燐月(selen)

 燐堂直人(変更不可)は田舎者ながら名家の嫡男。その燐堂家には不思議な言い伝えがあった。かつて領主であった頃、物の怪を退治した際に呪いを受けたという。その呪いとは男児が生まれないというもの。呪いは解けなかったがひとつの方策を立てた。それは霊力を持つ一族、緋月家の娘に子を生ませること。しかし、効力は三代の間しかもたないという。
 言い伝えが本当か嘘かは問題ではない。重要なのは燐堂家がそれを信じて緋月家の娘に子を生ませてきたという事実である。そして、直人はまさに三代の境目の嫡男なのだ。
 相手は緋月家の四姉妹。お役目のために酒池肉林の毎日かと思えば事情は何も聞かされていないという。自分自身の未来のためにも何とか口説き落とそうとするが……。

 新生セレン第1弾はカワギシケイタロウ氏を原画に迎えての孕ませアドベンチャー。本質的には変わらないが新しいセレンの姿を、というコンセプトで作られたようです。正直、セレンとはもう一歩、相性が良くないのですが原画とセレンの意気込みを買って購入。孕ませの部分はどうでもよい感じで。
 取り立てて何も書いていないんですが、恐らく初回特典として主題歌サントラと高画質ムービーの入ったCDが付属しています。

 システムはセレンにしてはおとなしい、極めてノーマルなタイプのアドベンチャー。場所移動を除くと選択肢はたったひとつしかありません。これはちょっと記録的かも。さらにとてもセレンとは思えない低難易度に驚かされます。
 足回りは完膚なきまでにいつものセレン仕様。メッセージスキップは既読未読の双方が用意されています。スピードは充分ですが、スキップボタンをクリックしなければ止められないのはやや不便。また、同一文章でもルートが違うとスキップが働かない箇所があるのは気になるところ。
 バックログはウインドウ単位で行います。それなりに戻れますが、シーンの区切りなどでいきなりゼロになることがあるのは残念。ボイスのリピート再生可能。ホイールマウスに対応していて、その方向も設定可能になってます。
 画面の切り換えもいつも通り、設定を活かすために立ち上げ直さなくてはなりません。
 セレンの伝統スタイルの場合、真骨頂はここから。もう2004年も半分以上が過ぎたというのに未だにCG鑑賞がありません。これはもうこだわりの嫌がらせというやつなんでしょうか。スタッフに能力がないとはとても思えませんし。CGの差分をこよなく愛する私としてはもうホント、泣きたくなります。加えて今回は音楽鑑賞までありません。無理っぽい気もしますがスタッフには考えを改めて頂きたいです。
 本作はパッケージによるとチャージ式DVDレスプレイ対応とあります。DVDレスプレイ可能なのはありがたいですが、チャージ式とはなんぞや、というのが誰しも店頭で手にとって感じる疑問。答えは「たまに起動時にDVDか特典のCDを要求される」、です。果たしてこれをDVDレスプレイ可能といってよいものでしょうか。私は否だと思いますが。

 シナリオはこれまでのセレンとはやや毛色が変わった印象を受けました。凌辱畑の人間から割と普通っぽい思考の人間に主人公が変わったのが主な原因かと思います。当然これがヒロインに対する態度、ひいてはHシーンにまで影響を与えています。これまでの調教系Hシーンの陰惨なイメージは薄れたかと。
 シナリオのボリュームとしてはかなり控えめ。必要最低限の文章で構成されているといった感があります(総量は平均的で少なすぎるということはありません)。主人公とヒロイン4人の内、3人が同居していても会話が絡むのは朝食の事務的な会話くらい。様々な状況が起こってもそれに対するフォローがほとんどないのはどうかと思います(例:いきなり現れた男に、妹が手を出されていると薄々気付いていながら何もしない武闘派な姉)。せっかく整えた環境の無駄遣いといった感じ。
 また、その環境(設定)作りも全体的にご都合主義的。そういうゲームだから、と言ってしまえば確かにそれまでですが、テキトーに作った感が強く物語に引き込まれません。そのくせ、子を儲けることのできないHシーンに引っ掛かりを感じてしまうなどの制約も無意味に多い気がします。
 テキストはもう一歩。日常会話は常に主人公が能動的でヒロインが受動的なので弾むことはほとんどありません。Hシーンではエロっちくしようと頑張っていて、それなりに効果も上げていますが、やけに同じ表現が多いのは気になるところ。これはHシーン以外にも同じことが言えます。
 厳しいことばかり書いたので良いところも。押しに弱いヒロインを徐々に快楽で押し流していく展開はいかにも攻略している、といった趣があって楽しかったです。当のヒロインもいつまでも羞恥心を失わず、見境なくヤキモチを妬いたりして魅力的ですし。ただ、全ヒロインに対して言えることですが、「気がつけば惚れられていた状態」であるのは残念。設定では苦境に置かれていたはずだったのに。もったいないです……、ってやっぱり厳しくなっているような。
 ポイントである孕ませ描写は微妙なところ。妊婦属性のない人間ですからフェチ的な要素はイマイチわかりませんし、それ以外の部分は姉妹で似通っているのであまり面白いとも感じられませんでした。まぁ、マタニティーブルーになったヒロインと鬱シナリオなんてものが見たい訳ではけしてありませんから、あっさりテイストくらいでちょうど良いのかも知れません。
 Hシーンは珠玉の仕上がり。設定を捨て、シナリオを捨て、出来上がったものがここにある、というぐらい頑張っています。ただ、繰り返すようですが、これまでのセレン色は若干、薄くなっているのでノーマルな(?)段階を踏んだHシーンが増えています。もちろん、そうでないものもありますが。
 ただ、Hシーンはメインヒロインである三女鮎美に集中しており、ヒトヅマな長女は冷遇されている感あり、なので注意が必要かも。

 CGは原画、塗りともに非常にハイレベル。原画買いに応える内容ではあるんですが、一部の構図で表情が安定しないのは残念なところ。もうひとつ、意外と1シーンに1枚という構成が多いです。ここでもう1枚あれば、と何度か思わされました。
 立ちCGはポーズ変化こそないものの、実に表情豊か。小さな感情の動きをしっかりと描きだしています。

 音楽は硬軟自在といったメロディーライン。特にHシーンに顕著で、強引に押し通そうという時には「兄嫁」を彷彿とするような勢いのある曲、合意を得ているような時には幻想的な曲というようにメリハリがきいています。
 ボイスは充実の声優陣が揃っています。見た目からイメージしやすい声の声優が選ばれているかと。中でも鮎美役の北都南さんはいつも通りの高いレベルの演技で聞き応えあり。もはやセレンには欠かせない声優です。

 まとめ。意外と達成感のない佳作。それは難易度が低いからではなく、Hシーン以外のイベントの手薄さが響いているのかと。もっと突き抜けた何かが欲しいです。
 個人的にはCG鑑賞が搭載されないならもう買わない可能性が高いかと。当然ですけど、CGの出来が良いほど未搭載のダメージが大きくなります。
 お気に入り:緋月鮎美、美津菜
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、緋月結衣子
 やはり人妻というのは色々な意味でネックかなぁ、と。人妻属性を喜ばせるような寝取展開があるわけでもないし。好きな人にとってもイベントが少なすぎるんで足りない分を全て愛でカバーするのも苦しい感じ。じーさまも言ってましたけど、据え膳のように与えられても有り難みがありませんな。正和の演技だけは良い感じでしたけど。演技でなければなお良かったかも。

2、緋月詩乃
 いくらなんでもちと反転しすぎではないでしょうか。志貴くんもびっくりの裏返りっぷりですよ。さすがにあそこまで露骨に態度が変わるとちょっとねぇ。ほとんど別人クラス。このゲームはヒロインがたやすく陥落する傾向が強いのでこの詩乃くらいは頑張って欲しかったんですが、願いも虚しかったようです。こういうキャラって落ちた後がイマイチ面白くないんですな。

3、緋月鮎美
 メインヒロインだけあってかなり優遇されているといった印象があります。立ちCGのバリエーションなんかも一番多いんじゃないでしょうか。
 押しに弱い。それが鮎美の最大のアピールポイントですが、それが最初から最後まで貫かれていたのは良かったかと。二股とかに拒絶反応を示すのも効果的だったように思います(結局、流されますけど)。
 鈴音の指輪を鮎美が拾っていた。これがこのゲーム最大のご都合主義。さすがにこれを数奇な巡り合わせ、とかいって感動するのは難しいです。

4、緋月美津菜
 設定的にはなかなか面白いし、キャラとしても可愛くはあるんですけど、もう一歩それが活かしきれていない感じ。快楽と愛情は別って感じで展開させるともっとキャラが生きたと思うんですけどねぇ。詩乃と同じで気がつけば惚れられているというのでは嬉しさ半減ですよ。何とももったいないです。最初のイメージから広がりがないのもね。