることなどです。ピックアップの針を慎重にレコードに載せる、などという手先の器用さは不要になりました。

 このように、針先の微妙な動きから音を拾うなどという芸当から解放されて、音波の信号は堂々と永久保存の道が拓かれたのです。

デジタル録音の欠点

 では、デジタル録音には欠点は無いのか、というと、唯一あるのは録音、再生機器が複雑なことです。しかし、ICの発達と量産、低価格化で、もう欠点とは言えなくなりました。
        

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