CDは見事に開花しました。
一方、最初にデジタル録音の口火を切ったテープの方は、結果として悲運な道を辿ることになってしまいました。
DATの出現
ソニーのPCMプロセッサー「PCM−1」が出現したのが1977年(昭和55年)です。
この、テープによるPCM録音は、各社が合意した規格によって、「DAT(デジタル・オーディオ・テープレコーダー)」として1987年ころから続々と製品化されるようになりました。
記録方式は、当時技術的に完成度の高かった家庭用の回転ヘッド式ビデオデッキのノーハウを利用した、16ビット直線、48kHzサンプリング周波数というものです。
規格はDAT懇談会がきめましたが、その時、回転ヘッド方式によるもの(R−DAT)と、固定ヘッドによるもの(S−DAT)が一緒に決められました。ただ、S−DATの方は、民生用としては遂に製品化はされませんでした。
テープの記録は読みとり誤り率がCDよりずっと少ないために、一回り良い音がするのです。このことはサンプルの音楽テープを聴いてみると、分解能、音の鮮度が明らかにCDを上回っていることでよく分かります。そして、CDをコピーしてみると、先ず判別が困難なほどに高忠実度なのです。
そこで、ソフト会社が「デジタルコピーの防止対策ができるまで、発売されては困る」というクレームをハード会社に突きつけました。
その交渉が長引いている内に、いつの間にか世の中はDATのことを忘れてしまい、音楽テープも発売されず、折角のハイファイ機器が萎んでしまいました。
一つにはCDプレーヤーが良くなって、少し取り扱いに手のかかるDATの必要性が薄れたということもあります。
しかし、16ビットPCMではDATの方がずっと良い音がします。PCMプロセッサーで感激した「鮮やかさ」がそのまま残っています。
符号誤り率と訂正技術のこと
記録されている1/0の符号を、どの程度正確に読みとっているかは、少しばかり怪しげな所があります。この問題はデジタル録音には方式の如何を問わず、必ずついて回るものです。
CDでは、なんと言っても、高さが僅か0.1ミクロン(1/10000ミリ)の突起をレーザー光線で探り出すのですから、間違えない方が不思議という感じです。
CDの符号誤り率は、3〜7×10の−5乗程度で、これは毎秒数回という頻度になります。この符号誤りはそのままノイズになりますから、これではとても使い物になりません。
そこで、読み取りを間違えたときに、それを訂正する巧妙な方法を考え出しました。それがCIRC(クロス・インターリーブ・リード・ソロモンコード)という訂正方式です。
簡単に言うと、記録する前に符号をあるルールで並べ替えておき(クロス・インターリーブ)、再生後に元に戻して、不審な符号があったら前後の符号から類推して訂正する、という方法です。この方法によって、汚れや傷などによる、「バーストエラー」と呼ばれる、比較的長いエラーを、散発的なランダムエラーに変換して訂正するようにしました。
リード・ソロモンというのはパルス1個の誤り(ランダムエラー)訂正に大きな効力を持つ訂正方式で、この両者の組み合わせで、全体として、強力な訂正方式が完成したのです。
この方式の完成でCDからノイズが無くなりました。
この符号誤り訂正の方式は、DAT、BS放送など、媒体によって異なります。
このようにして、CDは堂々と音楽レコードの主柱となりました。
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