星空のメモリア-Wish upon a shooting star-(FAVORITE)

 小河坂洋(変更不可)は思い出の街に帰ってきた。展望台で星見をともにした少女との将来の約束は今も生きているだろうか。展望台を訪れた洋を待っていたのは高いフェンス。いつの間にか立入禁止になっていたのだ。驚きつつも躊躇わず入り込む。星見の場で出会ったのは思い出の少女にそっくりな死神であった。

 ApRicoT同様にチーム名がブランド名となったFAVORITEの新作は天体観測サークルにまつわる奇縁を描いたアドベンチャー。
 購入動機は原画買い。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は姫榊こももキラッ☆ぷにゅマウスパッド。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。相変わらずFAVORITE VIEW POINT SYSTEMを採用していてイベントCGを2.0倍まで拡大して見ることができます。
 足回りはもう一歩。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢間が非常に長いため、相対的に遅く感じやすいです。要暇潰し道具。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが戻れる量はそれほど多くありません。ロード直後でも使用できます。
 ワイドモニターに対応した縦横比の固定機能が用意されています。その際に両端にできる黒いエリアでもマウスのクリックがしっかりと反応してくれます。

 シナリオはクリア順の制御が一部のキャラでかかっています。攻略可能になるまでそのヒロインに該当した内容の選択肢が出ないのでわかりやすいです。そのせいかどうかはわかりませんが、ヒロイン毎にシナリオサイズに大きなばらつきが見られます。配分を考えた時に一部のヒロインは首を傾げたくなることも。
 共通ルートと個別ルートでは雰囲気に大きな差が生じています。前者においては何事にも全員が揃い描写も濃いですが、後者においては登場人物も限られ描写もあっさり目です。
 個別ルートも前半と後半で大きく役割が違います。最初の3本は伏線を張る、いわば出題編で残り4本はそれを踏まえた解答編という構成です。ただ、本作はあくまで素朴な作品。ミステリー的な要素に過剰な期待をかけると裏切られたような気持ちになる可能性があります。
 日常の掛け合いは題材に対してクセが強く人を選ぶところあり。中でも要注意人物といっていい主人公とその妹は序盤から幅を利かせてくるので心して臨む必要があるでしょう。ただ、それが終盤まで続く訳ではないので相性判断には長い目が大事です。
 惹かれあう過程は強引極まりないものが大半を占めています。それらしい描写があったならラッキーというくらい。中には理解不能なものも含まれています。
 Hシーンはシナリオサイズに比例して各ヒロイン1~3回。シーンによって尺もまちまちですが、それでも全体的には短めなくらいです。

 CGは本作で一番のセールスポイント。星空のように輝くヒロインたちの姿は原画買いに十二分に応える出来です。中でも立ちCGはよくぞここまでというくらいに豊かな表情、衣替えまである多彩な衣装と実に華やか。掛け合いに彩りを添えています。
 CG鑑賞モードの使い勝手が悪いのは相変わらずです。拡大したものは元に戻さなければ先へ進めず、差分を全て見ないことには終わることもできません。せめてキャンセルくらいはあった方が良かったのではないでしょうか。
 バストアップ(立ちCG)鑑賞モードが今回もしっかり搭載されています。とても嬉しいのですが、どうしてかSDカットを鑑賞することができません。残念。
 エロ度は純愛系にしては悪くないですが、ヒロインによって若干、差があるようにも。

 音楽は幻想的な雰囲気を演出するに相応しいだけの曲が揃っています。場面に応じた多様性も問題なく、改めて鑑賞モードで聞きたくなる仕上がりです。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は申し分なく声質もキャラに合致しています。

 まとめ。正体のつかみにくい作品。萌えゲーとも言い難くシナリオゲーとも言い難い。どっちつかずと言うべきか。謎や設定で引っ張るゲームでもないので勘違いを誘発しやすい。ちょっと変わった田舎ゲー程度に考えておくのが無難かと。
 スタッフの能力は信頼できるので完成度を高めた次回作に期待したいところ。
 評点:70
 お気に入り:蒼衣鈴、乙津夢

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、南星明日歩
 千波と並んで序盤に立ちはだかる壁。耳の障害のおかげで対人距離が近いということもありますが、まるで自分が展望台の彼女ですよ、というくらい当たり前に主人公の幼なじみとして振る舞っているので嫌われ度は高いでしょう。まぁ、押しつけがましい主人公とは確かにお似合いではありますけど。押しの強さは諸刃の剣ですね。
 学園の2年生で20万する天体望遠鏡を所持しているというあたり、どんだけ父親に溺愛されているかわかります。星好きを名乗りながら住む街の徒歩圏内の絶好の観測スポットである展望台を知らないという不思議な娘さん。
 父親の血を受け継いでいて見事なまでに思い込みが激しい。主人公に何ら落ち度がないのに別れを切り出す驚異的な恋愛下手。父親との行き違いは、おいおい待ってくれよセニョリータ、とか言いたくなるくらい第三者的にありえない。主人公からすれば頭痛い感じ。

2、姫榊こもも
 なんとも属性に忠実なツンデレさん。らしくないのは胸が大きいことくらい。なので典型的ないじられキャラでもあります。星嫌いがシナリオ全体に渡って横たわっているのにその理由にたいした意味がないというあたり拍子抜けの感があります。この拍子抜けという奴は本作のテーマとかキーワードと言っていいと思います。
 個人的にはお風呂に入った時にきちんとリボンを外した髪形を見せてくれるのが好印象。エロゲーではこうしたシチュエーションにおいてそのままであるのがデフォルトみたいな節がありますしね。

3、姫榊こさめ
 仮初めの命だけど、汚れたりとかしないし食事も睡眠もしないけれど体はちゃんと成長するよ、という謎な方。この手のキャラは体も成長しないもんなんですけどねぇ。このへんがどうしても説得力に欠けるところであんまり悲劇も感じないところでしょうか。要するにこももが側にいれば普通の人間として生きていけるんでないの? という。いえ、姉である必要性は本当にあるのか。全くの他人でも問題ないのでは。
 結局どうしてメアを襲ったのかよくわからないまま。少なくとも絶対に襲わなければならないという理由はなかったような。まぁ、そうでなければあんな簡単に引き下がるはずもないですけど。拍子抜け。

4、小河坂千波
 戦慄のウザ系粘着妹キャラ。序盤においてプレイヤーのギブアップを誘う空恐ろしい存在。このトラップにかかったユーザーは多いとか多くないとか。どう考えてもどう見てもサブキャラにしか見えません。ゲーム開始後にヒロインであることを知ってとても驚きました。そのせいかどうかはわかりませんが、恋仲になる過程というか理由がワールドクラスに謎。濃いキャラのわりにシナリオは一二を争うほど短い。拍子抜け。

5、蒼衣鈴
 とても高い防壁を持つヒロイン。越えたと思ったらいつの間にか押し戻されて元の位置に立っているという。こんだけ攻略難度の高いキャラは久しぶりだったので進めていて面白かったです。もし頻繁に選択肢が出るような作品であればかなり悩みながらプレイしたのではないかと。
 しかしながら、シナリオ自体はかなり頂けない。屋上の鍵と望遠鏡の意味が謎すぎます。なぜ小学生にこのようなものを渡すのか。細かいことまで言えば衣鈴はどうやって持って帰ったのよ、という。大河の行動は何か考えているようで実は何も考えていなかったのではないかという疑惑。衣鈴もなんだか自分で謎をこさえてしまったようにも見える。拍子抜け。

6、乙津夢
 なんとなく見た目がサーカスとかMOONSTONEを想起させるヒロイン。思い出の少女。気のせいでなければ成長を続けるに連れ可愛さが薄れていくような。
 健康であるならば主人公と結婚して尻に敷くのは当たり前なのね、という大前提が素敵。プレイヤーの方もそれを普通に受け入れてしまうのはここまでが長かったせいでしょうか。
 シナリオが始まってもまだ焦らしを続けるのは逆効果だったのではないかと思います。もっと実際的な苦労とかした方がいいのでは。あの状況で駆け引きみたいなやりとりをするのもねぇ。後で他のヒロイン同様にいちゃつくイベントがある程度あればいいですけど、何もありませんし。
 病名がわかると幼女を鎌でかっさばいてエンディング。意味がわからない。なんでそんな設定なのよ。夢を放置したままシナリオを終えたように見えてしまうあたりもね。

7、メア
 結局、偽名のまま終了。シナリオは極短。千波と最下位決定戦。結構、余計なことというか話をややこしくしているようなところもあります。彼女にはその理由もあまりないだけにちょっと。拍子抜け。

8、諏訪雪菜
 もったいつけて動き回っていた割には結局何もなし。拍子抜け。描写の乏しい中でこさめが得難い友人になったとか言われてもなぁ。当人にしかわからなさすぎるよ。

9、飛鳥未来
 なんかウルトラマンに体を貸してくれとか言われそうな名前です。
 妹に対してさんざ伏線を張っておきながら完璧スルー。登場だけはしているのがより一層、切ない。

10、岡泉温土
 最終シナリオになって実は二重人格でしたとか言われても。ホント、いらん設定とか説明が多い作品ですよ。

11、小河坂志乃
 やはり血なのか、というくらいに自分勝手で押しつけがましい。1人だけいい人ポジションをキープしようとしているあたり主人公よりタチが悪いかも。

12、蒼鈴葉
 なんかこの作品唯一の常識人という気が。

13、南星総一朗
 まともそうに見えて実は駄目駄目な大人。「合格だ」は序の口に過ぎない。

14、三嶋大河
 何かしそうで何もしないヒト。主人公や千波にも会わないあたりにヘタレの遺伝子を感じる。やっぱり拍子抜け。

15、レン
 構造上やむを得ないとはいえ完璧にキャラがメアと被っている。

16、姫榊万夜花
 親の世代はどうも思わせぶりなだけで何もない、しない人が多い。これが拍子抜けと感じさせやすい最大の原因でしょう。こさめに対する策が中途半端というか行き当たりばったり。

17、看護士さん
 登場機会は2回しかないのになぜか立ちCGあり。本当はもっと活躍するはずだった?