辛口オーディオコラム

column 85 「新型スピーカー出現か」  2/1
 新型と言っても全くの新型というわけではなく、新材料と従来構想の組み合わせである。とはいうものの、あと、幾つかの問題点が克服されれば、これは相当に有望である。

新素材

 「電圧を加えると変形する」という材料がある。例えば水晶で、特定の周波数の電圧で良く振動(機械的な変形)する。これが水晶発振子である。
 オーディオ帯域では、かつては酒石酸が、最近ではそれ用のセラミックが利用され、セラミックスピーカーになる。逆に振動板の動きをセラミックに伝えて電圧を発生させると、セラミックマイクになる。このように「電圧で変形、変形で発電」の現象を「ピエゾ効果」と言う。
 このピエゾ効果はある種の高分子化合物にもあって、その性質が強ければスピーカーに使える。昔、パイオニア社で、電圧によって長さ方向に伸縮するフイルムを使用してツィーターを考案したことがあった。すなわち、スポンジ状の柔らかいものにそのフイルムを巻き付けて、そのフイルムが伸縮すれば円筒状の「呼吸球スピーカー」になるというものである。
 今度開発された方式は、同じような電圧伸縮フイルム(クレハKFピエゾフイルム)ながら、正電圧で伸びるものと、負電圧で伸びるものの2枚を張り合わせて使用する。

スピーカーの動作

 この2枚張り合わせたフイルムをアコーデオンのように襞(ひだ)をつける。ちょうどVの字を横に並べたような形になる。このVの字の谷の内側が伸びる瞬間はUの字型になって空気を吸い込み、電圧が逆になるとVの字は細くなって空気を吐き出す。こうしてVの字の並んだ平面は「呼吸する平面」となってスピーカーになる。

 この動作のスピーカーは米国のハイル博士が考案した「ハイルドライバー」としてすでに実用化されているが、ハイルドライバーは動電式であるために、大きなマグネットを必要とし、スコーカー以上でしか製品化はされなかった。

 それに対して、このピエゾフイルム方式ではコンデンサー型のような電圧駆動方式であるため、大きなウーハーを作ることが出来る。昨年のオーディオフェアで展示された試作品では2個のウーハーユニットを使用し、40Hz(−10dB)を実現したという。以下、そのアウトラインである。

◆構成     4ユニット 3ウエイ
  ウーハー  123×260×35  2個
  スコーカー 123×123×30  1個
  ツイーター 50×60×10    1個
◆帯域     40Hz−35kHz (−10dB)
◆出力音圧レベル 83dB/m/2.83V
◆最大入力  200W/6Ω
◆インピーダンス  6Ω (ステップアップトランス使用)
◆寸法/重量  800W×1300H×400D(台座含む)/57kg

 このタイプのスピーカーは後面開放型なので、大型のバッフルを使用しなければ低域端は伸びない。コンデンサースピーカーなどと同じである。また、設置場所によって低音域の特性が変化するので、設置が難しい。

 ただ、それでも大きく期待されるのは、ホーンと同じように空気負荷がよくかかり(ハイルドライバーの特長)、立ち上がりの良い音が期待できること、大面積ウーハーの、本物らしさのある低音が期待できることである。
 動電式のハイルドライバーは優れた方式ながらウーハーが実用化できずにほとんど姿を消したが、このピエゾフイルムによるものは大いに楽しみである。

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