辛口オーディオコラム

column 38  「市場価格の話など」   2/15
 前回、舶来品の価格について論じたところ、投稿室に幾つかの意見が寄せられた。それらについて考えてみたい。まず市場価格の話などから。

1. 価格設定の二つの考え方
 価格の設定方法には、一つには原価計算方式がある。製造原価が10万円ならば利益を何パーセントか載せて小売り店に卸す。小売店はそれに何パーセントか加えて客に売る。
 この方式は分かりやすく、その間のマージンが適切ならば消費者も安心して買える。
 もう一つの考え方は、消費者が買う意志を持っている限り、最大の価格を設定する最大利益追求方式である。原価は関係なく、その商売が成り立つ間は価格を下げるようなことはしない。
 この二つの考え方については、日本の社会では原価計算方式が比較的多く、その理由は多分に儒教的で「そんなに儲けてはお天道様に申し訳ない」みたいな感情が働くらしい。いわゆる律儀な商売である。
 もう一方の最大利益追求方式は、資本主義の当然の姿勢と言うべきで、善悪の問題ではない。

2. 市場価格とは
 さて一般に言われる市場価格とは売り手と買い手の合意の成り立つ平衡点の価格である。これは時間によって変動するが、その典型は金地金の価格であろう。
 もう一つは、古美術品などの希少価値のあるもの、あるいはシャネルのバッグに象徴されるファッション関係のものなどである。このバッグは実用性とは全く無関係に、一つの信仰対象として他社製品の2倍から10倍の高値を維持している。その販売量が低下しない間は高値が維持される。

3. オーディオ製品の場合
 日本製品の価格については、大メーカーの製品は、まず例外なく原価計算方式の価格設定が行われていると言って差し支えない。
 問題は舶来品の価格であるが、全部とは言わないまでも最大利益追求方式の価格設定と思われる。
 そのよって来る理由は、輸入に関してのリスクである。すなわち、売れるかどうか分からないものを買い取ってきて、広告費を投じ、販売店で試聴会を開いて懸命に知名度を上げる努力をする。もし、売れなければ投資はすべて損失となる危険を冒すことになる。となれば、売れたときの利益も大きなものでなければならない。仮に、10機種の輸入で5機種が売れたとすると、その利益は全体の投資をカバーできるものでなければならない。
 このようなハイリスク/ハイリターン型が輸入品に多いという根拠は、市場での価格を見れば頷ける。
 価格を比較しやすいのはCDフレーヤーとDAコンバーターである。ともに原材料の使用量が大きく異なるとは思われないから、比較が容易である。そこで各社の最高価格の製品を比較してみた。国産メーカーはすべて名の通った企業である。

【CDプレーヤー】
国産A社 ¥  580,000
   B社 ¥  500,000
   C社 ¥  650,000
   D社 ¥  550,000
舶来A社 ¥3,490,000
   B社 ¥2,800,000
   C社 ¥2,850,000
   D社 ¥1,190,000
【DAコンバーター】
国産A社 ¥  800,000
   B社 ¥  600,000
   C社 ¥  550,000
舶来A社 ¥4,600,000
   B社 ¥2,200,000
   C社 ¥2,200,000
   D社 ¥2,350,000
 
 勿論原材料の他に技術料があるかも知れないが、日本と外国の間にそれ程の開きがあるとは考えにくい。
 とすると、、この価格設定はどう見ても原価計算方式とは思われない。勿論舶来品の全てがそうだとは言えないが、大勢はハイリスク/ハイリターン型と考えられよう。繰り返して言うが、これは資本主義社会の一つの姿で、善悪の問題ではない。

4. 消費者の対応
 消費者は舶来品にどのように対応すべきかという問題である。米国で日本車が売れている理由は、適当なサイズ、故障の多寡、サービス、価格の適正さ等であると聞く。とすると、その選択は当を得ている。
 ではオーディオ製品の舶来品はどのようにして日本の消費者に選択されているか。
 家電製品全般についても言えることであるが、商品選択に及ぼす影響力は、店員の推奨が70%、あと、雑誌の製品紹介、友人の口コミ、評論家の推薦などである。
 となると、ショップの店員が、今月はこれを売りたいと考えたとき、その製品は大きなチャンスを迎えたことになる。そしてそのチャンスは積極的に自分で掴まえなければならないが、そこで大きな力になるのがマージンの額であろう。上記の価格一覧を見て、まともな店員ならば舶来品に力を入れるのは当然である。仮にその製品の評価が今ひとつであっても、某誌が褒めていたではないか、某某先生が推薦していたではないかと開き直られれば、消費者は一言もあるまい。

 よく、オーディオは感性のものであるから、人それぞれのセンスに合った選択があってしかるべきと、高額製品を薦められる。消費者に確かな鑑識眼があれば問題はないが、試聴の間中そばから洗脳されては、大抵折伏されるものだ。明治以来の舶来信仰に加えて、カラーページの豪華な紹介雑誌、売り上げ至高の口説きに合えば、陥落しない方が珍しかろう。

5. 国産品を理解し、応援しよう
 国産スピーカーが現在壊滅状態にあることは衆目の見るところであるが、それを成し遂げたのは舶来スピーカーの跳梁である。小生など、世界でもっとも良心的なスピーカーメーカーと見ていたダイヤトーンが撤退した。もし、オーディオフアンがその真価を理解して購入していればそんなことはなかったであろうと考えると残念としか言いようがない。
 前にも書いたが、正しい理解を与えずに折角の国産品を根絶やしにすることは、ひいては自分のオーディオの選択肢を狭め、自分の首を絞める行為であることに気づかなければいけない。

コラム目次へ