その少年は、年齢とは不釣合いなくらい、落ち着いた静かな声で言った。
「お願いがあるんだ」
少年の真剣な目を見た瞬間、魔法使いは直感した。
「これは厄介なことになりそうだな…」
ふと、彼の師の言葉がよみがえった。
「人の心からの願いに触れるのは、時に危険なこともあるのだ。そして、善意からくる行動が常によい結果をもたらすわけではない…」
その後、魔法使いとしての経験を積むうちに、彼はその言葉の重みを思い知ることになった。
魔法使いというのは、普通の人が考えるよりも、はるかに危険な職業なのだ。
「では、わたしがあなたを雇います」
彼女の言葉を聞いて、魔法使いはひそかに微笑んだ。この二人は、やはりよく似ている…
彼女の茶色の瞳がまっすぐに彼を見据えていた。強い意思と自律心を持った人であることは、見ているだけでわかった。
どうやら魔法使いは、予想違わず厄介ごとに巻き込まれてしまったらしいが、
不思議と嫌な気はしなかった。
「…なんとかやってみましょう」
彼がそう言うと、すこしだけ彼女の目に安堵の色が浮かんだ。