三月大歌舞伎(歌舞伎座)
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昼の部 狐と笛吹き 春方 ・・・染五郎 ともね ・・・時蔵 寺子屋 松王丸 ・・・幸四郎 女房千代 ・・・玉三郎 武部源蔵 ・・・梅玉 女房戸浪 ・・・松江 春藤玄蕃 ・・・彦三郎 涎くり ・・・家橘 御台園生前・・・福助 源氏店 切られ与三・・・梅玉 お富 ・・・玉三郎 番頭藤八 ・・・四郎五郎 蝙蝠安 ・・・弥十郎 多左衛門 ・・・幸四郎 | 夜の部 平家蟹 官女玉蟲 ・・・福助 妹 玉琴 ・・・亀治郎 旅僧雨月 ・・・宗十郎 那須宗春 ・・・染五郎 英執着獅子 姫(獅子の精)・雀右衛門 籠釣瓶花街酔醒 佐野次郎左衛門・幸四郎 下男治六 ・・染五郎 兵庫屋八つ橋・・玉三郎 兵庫屋九重 ・・藤十郎 立花屋長兵衛・・彦三郎 女房 おきつ・・宗十郎 釣鐘権八 ・・芦燕 繁山栄之丞 ・・梅玉 |
第203回歌舞伎公演(国立劇場)
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梅雨小袖昔八丈 髪結新三 ・・・八十助 白子屋手代忠七・・・萬次郎 同 後家お常 ・・・右之助 同 娘お熊 ・・・高麗蔵 下剃勝奴 ・・・辰之助 弥太五郎源七 ・・・権十郎 家主長兵衛 ・・・三津五郎 家主女房お角 ・・・鶴蔵 土佐絵 名古屋山三 ・・・八十助 不破伴左衛門・・・辰之助 傾城采女太夫・・・芝雀 |
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熊さん ご隠居、矢っ張り八つ橋は、生に限りますな。 ご隠居 熊さん、そりゃお前さん、お門違いだよ。八つ橋といやぁ、肉桂を混ぜて 堅く焼いたのが本来だ。あのぷよぷよした最近の代物は、邪道だ。それに何だな近頃は、 抹茶だの、苺だの、聞いて呆れる物さえあると言うじゃないか。 熊さん この惚け茄子。誰が菓子の話をしてるんだ。俺が八つ橋と言やぁ、 籠釣瓶の八つ橋に決まってるじゃねえか。 ご隠居 籠釣瓶の八つ橋??さてはお前さん、あの花魁に惚れたな? やめとけやめとけ、あれはお前が、相手に出来る女性ではない。キッパリと諦めなさい。 熊さん 何だか今日のご隠居、変だね。O-157にでも罹ったんじゃないかい。 若旦那 よっ、熊さん、久しぶり。お元気でやんしたか? 熊さん なんでぃ、若旦那かい。今取り込み中だ。話は後にしてくれ。 若旦那 熊さん、そりゃアちとそでなかろうぜ。 熊さん おっ、来たな。誰もこちらから若旦那に来て下さいと頼みもせぬに、 勝手に深みにはまったを、そんな不理屈は通りませんよ。 若旦那 スリャ、それほどまでに、この私を。 ご隠居 馬鹿野郎、二人とも、いつまでやってんだい。分かった分かった、 今月の歌舞伎座の玉三郎さん、初役の八つ橋。もう最高に綺麗だったよ。 熊さん そうこなっくちゃぁ、話が進まない。おっ、茶髪、どうした血だらけの 包丁なんか持って・・・? ご隠居 いい鯛が手に入ったんで、おろさしているところだ。 茶髪娘 ん〜ん、木屋の包丁は、よく切れるなァ。 熊さん しょうがねえな、お前まで。頼むから、そんな目をして包丁を睨まねえでくれよ。 茶髪娘 なんだ、熊さんに若旦那、来てたのかい。 若旦那 来てたのかい、はないじゃありませんか。玉三郎さんも綺麗だったけど、 幸四郎さんもなかなかの熱演でげしたね。 ご隠居 松王丸と佐野次郎左衛門、手慣れた役とはいえ、対照的な役柄を、 立派に演じていたな。特に籠釣瓶の口説きの場面など、科白回しがはっきりして、 哀感がこもって最高であった。 熊さん 玉ちゃんも、初演とは思えぬ落ちつきようと、艶やかさで、観客を圧倒。 だだ溜息ばかりが客席から聞こえて来る感じだったね。俺なんか二度も見に行ってしまったよ。 ご隠居 籠釣瓶の見所は、見染めと縁切り。特に一言も発せず、その美しさを 存分に見せつける見染めのシーンは圧巻。口元を大きく開けず、笑う所は指導役の演技より 効果は高いように思えたがなぁ・・・。 熊さん 俺、振り返ってから笑って、元に戻るまでの時間を計って見たんだけど、 なんと40秒もあったんだ。驚いたね、その間下座も無音で、会場中息を殺して固唾を飲む、 全ての視線が一点に集まるのだから、役者冥利に尽きるとはこの事なんだな、と思ったね。 ああ、一度で良いから、あんな目に会いてえなぁ。 茶髪娘 何夢見たいなこと言ってんだい。熊公なんか、素っ裸で道歩いていたって、 誰も気にしないよ。ただちょっと気になったのは、八つ橋の間夫。これだけ親切で いいお大尽の佐野さんを振って、尽くすんだから、もっともっといい男でなければ、 ちょっと納得出来ないわよね。 若旦那 確かにちょっと演技が軽かった。もっと崩れた中に品のある、 いわばあちしのような男に仕上がっていれば、良かったですな。 ご隠居 籠釣瓶の話は尽きないから、他の演目に行きたいが、今月も新歌舞伎が2本出ていたが・・・? 熊さん あっしは以前から新歌舞伎はでぇきれいだ、と言っていたのだが、 なんだいあの『狐と笛吹き』。平安時代の人物が『きみ』だぁ、『おれ』だぁ。白ける所か 殴りたくなったぜ。いくら大御所かしらねえけど、ちょっとひどすぎやぁしませんか。 茶髪娘 確かに、あたしの好きな染ちゃんと時蔵兄さんが出てたから、ちょっと 期待したけど、脚本がひどすぎた。あれじゃ一生懸命やっている役者が可哀想だ。 劇評で誉めている奴がいるから、また驚きだ。 ご隠居 それに比べて、『平家蟹』はなかなか面白かったな。何とも怪奇な話だが、 科白もきちんとしていたし、福助さんの演技が凄みを帯びて、背筋がゾクゾクしてきたよ。 屋島篝火歌舞伎では藤十郎さんが演じるようだが、場所も場所、結構期待でき気がするな。 若旦那 でも、あちしはちょっと恐かった。それなら、見慣れた『源氏店』の方が 楽しかったですな。 熊さん 玉ちゃんが、さらりとお富を演じて、俺も気に入ったね。そういうお前は・・・ なんて、みんな聞かせ所と意識して、粘るけど、やさお富、と呼びかけられてのんびり聞き返すのは 不自然すぎる。玉ちゃんの間で結構だ。 茶髪娘 梅玉さんも出から門口で待っている所など、ぐれてしまった大店の若旦那、の 風情を感じさせて好演。ただし、名乗りからお富とのやりとりになって、その風情が 姿を消したのが、難しい所なんだろうね・・・。それとなんと言っても弥十郎さんの 蝙蝠安、下品そのもので良かった。 熊さん 良くしゃべるあまっこだな。お前さんの大好きなジャッキーはどうだったい。 茶髪娘 ジャッキーにはただひたすら頭が下がるだけ。それにこの時は前の方で 見てたんだけど、なんだか昔より肌もつやつや、どんどん若返っているような気がする。 ご隠居 まったく。あのお年で、ぐるりぐるりと30数回も回すんだから、 想像できない事じゃ。いつまでもお元気で頑張って欲しいものじゃな。 もう時間がなくなったが、国立はどうじゃった。 若旦那 さすが八十助さん、粋でいなせな江戸っ子をキリリと演じて良かったでげす。 大家さんとのやりとりも、さすが親子、息がぴったりだった。 熊さん 俺は、全体的に『髪結新三』って感じがしなっくて、つい寝ちまったんだ。 難しい演目だとは思うが、メリハリ、下司っぽさが足りないように思えたんだがな。 ウトウトした手前、あまり偉そうなこたぁ言えないがね。 茶髪娘 あたしはなんと言っても辰之助ちゃんが可愛くて。必死に新三の演技を盗もうと している様子が分かって、あと何年かしたら、辰之助ちゃんの新三が見てみたいと ついつい思っちゃった。 ご隠居 まあ今月の最大の話題は、大阪松竹座の開演。我々貧乏人にはさすがに 昼夜2万円に汽車賃・ホテル代はきつくてパスしたが、綺麗で環境も良く、評判は上々。 何とか、年内には見に出かけたいものじゃ。ちょっと愚痴を言った所で、本日はこれぎり。 |
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翌月へ |