無人島の集団

照明部の後輩のM君の沖縄ロケでの体験。
その映画のロケは沖縄の人の住んでいない小さな島での撮影がほとんどだった。
そこへ行くには船しか手段がないのだが、一日に一往復しかできず、撮影には非常に不便であった。
撮影機材など、いちいちかたづけて持って帰り、また撮影の朝に船に積んで運ぶということを繰り返すのは面倒なことだった。
制作部は現地のコーディネーターに、島にテントを張って機材を保管し、毎日見張り番が寝泊りすることの許可を求めた。
しかし、コーディネーターの答えはノー。やめた方がいいと言う。
スタッフが毎日たいへんなので、そこをなんとか許可してくれないかという制作部と、許可はできないというコーディネーターの
問答がしばらくあり、やっと「そんなに言うなら許可はするが、責任は取れない」という返事。
どこか引っかかる言い方だが、なにはともあれ機材をいちいち持って帰らずに済むことになった。

照明部も交代で機材の見張りのために泊まり込みをすることになり、M君の当番の夜。
テントの中にいると、外でなにやら話し声のような声が聞こえてきた。
しかも、一人や二人ではない。だんだん人数が多くなっていくようなのだ。
「変だな・・この島には人はいないはずだけど」
M君は恐る恐る外をのぞくと、森の中からゾロゾロ人が出て来て徘徊している。
昼間は人っ子一人いなかった島のどこにこんなに大勢の人がいたんだろう・・・。
スタッフ達が帰る船が出た後にこの島に向かってくる船はまったくないのだ。
M君は怖くてテントから1歩も出られなかったという。
あの集団がなんなのかは謎のままである。
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