column 122 「何かを主張する」 8/15
 7月26日(土)に、「OTL3社合同試聴会」を行い、すっかりOTLの音の優秀さに満足し、自信を深めた結果、「トランス派の人達よ、他流試合を如何」と投稿室で呼びかけてみたが、誰一人名乗りを上げて来ない。

 「真空管はOTLで使ってこそ良い音がする」というのは一つの主張である。
 すなわち「出力トランスというものは音を劣化させる部品なので、それを使わないOTL方式の方が、真空管アンプの回路としては勝れているのではありませんか。現にとっても良い音がしますよ」というものである。

 オーディオ界は不思議な世界で、時に自分の経験を、あたかも世紀の大発見のように過信し、それでいて公開しての比較実験は控えめという人が少なくない。
 仮に、真空管の銘柄が音質に大きく影響すると主張されるのならば、差し替えて聴かせて呉れると、他人はすぐにでも納得するのだが。

 回路にしても同様で、トランス方式の○○回路がが良いという実験結果が得られたならば、或いはトランス方式の□□回路の音がよいと確信されたのならば、それを掲げて世に問うものではなかろうか。シンパの仲間内だけで「良かった、良かった」と褒め合っていても説得力に欠ける。

 この、何かを主張し証明するということは、どこの世界でも大切なことで、ジェンナーは自分の子供に種痘して自説を証明した。
 今でこそ常識になった線材による音の違いの主張も、これは大阪のあるアマチュアが主張し、メーカーが追試をして確認され、常識となった。これはオーディオ界での大きな功績であった。

 しかし、主張した「何か」が単なる個人の思いこみであったり、テスト方式の曖昧さに起因する誤認であったりしては困る。迂闊にも信じて採用する人が出るからだ。

 それを確かめるには、立ち会い実験がよい。そうして確かめられれば、その回路に取り組む人も増えようし、主張した本人も安心するのではなかろうか。
 どんな音を目指し、それが確かに実現できたかということは、音を聴けばすぐ分かる。そして、その目指した音の方向が、両者同じならば、どちらのアンプが勝れているか、たちどころに判明しよう。

 「何かを主張する」ということには、例えそれが個人の趣味であっても、そこには外野を納得させる、なにがしかの義務に似たようなものが付いて廻るのではなかろうか。まして「音比べをしましょうよ」と申し込まれるにおいては。

                     

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