月陽炎 千秋恋歌(すたじおみりす)

 果たして5ヶ月は長いか短いか。それは人それぞれですが、すたじおみりす初のファンディスクがこの千秋恋歌です(「ちょこっとあどべんちゃー」はお詫びディスクと判断するので除外)。非常に珍しいことに本編がインストールされていないとプレイ不可能となってます。まさにファンディスク。本編をかつて持っていたファンではプレイ出来ない仕様が漢らしいです(インストールされてれば問題ないんですが)。

 購入動機は言うまでもなく、「月陽炎」本編が気に入ったから。そのわりにはメーカー通販の第一次締め切り日当日まで投函していませんでしたけど。我ながらとっても不思議。危うく郵便為替の使用期限を過ぎるところでしたよ(ちょっと嘘)。

 すたじおみりすと言えば切っても切れない仲にあるのがバグ……、とは少し言い過ぎですが、作品が出る度に不安になってしまうのは小心者の私には仕方のないこと。
 結果から言うと私の環境ではあまり問題なかったですが、人によってはインストーラーに不具合が出た模様。運悪く当たってしまった人はまたしてもクリティカル系。リメインスタッフの頑張りを持ってしても解呪は難しいのでしょうか。まっ、それはそれとして、さくっと修整ファイルを落としてとっとと解決してしまいましょう。
 私のところではエンディング後の文章表示(「エヴァ」が流行らせた例のヤツ)が出なくて強制終了というのがありました。残念ながらこれの差分はアップされていません。私と似た環境の方(FREEWAY製パソコン、ペンティアム3・800Mhz)はご愁傷様。それだけではアレですのでアドバイスを。確実な再現性はないのでエンディングが間近だなと思ったら即セーブが大事です。なんでこんな処置が必要かと言うと、このゲームはエンディングを終えてメーカーロゴが表示されるまで既読関係のデータが保存されないんですよ。つまり選択肢などで別ルートのCGだけ見てセーブせずにロードとか回収プレイにありがちなことをすると登録されない訳です。今作はボリュームが少ないからいいですけど、普通のゲームなら時に不幸を呼ぶかもしれません。要はセーブすればいいんですけどね。

 コンテンツはミニシナリオ2本にミニゲームひとつと非常にシンプル。ファンディスク恒例の壁紙とか数枚ありますが、ミニゲーム内に入ってます。でもここから直接、壁紙に登録出来ないのは不親切だと思います。個人的にはタイトル画面を壁紙にしたかったのでこんなこと書いてます。
 あー、あと付箋紙とシステムボイスがありました。付箋紙好きですね、すたじおみりす。前回も入ってましたよ。付箋紙はその前作でブーイングでもあったのか、今回は壁紙ともども問答無用でインストールということはなかったです。こんなところでユーザーの声が届いていると感じるのもなんか複雑ですが。

 ミニシナリオは本編でサブ扱い(攻略は可能だったが扱いがあまりにも違った)だった有馬鈴香と幸野双葉のものが1本ずつ。
 まずは共通部分から。
 本編を必要としているのはなにも意地悪ではありません(でも1GBオーバーだし人によってはそう感じるかも。足せば2GB近いですし)。本編のシステム、音楽、CGデータなど多くを千秋恋歌でも使用しています。というか共通データとして組み込んでいると言った方がいいでしょう。

 新しいエンディングを迎えるごとにタイトル画面で使用される曲に音色が増えていくのも本編を踏襲しています。同じように鑑賞系モードも増えていきます。ただ、エンディング数の関係でしょうが、バッドエンドも見なくては全て揃わないのは不親切かと。フラグが異なるだけでバッドエンドは見分けがつかないのですし。

 システムは本編と同じなので省略。詳しくは「月陽炎」のゲーム感想を参照のこと(手抜きで申し訳ないですけど、同じ文章書いてもしょうがないですから)。
 加わったのは各ヒロインの立ちCG鑑賞。残念ながら親父好きなアナタのための一哉さんや真の立ちCGは登録されていません。エロゲーの世界は厳然とした女尊男卑の精神が貫かれているのです。
 もうひとつ。本編と合わせたプロローグ及びエピローグの鑑賞シーンが追加。毎回、オープニングが変わる本編にはありがたい機能です。

 CGは本編に勝るとも劣らぬ素晴らしい出来。枚数は部分変化なしで23枚(ミニゲームのCG除く)。値段を考えれば充分なラインかと思います。Hシーンの構図も画面が横長であることを活かした意欲的なものが用意されています。ちょっと感心しました。

 音楽は意外にもタイトル曲とヒロイン二人のボーカル曲の計3曲のみ。つまりゲーム中は本編と全く同じ曲しか使っていない訳です。そのままの雰囲気なのはいいんですが、ちと寂しいような気がします。このあたりに値段が表れているのでしょうか。まぁ、2500円(通販価格)では文句を言う訳にもいきませんか。

 シナリオ鈴香編
 どういう訳か大きな流れが2通りあります。ひとつは本編の補足に位置づけするようなストーリー。もうひとつは本編に対してアナザーに位置するストーリー。このふたつが共通シナリオから派生するので微妙におかしなことになってます。
 特に本編補足ルートは話の辻褄が合わなくなってしまうのが気になります。というより本編ラストがアレだったから新しいシナリオが組まれたと解釈していたので驚きました。
 それに関連して他に気になることもあります。鈴香シナリオは本編をある程度、踏まえたところから始まります。承知の通り、マルチシナリオ形式のゲームはルートによって積み重ねた事実が微妙に異なります。よってキャラクターのセリフからどのような事実が構築されていったのかを逐一、確認しながらプレイを進めていかなければなりません。これは正直に言って感情移入するためのちょっとした障害になりました。
 せっかく本編のデータがあるのですから、それを利用した導入部をきちんと作って欲しかったです。ぶっちゃけ鈴香シナリオの部分に到達するまで同じでも構わないんですから。これはファンディスクだからとか、そういう問題ではないと思いますし。
 苦言ばかり呈してきたので良いところも。
 Hシーンが計3回というのはたいへん嬉しかったです(本当は4回ですがCG的には3回と判断)。充分に堪能しました。でも、メイド服Hは良かったですけど、個人的には美月の着ていたものがお気に入りだっただけに(次点は柚鈴)複雑です。贅沢言えば「Piaキャロ」方式でいいですから3種類欲しかったです。さらに本音を言えば巫女衣装での構図、シチュエーションにもっとこだわって欲しかったです。メイド服よりも。
 アナザーシナリオに関しては悪くはないです。しかし、こちらでもやはり巫女神楽など巫女としての自分、伝統を守る、神社を守る、といった鈴香の姿が描かれていないことが不満。本編でも中盤ではそうしたことを言っていただけに……。あのラストではただ弱いだけという感じがしてしまって。

 シナリオ双葉編
 本編からすでに番外編だったのでそのまま続きでもアナザーシナリオ。鈴香シナリオとは違って前作をプレイしなくても問題なく入れるようになっています。現に私もほとんど忘れていましたが、問題なかったです。
 プレイしての率直な感想は「ああ、1年の間にきっちりと調教されてしまったんだなぁ」ということ。喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか悩むほどえっちぃ娘になってます。鈴香以上に構図がエロいのでそのあたりはいい感じですが。回数はこちらも3回。
 シナリオは完全に一本道。つーか、選択肢がほとんど存在しません。このあたりも鈴香シナリオとは対照的です。
 法術バトルがなくなってもアクションシーンのノリはおんなじ。もう少し読み手を飽きさせない工夫をした方がいいかと思います。
 Hシーンについても少し。本編と合わせてのことなんですが、基本的には悪くない、むしろちょっと笑えてそこそこエロくて良いと思います。
 しかし、相手が誰でも主人公の反応(苛め方とか)が同じというのはどうなんでしょうか。もちろん同一人物なんですから大きくは変わらないでしょう。それでも攻め方が同じではヒロインたちの個性がないと間接的に言っているも同然です。事実、ことHシーンの反応に関しては皆、同じであると言わざるを得ません。
 例えば鈴香シナリオの社務所Hのシーン。参拝客が目の前にいるにもかかわらず、刺激を加えたユウシロウに対しては鈴香なら後で突き飛ばしかねないくらい怒るのではないかと思います。誰よりも職務に厳格な彼女ですから(この場合は一度、冷静になってますし)。おろそかにするのは精神的におかしいときだけでしょう。美月なら理由は違えど鈴香と同じ、柚鈴なら弱くしか言えない、双葉ならノリを楽しんでしまう、とそんな風に違いを出すべきではないかと。もちろんユウシロウの反応も。もう少し鈴香などには苦手意識(自分の思う通りにリードしにくいため)めいたものを持っていた方がいいのではないでしょうか。

 ミニゲーム「双葉のなないろ事件簿~純情派~」
 固定画面のパズルっぽいアクションゲーム。マニュアル見なくとも操作方法がわかるほどシンプル。そして、問題ない難易度。
 原画は同人作家のくろがねぎん氏。このイラストが大変いい味を出してます。タイトルからわかる通りのギャグになってます。それもかなりの同人ノリ。ちなみにキチンとCGモードに登録されます。
 クリアするごとにゲスト作家の壁紙を見られます。本人もゲストですが。メンツは同人作家との垣根が最も低いソフトハウスらしく、同人作家が多くを占めています。

 まとめ。ファンソフトというより追加シナリオ集。ファンは買って損なしでしょう。ただし、初めからアナウンスがないから当然とはいえ、柚鈴、美月にほとんど出番がないのは残念なところ。コストパフォーマンスは充分、及第点かと。「ねこねこファンディスク」の存在でこんな表現に。

 お気に入り:とーぜん有馬鈴香
 評点:70

 ソフトの性質上、キャラ別感想はなしってことで。