江戸ぐるめ 瓦版

1998.3.30
5月の歌舞伎座團菊祭公演のちらしを入手しました。ご存じの方も多いでしょうが、
書いておきます。

昼の部       夜の部
外郎売            お国と五平
外郎売  ・・・新之助    お国   ・・・時蔵
小林朝比奈・・・彦三郎    五平   ・・・辰之助
工藤祐経 ・・・三津五郎   友之丞  ・・・八十助

御存鈴ヶ森          船弁慶
幡随院長兵衛・・団十郎    静御前・知盛の霊
白井権八 ・・・菊之助         ・・・菊五郎
               舟長   ・・・八十助
素襖落            舟子   ・・・辰之助
太郎冠者 ・・・団十郎    舟子   ・・・菊之助
姫御寮  ・・・萬次郎    舟子   ・・・新之助
次郎冠者 ・・・辰之助    源義経  ・・・芝雀
三郎吾  ・・・新之助    武蔵坊弁慶・・・團十郎
鈍太郎  ・・・八十助
大名某  ・・・菊之助    お祭左七
               お祭左七 ・・・團十郎
野晒吾助           勘右衛門 ・・・菊五郎
野晒吾助 ・・・菊五郎    芳松   ・・・友右衛門
小田井  ・・・時蔵     倉田伴平 ・・・彦三郎
浮世戸平 ・・・八十助    芸者小糸 ・・・雀右衛門
お賤   ・・・芝雀
後家香晒 ・・・東蔵
南無衛門 ・・・三津五郎

なかなか面白いラインナップになっていますね。三之助は揃って午前午後、そして
一人一人がピンで重要な役を演じます。個人的には野晒吾助の菊五郎さんと、船弁慶
の團十郎さんに期待です。

忘れるところでしたが、6月の歌舞伎座に玉三郎さんの『天守物語』がかかると、
スポーツ紙に出ていました。玉三郎さんが歌舞伎座で天守物語を演じるのは初めてで
歌舞伎座での天守物語は歌右衛門さんが2回演じているそうです。相手役の図書之助
は新之助くんです。かなりの話題を呼びそうですね。

1998.3.30
25日の水曜日、歌舞伎座夜の部を観てきました。前半に1回行く予定が、談志さん
の会と重なり、今回が初めて。もうすぐ千秋楽ということもあり、幸四郎夫人、
勘九郎夫人、橋之助夫人の姿をロビーで見かけました。
5・6段目・・・文楽と違って、定九郎は掛け稲の中から当然出てくるのですが、
後を追い掛けて来る演出も歌舞伎で見てみたいものです。橋之助さん、若狭之助ほど
の切れはなし。落ちぶれて(4段目に九太夫のセリフで定九郎が200石貰っていた
ことが分かる)、辻斬り強盗までする男の、悪の匂いが希薄でした。撃たれた後、
綺麗に口から右膝に血(何だか葡萄酒みたいだった?)を滴らせた所は迫力満点。
菊五郎さんは手慣れた動きで、勘平の心の動きを表現していました。
さて6段目ですが、一番の収穫は福助さん。突き飛ばされて、自分から駕籠に入って
しまうのはいただけませんでしたが、勘平との別れの段が最高に良かったです。
「もう行きますぞえ。こちのひと、さらばでござんす」「お軽、まちゃ」「アイ」
この「アイ」が良かった良かった。その一言を待っていた、という心情がガッと
こちらの胸に飛び込んで来ました。
宗十郎さんと松助さんも洒脱に演じていましたが、宗十郎さんは大店の女将という
重みに欠けるちょこまかした動きが多く、松助さんもちょっと人の良さそうな風貌が
損をしているように見えました。菊五郎さんは言うことなし。勘平の心の変化を
きっちりと見せて貰い、満足満足。好みの問題でしょうが、顔に付ける血、指の
筋が分かるのではなく、べちょっと付く方が好きなんですが・・・?
7段目・・・やはり、勘九郎さんと玉三郎さんの組み合わせは最高。特に平右衛門が
お軽を殺そうとして、お軽が枝折戸の外まで逃げてからのやりとりは、メチャメチャ
良かったです。玉三郎さん、可愛かった!!勘九郎さん、まるでサウナ状態!!
お軽が勘平の名前を言い出せなくて、もじもじするところもいじらしかったです。
幸四郎さんも難役の由良之助をきっちりと演じていました。大勢の女中、幇間の
動きの中に、気を抜いた人がいたのは気になりました。昨日書き忘れましたが、
落人の花四天は全員大変気合いが入っていて良かったです。おなじ大勢で出ていても
出演者の真剣さ、役になっているかどうかが気になるものです。
面白かったのは見立てで回転寿司が登場したこと。お軽の簪が落ちるのは、本人が
手元で簪に付いた紐をひっぱている事が分かったこと。6段目で勘平が菊五郎格子
の継ぎ当てをしていたこと、・・・・などでしょうか。なかなか発見のあった忠臣蔵
でした。
11段目は取り立てて言うこともなし。勘九郎さんが両国橋の最後の最後で加わった
のを発見したくらいでしょうか!?来年は大河ドラマで忠臣蔵だし、舟橋聖一さんの
本も文庫で出始めたし、またしばらく忠臣蔵がブームになるのでしょうね。でも
その中でも、歌舞伎の仮名手本忠臣蔵が一番良くできていますよ。もう、次の通しが
待ち遠しい気持ちです。

1998.3.29
23日の月曜日、歌舞伎座昼の部を観てきました。前回は3階席でしたが、今回は
1階の最前列。前から感じていたのですが、観る場所によっても、感じ方は微妙に
変わるようです。つまり、遠くだと、型や体全体の表現を観るようになり、近くだと
顔の表情や、思い入れなど心理描写が気になります。特に前の方にいますと、呼吸も
聞こえるほどで、遠くでは聞こえない捨てセリフも良く聞こえます。どちらが良い
悪いの問題ではないのですが・・・。
今回も気になったのは、大序の人形振り。頭を深く下げていないので、演技が出来ない
ことが分かったのですが、やっぱり工夫して欲しかった・・・。後は前回とほとんど
変わらぬ出来で、さすが忠臣蔵と感心しました。今回気づいた点を並べておくと、
勘九郎さんが梅幸さんに雰囲気が似ていた事。特に松の廊下の意地悪を言われる所の
表情は何故かそっくり。また、師直に斬りつけた後、抱き留められて刀を投げる所は
仕掛けなし。あそこも床柱に刀を突き刺して欲しかった。
幸右衛門さんが遠くで見るより、軽い味を出していました。橋之助さん、相変わらず
いい味。富十郎さんも、好色さと意地悪さが強くなっていました。玉三郎さんは
綺麗綺麗。問題は幸四郎さんの型。ようやく間に合って、畳の上にのって肩を抱く。
なんだかヘン。関西に残る型だそうですが、なぜこの型を採用したのか不明だ。
勘太郎くん、髪の毛まで白粉を塗っていたよ!?辰之助くんはなかなか筋肉の付き方
が良いようだ。時蔵さんも相変わらず素敵。だんだんとりとめがなくなって来ました。
25日に観た夜の部の感想は、明日の夜書きます。

1998.3.29
18日の水曜日、国立劇場に出かけました。遅くなりましたが、感想です。
『逆櫓』・・・團十郎さんと又五郎さんのがっぷり四つに組んだお芝居で、なかなか
充実しておりました。特に團十郎さんは花道の出から、大きな風格を出して素敵。
梶原に会った時の世話にくだけた話しぶりも、手慣れたもので、「権四郎、頭が高い」
から時代になる所も、文句なしの大きさです。最後の大立ち回りも体を生かした
動きが舞台に映えました。又五郎さんは、舞台に出ずっぱりの大変な役でしたが、
声の張りも良く、科白につかえる所もなく、手慣れた感じで演じていました。特に
お筆が登場してから、孫を思う心情が良く表現されていて、喜びから驚き、悲しみ
そして、怒り、とめまぐるしく変化する心の動きが良く分かりました。あとは籐十郎
さんが、迫力あるお筆を見せてくれました。
『弁天小僧』・・・う〜ん、これを書きたくなかったから、ぐずぐず今日まで延ばし
てしまったのですが、はっきり言って、最低。去年の髪結新三にもがっかりしたの
ですが、どうも国立の三月は値段は安いのですが、相性は良くないようです。
新之助くんの弁天小僧、言い切ってしまうと、ニンでないの一言です。團十郎さんが
弁天小僧を演じたら可笑しいように、新之助くんのニンではないようです、少なく
とも今は・・・。だから、見あらわされてからの動き、演技はがらっと良くなるの
です。本人もしんどかったのではないかと推量します。問題はその上に男寅くん。
1から修行し直しが必要です。科白、演技、思い入れ、全く歌舞伎になっていません。
もっともっと勉強が必要です。鶴蔵さんは番頭として、とぼけた味を出していたのと
「ヤアヤアヤア」を意識して(この意識がちょっと気になりましたが)、ニュアンスを
変えていたのが、良かったです。勢揃いの場はちょっと安っぽい感じ。中堅がもっと
力を出さないと、歌舞伎の将来が不安になります。
因みに、NHKが来て録画していましたので、その内放送されるかも知れません。

1998.3.16
自由業の身としては、しんどいような嬉しいような、確定申告の準備ですっかり
更新が止まっていました。最終日の今日やっと提出しましたので、少しずつ
書いていきます。
まず、先週の月曜日9日に談志さんのひとり会を聞いてきました。実はこの日に
歌舞伎座夜の部を観劇するつもりで、切符を取っていたのですが、談志さんの
会があることを忘れていて、歌舞伎座は妻が出かけて行きました。気になったのは
談志さん、のどの調子が悪く、かなり嗄れ声だったことです。ガンの手術の後でも
あり、今月末に組織を取って検査するそうです。大丈夫かな・・・?

ここから、歌舞伎の話です。休んでいるうちにいろいろ記事になっていました。
まず猿之助さん。軽井沢の新しい稽古場が完成し、12日にお披露目があった
そうです。広さ70坪、カラマツ材を使い、内部は大劇場の舞台と同じ大きさに
なっているそうです。4・5月新橋演舞場で行われる、『オグリ』の稽古も
ここで行われています。周囲にないもないので、セリフ覚えがいい、と語って
います。また、来年4月には新作スーパー歌舞伎『三国志』が上演されるそうです。

次は鴈治郎さん。『第14回近松座歌舞伎』が5月31日から、全国公演される
ことが9日、発表されました。今回は『けいせい壬生大念仏』が296年振りに
復活されるそうで、すごく楽しみです。出演は、鴈治郎さんのほかに扇雀さん、
秀太郎さん、染五郎さんなど。東京の国立劇場は6月25日初日だそうです。

最後は籐十郎さん。『屋島篝火歌舞伎』の制作発表が6日に行われました。
今年は8月7〜8日。四国民家博物館で。演目は菊池寛原作の『袈裟の恋塚』
『籐十郎の恋』
。「去年は、花道に立った瞬間、大きな虫が私の足の裾に入って、
肝を冷やした。」と日刊スポーツにあります。野外ならではのエピソードですね。

1998.3.05
歌舞伎座で、四月の中村会のちらしを貰いましたので、書いておきます。
昼の部
  『矢の根』   橋之助・・・曾我五郎
 
  『本朝廿四孝』 松江 ・・・八重垣姫
    (十種香) 時蔵 ・・・濡衣
          梅玉 ・・・勝頼

  『須磨の写絵』 芝翫 ・・・松風
          福助 ・・・村雨
          梅玉 ・・・在原行平
          吉右衛門・・漁師此兵衛

  『西郷と豚姫』 吉右衛門・・西郷
          勘九郎・・・仲居お玉

夜の部
  『一条大蔵譚』 吉右衛門・・一条大蔵卿
    (奥庭)  芝翫 ・・・常磐御前

  『釣女』    梅玉 ・・・太郎冠者
          吉右衛門・・醜女

  『瞼の母』   勘九郎・・・番場の忠太郎
          宗十郎・・・水熊のおはま

例年よりは、ちょっと期待が出来そうな演目が並んでいます。三人の人間国宝が欠けて
いるのは寂しいですが、私は、吉右衛門さんの釣女と松江さんの八重垣姫に注目です。
後は勘九郎さんの忠太郎かな。

1998.3.05
昨日、歌舞伎座昼の部を観てきました。『仮名手本忠臣蔵』ということで、勝手に興奮
して、昼夜2回分の切符を取ってしまい、まずはその第1弾です。
まだ3日目ということで、一階席二階席に多少の空席が目立ちました。また、ロビーで
勘九郎さんの奥さんや橋之助さんの奥さん=三田寛子さんを見ました。
舞台は、さすが忠臣蔵、全員科白は入っており(歌舞伎役者なら、忠臣蔵は最初から
最後まで、完全に科白を覚えているもの、という記事を読んだ事があります)、熱の
入った演技を見せてくれました。
大序・・・菊之助くんが初々しい直義。富十郎さんの師直は本来の憎々しさがちょっと
欠けているように見えました。キャラクターの問題なのかなぁ?橋之助さんが古典狂言
らしい、古風な顔の作りとその動きで、良い雰囲気を出していました。玉三郎さんは、
先月の揚巻と違って清楚な人妻役。勘九郎さんも卵色の大紋がすっきりと似合い、なか
なかの判官でした。気になったのは、幕開けの人形振りが揃って中途半端だった事。
床の語りで人形に息が吹き込まれて行く訳ですから、その過程を的確に表現して欲し
かったです。良かったのは富十郎さんだけ。あと、師直が顔世を口説く時、単に肩を
抱くそぶりだけでしたが、以前の舞台の写真などを見ると、懐に手を入れたりして、
なかなか官能的な場面になっています。玉三郎さんもあれでは演技しようがないの
では・・・??
三段目・・・なんで二段目は出ないんだろう。一度生で観たいのに・・・。
門前進物の場で、鷺坂伴内のおかし味を出し、松の廊下の伏線となるのですが、さすが
に幸右衛門さんでは軽味に乏しい。松の廊下はまずは若狭之助と師直の対決。橋之助
さんが迫力ある怒りの表現を見せてくれます。そして塩谷判官へのいじめになるのです
が、緊迫した雰囲気が充分伝わってきました。勘九郎さんも、梅幸さんが言い残して
いるように、上品な判官となっており、結構でした。刃傷から抱き留められ、刀を
投げつける所は、なかなか巧くいかないようです。
四段目・・・ここでびっくりしたのが、力弥役の勘太郎くんの素晴らしさ。「いまだ
参上・・・」ぐらいなのだが、声といい、父を思う気持ちといい、それでいて、判官
の色小姓ではなかったかと、感じさせるような女性的な雰囲気、個人的には最高だと
思います。上使役の左團次さんと團蔵さん。ん〜ん、難しい所ですが、團蔵さん、
ちょっと力み過ぎなのでは・・・?左團次さんは立派でした。勘九郎さん、切腹して
突っ伏す所、腰を浮かして、ちょっと楽したのでは?芸談では、正座したままで前に
突っ伏しているのは大変な苦労だそうです。幸四郎さんの由良之助、最初は昨年観た
『元禄忠臣蔵』の内蔵助をイメージしました
が、話が進む内に由良之助に戻って
行きました。ただこれも印象ですが、ちょっと幸四郎さんが小さく感じました。
落人・・・時蔵さんと菊五郎さんのお軽勘平。なかなか綺麗な舞台でした。正月の浅草
でも、三之助コンビを観た
のですが、う〜ん、やはり年輪にはまだ勝てないかな・・・。
辰之助くんの伴内は、あまり変わりなし。動きに現代の匂いがどうしても感じられます。
またまたいっぱい書いてしまいましたが、若手中心とはいえ、なかなか充実した舞台が
展開しています。夜の部、二度目の観劇が楽しみです。

江戸ぐるめ 瓦版

1998.2.27
今日『演劇界』3月号を購入しましたが、いろいろ気になる予定が掲載されていました
ので、書いていきます。
宮島歌舞伎(厳島神社) 中村吉右衛門奉納公演
   日時 ・・・98年5月7日(木)〜9日(土)午後6時開場
   演目 ・・・汐汲  福助
        ・昇龍哀別瀬戸内--藤戸  吉右衛門、宗十郎、歌昇 ほか

藤戸は吉右衛門さん自らが構成を手掛けた新作長唄舞踊劇だそうで、吉右衛門さんは
源平の合戦で息子を亡くした老母役を演じるようです。入場料は2万円。世界遺産の
舞台でどのような幽玄の世界が生み出されるのか興味があります。

関西歌舞伎中之芝居・・・『狐静化粧鏡』
   日時 ・・・98年8月1日(土)〜3日(月)
   場所 ・・・大阪中座
   入場料・・・1万円〜6千円

昨年第一回を開き大阪舞台芸術賞を獲得した中之芝居、今年の演目は明治14年の
初演以来上演が途絶えている『狐静』だそうです。狐忠信の後日談だそうで、梗概を
読む限り、大変面白そうです。関西まで遠征する時間はなさそうですが、なんとか
見たい公演の一つですね。

1998.2.27
いやはやお恥ずかしい。わたしは千秋楽のつもりでしたが、追加公演があって本当は
昨日26日が歌舞伎座の最終日でした。今日の日刊スポーツに最後の様子が写真入りで
掲載されていましたが、仁左衛門さんは「途中風邪をひいたが、なんとか千秋楽を迎え
た。咳が出て大変だったが、ひどくならずに直った。」と語り、「(仁左衛門と呼ばれ
て)一瞬父のことかと感じるが、今は自分の名前として馴染みつつある。」と笑顔を
見せていたそうです。3月は舞台はありませんが、挨拶回りでまだまだ忙しそう。
体にはくれぐれも注意して欲しいものです。

1998.2.25
今日千秋楽の歌舞伎座夜の部を観て来ました。2ヶ月にわたった仁左衛門襲名披露も、
東京ではこれが最後と言う訳で、大いに盛り上がっていました。終幕後の仁左衛門さんと
孝太郎さんの奥様のほっとした顔が印象的でした。
『吃又』・・・昨年見た時にはさほど感じませんでしたが、又平が姫君救出を願い出て
から、拒否されてその死を決意し、石抜けの奇跡が起こるまで実に感動的な印象が残り
ました。これが芸の力なのか、富十郎さんと鴈治郎さん二人の演技は最高です。又平の
心の動きがしっかりと伝わり、さすが昨年フランスで大好評を博した訳が分かりました。
芦燕さんはそれなりの貫禄を出していましたが、町方の役の方がニンのようですね。
(修理之助と雅楽之助を最後の最後で言い間違えた!!)歌江さんも余りに暗い印象で
損をしています。八十助さんはひたすら格好良く、孝太郎さんも男役を無理なくこなして
いました。
『口上』・・・2ヶ月続きの口上、連続して出られている方は、50回も同じ事を言うの
はかなりしんどいでしょうね。三津五郎さんが5歳の時、揚幕から出ないで、13代目の
仁左衛門さんが舞台で困った話をして、「あの時は御免なさい」と謝ったのは面白かった
です。また、昨日まで左の手が動かず休演していた團十郎さんが今日復帰し、「お体に
気をつけて・・・、私から言えたものではないが」と語っており、元気そうでなにより
でした。後は田之助さんが「待って待って松島屋、これは先月の勘九郎くんの言葉」、
玉三郎さんが「仁左衛門になっても私を見捨てないで・・・」、など随所にリラックス
した言葉が飛び出し、先月同様なかなか楽しい口上になっていました。
『助六曲輪初花桜』・・・筋書きの上演記録を見てみますと、孝夫さんと玉三郎さんが
助六・揚巻で初共演したのが昭和58年3月、続いてが平成3年の3月、今回で3回目
なんですね。まあ、助六は團十郎さんの専売特許みたいなもので、なかなか他の家の
役者さんが演じる機会は少ないのでしょうが・・・。仁左衛門さんの助六、さすがに
いい男でキリリとした印象でした。ただ團十郎さんと比べると、手足の細さが繊細な
悪く言えば貧弱な印象を与える事も事実です。それと生真面目な性格が出て、祝祭的な
遊びの色合いが薄く感じました。とはいえ、2時間にわたる大舞台、しかも場面転換
一つないというしんどい舞台を明るく華やかにしたのは仁左衛門さんと玉三郎さんの
生来の華です。今回特に感心したのは玉三郎さん、悪態の初音のなんと小気味いい事
か、豪華な衣装に伊達兵庫の鬘が似合うのは今ではこの人しかいませんね。あとは
福助さんぐらいでしょうか?時蔵さんも頑張っていましたが、ちょっと霞んでしまい
ますね。白玉はカットされた助六の母とのやりとりがないとちょっとぼけた役どころ
になってしまいます。お楽しみの股くぐりは田舎侍が團蔵さんに亀蔵さん。通人が
籐十郎さん。これがドラえもんのポケットよろしく、まあいろいろな小道具を取り
出して、客席を沸かせました。シャネルの香水、ワカモト(菊五郎さんの妻と娘が
宣伝)、掃除機、ガスマスク。いや〜大変なものでした。出来れば言葉で笑わして
欲しかったけど・・・。富十郎さんの意休は貫禄もあり、ちょっと憎らしくもあり
手堅い演技でした。時間と体力の関係でなかなか見られませんが、水入りも見たい
ものです。
久々に長々と書きましたが、満足満足大満足の一日でした。

1998.2.22
昨日21日に新橋演舞場で『浅草パラダイス』を観てきました。なにしろ会場はびっしり
補助席の出るほどの賑わい。大変な人気で、喫茶店でお茶を飲んでいたら、勘九郎夫人や
西村雅彦、ダウンタウンの浜田などの姿を見ました。そしてその後の舞台では会場に来て
いるタレントさんの名前を科白に入れ込んだサービスがありました。う〜ん、小林幸子は
気づかなかった!?
昨年の『浅草慕情』と違うところは、寺島しのぶさんに代わって吉田日出子さんになった
ことで、しま子の運命が大きく変わってしまったこと。水谷八重子さんが演じた歌手の役
が、八重子さんと共に消えていたこと。多少の配役の変更はありましたが、勘九郎さん、
藤山直美さん、柄本明さんのトリオは健在。でんでんが異色のキャラクターで笑いを
取っていました。まあ、昨年と同様、おおいに楽しめたのですが、一つだけ気になった
のは、しま子が突然浅草を離れる時、何故かちょっと足りないキャラクターが突然難しい
理屈を並べる所です。全く別人の様です。最後は遊郭に売られてしまい、また元の
キャラクターに戻る事を考えると、あのシーンはあまりに無理があります。また、これは
好みなのでしょうが、しま子が鄙びた温泉の女郎に身を落としてしまう流れは、昨年の
売れっ子モデルに出世する事と比べると暗すぎますね。ちょっとやりきれなさが残ります
が、これも失敗では・・・?昨年気になった、昭和初期の匂い、気分は初めからありませ
んでした。逆にそういう物と思って観ていたので気にはなりませんでした。
いずれにしても、このコンビ、なかなか得難い物があり、是非これからも続けて行って
欲しいものです。

1998.2.18
今日の春秋会で、『笑三郎の会』のチラシを貰いましたので、書いておきます。
第5回となる今年は、8月9日(日)東京霞ヶ関のイイノホールで行われます。
昼の部が12時から、夜の部が5時からです。演目は『島の千歳』『しゃべり山姥』
『京鹿子娘道成寺』。入場料は9000円。5月10日から前売りです。ますます
演技に磨きをかける笑三郎さんの道成寺は観てみたいですね。

1998.2.18
実は、先週の月曜日に歌舞伎座昼の部を観てきました。遅くなりましたが、感想を書いて
おきます。
『娘七種』は寝坊して見損なう(15分の演目でした!!)。『女暫』・・・まあ、なんと
言っても菊五郎さんの独壇場。中味はたわいのない芝居です。敵役で並んだ團蔵さん、
松助さん、正之助さん、十蔵さんが(確か11月の芝浜でもこの中の3人が酔っぱらいを
演じていました)、何故かおかしかったです。菊五郎さんも「ちょームカツク」などと
捨て科白を言って受けていました。そして、最後に團十郎さんがもっと儲け役で登場。
この方、こうした姿を見ると、本当にいい男ですね。
『熊谷陣屋』・・・1週間以上たった今、思い返してみても、『吉田屋』や『寺子屋』の
方が印象に強く残っています。何故でしょう・・・?その時の印象もちょっと仁左衛門
さんの意欲が空回りしているように感じられtのですが・・・。一番印象強いのは
羽左右衛門さんなのです。仕方話の所がノリ損なった感じがあり、それが後々響いたの
かもしれません。勿論、仁左衛門さんは大変な熱演ですし、玉三郎さん、雀右衛門さん
も子を思う母をきちんと演じていました。文句があるわけではありません。
『吉野山』・・・どうもこの日は出だして遅刻したせいか、私のノリが悪かったようです。
これも観ている時から、一昨年12月の芝翫さん・猿之助さんの方が分かりやすかった、
と思っていました。観劇は役者さんの体調や出来不出来もありますが、自分の方の問題も
当然影響してきますね。素直に良かったと言えない気分だったようです。

1998.2.18
いやはや、2月ももう中盤を過ぎたというのに、やっと瓦版の更新、ちょっとさぼり癖が
ついてしまいました。
早速ですが、今日猿之助さんの春秋会を観て来ました。『摂州合邦辻』の通しと『茨木』。
『合邦』の通しは初めてでしたが、少しはストーリーが分かりやすくなりました。でも
玉手の発想の突拍子のなさ(あるいは独りよがりの行動)は解消されませんね。それは
さておき、猿之助さん、初演とは思えない玉手前の出来映えでした。庵室の角口に佇む
姿がまず素敵、そして偽りの狂乱で浅香姫をいたぶる所の迫力、傷ついてからの長々と
した述懐の情感と、どれもさすがでした。ただ、玉手の語りに合わせるように周りが
オイオイ泣き叫ぶ声があまり大きく、ちょっと気になりました。
その前の初見の部分はただひたすら面白く、秋から始まって冬、春と季節が移る姿が
歌舞伎らしく感じられました。その他に、特に印象に残ったのは笑三郎さん。猿之助さん
の玉手と雪の中、女同士の激しい立ち回りをするのですが、笑三郎さんの方が女らしく
見え、さすがに猿之助さんも激しい動きになると、真女形には勝てないな、と感心しま
した。
『茨木』は1時間半近い大作で、途中はうつろな記憶しか有りませんので感想は差し控え
ます。最後の立ち回りでの段四郎さんの迫力が印象的でした。久々の猿之助さんの舞台、
それなりに堪能しましたが、大満足とまではいきませんでした。多分演目の責任でしょう。
2〜3階席も半分近く空いており、ちょっと寂しく感じました。

江戸ぐるめ 瓦版

1998.1.28
もうご存じだと思いますが、来年のNHKの大河ドラマは勘九郎さんの内蔵助で忠臣蔵が
決まっていますね。1年おきに歌舞伎役者を起用するNHKの定見のなさは問題で、逆に
それだけ魅力のある役者さんが減ってきているのでしょうか?1年間勘九郎さんの舞台が
観られないことは残念ですが、今年9月にはコクーンでの『コクーン歌舞伎』が公演され
る予定です。まだ演目が決まらず、結構焦っているようですが、また素晴らしい舞台を
みせてくれると信じています。

1998.1.28
歌舞伎座に出かける前日の土曜日、コクーンの『ロミオとジュリエット』を観てきまし
た。和泉流狂言家元の和泉元彌の新劇初出演と、いま注目の女優、羽野晶紀との共演が
話題でしたが、わたしの高校の後輩の山本健翔くんがジュリエットの父キャピュレット
役で出演していたこともあって出かけました。フィリピンの演出家ノノン・パディーリャ
の演出も話題でした。なにしろ今月はこの他に俳優座と蜷川演出の『ロメジュリ』が
公演されており、なにかと注目を集めています。内容は・・・、う〜〜ん、なんだか
感性を泥だらけの手で掻きむしられたような印象、とでも言いましょうか。観ている時は
所々なんじゃこれは、という箇所があったのですが、数日経ってしまうと、それなりの
楽しさ、若者の恋の切なさなどが甦って来ます。
歌舞伎と比較するのは論外なのでしょうが、歌舞伎を見続けている者の目から見ると
まず科白が早すぎる。言葉が上滑りして、せっかくの名科白も台無し。やたら怒鳴ったり
跳ね飛んだり、感情表現が直截過ぎる。ハラとか思い入れとか絶無の世界。本当に観てい
る者の心に染み通る事が可能か?全体的に痩せている役者さんが多く、舞台が貧弱に見え
てしまう。歌舞伎の衣装はその点良く計算されていると思います。これらは、新劇を批判
したものではなく、単純に歌舞伎との比較の上で感じた事で、要は劇場空間に身を置いて
楽しいひとときを過ごせたかどうか、ということが肝心だと思います。

1998.1.28
報告が遅れましたが、25日の日曜日に歌舞伎座昼の部を観てきました。襲名口上が
出るとあって、補助席が出る満員の盛況でした。ただし、舞台の方はあと1日で千秋楽
という、安堵感というかホッとした空気が流れていました。
『壽曾我対面』・・・まあ、祝祭的な要素の強い物なのでしょうが、いわゆる御霊=五郎
という、力強さに欠けているように思えました。朝比奈が女の役になっていて、秀太郎
さんが演じていたのが、興味深かったです。また、梅玉さんは襲名口上の後、国立に
移動して富樫を演じているのですね。かなりの重労働だ。
『娘道成寺』・・・菊五郎さんの花子、メリハリが利き、キビキビとした動きの中に
女性らしい仕草を混ぜて、なかなか素敵でした。ちょっと年増に見えることも多かった
のですが、この人の芸域の広さはやはり驚嘆させられます。
『口上』・・・話題になった左團次さんのすけべ発言は無くなっていました。勘九郎さん
の「待って待って松島屋」はありました。田之助さんが言葉に詰まり、誤魔化したので
頭を下げている勘九郎さんや左團次さん、菊五郎さんなどが、クスクス笑い、なにやら
ブツブツ会話していたのが可笑しかったです。
『寺子屋』・・・仁左衛門さんと吉右衛門さんという、なんとも贅沢な組み合わせ。
そこに涎くりで勘九郎さん、その父親に又五郎さんとまあ嬉しい限りです。
仁左衛門さんは吉田屋の時とは、全然違う声遣いで大変だったと思います。しかし、首
実験のあたりから、緊張感がグッッと高まり、最高の舞台となりました。特に受けに
回る吉右衛門さんと菊五郎さんが、抑制された中に、夫婦の愛情、緊張感などを的確に
表現していて、気持ちが良かったです。また、「にっこり笑って」と聞いて、松王が笑う
のですが、子供を持ってみると、その笑うという行為が良く理解できました。つまり
その時松王は小さい頃の(あるいは最近の)小太郎の笑い顔を思い出したのでしょう。
親にとって子供の笑い顔ほど嬉しく楽しいものはありません。首を切られる時とはいえ、
笑い顔を思い出してつい松王も笑いだし、そして次第にその子の死んだ事を思って泣き
声になる・・・、その微妙な心理を仁左衛門さんは最高の演技で描いていました。満足
満足。

1998.1.23
21日に国立劇場の歌舞伎公演を観て来ました。想像以上の賑わいで、補助席が出る
ほどの人気振りでした。NHKのカメラも入って撮影していました。
個人的には若い頃耽読した三島由紀夫の『帯取池』が25年振りに上演されることが
注目でしたが、想像以上に歌舞伎に仕上がっており、満足しました。活字の上からは
分からない、役者の科白回しが面白く、また時代がかった衣装・セットも良かったです。
特にがんどう返しと呼ばれるセット替えの動きには、三島らしい稚気を感じました。
後半の展開が少々性急すぎる(原作の問題です)ように思われましたが、幸四郎さん
始め、主役4人の息も合い、大詰めでは次の演目の予告まで行って、手拭いを配るなど
趣向を凝らしていたのも楽しかったです。
『道行雪故郷』・・・新口村を清元に書き直した舞踊劇です。竹本の語りも良いのですが
清元の哀愁を帯びた唄も素晴らしいものでした。染五郎さん、時蔵さんの姿も美しく、
うっとりする夢のような舞台です。あの東京が大雪の日にこれを観たら、もっと面白
かったかもしれません。
『勧進帳』・・・先日の浅草と比較しながら観る結果になりましたが、意外に浅草の
三之助も頑張っていた、ということを改めて認識しました。というのも、富樫の出や、
義経の第一声などは浅草の方が良く出来ていたように思えたからです。勿論、全体的な
完成度はこちらの方が数段上なのでしょうが、やはり三之助には花がありますね。
幸四郎さんはさすが、重厚にそして洒脱に演じていました。一生懸命、がむしゃらに
演じていた辰之助くんとは歳月の差が歴然。特に義経と見破られてからの緊張感は
迫力充分、場内は固唾を呑むという表現がぴったりの異様な雰囲気でした。

1998.1.14
本日、浅草の花形歌舞伎を、『落人』から連続で観て来ました。想像以上に、充実した
内容で、満足しました。特に三之助の活躍は、嬉しい限りです。
『落人』・・・新之助くんの勘平と菊之助くんのおかる。美しいだけでなく、少し淫靡
な恋人の雰囲気も前半は漂っているように見えました。設定の年齢とさほど変わらぬ
二人が演じる事によって、彼らの悲劇がより分かりやすくなった様です。辰之助くんの
鷺坂伴内も軽妙に演じていましたが、彼は手足が長いんですね。伴内のイメージとは
その点が異なっていました。3月の歌舞伎座でも伴内を演じる辰之助くん。楽しみです。
『舌出し三番叟』・・・この善し悪しは全く分かりません。ただ、芝雀さんの手の動き
が美しかったことと、長唄・清元の共演が面白かったことが印象に残りました。
『河内山』・・・八十助さんがちょっと粹な河内山を演じています。前半の質見世では
河内山の嫌らしさ、図々しさが薄いように感じましたが、松江邸に乗り込んでからは
なかなかのワル振りです。特に大善に見破られてからの変わり様はさすがです。欲を
いえばどことない愛嬌が感じられれば良かったと思います。なかなか良かったのは松助
さん。これまで軽いひょうきんな役が多かったのですが、家老役を重厚な演技と発声で
好演です。彦三郎さんの松江侯は女に狂ったバカ殿のイメージが薄く、もう少し狂気の
体が必要に思われました。亀蔵さんの北村大善はちょっと期待外れ。頬を膨らます演技
が多すぎます。新之助くん、菊之助くんはなかなか。特に新之助くんは科白回しといい
動きといい、最近はなかなか充実しているように感じています。
『勧進帳』・・・なんと言っても今年最大の目玉、三之助の初顔合わせの勧進帳、これ
を観たくてやってきたと言っても良い位です。思っていた以上に素敵でした。ちょっと
弁慶のメイキャップが変と思いましたが、進むうちに気にならなくなりました。辰之助
くんの奮闘振りは涙が出そうになるくらい素晴らしく、富樫役の新之助くんも中盤から
気合いが乗ってきて、迫力ある掛け合いが見られました。義経もほどほどに上品に演じ
ており、声の美しさと手の動きの綺麗さが印象的でした。ちょっと気になった点は、
勧進帳を読む所で手の位置が高く?(舞台と客席の高さの問題かもしれませんが)、
顔が隠れてしまっていたこと、富樫がその勧進帳を盗み見ようとするタイミングがいま
ひとつよろしくなく、気づいた弁慶とのにらみ合いの間が悪かったこと。あと微妙な
ことですが、それぞれの科白の間、多分一秒も違わないのでしょうが、そのほんのコン
マ五秒が気になりました。
何しろ、これから半世紀は演じるであろう3人の勧進帳、その初めての舞台です。中日
以降はまだ空きがあるようですので、是非是非ご覧になって下さい。

1998.1.13
今日の日刊スポーツに、三之助が4月の琴平・金丸座に出演する記事が出ていました。
今年で14回目を迎える「四国こんぴら歌舞伎」は、4月8〜25日に開催され、7日
にはお練りも行われます。三之助が共演するのは、『源太勘当』『三人吉三』『闇梅百
物語』だそうです。辰之助と菊之助は金丸座は初めてだそうで、楽しみにしているよう
です。
う〜ん、わたしも行きたい行きたいとは思いながら、なかなかチャンスがなく、金丸座
には出かけたことはないのですが、今回はなんとか出かけたいものですね・・・。

1998.1.12
仁左衛門さん関係のTV番組、今後の放映予定です。
1月15日(木)TBSニュース23(午後11時〜11時55分)の中で15分
程度の特集が予定されています。
     1月19日(月)日本テレビのスーパーテレビ(午後9時〜9時54分)で、独占密着
と題して、今世紀最後の大襲名の模様を放映する予定です。

1998.1.12
歌舞伎座3月のチラシが出ていましたので、お知らせします。
ご存じの方も多いと思いますが、なんと『忠臣蔵』の通しです。嬉しいですね。
3年前の松竹百年の記念以来の通しです。
大序、三〜七段目、十一段目討ち入りまで、間に道行が入ります。これも3年前と
同じですね。
配役は由良之助が通して幸四郎さん。塩治判官が勘九郎さん。勘九郎さんは七段目で
寺岡平右衛門も演じます。顔世御前が玉三郎さん。桃井若狭之助が橋之助さん。
橋之助さんは五段目で定九郎も演じます。斧九太夫は芦燕さん。力弥は四段目は
勘太郎くん。七段目は七之助くんの兄弟。勘平は菊五郎さん。鷺坂伴内は辰之助
さん。道行のお軽は時蔵さん。五〜六段目のお軽は福助さん。七段目のお軽は玉三郎
さんと素敵な配慮です。あと、富十郎さんや宗十郎さん、左團次さんが脇を固めます。
若手を多めに配し、重鎮たちを脇に回して、新しい忠臣蔵がどう演じられるのか、
わたしは今からワクワクドキドキです。

あっ、これは書き忘れていましたが、昨年好評だった、勘九郎さんと藤山直美さんの
顔合わせの『浅草慕情』がタイトルを『浅草パラダイス』と替え、二月の演舞場に
でます。もう前売りも始まっていますので、是非ご覧下さい。去年は滅茶苦茶に
面白かったです。

1998.1.12
遅ればせながら、あけましておめでとうございます
今日、歌舞伎座夜の部を、久々に1階最前列で観て来ました。良かったです。
襲名披露の華やかさと同時に、皆さん、しっかり気合いが入って、充実した舞台が
展開されていました。
『石切梶原』・・・なんと言っても富十郎さんが最高。格調高く、それでいて人情
味溢れる梶原を、見事に表現しています。又五郎さん、松江さんの親子も、情愛たっ
ぷり。我當さん、歌昇さんの敵役も充実しています。團蔵さんが酒尽くしでおいしい
ところを持って行き、東蔵さんもすっきりした奴を演じていました。
『吉田屋』・・・仁左衛門さんの出から、何ともいえぬ空気が漂い、最初の声の
美しかったこと!あとはまあ独壇場。羽左衛門さんも芝翫さんも彩りになっていまし
た。ただ雀右衛門さんは白粉ののりもよく、とても美しく存在感をたっぷり出して
いました。全体的には上方のはんなりした雰囲気にはいま一つでしたが、皆の気持ち
が綺麗に揃い、なかなか気持ちの良い舞台に仕上がっています。ただ、セット替えの
時、竹本の上のセットが裏返らず、裏で大道具さんが脚立を出して直しているのが
見え、その声も聞こえて気になりました。
『鏡獅子』・・・道成寺と並ぶ舞踊の大曲ですが、ちょっとまだポイントを掴み
かねています。特に前半の踊りが難解で善し悪しが分かりません。ただ、獅子頭を
手に取ってからの勘九郎さんは素敵でした。体の動きが柔らかく最高。そして
獅子になってからは気合い充分、全身から獅子の気が溢れ、大層な迫力でした。
勘太郎くんが立派に後見を務めており、じっと父親の姿を目で追っている姿が印象的
でした。
初春の歌舞伎座はいつも華やかなものですが、今年は例年に増して、華やいだ空気が
漂っており、こちらも真剣に舞台を凝視したので疲れました。前の方で観ますと、
役者さんの気や息つかいも聞こえ、なかなか良いものです。



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