column 107 「MFB元年」 1/1
 オーディオ技術の中で最も遅れているのが「低音の再生」であると、繰り返して説明してきた。問題は希求の度合いと現実との妥協をどこに求めるか、であるが、残念ながらオーディオファンと雖も、時代と共に次第に「軽薄短小」の様相を呈している。

 音楽の嗜好は年々に変わる。これまで主体となっていたクラシック音楽ファンは、今は多分、20パーセント台であろう。近年の若者が一度ははまるロックでは、それほど良質の低音を求めているわけではなさそうなので、世の中は適当な低音で通用するようになった。

 「良質の低音とはどんなものか」であるが、これは端的にはコンサートホールでのコントラバスの斉奏を、どれだけ風のように軽やかに出して見せられるか、である。
 ホールにもよるが、低音域の楽器は、いささかのボンつきもなく、重苦しい寸詰まり感などは皆無である。それが出せるか、である。

 或いは、大きな和太鼓、オルガン、ピアノなどの、その音源の楽器の大きさを彷彿とさせられるか、である。3メートルの太鼓ならば、3メートルを感じさせなければいけない。同じ「ドーン」でも、革の震えを伝えてこなければいけない。

 今年は「MFB元年」になる。

 それは小型エンクロージャーという妥協のスピーカーでも、パワーアンプからスピーカーへとフィードバックループを拡張するMFB技術によって、振動板の動き、或いは結果としての音波の動きを制御できるようになったことである。これで、音響変換の忠実度を大きく改善できるようになった。
 それによって得られる効果は
1.ローエンドの拡張
2.歪みの低下
3.過渡特性の改善
4.低音の低歪み化による、中、高音域の分解能の向上
などである。

 このようなMFB技術は、最近では高橋(和正)氏らが検出コイル型を使用して、ラジオ技術誌上で成果を発表してきた。小生のいる会社も、同氏の発表会で感銘を受けたのが発端で開発に手を付けたが、ここにきて、ようやく「マイク方式音圧MFB」の実用化にこぎ着けることができた。
 この「音圧MFB」のデモは昨年の「真空管オーディオフェア」で行ったが、幸いにも高い評価を貰うことができた。

 「マイク方式音圧MFB」は、検出器が小型マイクなので、既存のスピーカーユニットに工作や加工をすることなく、簡単に取り付けられるというメリットがあり、低音の改善を望むときは誰でも容易に実験できる。

 これが、今年を「MFB元年」とする所以である。

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