sorry japanese only.
開設 1996年12月22日
更新 2001年04月27日


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人の迷惑かえりみず、親バカ丸出し。想たん、歌舞伎座デビュー!!



 今から百数十年昔、日本列島のほぼ中央、太平洋に面した 入り江沿いに、世界最大の都市が存在した。その都市の名は・・・
江戸


 多くの男たちと少数の女たちがその町に暮らしていた。 彼らが心をときめかしたスターたちは、歌舞伎役者と吉原の 花魁たちであった。そうした江戸に憧れ、べらんめえ口調で 歌舞伎の科白をしゃべる、江戸趣味の輩を、ある大学者は 江戸グルメと蔑んだ。そうした江戸趣味が、江戸時代の 健全な研究を阻害しているというのだ。
 てぇやんでぃ、べらぼうめ。江戸グルメ、オウオウ 結構じゃねぇか。
 ということで、江戸趣味、特に歌舞伎に焦点を当てた ホームページを開設することにしました。
 末永いご愛顧を、隅から隅までずっずいーと、  乞い願い奉ります。

      
歌舞伎科白集
平成歌舞伎評判記
私の歌舞伎ノート
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私のリンク集
私の家族

(最終更新日  2月18日)


(最終更新日  9月14日)


(最終更新日 2000年02月07日)


(最終更新日  2月24日)


(最終更新日  2月23日)


(最終更新日 1999年04月18日)



江戸ぐるめ瓦版
(私が関心を持つニュースなど、見つけ次第書いていきます。)

2001.0427
 いろいろあって8ヶ月ぶりの更新です。と言っても、個人的なお知らせ。他のホームページでも予告されていますが、4月30日(月)の午後3時半から1時間半、現在新橋演舞場で公演中のスーパー歌舞伎『新・三国志2』の制作過程に密着した、ドキュメンタリーがテレビ朝日で放送になります(済みません、その他の地域は放送されるのか不明です)。
実はその番組の構成を私が担当しました。去年の8月から、折々に取材を続け、回したテープ200本余り、のべ100時間を超す取材内容と本舞台収録の中から、選りすぐりのエピソードを拾い上げています。スーパー歌舞伎ファンは元より、歌舞伎に少しでも関心のあるの方は是非ともご覧下さい。何しろ、最後は突貫工事で仕上げましたので、多少荒い部分もありますが、裏方さんの苦労、稽古中の役者さんの素顔、猿之助さんの知られざるエピソードなどが様々に披露されます。相当に面白いです。まずは取り急ぎ、お知らせまで。


2000.0823
 実は昨日22日(火)に歌舞伎座の第3部、『東海道四谷怪談』、そして今日23日(水)は新橋演舞場で『阿修羅城の瞳』と続けて鶴屋南北関連?の舞台を観てきました。『東海道四谷怪談』の感想は週末に延ばして、まずは初めて劇団☆新感線の舞台を観た感想を書いておきます。

 真っ先に思い浮かぶ言葉は、いや〜面白かった、ですね。「これぞ現代の歌舞伎」という染五郎さんの言葉につられて、チケットを購入したのですが、その意味するところはよく理解できました。それに加えて、斬られても斬られてもなかなか死なないなど劇画的で、最後の対決の場面などはロールプレイング。徐々に強くなる敵を倒してお城の上の方に昇っていき、最後の最後で敵の大ボスと対決する、これはドラクエであり、FFなのです。
 さらに魅力的なのは、富田靖子さんを始め、古田新太さん、江波杏子さん、平田満さん、加納幸和さんなど多彩な顔ぶれ。そして、スピーディな展開と舞台セットの効果的な使い方。小じゃれた音楽、殺陣の動き、伝統歌舞伎では一切見られないものです。客席も、無意味な拍手(最近の歌舞伎にはこれが多すぎます)もなく、ひたすら引き込まれるように、舞台に集中する。そして笑う時には大笑い。
 ストーリーも3時間、破綻もなく展開します。設定はまさに歌舞伎の題材に打ってつけの、江戸の町を徘徊する鬼とそれを取り締まる鬼御門。一時期流行った、角川ノベルの魔界モノにも通じていますね。そこに阿修羅復活、というストーリーを入れたことで、展開が複雑になり、面白さがエスカレートしていくのです。いや〜凄い凄い。はっきり言って感服仕りました、というところです。
 一応、歌舞伎好きとして気になった点を。まずはマイク・スピーカーの使用。個人的にこれだけは納得できません。嫌いです。役者は自分の肉体を使って表現すべき存在で、機械の音に変換された声は、本来の魅力を失います。そして、折角演舞場を使うのなら、廻り舞台を活用すべきだったのでは。また歌舞伎を意識しないのなら良いのですが、スッポンからの出は、幽霊・妖怪の類と決まっています。安易な多様が気になりました。そしていつも文句を言っているアンコール、あまり長いのも嫌みです。なにしろ打ち出しが夜の10時20分、歌舞伎座もビックリの時間でした。
 また「歌舞伎座に負けないように」とか「首が飛んでも動いてみせるは」など、事情を知る者にはなかなか面白いセリフもありました。何しろ噂は耳にしていましたが観る機会がなかった☆新感線の舞台、2列目という良い場所でたっぷりと味わえた事は、刺激的な出来事でした。それにしても、パンフレットが2800円とは!? うちわも写真もいらないから、せめて半額にして欲しい!!


2000.0823
 先週16日(水)に歌舞伎座の第1部 第2部と続けて観てきました。滅茶苦茶面白い第3部と比べると、ちょっと物足りない物を感じました。早速感想です。

 『操三番叟』・・・歌昇さんと信二郎さんのコンビ。この演目の面白さは多分人形振りにあるのでしょうが、歌昇さんはあまり人形らしくは見えませんでした。しかし、太っているように見えても、随分身は軽いんですね。後見に抱えられて飛び上がる所など、軽々と?こなしていました。

 『富樫』・・・初めて観る演目です。有名な『勧進帳』の後日談、という趣向です。富樫が八十助さん、その弟が橋之助さん、その妻が福助さんという布陣。まずは義経主従が近くにひそむという情報を聞いて、慌ただしい安宅の関。弟が兄の留守を預かる間、水争いの裁きを付ける。この間、何故弟が足を引きずっているのか、気にかかる。そして、妻との会話。元々は捨子の彼女を兄が好きになり、その後、都から戻った弟に譲る形になったこと、妊娠していることなどが分かる。その後、兄が戻って兄弟の会話。裸馬に乗っていて、落馬、足を怪我したことが分かる。そして二場目は勧進帳のすぐ後の話。義経を逃がした兄を難詰する弟。実はこのくだりがストーリー的には一番面白かったです。そして、後半は一家の崩壊へと続く訳ですが、序破急という言葉がピッタリの作りになっています。作者としては、様々な伏線を敷き、兄弟愛と家の存続を主張する弟と、もののふの名を意識する兄の対立などを、朗々とした科白劇に仕立て上げています。しかし、後で気づいたのですが、この日八十助さんは風邪気味だったのか声の張りが今ひとつ。抑えた調子で、劇場内に響き渡ると言う訳には行きませんでした。筋書に演出の富十郎さんが書かれているように、「歌舞伎独特のせりふ廻しでみせていくか」というポイントが今ひとつ明確に見えなかったのが残念です。

 『茶壺』・・・八十助さんの熊鷹太郎に勘九郎さんの胡麻六、東蔵さんの目代。 これも残念ながら、八十助さんの盗賊に愛嬌がなく、面白みが半減です。前回観た富十郎さんの熊鷹太郎は、その出から、大きな目をぎょろぎょろさせて、ワクワクさせる面白さがありました。これはニンの問題なのでしょうが、真似てワンテンポ遅れながら踊る、その部分は最高に上手かったので惜しいことでした。勘九郎さん、東蔵さんは無難。> 『愚図六』・・・水谷龍二さんの新作。いろいろ面白いシーンはあったのですが、全体としては?がつきます。一つの問題は人情噺とうたっているのですが、友情なのか、夫婦なのか親子なのか、ちょっと中途半端になってしまったことにあると思います。
 お話の前半はなかなか面白かったです。愚図六の登場、兄貴分(八十助さん)とのやりとり、そして顔中傷だらけの親分(吉弥さん)、愚図六の相撲の強さ、愚図六の女房(福助さん)と息子の登場、一つ一つのエピソードが楽しく、テンポも良く、最高。しかし、後半(9年後という設定)愚図六が小さな一家の親分に収まっているところからもう???、どうしても、無理を感じてしまいます。息子(七之助くん)の旅に出たい、というのもしっくりこないし、出入りと聞いて駆け出すのも、ピンときません。まだ良く分かりませんが、後半の展開を何とかすれば、もっともっと良くなると思われます。それにしても最期の○○○○、声だけでなく姿を見せた方が100倍良いのに・・・。

 『紅葉狩』・・・福助さん初演の更級姫だったのですが、中盤から睡魔でダウン。中村屋兄弟の踊りもおぼろな記憶しかありません。鬼女に変身してからの福助さんの迫力だけはしっかりと堪能しました。


2000.0805
 すっかり遅くなりましたが、九月の歌舞伎座の演目です。

九月大歌舞伎(五世中村歌右衛門六十年祭)

昼の部
鬼一法眼三略巻(菊畑)
 虎蔵   ・・・梅玉
 智恵内  ・・・橋之助
 皆鶴姫  ・・・福助
 笠原湛海 ・・・彦三郎
 鬼一法眼 ・・・羽左衛門

時今也桔梗旗揚
 武智光秀 ・・・吉右衛門
 妻皐月  ・・・宗十郎
 園生の局 ・・・東蔵
 四天王但馬守・・歌昇
 光秀妹桔梗・・・松江
 小田春永 ・・・富十郎
 
京鹿子娘道成寺(道行より鐘入りまで)
 白拍子花子・・・芝翫
 所化   ・・・勘九郎
 所化   ・・・歌昇
 所化   ・・・福助
 所化   ・・・橋之助
 所化   ・・・勘太郎
 所化   ・・・七之助
 所化   ・・・児太郎
 所化   ・・・国生
 所化   ・・・宗生
夜の部
妹背山婦女庭訓(三笠御殿の場)
 鱶七実は
 金輪五郎 ・・・吉右衛門
 烏帽子折求女・・梅玉
 橘姫   ・・・松江
 豆腐買おむら・・勘九郎
 お三輪  ・・・福助

菊晴勢若駒(きくびよりきおいのわかこま)
 児太郎、国生、宗生、福助、橋之助、
 七之助、勘九郎、芝翫

二人椀久
 椀屋久兵衛・・・富十郎
 松山太夫 ・・・雀右衛門

魚屋宗五郎
 魚屋宗五郎・・・勘九郎
 女房おはま・・・福助
 召使おなぎ・・・扇雀
 小奴三吉 ・・・獅童
 菊茶屋女房・・・吉之丞
 父太兵衛 ・・・鶴蔵
 浦戸十左衛門・・東蔵
 磯部主計之助・・富十郎



 いや〜、ついに橋之助さんの二人のお子さんが初舞台ですね。さらにいとこの優太くんも由緒ある児太郎の名前を継いでの(六代目になります)初舞台。目出度いですね。芝翫さん、一世一代の娘道成寺、この所化の顔ぶれの豪華なこと!!吉右衛門さんの光秀も楽しみですし、いまいち好きになれない『魚屋宗五郎』を勘九郎さんがどう料理してくれるのか、など興味は尽きません。楽しみな舞台になりそうですね。


2000.0805
 今月2日(水)に歌舞伎座の初日第3部 『東海道四谷怪談』を三階席で観てきました。詳しい感想は、後日もっと良い席で観た時に書きますが、滅茶苦茶面白かったです。さすが南北、かなりダイジェストしたものなのですが、様々な歌舞伎の要素がつまり、観ていても飽きません。『源氏物語』や『新三国志』で歌舞伎の魅力に目覚めた若い方々も是非この歌舞伎本来の面白さを楽しんで欲しいものです。三部制なのに、終演は10時と2回の休憩をはさんで4時間と、お値段的にもメチャお得です。
 前半は、初日と言うこともあってかお互いの呼吸を探り合う感じが出ていましたが、中盤のお岩さんのくだりになると、そこはもう勘九郎さんの独壇場。毒薬とも知らず、薬をくれた伊藤喜兵衛への感謝の言葉をくどくどと述べて哀れを誘い(これがあるから、後の恨みが生きてくるのですね)ます。しかし、遠い場所から観ているせいなのでしょうか、いわゆる怖い怖い印象はそれほどでもありませんでした。そして、隠亡堀の後、幕前に吉弥さん扮する案内役(勿論、江戸時代の扮装です)が出てきて、簡単な解説を加えます。三角屋敷が全面カットなので、話の流れを説明しないと、ちょっと理解できないからなのです。コクーン歌舞伎の『四谷怪談』に出演したときの話なども出ましたが、終わりの方で、古い人の話ではお岩さんがよく劇場に見に来る、と言って退場するのですが・・・、その後!!!これはご覧になってのお楽しみ。
 橋之助さんの伊右衛門、八十助さんの直助権兵衛、福助さんのお袖とお花、そしてしのぶさんはお梅役。若手中堅どころが揃って、嬉しい舞台になっています。


2000.0804
 ご存じの方も多いと思いますが、明日5日(土)の午後2時半から、NHK衛星第2放送で、今年3月に行われた『俳優祭』の放映があります。なんと言っても注目は『鯛多二九波濤泡』(タイタニックなみのうたかた)、予約の電話は1時間ほどで満席となり、裏から手を回しても今回に限っては潜り込めなかった今年の俳優祭。一体何が起きたのか、しっかりとVTRに撮って楽しみたいと思っています。
 また、これは歌舞伎とは関係がないのですが、来週同じ衛星第2では、野田秀樹特集を、午後の 『ティータイム芸能館』で放映します。観たくてもチケットが取れない、時間が合わなかった ものが並んでいます。これも要録画ですね・・・。



2000.0731
 またまた遅くなりましたが、7月の歌舞伎座の感想です。昼の部は12日、夜の部は18日に観て来ました。

『鎌髭』・・・歌舞伎十八番に入っていることは知っていましたが、 観るのは初めて。猿之助さんは演出に回り、右近さん、段四郎さんがしっかり古風な演目を演じていました。 ほとんどの役どころが何々実は・・・、と言うもので、背景になっている平将門の事件を知らないと 何が何だか、誰が何者なのか理解不能になります。まあストーリーは単純で、将門の息子(段四郎さん)が源氏の頭領(歌六さん)が 営む宿屋にやって来て、そこで働いていた将門討伐の将軍の息子(右近さん)と対決する、というものです。 前半は、いろいろな登場人物がこの宿にやってきて、なんだかよく分からないのですが、 題名の通り、鎌で髭を剃るふりをしながら、首を切り落とそうとする(実は不死身で刃が立たない)あたりから、俄然面白くなってきます。右近さん、段四郎さんの対決がなんとも古風な、そしておおらかな江戸歌舞伎の雰囲気を感じさせ、 興味深かったです。笑也さんは綺麗だったし、笑三郎さんは一瞬しか出番はなかったのですが、 なんとも不気味でしたし、亀治郎さんなどは、村の娘実は美女丸(このネーミング!!古き良き時代劇や時代小説を思い出させます)という役で、突然娘の姿で男の声を出し、客席は大喜び。花道の入りも、三国志を思い出せる凛々しさでした。

『黒塚』・・・猿之助さん一人登場の口上で、改めてその名跡が130年間、 一日も途切れることなく続いている凄さと(ここまで書いて、あれ?次の猿之助は誰になるのか、生前に譲らないと途切れるぞ!!?なんてことを思いました。まだ当分先の話になるのでしょうが・・・。)、7月の歌舞伎座を30年間背負ってきたパワーに感服。さて『黒塚』ですが、梅玉さんが阿闍梨に出演。高貴な雰囲気を醸し出すには打ってつけの役者さんです。猿弥さんと亀治郎さんが付き添いの坊主で段四郎さんが強力。 全体に適役の布陣で問題は少ないのでしょうが、今回は後半の薄の原を歩き踊る姿にそれほど感動しませんでした。自分の理解能力の問題なのですが、あまり前方で観たことも影響しているかも知れません。前回は3階席からでした。あとあえて言えば、この有名な演目を猿之助さん以外(先代を含めて)、演じていないことに ちょっと違和感を感じます。事情は分かりませんが、別の役者さんもチャレンジして欲しいものです。

『義経千本桜』・・・これも正直言うと、ちょっと飽きている演目です。 ただ、猿之助さんの場合は、化かされた悪僧たちが登場し、あの何と言えぬ音楽が大好きで、そこになると何だか浮き浮きしてきます。今回は静が芝翫さん。自ら鼓を叩いくというこれまでにない方法をとりました。これは筋書に載っていますが、六代目の下手な鼓なら打たない方がまし、という意見から陰で鼓の専門家が 打っていたようですが、今回の芝翫さんの決断は素晴らしいと思いました。上手い下手は分かりませんが、 歌舞伎の約束事とはいえ、重要なポイントを他人任せにするのは、いかがかと思っていました。六代目はあまりに偉大で、その演出になかなか異論は挟めないようですが、おかしいと思える部分はどんどん修正していくべきだと考えます。
 猿之助さんの忠信はもう安心して見ていられます。今回感心したのは、本物の忠信を演じている時、 細かな心の動きを丁寧に見せていたことです。あとは、あの様々なケレンの動き。その体力には感心させられます。宙乗り前の身代わりに亀治郎さんが出て、動きや身体の線が良く似ていることに驚きました。

『宇和島騒動』・・・初めて見ましたが、長いお話を無理矢理短くした、というようなよくある欠点はほとんど感じられず、親子の別れの情感、本水を使っての大スペクタクル、そして勧善懲悪と歌舞伎の様々な魅力を詰め込んだ内容でした。全体的な欠点をあえて探せば、悪人がお辰の方(笑三郎さん)と国家老大橋右膳(歌六さん)の二人いて、焦点がぼやけていること、この二人が(特にお辰の方)中盤に全く姿を見せず、悪の進行具合が一切不明なのが気になりました。また、善人の清兵衛(猿之助さん)が簡単に殺されてしまうのも(眼病というのも唐突)、不満が残ります。
 又、歌六さんの長男次男の二人が米吉、龍之助の名で初舞台を踏んだのですが、客席の過剰反応がちょっとひどすぎました。一言言っては可愛い、のどよめき。残念ながら龍之助くんはまだ幼すぎて、演技と呼べるような 代物ではなかったのですが・・・。もう一つ、気になったのは、大盛り上がりの本水での格闘シーン。猿之助さんが演じた胴助が腹から血糊を出すことまでは良かったのですが、右近さんはホースを出しての血しぶきビュー!!。さすがにやりすぎでは?ちょっと品がないように感じました。
 まあ、小さな不満は置いておいて、登場人物がそれぞれ生き生きと動き、御家騒動の中に、世話場もあり、 四季も程良く織り込んで、大変面白かったです。また近い内に別のメンバーを交えて観てみたいものです。


2000.0719
 予定より、1週間遅れの更新です。6月の歌舞伎座夜の部の感想です。

『義賢最期』・・・今月(というか6月)一番楽しみだった演目です。 期待に違わず、仁左衛門さん團十郎さん、がっぷり四つの舞台、さらに噂の戸板倒し、仏倒れも しっかりとこの目に焼き付けて置きました。まわりを固める秀太郎さん、芝雀さん、そして田之助さんに 幸右衛門さんがまた素晴らしく、ストーリーのとっぴさを忘れさせてくれる充実ぶりでした。 わたしが、こんなことを言うと失礼ですが、今年に入って、幸右衛門さんの芸が素晴らしく光ってきています。以前に見られた固さがすっかり消え、自由闊達、それでいて情のこもった役柄をさらりさらりと演じておられます。今後のますますの活躍を楽しみにしています。

『道行恋苧環』・・・あまり期待していなかった演目でしたが、 実はこれが今月の白眉。芝翫さん、鴈治郎さんの人間国宝に團十郎さんの求女。さらさら踊っているようなのですが、それぞれの気持ちがきちんとこちらに伝わってくる、なんとも不思議な経験でした。 特に、鴈治郎さんの踊りは顔の表情も変えず、それでいて男を思う強い気持ちと、位の高さを感じさせて もうただ唖然。

『縮屋新助』・・・昨年9月に観た『名月八幡祭』と、混同していたのですが こちらが本家本元の縮屋新助。幸四郎さんの熱演です。まずは手古舞姿の福助さんが艶やか。吉弥さんの 敵役もなかなか憎たらしい。ところでこの赤間源左衛門、しかも木更津、と聞いてハテナと思った人も いたのでしょうが、『切られ与三』の大親分なんですね。秀太郎さんはこれがピッタリの尾花屋のおかみ。 ただ、翫雀さんが残念ながら2枚目の新三郎にはちょっと不向きの丸々顔でがっくり。
 お話は黙阿弥らしく、聞かせる科白と因果話で展開するのですが、永代橋から落ちたら、新助の船だったり、実は美代吉は新助の妹だったり、いくら時間がないからと言って、あまりに唐突。さらに新三郎の愛想づかしもほとんど意味不明。元々の話を知っているひとならば、まだしもちょっと省略しすぎでしょう。それを除けば、美代吉の愛想づかしは女の嫌らしさを福助さんが強調する形で最高。後の『籠釣瓶』に影響を与えた、と言われていますが、演出的には洗練された『籠釣瓶』からの影響を感じました。そして最後の殺しですが、無理な凄みを出さずに逆に恋に狂った男の狂気を見せてくれました。作助役の弥十郎さんも好演、江戸の情緒を伺い知る一編でした。


2000.0710
 すっかり遅くなりましたが、6月歌舞伎座の感想です。観に出かけたのは、昼の部が15日、夜の部が20日です。 実は昼も夜も、大変大満足、大充実の一日でした。

『番町皿屋敷』・・・去年、国立劇場の鑑賞教室で初めて観たのですが、新歌舞伎の臭さが気になって あまり感心しませんでした。しかし、こう言っては前回の出 演者に失礼になりますが、役者が違うと、 同じ演目でも、これほど変わるものか、と感心するほど、違った内容に見えました。前半は仁左衛門さんと 芝翫さんの貫禄を見せる場面で、それなりの重みは当然あるものの、見所は少なく思います。但し、 團十郎さんの、科白廻しに愛嬌と直参旗本らしさの工夫を感じました。
 ポイントは、当然後半になるのでしょうが、まず福助さんのお菊が鬱屈した感情を持て余している 雰囲気を最初から漂わせて、観客の感情をぐ〜と引きつけます。萬次郎さんの若作りには多少無理を 感じますが、まだ十代半ばの雰囲気を出そうとしていることは分かります。そして、吉弥さんの用人も せかせかした性格と、小心者の小役人の雰囲気が出ています。そして、どう考えても男の気持ちを 確かめるために、家伝来の皿を割る。気持ちを確かめようとした行為に起こって、惨殺する、という ストーリーの展開には納得出来ないのですが、舞台を観ている間はそんな雑念が起きる暇がないほど、 白熱のぶつかり合いで、素晴らしかったです。芸の力というものの、恐ろしさを実感しました。
 一つだけ気になったのは、家宝の高麗焼。当然色からして青磁だと推察されるのですが、割れ口が 赤茶色。これは陶器の色で磁器の色ではありません。毎日毎日、10枚割ってしまうのですから、 磁器を焼くのは無理なのでしょうが、やはり気になります。

『大津絵道成寺』・・・鴈治郎さんの五変化と常磐津、長唄の競演が楽しめました。全体が道成寺の パロディ?になっており、まず登場するのが、聞いたか坊主ならぬ、外方と唐子。外方とはどうやら 七福神の福禄寿だってこと、ご存じでした?芝のぶさんをはじめ、今回名題に昇進された孝二郎さん 改め嶋之丞さんたちが、奇妙な服装で登場して楽しませてくれます。五変化のメインは藤娘。そこから 鷹匠・座頭・船頭に変わっていきます。座頭とからむ犬が可愛いです。最後に鬼になるのですが、 これが鴈治郎さんとは一目では分からぬほどの迫力。吉弥さんの弁慶、翫雀さんの矢の根の五郎が 登場して鬼は退治される、ということになります。変化舞踊はそれなりに楽しめたのですが、 パロディ?の面白さはまだまだ勉強不足で、十分に理解が及ばなかったのが残念です。

『すし屋』・・・もう5〜6度観た演目ですが、その度に新たな発見があったりして なかなか面白いものです。幸四郎さんの権太は二度目だと思いますが、前回と比べても、メリハリの 利いた演技で、素晴らしい出来でした。特に今回感じたのは、この演目は権太が主人公とばかり 思っていたのですが、意外にその登場時間は少なく、お里や維盛、梶原や弥左衛門など、 それぞれがきちんきちんとその芸を披露できるように作られているのだ、ということです。つまり、 所を得た配役があれば、一人一人が生きてくるのです。芝雀さんのお里も可愛かったし、秀太郎さんの 維盛も出のところで、変に弱々しくよろけたり、すし桶が重くて持てない(考えてみれば空の桶なのに)、 などというわざとらしい演技を廃し、品良く演じて良かったです。「たちまちかわる・・・」の表情も キリリとしてなかなかでした。幸四郎さんの権太は、前半のワルぶりを剽軽に見せ、すし桶を小脇に 抱えて花道を入る時は、すっきりと。前回気になった足の細さも、今回は気になりませんでした。 そして後半の、梶原との対決、中腰でスッ首実検を見る様子、スッと袖を肩から落とす動きも的確。 父親に刺されてからの述懐も心がこもって良かったです。ただ、髷の元結が切れず、最後の最後で 母親役の扇緑さんが後ろから解いていたのは、気の毒でした。
 一気に、夜の部も書くつもりでしたが、時間切れ。火曜か、水曜に更新します!!!


2000.0614
 歌舞伎ファンのさくらさんからお便りを、頂戴しました。

>そこで歌舞伎の解説をしている”おくだ健太郎”氏
>(解説者の中では一番若手)が毎月第3土曜日の午後2時から
>歌舞伎座のすぐよこの『樹の花』という喫茶店で
>『歌舞伎セミナー』なるものを始めたんです。
>セミナーと言っても、そんなに堅苦しいものではなく
>毎回、今月と来月の演目についての見どころ紹介や
>皆さんとのフリートーク等、肩のこらない楽しい会です。
>今回(6/17)で3回目になるのですがまだまだ思考錯誤中で・・・
>どういう会にしていったらよいものか・・・
>歌舞伎の大好きな皆さんと共にこの会を作ってゆきたいと、
>おくだ氏自信も、皆さんからいろいろと勉強させて頂きたいと考えているようです。

ということで、この『樹の花』での『歌舞伎セミナー』についてのお知らせです。

まず、『樹の花』の場所ですが、歌舞伎座を正面に見て右手の道路(喫茶店の文明堂がある通りです)を入り、 次の十字路の手前2〜3軒、右側のビルの2階です。看板も出ているはずです。
『樹の花』の電話番号は、03-3543-5280です。会費は、お茶代を含んで2000円。
次回は今週の土曜日の17日午後2時からです。是非、参加されてはいかがでしょうか?
なお、詳しい地図やご案内は、イヤホンガイド・朝日解説のホームページ、
  http://www.dejavu.co.jp/asahi
に出ているそうです。


2000.0612
 下にも書きましたように、右近の会で立役に挑戦する笑三郎さん。今月の 『ほうおう』 (歌舞伎会会員向けの情報冊子)に、21世紀の主役たちのコーナーで登場しています。
「古風」と言われ、「逸材」「不思議な個性」と最大級の誉め言葉が並んでいます。政岡と道成寺を 演じた今、次なる夢はない、と語る笑三郎さんですが、どうやら 『阿古屋』を視野に入れて 勉強を始めているようです。そして、雀右衛門さんと玉三郎さんを「ミックスした」ような 女形を目指したいようです。
 昨年の暮れのような、猿之助さん一門以外の役者さんとの共演がもっとどんどん行えると、 良いのですが・・・。7月歌舞伎座の 『鎌髭』の滝夜叉姫、楽しみです。


2000.0612
 随分前に発表になってご存じの方も多いと思いますが、 「市川右近の会」が今年も、 国立劇場で開かれます。

第八回 市川右近の会


日時   8月19日(土)20日(日)12時・5時開演

演目    平家女護島(俊寛)
    俊寛僧都 ・・・右近
    丹波成経 ・・・笑三郎
    丹左衛門基康・・段治郎
    平判官康頼・・・延夫
    海士千鳥 ・・・春猿
    瀬尾太郎兼康・・猿弥

      釣狐
    白蔵主実は老狐・右近
    太郎作  ・・・猿弥
    次郎作  ・・・段治郎

観劇料  S席11000円 A席5000円
前売開始 7月7日(金)

 ということです。それにしても、 俊寛は歌舞伎役者にとっては、一度は取り組みたい 舞台なのでしょうね。染五郎さんも、最近勉強会で演じましたし、毎年のように歌舞伎座でも 演じられています。個人的には初見の 『釣狐』が楽しみです。


2000.0612
 先週の7日(水)、国立劇場の歌舞伎鑑賞教室を観てきました。劇場には女子高生たちで満員。 始まる前は、ざわざわうるさかったのですが、幕が開くと静かに話を聞いたり、舞台を観たりして いました。歌舞伎のみかたの解説は板東亀寿さん。いつものような、見学者を舞台に上げる、と いった(余り面白くない)演出もなく、この後に演じられる 『封印切』にまつわる 小道具など、わかりやすく説明をしていました。

『封印切』・・・上方風の『封印切』と、大役に挑む愛之助さんに注目していました。 全体の印象としては、劇的な盛り上がりに欠けていた、ということです。追いつめられている 忠兵衛、そして死を覚悟した二人の想い・・・、どこか薄く見えました。
 忠兵衛は扇雀さん。上方風のはんなりとした雰囲気はそれなりに出ていました。特に離れ座敷の 場面は、梅川(愛之助さん)とふたり、じゃらじゃらした雰囲気をたっぷりと見せてくれました。 気になったのは、八右衛門が登場し、二階に隠れていた忠兵衛が怒りに震えて降りてきてから。 松助さんの八右衛門もきちんと演じてはいるのですが、どこか憎々しげな雰囲気が薄い。忠兵衛も、 追いつめられていく、その切迫した気持ちが客席まで伝わってこない。多分、どこか人の良さそうな 松助さんの表情が、憎さを消していたのでしょう。
 愛之助さんの梅川、登場は可憐な遊女そのもの。理知的な美しさを感じさせました。しかし、問題は 背の高さ。玉三郎さんなどは、相手に合わして背を盗むように常に気を遣っていると思いますが、 今回の梅川は、かなり忠兵衛よりでかい!という印象が残りました。これはやはり興ざめです。 また竹三郎さんのおえんも、最近いじわるな役が多かったせいか、情が薄いように感じました。
 そして一番の問題は、最後の演出。成駒屋系ではまず梅川がひとりで花道を入り、続いて 忠兵衛が入るのであるが、これはやはり疑問。資料を読むと、新町の遊郭ではこうするのが習いだと いう、歴史的な解釈から出たものだそうだが、劇的な効果を殺いでいるように思えます。あの松嶋屋型の 二人が恐怖に震えながら、手を取り合って花道に入る、そしてその後の新口村まで感じさせる演出の方が 一段と優れているように思えます。また、相変わらず、封印が切れてびっくり、の演出ですが、 追いつめられ、怒りにまかせ封印を切る、という演出も見たいものです。


2000.0531
 先週火曜日23日に歌舞伎座夜の部を観てきました。ちょっと遅くなりましたが、 感想です。

『十種香』・・・菊之助さんの八重垣姫、新之助さんの勝頼、というフレッシュな 顔合わせに、玉三郎さんの濡衣。ここ数年でも、様々なベテランの八重垣姫を観てきたのですが、 いろいろ新しい発見があり、興味深かったです。まずは、玉三郎さんの濡衣、これまでの濡衣は 夫を亡くした悲しみに沈む女性として描かれていたのですが、玉三郎さんは”女間者”としての 性格を全面的に出しているように見えました。勿論、形としては亡き夫の菩提をともらっているの ですが、その悲しみは伝わってきません。どこか辺りに気を配っている印象です。その印象は、 八重垣姫とのやりとりや、諏訪法性の兜を盗め、という下りや、最後の謙信に捕らえられる所の姿など、 最後までつきまといました。そして、ああこの女性は、夫の死をすでに乗り越え、武田家の重宝を 奪い取りに敵地に乗り込んだスパイなんだ、ということを、改めて理解させてくれました。これまでの 濡衣では表面上は理解できるのですが、その印象は曖昧でした。どちらが良いかは別にして、 こうした演じ方もあるのかと、歌舞伎の奥深さを自分なりに感じる事となりました。
 そして、新之助さんの勝頼、なんとも美しく(源氏よりもっと輝いていました!!)、 はかなげに見えるのですが、キッ!!と目を見開くと、一気に凛々しく見える、その変化が なんとも素晴らしかったです。ただ、科白回しが時代になりきらない箇所が何度かみられ、 気になりました。それにしても昼の部4時間以上出ずっぱりの後の時代狂言。気を抜くこともなく、 立派に勤めていたことは、嬉しかったです。
 さて、菊之助さんの八重垣姫、美しさ、愛らしさは合格なのですが、何故この役が三姫と呼ばれ、 その中でも一番難しい、と言われるのか、わたしに分からしてくれる結果になりました。今まで観た、 芝翫さん、雀右衛門さん、鴈治郎さん、松江さんたちが自然に演じていたことが、 菊之助さんでは演技に見えてしまったのです。多分、型をきちんとなぞるあまり、心がどこか疎か、 というより、その心情も精一杯演じてはいるのでしょうが、なかなか客席にまで伝わってこない、 そんな気がしました。つまり、この八重垣姫の心は、1時間の舞台の間に、何度となく変化して いるのです(今回、ようやくその事がはっきりと理解できました)。亡き恋人を想う気持ち、 亡き恋人にそっくりの男を見ての驚き、それを気の迷いとして否定する、でも見てみたい、 これだけ似ているなら新恋人に、でも恥ずかしい・・・、ちょっと書いてもこれだけくるくる心境の 変化があるのです。それを身体の線と動きだけで表現しなければならないのです。以前の人間国宝の 方々は、さらさらとそのことを表現していたのですね、ほとんどこちらが意識することはなかったのです。 なんだか厳しい言い方になりましたが、これが芸の年輪ということなんでしょう、菊之助さん、 次回の八重垣姫ではもっともっと素晴らしい芸を披露してくれると思います。

『望月』・・・何の予備知識も持たずに、舞踊のつもりで待っていたら、 なんと能を元に作られた、松羽目物でした。しかも笑劇ではなく、勧進帳に匹敵する大曲。でも内容は 単調で面白くありませんでした。踊りの良さは判断不能です。

『都鳥廓白浪』・・・一番の楽しみであったこの演目。かなり面白かったのですが、 どうやら時間短縮のためか、話を端折りすぎていたのが、勿体なかったです。 特に後半、黙阿弥得意の 因果の謎解きが唐突で、あれあれという感じになってしまいました。
 團十郎さんは、盲目の武士を上手く演じ、菊五郎さんも女に化けたと男を粋に演じて最高。 脇の左團次さん、團蔵さん、雀右衛門さんも手堅く、場を引き締めていました。初日に團十郎さんが 科白を間違え、菊五郎さんがゲラになり、次の場面でお前は峰蔵、と言うところを、お前は團十郎、 と復讐していた、とニフティの書き込みで読みましたが、この日は團十郎さんはトチリませんでしたが、 「お前は團十郎」と言っていました。その峰蔵の團十郎さんが最高!!可愛いのです。たまには 髪結新三の大家さんのような、こうしたボケ役も見せて下さい。


2000.0522
 今日から5日間、NHKの衛星第2で中村勘三郎さん特集が放映されます。
 時間は午後0時15分から、2時半まで(毎日その時間かは確認してください)。
 何年か前、名優特集が毎月ありましたが、その焼き直しでないことを願います。今日の新聞には 『夏祭浪花鑑』とありました。歌右衛門さんとの共演のようですので、昭和35年か55年の 歌舞伎座でしょう。55年の分なら、何度も見ているのですが・・・?


2000.0522
 今日発売の『アエラ(00.05.29号)』に、歌舞伎座で上演中の『源氏物語』の リポートが掲載されています。なんと、前売り3日目にして、全席が売り切れた事。 チケットホン松竹、始まって以来の記録で、当日券(これは一幕見のことでしょうか?)には 前日から並ぶ人も出るそうです。
 劇場のアンケートによると、初めて歌舞伎を見た人も多く、その多くが新之助さんの 魅力に取り憑かれたようです。
 ・・・う〜ん、新しい歌舞伎ファンが誕生することは嬉しいのですが、あの『源氏』が 歌舞伎の代表作と思われると、その後が心配になります。それにしても、新之助さん、 今年は大ブレークしそうですね。つまらないTVドラマなんかには出ないで、舞台に 精進して欲しいものです。


2000.0511
 7月歌舞伎座のちらしを入手しましたので、書いておきます。この七月は猿之助さんが 歌舞伎座での奮闘公演を始めて、ちょうど30年が経つようで、その記念と猿之助の名跡が 誕生して130年を合わせた口上が行われます。

市川猿之助七月大歌舞伎

昼の部
鎌髭(歌舞伎十八番の内)

口上

黒塚(猿翁十種の内)

義経千本桜(川連法眼館)
夜の部
君臣船浪宇和島(猿之助十八番の内)
(きみはふねなみのうわじま)宇和島騒動








 出演は、おなじみの猿之助さん一門に加えて、芝翫さん、宗十郎さん、梅玉さんが 加わるようです。先日お伝えした、歌六さんの二人の息子、米吉・龍之助くんの名前も あがっています。いつもより一等席の値段が千円上がって、1万5千円になっていますので、 ご注意して下さい。個人的には、初めて見る宇和島騒動に注目です。


2000.0511
 昨日10日、歌舞伎座昼の部を観てきました。何か奇妙なものを観た、という印象が 強く残っています。わたしは一体何を観たのだろうか・・・。

 『源氏物語』・・・高校から、大学にかけて源氏物語はかなり読みました。 現代語訳では、与謝野源氏と、円地源氏。原文でも2度ほど読んでいます。最近の瀬戸内訳には 余り関心はなかったのですが、どうやらそれをきっかけに、何回目かの源氏ブームが起きている そうです。今回光源氏を演じた新之助さんの祖父十一代目團十郎さんが、初めて源氏を演じた時は、 大変な反響だったと言われています。それから50年近く経ち、同じ源氏ブームと言っても、 その質は随分様変わりしたのではないでしょうか?
 若手の三之助を中心に、團十郎さん菊五郎さん、玉三郎さんなどがサイドを固めた布陣は、 思いの外豪華な印象を与えています。桐壺から明石の直前まで、を3時間ほどに凝縮した内容は、 かつての源氏フリークがみても、なかなかよくツボを捕らえているように思えました。 伝説的な「雨の夜の品定め」が舞台に繰り広げられると、違和感はあるものの、よくぞ舞台化した、 と思えたほどです。藤壺(玉三郎さん)と光源氏の禁断の恋を中心に、右大臣(菊五郎さん)一家の 政治的野望、六条御息所(時蔵さん)が次々と光源氏の愛人=夕顔(愛之助さん)、 妻=葵の上(芝雀さん)を呪い殺す(生き霊の仕業というのが怖いのです)経緯が描かれ、 中盤以降に若紫(菊之助さん)が登場。美しい舞を披露します。源氏の父(團十郎さん)、 同僚の頭中将(辰之助さん)とも、好演。さらに新之助さんは、少し高い声で雅な人物像を 構築、天性の美形に加えて、憂いのある青年像を作り上げていました。その努力には感嘆して しまいます。
 しかし、個々の好印象とは別に、一体この舞台は何を描いているのか、描きたかったのか、 どうしてもしっくりこない違和感、場違いな印象がつきまとったのも事実です。具体的には 音楽、冒頭の大音響など耳障りに感じました。そして、多用する暗転。へたしたら暗転している 時間だけで15分ぐらいはあったのでは・・・?大道具さんたちは本当に大変だと思います。 どこかのんびりした背景とツボを押さえたセットには好感が持てました。しかし何より最大の 違和感は、言葉だったのだと思います。王朝の世界に現代の会話口調が登場すること、 新歌舞伎でも時々感じる違和感が全編を通して続いたのです。もっと別の方法はなかったのか、 とも思いますが、これで仕方ないのでしょうか?なにか、もっともっと良くする方法があるように 思うのですが・・・・、具体的には何も考えつきません。ちょっと気になる演目でした。


2000.0430
 29日の日刊スポーツに、歌六さんの二人の息子さんが7月の歌舞伎座で初舞台を 踏むことになった、という記事が出ていました。
 演目は夜の部の『宇和島騒動』。 長男は修平くん7歳で、五代目米吉を名乗り、次男智也くん5歳は 初代龍之助を名乗るそうです。萬屋一門は二代目の世代には不幸が続きましたが、三代目四代目の 世代が、立派にその後を継ぎ、今後が大いに楽しみな一門になってきました。


2000.0430
 6月歌舞伎座のちらしを入手しましたので、書いておきます。

六月大歌舞伎

昼の部
番町皿屋敷
 青山播磨 ・・・團十郎
 腰元お菊 ・・・福助
 放駒四郎兵衛・・仁左衛門
 渋川後室真弓・・芝翫

大津絵道成寺(鴈治郎五変化)
 藤娘、鷹匠、座頭、船頭
 大津絵の鬼・・鴈治郎
 矢の根五郎・・翫雀

義経千本桜(すし屋)
 いがみの権太・・幸四郎
 弥助実は維盛・・秀太郎
 娘お里  ・・・芝雀
 梶原平三景時・・羽左衛門


夜の部
源平布引滝(義賢最期)
 木曽先生義賢・・仁左衛門
 九郎助娘小万・・田之助
 待宵姫  ・・・芝雀
 御台葵御前・・・秀太郎
 折平実は
 多田蔵人行綱・・團十郎

道行恋苧環
 杉酒屋お三輪・・芝翫
 烏帽子折求女・・團十郎
 入鹿妹橘姫・・・鴈治郎

八幡祭小望月賑(縮屋新助)
 縮屋新助 ・・・幸四郎
 芸者美代吉・・・福助
 穂積新三郎・・・翫雀
 尾花屋おつゆ・・秀太郎


 私としては、『義賢最期』が一番の楽しみです。若かりし仁左衛門さん(当時は孝夫さん)が 東京で初めてその存在を印象づけた、演目です。最期の倒れ方に注目です。さらに團十郎さんの 青山播磨も注目。幸四郎さんが縮屋新助をどう料理するのか、あまりに陰惨な、いま流行りの ストーカー殺人なので、リアルに演じ過ぎず、歌舞伎の味を出して欲しいものです。


2000.0430
 25日(火)に歌舞伎座夜の部を観てきました。充実した舞台で満足しました。

 『一条大蔵譚』・・・吉右衛門さんの大蔵卿。もはや定番とも言える、作り阿呆。 愛嬌たっぷりで、客席も一緒にニコニコしている雰囲気が伝わってきました。梅玉さん、松江さんの 鬼次郎夫婦もすっかり手に入れて無難。芝翫さんも格の大きさを見せてくれました。しかし、わたし 個人としてはちょっとこの顔ぶれは食傷気味。新鮮味に欠けているので、途中で一瞬睡魔に襲われ 気を失いました。今度は、全く違う顔ぶれで見せて欲しいです。

 『口上』・・・勘三郎さん追善の口上と言うことで、真面目な挨拶が続く中、 左團次さんがかましてくれました。自分の勉強会で『吉田屋』の伊左衛門を演じることとなり、 勘三郎のおじさんに習いに静養中の箱根まで出掛けたが、「麻雀の相手をしなけりゃ教えないよ」と 言われ、『図書券』をたんまりと巻き上げられた、そうです。新潟県警の 事件がこんな風に扱われるなんて、やっぱり歌舞伎は面白い。

 『鰯賣戀曳網』・・・勘九郎さんの猿源氏と玉三郎さんの蛍火。 これに左團次さん、染五郎さんがからみ、なんとも楽しい舞台でした。戦後すぐの作とは思えない 明るい現代風の内容。さらに鰯賣の声を幾通りにも言い分ける面白さ。物語のユーモア(義太夫の 太夫さんまで使って、あっかんべーをさせていました)。さらに、微笑ましいハッピーエンド、 もう定番とも言える、二人の息のあった掛け合い、など、本当に理屈抜きに楽しめました。

 『鏡獅子』・・・勘太郎さんの弥生。初めてとは思えないほど、堂々としていました。 踊りも、まさに楷書、教わった通り、集中して、一つ一つをおざなりにせず、きちんきちんと 踊っていることに好感が持てました。また、姿勢が全く崩れません。正中線、わたしが学生時代を 通じてやっていた剣道でも使われる言葉ですが、頭のてっぺんから、尾てい骨まで、一本の線が 通っている、その線がまっすぐで崩れないようにしなければいけない、と教えられていたのですが、 勘太郎さんの踊りも、この正中線がぴしっと通っていて、気分が良かったです。さらに驚いたのは その色気。うっとりする美形ではないのでしょうが、流し目をするところなど、なかなかの ものでした。また、最初に連れ出されて、嫌がりとうとう部屋に一人残されて、ハッと気づくと 殿様の前、覚悟を決めて頭を下げる(これは客席にあいさつしているのではありません)、 呼吸が完璧に出来ていました(ついつい客席への愛嬌になってしまうものです)。
 そして、獅子になってからの勇壮さ、まるで同じ役者とは思えないほどの変わりぶりで 圧倒します。目もすこし上を見ることによって、三白眼にして迫力を出していました。細かい動きの 善し悪しは分かりませんが、なかなか立派な鏡獅子だったと思います。
 胡蝶は坂東弥十郎さんの長男新吾くんと、藤山直美さんの甥、扇治郎くん。この扇治郎くんが まあ、お祖父さん叔母さんそっくりの丸々体型。4歳も違うのですが、互いにライバル心を 持ちながら踊っているのが、可笑しかったです。
 今月はこの他に、福助さんの長男優太くんも髪結新三の丁稚に登場。国立と合わせて、5人の 子供たちが登場して、歌舞伎の将来に明るさを感じさせるひと月でした。


2000.0423
 今日23日(日)の夜11時半から0時45分まで、NHK衛星第2TVで、勘三郎さん特集が 組まれています。勘九郎さんも出演予定です。そういえば、先日歌舞伎座に行った時、NHKに よる撮影が行われていました。前から2列目、中央近くに座っていたので、映っているかも しれません。


2000.0423
 松本幸四郎さんが、21世紀の新たな歌舞伎作りを目指して作った梨苑座が、いよいよ 活動を開始。歌舞伎座にちらしがあったのでご紹介しておきます。

タイトル:栄屋異聞影伝来(さかえやいぶんかげのでんらい)夢の仲蔵
出演  :松本幸四郎(初代中村仲蔵)、市川染五郎(五代目市川團十郎)
作   :荒俣宏
演出  :九代琴松(この人は誰?幸四郎さん???)

日時  :9月6日〜26日
場所  :日生劇場(12時、13時、17時、18時開始とばらばら)
入場料 :A席12600円、B席8400円、C席4200円
電話予約:6月23日(金)より、チケットホン松竹などで

 う〜ん、なかなか楽しみな内容ですね。劇中に『五段目』や『関の扉』『道成寺』などが 演じられるそうです。勘九郎さんのコクーン歌舞伎と並ぶ人気シリーズになるのでしょうか? いずれにしても新たな試みに拍手です。


2000.0423
 19日(火)に歌舞伎座昼の部を観てきました。しかし、徹夜の仕事の疲れか、 寝坊して40分ほど遅刻。折角の仁左衛門さんの俊寛、ほとんど後半部分しか、 見られませんでした。
 『俊寛』・・・と言うことで、まともな感想はナシ。ただ、唐突に 後半部分を見ていると、このお芝居が、というより、俊寛の役どころが、極めて新劇に近い心理描写で 成り立っていることが、分かります。他の役は瀬尾にしても、千鳥にしても、歌舞伎劇から 大きく逸脱はしていないのですが、俊寛に関しては何故か、みんな「俊寛」になりきってしまうのです。 仁左衛門さんもその例に漏れないように見えました。つまり演技になってしまうのです。特に船が 出てからの表現はその傾向が強くなります。後半だけ見て言うのも問題ですが、左団次さんの瀬尾は 憎らしさが最高。吉右衛門さんの丹左衛門ももうけ役。ただ、誰のを見てもあの、白いストッキング? は似合いませんね。福助さんの千鳥は、島の娘の田舎臭さが余り感じられないように思えました。

 『舞鶴雪月花』・・・今月の歌舞伎座には子役が多く顔を揃えていますが、 ここの『松虫』には、清元延寿太夫の次男研祐くん7歳が登場。ふっくらとして可愛らしい動きに、 客席からは微笑ましい笑い声が起きていました。
 この舞踊は初めて見ますが、当然三役を一人の人物が演じることが眼目でしょう。桜の精、 松虫、雪達磨・・・、勘三郎さんの芸域の広さがこれだけで分かります。中でも面白かったのは 富十郎さんが演じた雪達磨。「炭を切ったり、たどんをこねたり・・・、これが本当の角切銀杏」とか、 「カァカァ、カラスのカンザブロ〜」なんて唄が出てきました。なにしろ炭団に目鼻の化粧が 面白すぎ。朝日がのぼり、溶けてくるところも、愛嬌があって勘三郎さんを偲ぶことができました。

 『髪結新三』・・・これまで何度かこの演目は観ていたのですが、今回の舞台が 一番新三らしい新三だったように思いました。一つには、敵役の弥太五郎源七が仁左衛門さんで、 親分らしい親分だったこと。何と言っても勘九郎さんが調子よく、さらに気分良く新三を 演じていたこと、これが大きかったと思います。新三にやりこめられる源七ですが、そこで 新三より小物に見えては駄目なのです。芝翫さんの忠七と玉三郎さんのお熊は無難。富十郎さんが 大家に回り、ちょっと強欲で、しかしそれなりに貫禄のある芸を見せてくれました。
嬉しかったのは染五郎さんの勝奴。多分初めてだと思うのですが、父幸四郎さんのニンでは ない新三の勉強のため、一座する。染五郎さんなら新三は演じられるはずです。八十助さんに 辰之助さんを加えた、21世紀の新三役者、なかなか楽しみなことです。
 なお、日頃わたしが注目の中村芝のぶさんの名題昇進披露が掲示されています。後援会の方の 作るホームページも充実しており (iモード歌舞伎関係一番乗りも果たしています)、今後の活躍がますます楽しみな若女形です。


2000.0417
 歌舞伎座5月團菊祭の『源氏物語』、大変な人気になっている ようですね。わたしも、歌舞伎会特別会員の予約日の12日には、6時までつながらず、 翌日も6時ぎりぎりにようやくつながり、チケットを確保できました。それでもいつもより かなり後ろの席になりました。みなさんはいかがですか?
 ところで、今朝の日刊スポーツに、新之助さんが瀬戸内寂聴さん、東儀秀樹さんとともに、 京都御所、宇治市源氏物語ミュージアムを訪れた、という記事が掲載されています。 面白いのは、新之助さんが「ゴショって何ですか?」と寂聴さんに聞いたという話。き、君は 御所も知らないのか!!まさに現代っ子、修学旅行も最近では京都なんかには行かないもんね、 それでも、新之助さんは、「風とか薫りが気持ち良かった。この感覚を舞台にも生かしたい。」と 話したそうで、新感覚の源氏、いまからとても楽しみです。


2000.0417
 少し以前の話ですが、NHKアナウンサー、葛西聖司さんの著書、 『名セリフの力』と言う本が出版されています。 定価は1696円+税。出版社は展望社。今年2月の出版です。因みにISBN4-88546-027-1です。
葛西氏もあとがきの中で触れていますが、戸板康二さんが書かれた、 『すばらしいセリフ』という 名著もあり、昨年暮れに筑摩文庫に収められています。これも因みにISBN4-480-03522-2です。
 相変わらず歌舞伎本の出版が続き、読むのがなかなか追いつきません。まあ、嬉しい悲鳴なので しょうが・・・。


2000.0417
 遅くなりましたが、先週の11日(火)に国立劇場に出掛けてきました。 客席はまだ空席が目立っていましたが、舞台はなかなかの熱演でそれなりに、 面白かったです。ただし、上方方式の団七という触れ込みだったのですが、 大きな違いは数カ所しかなく(右近さんが研究会で演じた権太や勘平ほどの 大きな違いはなかったようです。)、ちょっと残念でした。しかし、普段の舞台では めったに見られぬ、大ハプニングが起き、それはそれはびっくりするやら、 大笑いするやら・・・、詳細は最後の方で・・・。

 『夏祭浪花鑑』・・・勘九郎さんのコクーン歌舞伎を番組で 取り上げた関係で、いろいろ勉強はしていたのですが、原作では団七が釈放されるのは、 春先のことなんですね。ところが、出てくる人たちの服装は夏そのもの。さらに髪結床が 舞台のど真ん中に大きく置かれているのも気になりました。もう少し下手寄りの方が 収まりは良いように思えます。普段は床見世の軒下にかかっている芝居の番付板が 別に開帳札と同じように地面から立ってあり、赤札(料金などが書かれているそうです)も 付いています。
 団七の登場から後は、ほとんど変わらず。翫雀さんの団七は、なかなかすっきりして 良い雰囲気が出ていました。三婦は吉弥さん、コクーンの時と同じですが、耳に掛けていた 数珠がこちらは大きく胸に掛けています。お梶が秀太郎さん、相変わらず良い雰囲気ですが、 立ち回りを押さえる所は、ちょっと軽々しい感じを受けました。琴浦の玉太郎さんは 首から肩のラインが完全に男。身体も大きいのでかなり気になります。徳兵衛は扇雀さん、 決して悪い訳ではないのですが、首を回して見得をきる時など、女形のくせが出るのが 気になりました。ちょっと動きも柔らかく、又を割るところも、膝が少し内に入るように 見えました。
 続いては『三婦内』、じつは4月から月曜日に徹夜の仕事をレギュラーで入れてしまい、 この日も3時間ほどしか寝ていませんで、ついにここで睡魔が・・・。特に前半はおぼろげ。 お辰(鴈治郎さん)が焼き鏝を当ててからは、ようやく意識すっきり。とうことで、 鴈治郎さんについては、やはり貫禄が違う、としか言えません。その後、二人のならず者が やってきて暴れるのですが、どうも迫力不足に見えました。これでは三婦は数珠を切れません。 三婦が花道を入ると、お辰と磯之丞が出て行き、続いて義平次が琴浦を連れ出す。ここで 舞台が半分回ります。これが上方式。つまり三婦の家の玄関横には床几を置き、その奥には 酒樽などが置かれています。そこに三人が帰ってきます。三婦、徳兵衛が家に入り、 義平次が琴浦を連れ去ったことを聞いた団七が、三婦の女房おつぎ(竹三郎さん)の 脾腹を打ち、慌てて駆け出そうとするのですが、余り苦しむので、薬の入った印籠を渡し、 花道で見得をきり、入っていきます。この印籠を投げる時の段取りのために舞台を回す、 とのことですが、今ひとつ納得できませんでした。ただし、団七が花道で見得をきった後、 浴衣の裾を両手で持ち、くにゃくにゃとした動きをしながら、入っていった型は なんとも言えずに面白かったです。
 そして、『長町裏』、義平次(寿治郎さん)はそれなりに良く出来てはいるのですが、 もっともっと憎たらしさが欲しかったです。懐に入れた石を取り出して見せる所もあっさり。 肩を誤って斬るところはへんにねちっこい。それから後はいつもの通り、ただし、以前に 見た幸四郎さんの時は、やたら長く感じましたが、今回は一つ一つの見得がなかなか面白く 見られました。そして、泥の中に蹴り込み、井戸で身体を洗い(緊張で刀が手から離れない、 という演技を皆さんするのですが、その直前、飛び違いの見得の時、手が離れて柄頭を 押さえているんですね。今回初めて気づきました。う〜ん、ちょっと気になる。)、 「悪い人でも舅は親」となる訳ですが、この前にお祭りの御輿が通り、手拭いを抜き取って あります。団七が泥の中を拝んでいると、祭り衣装の酔っ払いが登場、一緒に泥の中を 覗き込むのがなんともいえず滑稽。そして、団七が「ようさや」、というと「ちょうさ」と 応え、繰り返しながら揚幕に入っていきます。この演出はなかなか興味深かったです。
 さて、長くなりましたが次は『団七内』。吉弥さんの身体がものすごく痩せていたことが 印象的でした。また、団七がちょっと複雑な心境を身体で現しているのですが、ちょっと 演技が説明的。お梶も仕所が少なく、あまり映えません。この場は団七と徳兵衛の心理的葛藤が 面白いのでしょうが、全体的にパワー不足に思えました。最後は屋根の上での捕り物。 そして、そこで前代未聞のハプニングが。最後の最後で捕り手がトンボをきって落ち、 団七・徳兵衛が決まって、幕になるのですが、なんとその捕り手が一回転した拍子に 鬘がボトッと屋根の上に落ちてしまったのです。慌てた捕り手は、徳兵衛の足の間に頭を 隠し、なんとか二人は笑わずに幕は閉まったのですが、もう会場は唖然呆然、クスクス笑いが あちらこちらで・・・・。いや〜、いつも大立ち回りを見る時は、ハラハラするのですが、 屋根の上で鬘が落ちるとは・・・。幕が閉まるまで、鬘はポツンと、屋根の端に残って いました。あの捕り手さん、怒られちゃうのかな。とちり蕎麦かな・・・。

 『英執着獅子』・・・鴈治郎さんの獅子は前半の傾城姿が特に立派で、良かったのですが、 わたしがびっくりしたのは、孫の壱太郎くん。2月の歌舞伎座でも それなりに上手に踊っていたのですが、今回の禿の踊りは格段の進歩。前回の舞台が踊りへの 自信となって現れ、踊りに大きさと感情表現が加わりました。このまま成長すれば、 これまでにない、特異な雰囲気を持った女形が誕生するのですが・・・。あの口元はただ者では ありません。
 成駒屋一家の若手歌舞伎、いろいろ気になることもありましたが、小笠原騒動に続いての 奮闘公演。こうした経験が大きく華開くのでしょうね・・・。今後も頑張って下さい。


2000.0331
 『演劇界』4月号に、5月歌舞伎座團菊祭の速報が掲載されています。

昼の部
源氏物語
 光源氏  ・・・新之助
 頭中将  ・・・辰之助
 紫の上  ・・・菊之助
 藤壺   ・・・玉三郎
 右大臣  ・・・菊五郎
 桐壺帝  ・・・團十郎










夜の部
本朝廿四孝
 八重垣姫 ・・・菊之助
 勝頼   ・・・新之助
 濡衣   ・・・玉三郎
 謙信   ・・・羽左衛門

望月
 望月   ・・・團十郎
 刑部   ・・・八十助
 花若   ・・・巳之助
 白菊   ・・・菊五郎

都鳥廓白浪
 花子実は松若丸・菊五郎
 惣太・峰蔵・・・團十郎
 十右衛門 ・・・八十助
 お梶   ・・・雀右衛門

 噂通り、新之助さんの『源氏物語』ですね。全幕通しになるんでしょうか?十一代目團十郎さんは、 残念ながら見られませんでしたが、この演目は時の話題をさらったということです。新之助さんが その再現を目指します。
 個人的に楽しみなのは、『忍ぶの惣太』の別名がある、 黙阿弥初期の白浪物、『都鳥廓白浪』。全三幕、すべてを上演するので しょうか。團菊がっぷり四つの迫力ある舞台がいまから楽しみです。
 

2000.0331
 最近、岩波新書から『歌舞伎の歴史』、今尾哲也著が出ています。歌舞伎の発祥から現代まで、 単なる歴史というより、芸談を含めた歌舞伎入門といった書物のようです。何より圧巻なのは 巻末の参考文献です。専門家というのはこれほどの量の論文を読み込んでいるのかと、 感心させられます。
 さらに、渡辺保さんが、『劇評家の椅子』(朝日新聞社)2000円を出版されています。 この大半は95年から99年にかけて発表された劇評からなっていますが、同時期に歌舞伎を 見ている者として、評論家が何を見ているのか、また何を感じているのか、驚いたり、 新たな発見があったりと、なかなか刺激的です。同じ舞台を見ていても、さすがにプロは 違うものです。その他にも、新之助論が興味深く、また演技と芸の違いが端的に示されています。


2000.0331
 危ない、危ない。忙しさに紛れて更新をさぼっていたら、もう3月も終わりです。 簡単に3月歌舞伎座の感想を。15日に昼の部、21日に夜の部を観てきました。 昼の部はちょっと楽しみが少なく、2等席最前列での観劇です。
 『春霞歌舞伎草紙』・・・時蔵さんと染五郎さんの二人だけの舞踊かと思っていたら まあ大勢の役者さんが出演されていました。なんとなく、みんなが右に行ったり、 左に行ったり・・・。こうした舞踊の良さがまだまだ理解できません。時蔵さんが とても綺麗だったこと、染五郎さんが美しい二枚目役をこなしていたこと、が印象に 残りました。

 『江戸城総攻』・・・幸四郎さんの勝海舟、團十郎さんの西郷吉之助。三部作の第一部と、 第三部をつなぎ合わせたもので、特に前半の部分は意味不明。山岡鉄太郎が西郷に 会うために官軍が密集する中を駿府まで出掛けた話は歴史的にも有名なのですが、 勝海舟が万国公法を盾に、慶喜をイギリス船に逃げるよう手配していたとは知りません でした。ましてや仲間から狙撃されるとは・・・。やはりこの眼目は薩摩屋敷の 西郷さん。どうも上野の銅像の印象が強いのか、團十郎さんもでっぷり太った扮装で 登場。訪れた勝を相手に長口上を述べます。これが圧巻。ぐいぐいと引き込まれた、と 言いたいところですが、途中で睡魔に襲われてしばしダウン。しかし、科白に詰まる所も なく、迫力満点であったことは間違いありません。しかし、全体としてはなんとも冗長。 この後に続く『将軍江戸を去る』はそれなりに見られたのですが、この場は劇としては 退屈でした。登場する幕臣、薩摩藩士もあまりに類型的で興趣を殺ぎました。

 『隅田川』・・・まだ睡魔は体内に残っていました。雀右衛門さんは、出の 雰囲気や化粧が、以前ビデオで見た歌右衛門さんにそっくり。淡々と話が進むうち、 舟人の富十郎さんに去年この地で亡くなった子供の様子を聞く内に、表情が一変します。 記憶に残ったのはここまででした。お恥ずかしい。

 『雪暮夜入谷畦道』・・・う〜ん、ここ数年で一体何回見たんでしょうか。 夜の部の『寺子屋』のように、何度見ても新たな発見がある演目と違い、このお話は どうも深みがありません。細かい型の面白さと、余所事浄瑠璃の哀切を帯びた名曲が 聞き所なんでしょうが、正直言っていまはちょっと飽きています。そうしたことを のぞけば、菊五郎さんは團十郎さんと並んで当代一の直次郎役者です。見慣れた鶴蔵さんの 蕎麦屋の親父に、なんと田之助さんの丈賀。これが抜群の出来でした。松助さんの丑松は 無難。福助さんの三千歳は普通の出来、というか、これまでこれは素晴らしいと、感激する 三千歳にまだ会えないでいます。ひょっとしたら、この役はかなり難役なのかもしれませんね。

 『車引』・・・幸四郎さんの松王丸、團十郎さんの梅王丸、菊五郎さんの桜丸。 ほぼ同じ年頃の3人が揃って、華やかな中にも、迫力ある舞台でした。ちょっと気になったのは、 團十郎さんの深編笠が顔にかぶりすぎて、笠のお化けのように見えたこと。仕丁たちの化粧声が いまひとつ迫力に欠けた事。また時平役の彦三郎さんが、袖を巻く事に注意がいってしまい、 大悪人の凄みが薄かったことなどでしょうあk。

 『賀の祝』・・・先ほどの三人に、それぞれの妻が田之助さん、福助さん、時蔵さん。 白太夫が羽左衛門さん。白太夫はすでに氏神様にお参りに出掛けた所から始まります。 すぐに松王、梅王が登場して喧嘩。俵を使った立ち回りがやはり面白いです。桜の木を折り、 二人が「おいらは知らぬ」と責任をなすり合うところは、團十郎さんの稚気が出て良かったです。 気になったのは松王丸が自分のことを「お兄いさま」という所で、原作では梅王丸が一応長兄と いうことになっています。白太夫が帰ってきて、折れた桜の木を見てハッとし、暖簾を覗くのも なんだか底を割ったようで感心しません。松王、梅王夫婦を帰して、いよいよ桜丸の登場です。 どこか寂しく、思い詰めた表情の菊五郎さんが最高。時蔵さんの八重も突然の夫の死の決意に 動転する妻を好演。ただ、白太夫があまりに泣き過ぎるのはどうでしょうか?
しかし、車引から続けて見ていたら、この三つ子一体今の歳は何歳なのか、気になりました。 三人とも妻帯しているし、父親は70歳。しかし、三人ともまだ前髪を結っている。 しかも松王には6〜7歳と思える子供までいる。どう考えても25から30歳くらいですよね。 なんで前髪結っていたんだろう。ちょっと調べて見たのですが、三人の年齢は分かりませんでした。 どなたか、教えて下さい。

 『寺子屋』・・・千代が雀右衛門さんに代わって、武部源蔵が富十郎さん、戸浪が松江さん。 またもや寺入りはナシ。涎くり(十蔵さん)のへのへのもへじがあって、「立ち帰る・・・」に なります。この富十郎さんがまた最高。七三で寺子を身代わりにと決意してさっと戸を開け、 子供たちを見てがっかりする、その呼吸が見ていて気分が良いです。春藤玄蕃が芦燕さん、 憎らしげに演じます。松王の出もなかなか。村の親父たちもぴったりはまっています。 首実検も大きく、舞台上の緊張はぐんぐん高まって行きます。雀右衛門さんも安定して、 母の複雑な気持ちをしっかりと見せてくれます。そして、再度松王丸の登場。「にっこりわらって」と なってさあ泣くぞ・・・、と思っていたら、あらら演技過剰の幸四郎さん。こっちが泣き損ない ました。松王丸の泣き笑いがくどすぎたんですね。あれではただの演技です。芸じゃないんですね。 難しいところです。それでもいろは送りの場面では、ついしんみりとしてしまいました。

 『越後獅子』・・・暗く陰惨な話が続いたところで、パッと明るく踊って終わります。 普通は一本歯の下駄をはいて布を振るはずですが、さすがに源蔵の後では負担が大きいのか、 下駄はナシ。富十郎さんが軽妙に締めてくれました。


2000.0308
 中村橋之助さんの公式ホームページを、見てきました。綺麗な表紙、 そして橋之助さんの日々の感想が記されているご挨拶(1月国立の国生くんの豆まきのビデオが 見られます)、そして何より驚いたのは、後援会の駒の会の申し込みが、ウェブ上で出来る システムが出来上がっていることです(これは本邦初では?!)。
 『小笠原騒動』で話題の水車小屋の立ち回りビデオもありますし、 充実したサイトです。是非みなさま、ご覧下さい。
 アドレスはwww.kabuki-japan.comです。


2000.0308
 昨日7日、新橋演舞場で『小笠原騒動』、観てきました。 橋之助さんを中心に、主演の4人とも、迫力の演技でいろいろ楽しみましたが、大満足、と 言うまでにはいたりませんでした。と言うのも、時間短縮のせいなのでしょうか(南座よりも 2場面少なくなっているようです)、折角の伏線が生きなかったり、最初に登場した人物が 最後になるまで出てこなかったり、敵役の犬神兵部の悪者ぶりが、ちょっと中途半端になったり、と 脚本上の省略が気になったからです。歌舞伎の定番お家騒動に狐の霊異譚、さらに怨霊と 一家心中と、一つ一つは大変面白く観られたのですが、トータルでカタルシスや深い感動が 味わえなかったのです。

 しかし、それぞれの場面はなかなか興味深く、特に三幕目良助住家の場はとても良い出来でした。 お話のあら筋は・・・、お家乗っ取りを計る悪者が犬神兵部(信二郎)、その愛妾で 身ごもったまま、殿(桂三)の側室となったのがお大の方(扇雀)。まずはお大の方が自分の 養い親を縊り殺します(この後、別の役で扇雀さんは1回殺され、1回自殺。最後にお大の方で また自殺と、つとめた三役全てで死にます。一人殺しているから一勝三敗???)。
 一方の善人側は小笠原隼人(はいと、と発音していました)(翫雀)、隼人の元の奉公人、 お早(扇雀)、隼人に助けられた白狐・奴菊平(翫雀)、お早の夫小平次(翫雀)。そして、 もどりを演じるのが岡田良助(橋之助)、その女房(扇雀)。そして日本一の名子役(と勝手に わたしが思っている)永田晃子ちゃんがその娘役で出ています。
 格好良く主人を諫めに出た隼人が兵部に打擲され、刺客に襲われた所を狐が助ける。狐の お面を付けた一行が駕籠をかついで花道を引き揚げる所はなかなか面白いです。そして、 閉門蟄居の隼人を訪ねてきたのがお早。早速密書を江戸表の親戚筋へ届けて貰うよう頼むのだが、 その帰り道に、親切めいて声を掛けるのが、良助。兵部の家来に襲われているところを助ける、と いう手の込んだ芝居でお早を騙し、密書を取り戻そうとする。この二人が元の屋敷に戻ろうと、 歩き回るのが、なんと客席。『切られ与三』の見初の場や、 『沼津』などでも見られる手法で、 近くに座ったお客は大喜び。(たまたまわたしも通路側だったので、わずか15センチのところを 二人が通って行きました。)
 そして、本性を現しての惨殺。これもまずまずの迫力。連理引きなどあって、兵部が登場。 百両与えて、身を隠せ、家族の面倒は見ると約束(これが伏線)。そして、 次の幕が「良助住家の場」となるのです。兵部は約束を守らず、一家は貧窮のどん底。しかも毎晩 怨霊に苦しめられている。そこに良助が久々に帰って来る。(何故、お早の怨霊は、家族の もとに現れるんでしょうね?普通は殺した相手に祟るのが本筋では?)早速出てくるお早。これが なかなか怖い(でも手の位置がちょっと高く、前に突き出し気味で気になる)。その後、 兵部が一切面倒を見なかったことに気づき、良助は改心するのだが・・・、この後は見ての お楽しみ。竹本をバックに橋之助さんが大活躍の場ですが、悪人から善人に戻っても、表情に あまり変化がないことが気になります。元々、良い人顔なんでしょうか、ガラッと表情が 変わると、こちらももっと気分が乗って来るのですが・・・。
 そして、続いて水車小屋での大立ち回り。本水を使って暴れ回りますが、いかんせん客席が 遠い。水がかかってキャー、となれば盛り上がるのですが、そうした悲鳴もなく、ちょっと 残念。しかし、水車に掴まってグルグル回って、その度に水槽の中に顔が浸かるなんて、 まあ大変なこと。風邪を引かないように頑張って下さいね。最後はお定まりの大団円。 これぎりで、終了です。終演が8時前なので、あと30分中味をふくらませても良かったと 思います。一つ一つが面白かっただけに、ちょっと残念な想いが残りました。とはいえ、 客席にはまだ空きが目立っています。東京では次にいつ見られるか分かりませんし、 こうした若手の公演が不入りに終わると、やっぱりベテランだ、馴染みの演目だと、 営業的に冒険がしずらくなってしまいます。是非皆さん、お誘い合わせの上、お出かけ下さい。

ちなみに、パンフレットには扇雀さん宛のメールが記されています(これはパンフレットを 購入された方だけの、特典ということで、ここでは紹介しません)。また、 橋之助さんのホームページアドレス(www.kabuki-japan.com)も 紹介されています。歌舞伎の筋書にも、ようやくアドレスが掲載される時代になったのですね。


2000.02.29
 昨日の毎日新聞にも掲載されていましたが、 明日から新橋演舞場『小笠原騒動』が開幕します。お家騒動に狐の怪異談が 加わり、さらに舞台にプールを設置しての本水(橋之助さんが水車にくくりつけられて 水の中にぐるぐる付けられたり、その水中での立ち回りなど)や、あっと驚く早変わりなど、 歌舞伎の醍醐味がたっぷりと味わえる仕掛けが満載です。まだまだ切符に余裕があるようなので 是非足をお運び下さい。


2000.02.29
 新聞にも一斉に出ていましたが、八十助さんが、十代目三津五郎を襲名することが、 正式に発表になりました。ネットでは随分前から話題になっていましたが(もう一つの話題は 新之助さんの海老蔵襲名です)、いよいよ21世紀初の襲名披露になることが決定ですね。 ということで、襲名披露は来年1月から。こう言っては申し訳ありませんがお父さんの 九代目は中継ぎ的印象が強かったので、八代目直系の孫として、新たな三津五郎像の 確立を目指して貰いたいです。


2000.02.29
 二月歌舞伎座昼の部の感想です。出掛けたのは23日(水)です。
『恋湊博多諷』・・・頭の10分ほど、遅刻。毛剃の仕方話がもう終わろうとしている ところでした。残念ながら、その面白さについてはカット。鴈治郎さん扮する、小松屋宗七が 小女郎との仲をべらべらと話すところは上方風のこってりした味わい。そして突然怒り始める 訳ですが、全体的に中途半端。本当に惚れているのなら、もっと怒らねばならないのでしょう。 それは後半の奥座敷の場でも、毛剃がどこまで小女郎に惚れているのか、よく分からないことにも つながります。それはともかく、密貿易の品が元船にかつぎ込まれて、それを宗七が見たことに よって、船に乗った人達を次々と海に突き落とす。そんなら初めから乗せなければ良いのに・・・。 その後のしわゆる『汐見の見得』はさすがに團十郎さんの大きさを感じさせるものでした。
話変わって、博多の茶屋奥田屋。運良く助かった宗七がやってきます。 『廓文章』の伊左衛門に通じる雰囲気ですね。小女郎は芝雀さん。 可憐で純情な女を見せてくれました。2階の髪梳きもしっとりとした情緒があって良し。 毛剃の一味が大挙して乗り込んできますが、先ほどまで縮れていた髪がここでは綺麗に 整えられているのは何故?また、部下の連中が密貿易に携わる荒くれ男にあまり見えないのは 残念。さらに、役人の詮議にうろたえる場面も、ちょっと怖がり過ぎ。結局、宗七を仲間に 入れ、遊女全員を身請けして帰って行くのですが、随所に???が感じられた演目でした。 と言うのも、ここまでは原作の発端に当たる部分で、この後宗七と小女郎は所帯を持つが、 父親の邪魔でトラブルが起き、さらに毛剃の悪行がばれて、宗七は自害、一味も捕まり、 小女郎だけが生き残って菩提をともらう、といった波乱の展開があるのです。そうした前提で 見れば、それなりに面白いのでしょうが、ここだけでは何だかよく分かりませんよね。結局、 毛剃の船中での話しぶりや見得を楽しむ演目なんでしょうか・・・?

『三人吉三巴白浪』・・・96年2月以来の通し狂言。菊五郎さん以外は 全員変わっています。その菊五郎さん、まずは気分良く、 「月も朧に・・・」とやって最高。 吉右衛門さんのお坊、團十郎さんの和尚、多分本来は逆なんでしょうが、違和感はナシ。 土左衛門伝吉は左團次さん。『熊谷陣屋』と同様、 羽左衛門さんの役が左團次さんに回って来るようになりましたね。やはりここでも どこか人の良さが感じられて、陰影に乏しい印象です。ちょっと驚いたのが翫雀さんの 十三郎。白く塗り過ぎじゃないの、その顔。吉右衛門さんの白粉もちょっと白くて 気になりましたが、翫雀さんは真っ白白。薄暗い舞台がそこだけ明るく浮かび上がる ような・・・・。萬次郎さんのおとせは良かったです。最後まで双子の兄弟とは知らずに 一途に恋する若い女(でも夜鷹の陰も出ていました)を押さえた演技で表現していました。 何しろ、お話は陰惨なもので、次第次第に血の匂いが漂ってくるのですが、さすがに 今回の舞台ではそこまでは無理。吉祥院の裏手墓地で少し感じられました。ここの 團十郎さんが抜群です。松助さんもいい味を出していました。
 そしてラストの火の見櫓、お嬢とお坊の恋愛感情が色濃く感じられる出来で、秀逸。 最後は三人揃って、析が入るのですが、幕が閉まるまで菊五郎さんが「にらみ」を きちんと演じていたのには感心しました。


2000.02.25
 昨日書き忘れましたが、3月27日(月)に第31回俳優祭が歌舞伎座で開かれます。 実に3年ぶり、東西の歌舞伎俳優ほぼ全員、新派から若干名が参加されます。 数年に1度のお祭り騒ぎ、憧れの役者さんと写真を撮ったり、お話をしたり、 大いに楽しめる企画が目白押しです。
12時開演の昼の部と4時半開演の夜の部があります。
入場料は少々高くなっており、1・2階席全て1万8千円(税抜き)、3階A席6千円(税抜き)、 3階B席4千円(税抜き)、1階桟敷席2万1千円(税抜き)となっています。4階席(これは 普通幕見席です)は当日売のみで3千円(税抜き)です。
電話予約受付が本日25日(金)から始まります。

チケットホン松竹 03-5565-6000
(10時〜18時)


 気になる内容ですが・・・

○たぬき会
 清元 保名
   浄瑠璃 田之助、吉右衛門、東蔵、松助、孝太郎
   三味線 富十郎、菊輔、歌昇、松太郎
   小 鼓 羽左衛門

 長唄 勧進帳
   唄   芝翫、段四郎・・・他
   三味線 仁左衛門、萬次郎、辰之助、猿弥、芦燕
   囃 子 八十助、時蔵、翫雀・・・他

豪華船春賑(ごうかせんはるのにぎわい)・・・模擬店
   総指揮 梅玉

○お楽しみ抽選会

鯛多二九波濤泡(タイタニックなみのうたかた)
  原案 京蔵  脚本 石川 耕士
  共同演出 團十郎、猿之助
  美術アドバイザー 幸四郎
  照明アドバイザー 玉三郎
  演出補 團蔵、松助、右近、猿弥
  装置 金井 俊一郎 照明 吉井 澄雄
  義太夫作曲 竹本 葵太夫
  長唄作曲  杵屋 巳太郎
  作 調   望月 太左衛門

  出演 雀右衛門、鴈治郎、富十郎、猿之助、菊五郎、團十郎、
   仁左衛門、宗十郎、田之助、八重子、松江、段四郎、
   勘九郎、八十助、福助、染五郎、菊之助 ほか

 『鯛多二九波濤泡』!!!???たまりませんね、この漢字の使い方。一体どんなお話なのかは 見てのお楽しみ。ちょっとワクワクしてきました。なお、窓口での販売は27日(日)からですが、 ほとんど残っていないでしょうね。


2000.02.24
 昨日歌舞伎座昼の部を観てきました。ちょっと疲れていますので、感想は後日。 4月の中村会の演目が掲示されていましたので、写してきました。若干書き損じが あるかもしれません。

勘三郎追善・中村会四月大歌舞伎

昼の部
平家女護島(俊寛)
 俊寛   ・・・仁左衛門
 丹波少将成経・・勘九郎
 平判官康頼・・・歌昇
 千鳥   ・・・福助
 瀬尾太郎兼康・・左團次
 丹左衛門尉基康・吉右衛門

舞鶴雪月花
 上 さくら・・玉三郎
 中 松虫・・・勘九郎
     ・・・七之助
 下 雪達磨・・富十郎

梅雨小袖昔八丈(髪結新三)
 髪結新三 ・・・勘九郎
 弥太五郎源七・・仁左衛門
 白子屋お熊・・・玉三郎
 下剃勝奴 ・・・染五郎
 加賀屋藤兵衛・・又五郎
 白子屋後家お常・宗十郎
 家主長兵衛・・・富十郎
 手代忠七 ・・・芝翫

夜の部
一条大蔵譚(檜垣・奥殿)
 一条大蔵卿・・・吉右衛門
 吉岡鬼次郎・・・梅玉
 同女房お京・・・松江
 八剣勘解由・・・芦燕
 同女房鳴瀬・・・吉之丞
 常磐御前 ・・・芝翫

口上
 幹部連中

鰯売恋曳網
 鰯売猿源氏・・・勘九郎
 なあみだぶつ・・左團次
 博労六郎左衛門・染五郎
 庭男実は次郎太・亀蔵
 亭主   ・・・弥十郎
 傾城蛍火実は姫・玉三郎

鏡獅子
 小姓弥生 ・・・勘太郎




 中村勘三郎さんの十三回忌の追善公演です。久々に勘九郎さん、玉三郎さん、 仁左衛門さんが顔を揃えます。演目は、勘三郎さんが得意としたものが中心と なっており、新鮮味はありません。個人的には仁左衛門さんの俊寛と、なぜか すれちがって見損なっていた『鰯売』が楽しみです。また勘太郎くんがどのような 鏡獅子を踊るのか、興味があります。それにしても福助さん、千鳥だけ?勘九郎さんの 新三、義父を思いっきり足蹴にできるの?なんて変な興味も沸いてきました。

 ついでに、四月の国立劇場です。

花形若手歌舞伎

夏祭浪花鏡
 団七九郎兵衛 ・・・翫雀
 一寸徳兵衛  ・・・扇雀
 団七女房お梶 ・・・秀太郎
 徳兵衛女房お辰・・・鴈治郎
 釣船三婦   ・・・吉弥(板東)
 おつぎ    ・・・竹三郎

英執着獅子
 傾城・獅子の精・・鴈治郎
       ・・・壱太郎


 こう書いてみると、義平次は誰がやるんでしょうね?結構ポイントになりますが・・・。 今回は、長屋裏の後に、「団七内」「屋根上捕物」が付きます。上方風演出との ことで、大いに楽しみにしています。

 さらについでに新橋演舞場。もうご存じの通り、猿之助さんのスーパー歌舞伎、 『新・三国志』が、4月5月連続でアンコール公演されます。 配役は変わっていないようですね。それにしても、猿之助さんの集客力、すごいですね。


2000.02.23
 21日(月)に新橋演舞場で『ご存じ浅草パラダイス』を観てきました。 勘九郎さん、藤山直美さん、柄本明さんのコンビで、97年、98年に続いて 3度目の上演になりますが、今回は第1回の台本に戻った形になっています。 前回前々回の感想と併せてお読み下さい。
 福島の田舎から浅草に売られて来たのが、寺島しのぶさん扮する、八重。これは前々回と 同じ配役です。また、前2回波乃久里子さんが演じた女剣劇の座長を、今回は渡辺えり子さんが、 その座長を慕う若い座員を中村勘太郎くんが演じています。解説風に登場する、小山三・助五郎 コンビも健在。中村獅童さんの父親役で山口崇さんが出演。客席はずらり補助椅子が並び、 開幕前から大行列が出来ていました。
 とりあえずもう見慣れた舞台、前半は無難に進行していきます。お定まりの勘九郎・直美の 突然タンゴで踊り出すシーンも、分かっていても笑わせます。ただ、公演の後半に入って 多少疲れが出てきていたのか、ほとばしり出るパワーは感じられませんでした。ただ、 しのぶさんの演技の確かさ、そして愛らしさ、勘太郎くんが罰として演じた早素振りが 本物だった(実はわたし、幼稚園から大学まで剣道を続けていました。この早素振りは防具を つけない準備運動としてはかなり厳しいもので、勘太郎さんの動きはかなり本格的でした。 剣道、ならっているのかな・・・???)ことが印象に残りました。
 しかし、第3部に入って出演者の気力が一気に爆発します。シリアスな演技になった時、 勘九郎さん、直美さん、しのぶさんの実力がいかんなく発揮されたのです。分かっては いても、「浅草はわたしのパラダイス」の言葉には、涙が出てしまいました。また、一度 家を出たお勝(直美さん)が戻って来るあたりのドタバタ、そしてしんみりに、乾いたはずの 瞼が再び塗れてきました(ちょっとジジイモードに入っているかもしれません)。そして、 フィナーレ、みんなが歌い踊る姿は気持ちを明るくさせます。相変わらずのテーマ曲も 耳に心地よいです。最初の頃の不満はどこへやら、終わってみれば満足して、寒風吹きすさぶ 銀座の街を歩いていました。
 全体的には笑いが洗練されておらず、スラップスティック的な動き、言葉(デブなど肉体的な 欠陥で笑いを取る)が随所で気になりました。また端役の人達の意識の集中が切れることも 気になります。人気に溺れることなく、もう少し全体的に磨きをかければ、もっともっと良く なると思いました。しかし、勘九郎さんは、昨年出した『歌舞伎ッタ!』( アスペクト)の中で 2001年でこのシリーズは一旦終了、と宣言しています。なんと源ちゃんが死ぬんだとか。 詳細は本を読んで下さい(261〜3頁です)。


2000.02.20
 もう購入された方も多いと思いますが、演劇出版社から 出版された『女形の美学』(1月臨時増刊特大号)が 書店に並んでいます。1900円です。綺麗な写真と共に、インタビューや解説付きで、女形を 演じている、俳優さんがほぼ全員取り上げられています。わたしとしては107頁の八世岩井半四郎の 写真にゾーとし、役の解説が参考になりました。芝翫さんのインタビューの最後の方も、興味深いです。


2000.02.20
 今日20日(日)の午後10時半より、NHK教育TVで、昨年10月国立劇場で上演されました 『音菊天竺徳兵衛』が放送されます。菊五郎さんの主演で、蝦蟇が出たり、 遍歴話では、現代風俗を織り込んだり、なかなかサービス旺盛なお話です。ご覧になった方も、 見に行かれなかった方も、要チェックです。新聞のTV欄などで確認の上、ご覧下さい。


2000.02.18
 実はいま、歌舞伎の総合リンク集を新たに作ろうと、いろいろ準備をしているところなのですが、 そんな中、数多くの歌舞伎に関する著作を発表されていらっしゃる、渡辺保さんが今年の1月に 劇評のホームページを開設されていたことが分かりました。
私の感想などとは雲泥の差のプロの劇評を是非ご覧下さい。

渡辺保の歌舞伎劇評・・・http://homepage1.nifty.com/tamotu/index.htm


2000.02.18
 16日(水)に、国立劇場で猿之助さんの春秋会を観てきました。なんといっても、合計1時間10分の 休憩をはさんで6時間。疲れた〜〜、というのが一番の感想です。見る方が、これだけ疲れるのですから、 演じる方はいかばかりか・・・、猿之助さんのパワーには圧倒されてしまいます。

 『水天宮利生深川』・・・なにしろ通し狂言で観るのは初めての事。黙阿弥の明治に入ってからの 作で、いわゆる散切り物すが、全体的には盗賊小天狗要次郎と 『筆屋幸兵衛』(本来は筆幸兵衛と言うべき、と補綴した石川耕二さんが、書いて おります。)の筋が絡み合って、歌舞伎味は十分感じられました。
ただし、今回見る限りでは(原作から1時間はカットされているようですが)、要次郎の筋はそれほど 面白くなく、やはりこれまで何度も演じられてきた『筆幸』の方が、格段に面白く観られました。 勿論、幸兵衛の乳貰いの場面がその前に付いたことで、それがより哀れさを誘う助けになっている ことも否定できません。赤ちゃんの着物を高利貸(猿弥さん)奪われることが、幸兵衛にとって、 どんな意味を持つのか、はっきりと理解できるからです。なにしろ、この幸兵衛貧家の場は圧巻でした。 次第次第に狂っていく姿が、隣家で催されている清元と対比され、さらに義太夫が追い打ちを かける。妻を病で亡くし、幼子を3人も抱えて苦悩する、元幕臣の悲哀が舞台一杯に広がりました。 やはりなんといっても過去の名優たちが練り上げた演出には、素晴らしいものがあるのでしょうね。
幸兵衛の父の弟子であり、今は成功者として邸宅を構える萩原良作と、元盗人仲間で、今は堅気の 車夫をしている三五郎を演じた段四郎さん、手堅い演技で安心して見ていられました。また、大家と 盗人仲間の伝次を演じた歌六さん、やくざ風の演技ははまっていましたが、どこかおかしみのある 大家さんはもうひとつ。また、良作の妻を演じた笑三郎さんは、まず最初の赤ん坊の泣き声を聞いて 家の中から外を覗く姿が綺麗でした。
思いがけなく素晴らしかったのは、亀治郎さんが演じた盲目の娘お雪。目が見えない演技はいろいろ 大変なのでしょうが、舞台の上での存在感が圧倒的です。目が治った後の、ピンクの振り袖姿も 艶やかで、またまた期待が大きくふくらんできました。その他では、段之さんのおっとりした 美しさが目に付きました。

 『日本振袖始』・・・2年前の6月、 歌舞伎座で玉三郎さんが演じた八岐の大蛇が印象に残っていますが、今回の猿之助さんの演出も とても面白かったです。
花道の出では、玉三郎さんはじっくりと、大蛇が姫に化けているという姿を演じていましたが(足首をくねくね と折って、蛇の鎌首をイメージさせたり)、猿之助さんはあっさり。稲田姫(今回は玉三郎さん)との 会話もナシ。勿論、今回文楽座から3人の若手太夫さんと5人の三味線さんが出演されており、 すべては義太夫が語ります。素盞鳴尊は右近さん。キビキビした動きで、好感が持てましたが、 やはり素盞鳴尊がもつ神話的な雰囲気は出ていませんでした(この演目でそれを要求するのは 無理な話なのかもしれません)。そして、演出的に楽しめたのが、後ジテの大蛇の本性を現したシーン。 前回は、真っ赤な下を全員が出したりするのが印象的でしたが、今回はセットを変えて階段などを つけ、7人の分身がくっつき、蛇のようにとぐろを巻いたり、尾を立てたり、素盞鳴尊にからみついたり していました。これが不気味さを強調しており、また頭は猿之助さんということで筋が通って います。その分身たちが最後は次々と斬られて、大蛇に飲み込まれていた稲田姫も剣で腹を 切り裂いて出現。花形3人が揃って、なかなかすっきりした気分になりました。

 ところで、猿之助さんの自主公演である第二次春秋会はこれが最後。通し狂言という、 商業歌舞伎ではなかなか出来ない試みをされて、私たちも大いに勉強になりました。これからは こうした試みを国立劇場が積極的に後押しをしていくべきでしょう。当然、心ある役者さんたちは みなさん通し狂言や復活狂言をやってみたいと思っているはずです。さらに、新作の上演も 今後は大切になっていくことでしょう。今後、猿之助さんの春秋会が観られないのは残念ですが、 また別の試みを楽しみにしたいと思っています。


2000.02.14
 8日〔火)に歌舞伎座夜の部を観てきました。吉右衛門さんの『熊谷陣屋』が最高傑作。 歌舞伎の醍醐味を堪能しました。

 『一谷嫩軍記(熊谷陣屋)』・・・吉右衛門さんの熊谷に雀右衛門さんの相模。相模の 陣屋入りはなく、制札の前の町人達の会話から始まります。熊谷の戻りは、『寺子屋の』 武部源蔵と同じ雰囲気で、まず吉右衛門さんが憂鬱な想いに沈む熊谷の心情を、じっくりと 見せてくれます。そして、相模を見ての狼狽と怒り。科白回しが古風で、丸本歌舞伎の 雰囲気をたっぷりと味わわせてくれます。敦盛を討った、と言ったところで飛び出して 来るのが、時蔵さん扮する、藤の方。ここの吉右衛門さんの動き、身のこなしも最高。 そして「物語」は、逆にてきぱきとこなし、二人の女性の悲しみの表現を引き出します。 最高の盛り上がりを見せる首実検は、制札に書かれていることの解釈は間違っていなかった のかと、理不尽な仰せへの怒りも半分込めて、ぐっと義経を睨みます。この一瞬の 気の張りようがまた良いのです。我が子と気づいた相模の驚愕。制札を使っての大見得も 仰々しくなく、ピタリと決まりました。胸を突かれた相模が気を失わず、しばらくオロオロ するのはちょっと気になりました。
 義経役の菊五郎さんもしばらく落ち着きがないように見えましたが、弥陀六が登場して からの述懐がさすが。世俗を超越した高貴さを出していました。左團次さんの弥陀六、 最近こうした老け役が多くなりましたが、まだ全体に若い雰囲気は残っています。以前観た、 羽左衛門さんと比べると、老けようは足りません。それでも、平家一門としての悔しさ、 自分が義経を助けた行為への悔恨はきっちり出していました。
 最後の出家姿になり、花道を入る熊谷、これがとどめの良さでした。昨年、右近さんの 会では、相模と一緒に出立するという型を見せてくれましたが、やはり一人旅立つ熊谷の 方が、心にジンときます。そして、十六年は夢、のくだりで鬱屈した想いを一気に 吐き出します。法螺貝陣太鼓が鳴って、キッとするところも、1回だけでしつこくなく、 憔悴した熊谷の心情がひしひしと伝わって来ました。全体的に緊張感が漂い、凄みを 感じさせる舞台になっていました。

 『桂川連理柵(帯屋)』・・・ここでも吉右衛門さんと雀右衛門さんが夫婦役。注目は 鴈治郎さんが長吉とお半の二役を演じること。まず、竹三郎さんと板東吉弥さんの演じる 悪〜い母子が秀逸。吉弥さんはなんだか久しぶりの悪役でしたが、捨て科白を上手に使って どうしようもないバカ息子を好演しています。竹三郎さんも憎らしい継母がピッタリ。 そして、二人から引っぱり出される長吉、エッッこれが鴈治郎さん!!??と驚いて しまうほどの変貌ぶり。後半のお半の愛らしさ(さすがにちょっとトウは立っていましたが)と 比べても、全く別人かと思えるほど(隣のおばさん達は、息子だ、と言っていました)。
吉右衛門さんは先ほどとはうって変わって、情けない養子役。しかも、ひょんなきっかけとは いえ、14歳の隣家の娘と出来てしまう浮気男で、しどころはあまりありません。問題は、 又五郎さんの父親と、妻役の雀右衛門さん。ほとんど科白が入っておらず、プロンプターの 声がうるさいほど聞こえ、さらにその声さえも聞き取れずに詰まるという、見苦しさでした。 お二人のこれまでの実績は十分に分かっているつもりですが、科白を憶えられなくなったら、 役者は終わりです。5日間はまあ許される、という歌舞伎独特の甘えもおかしいのですが、 この日はもう7日目。一階席の前の方では、白けた雰囲気がスーと生まれていました。 わたしが、最も嫌いなのが、科白を憶えていないこと。ついきつい言葉になりました。

 『春待若木賑』・・・今月の歌舞伎座、一番の目玉かもしれません。小学生の御曹子6人が 舞踊を披露します。
『正札付根元草摺』・・・時蔵さんの二人のお子さん、梅枝くん(小6)と萬太郎くん(小4)の 時致と舞鶴。梅枝くんはさすが最年長で動きもしっかりしており、指先まで神経が行き届いて 踊っていました。萬太郎くんは、錦之助さんにどこか面影の似たなかなかの美少年。時々、 必死に両足の親指を立てようとしているのが、可愛かったです。
『手習子』・・・翫雀さんの長男壱太郎くん(小3)が、一人で踊ります。「僕だってない」と (歌舞伎座の舞台で一人で踊るという事)翫雀さんが筋書の中で語っているのが、微笑ましいです。 しかし、ちょっと口元の妖しい、なかなか美しい女形でした。
『お祭り』・・・歌昇さんの二人のお子さん、種太郎くん(小4)と種之助くん(小1)、 そして萬次郎さんの長男竹松くん(小3)の3人で踊ります。さすがに、1年生はまだまだ かわいい。しかし、この顔が歌昇さんに瓜二つ。竹松くんもお父さんに似ています。 しっかり大向から「待ってました」の声がかかり、「待っていたとはありがてぇ」と 受けて、客席は大喜び。次々と若い後継者が現れて、これからも楽しみは尽きませんね。
この日、9時前に劇場を出ると、外は久しぶりの大雪。それでも、なにか心が温まって 気分良く家路につきました。

2000.02.07
 久しぶりに、私の歌舞伎ノートを更新しました。これは、先月の舞台で興味深い言葉や、 演技、舞台装置などについて、以前に読んだりして面白かったものを書いています。お楽しみ下さい。

2000.02.07
 今月の歌舞伎座で、久しぶりの『三人吉三』の通しが演じられていますが、観劇 前に読まれると良い本が昨年出されています。
『悪への招待状』 小林恭二 著
 昨年暮れに創刊された、集英社の新書です。お値段は660円。
以前『カブキの日』(講談社)で、三島賞を獲得した、作家小林恭二氏が書き下ろ した、江戸・歌舞伎入門書で、題材を『三人吉三』にとっています。入り組んだ ストーリーをあらかじめ理解するため、また観た後に再確認するため、まさに格好 のテキストになっています。


2000.02.07
 1月27日(木)、国立劇場に出掛けてきました。なんと1月になって5回目の 歌舞伎観劇。さすがにちょっと疲れました。国立は千秋楽だったのですが、客席は 空席が目立ち、歌舞伎座、新橋演舞場と比べると、寂しさは否めませんでした。
座組が芝翫さんを中心にした成駒屋一門で、中村会の印象もあり、確かに華やかさ に欠ける印象でした。

 『鳴神』・・・橋之助さんの鳴神に松江さんの雲の絶間姫。黒雲坊、白雲坊は 玉太郎さんに獅童さん。二人とも、教科書通りの演技でしたが、やはりちょっと した、ニュアンスがまだまだ。軽いおかしさ、色っぽさへの反応など、ベテランの 味がそれなりに価値があることが、改めて認識されました。
松江さんの絶間姫、今までの中でも、一二を争う、色っぽさでした。特に例の胸に 手を入れられる所の表情は最高。花道の出も綺麗でしたし、黒雲坊・白雲坊を相手 の話も、そして鳴神と二人きりになっての会話も、素敵でした。注連縄を切る前の 鳴神に悪い、という気持ちはそれほど感じられませんでしたが、全体的に若い 橋之助さんと遜色ない若やいだ絶間姫だったと思います。一方、橋之助さんは 古風な容貌が、歌舞伎十八番にふさわしく、迫力ある鳴神が出来上がりました。 前半のつい話に聞き惚れ、転がり落ちるところも、自然でしたし、飲めぬ酒を無理 やり飲まされるところも、好色の想いに捕らえられた破戒僧の姿が描かれていまし た。その反面、全土の龍を封じ込める能力を持った、高貴な僧の印象が薄れて しまったのは、残念でした。

  『忍夜恋曲者(将門)』・・・以前、歌右衛門さんが演じたのをTVで見たこと はありますが、生の舞台は初めて。今回は福助さんと梅玉さん。しかし、ちょっと 疲れが出て、途中からダウン。半分ぐらい朧気な記憶しか残りませんでした。
福助さんに似合いの鬘と衣装だと思っていたのですが、意外にはまっているように 見えず、私には舞踊もまだまだ退屈でした。ちょっとこの演目との相性が悪いの かもしれません(実はTVで見た時も、途中で飽きてしまいました)。福助さん、 御免なさい。

 『嫗山姥』・・・最後が芝翫さんの八重桐。眼目はその一人しゃべりなのでしょ うが、どうもこの演目も、そこに来ると眠たくなってしまいます。以前歌舞伎座で 鴈治郎さんが演じた時も、そうでした。この演目を観る時には、体力十分でないと 駄目なようです。脇に回った福助さんと橋之助さんがその特徴を出していて、逆に 印象に残りました。これも感想にはなっていませんね、申し訳ありません。
 最後に、「これぎり」となり、国立劇場恒例の手拭いまきになった時、福助さん の長男と橋之助さんの長男が黒衣姿で登場して、手拭いを配ったのは可愛かった です。その時、客席の後ろで騒ぐ声がしたのですが、それがママに連れられた 橋之助さんの次男。微笑ましい一齣でした。







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