たった1枚の銀貨で、人々は魔法使いを雇った




 その少年は、年齢とは不釣合いなくらい、落ち着いた静かな声で言った。
「お願いがあるんだ」
少年の真剣な目を見た瞬間、魔法使いは直感した。
「これは厄介なことになりそうだな…」


少年の願いは?




 ふと、彼の師の言葉がよみがえった。
「人の心からの願いに触れるのは、時に危険なこともあるのだ。そして、善意からくる行動が常によい結果をもたらすわけではない…」
 その後、魔法使いとしての経験を積むうちに、彼はその言葉の重みを思い知ることになった。
 魔法使いというのは、普通の人が考えるよりも、はるかに危険な職業なのだ。


少女の願いは?






「では、わたしがあなたを雇います」
 彼女の言葉を聞いて、魔法使いはひそかに微笑んだ。この二人は、やはりよく似ている…
 彼女の茶色の瞳がまっすぐに彼を見据えていた。強い意思と自律心を持った人であることは、見ているだけでわかった。
 どうやら魔法使いは、予想違わず厄介ごとに巻き込まれてしまったらしいが、
不思議と嫌な気はしなかった。
「…なんとかやってみましょう」
 彼がそう言うと、すこしだけ彼女の目に安堵の色が浮かんだ。
 





若き魔法使いの旅を描いた
シリーズ第一段! (本当か?)




       97年春始動!  …するような気がする (大嘘かも(^^;))





時間小説館..
「櫻前線」/「魔法使いの夜」予告編