ジョアン・ジルベルト 再来日公演 東京国際フォーラム

信じられないほど早くに再来日公演が実現しました。
公演は2004年10/2、3(大阪)と10/6、7、10、11(東京)で行われ、
私は東京公演
4日間を観に行って参りました!
曲目リスト(一部未完成)と共に、東京公演各日のレポートです。

*曲目リストは、会場に貼り出されたものを元にしています。
青表示は1日のみ演奏曲。

10/6(水)
10/7(木)
10/10(日)
10/11(月)

01.Agua de marco
02.De conversa em conversa
03.Nao vou pra casa
04.So' em teus bracos
05.Eu sambo mesmo
06.Foi a noite
07.Brigasa nunca mais
08.Nova Ilusao
09.
Tim tim por tim tmn
10.Saudade da Bahia
11.Pra que disctir com madame
12.Curare
13.Samba de uma nota so'
14.Pra machucar meu coracao
15.Mulata assanhando
16.Ave Maria no morro
17.Corcovado
18.Retraro em branco e preto
19.Dralice
20.Vou te contar
21.Isto aqui o que e'
22.Caminhas cruzados
23.Isaura
24.Estate
25.Desafinado
26.Um abraco de bonfa
27.Chega de saudade

01.Ligia
02.Agua de marco
03.Foi a noite
04.De conversa em conversa
05.Eu sambo mesmo
06.Caminhos curzados
07.Samba de uma nota so'
08.Vou te contar
09.Retrato em branco e preto
10.Bolinha de papel
11.Ave Maria no morro
12. Um abraco no Bonfa
13.Isto aqui o que e'
14.Corcovado
15.Chega de saudade
16.Desafinado
17.Insensatez
18.A felicidade
19.Nova Ilusao
20.Estate
21.Mulata assanhando
22.Preconceito
23.Curare
24.Saudade da Bahia
25.Garota de Ipanema

01.Nao vou pra casa
02.Pra machucar meu coracao
03.Voce vai ver
04.Milagre
05.Desse Alguem
06.Marca na padre
07.Eu sambo mesmo
08.Nova Ilusao
09.Um abraco no Bonfa
10.Sem voce
11.Acontece que eu sou baiano
12.Estate
13.Ligia
14.Agua de marco
15.So em teus bracos
16.Odete
17.Retrato em branco e preto
18.A felicidade
19. Este seu olhar
20.Vou te contar
21.Mulata assanhando
22.Foi a noite
23.Pra que disctir com madame
24.Meditacao
25.De converca em conversa
26.Samba de uma nota so'
27.Desafinado
28.Chega de saudade
29.Insensatez
30.Bplinha de papel
31.O amor em paz
32.Tim tim por tim tim
33.Garota de Ipanema

確認中

10/6(水)
初日は、昨年同様に私もなぜかまた緊張。自分のライブより緊張しているのは一体なんなのか?自分でもよくわからない。期待に胸膨らませて会場へ向かう。
19:00の開演予定に始まる訳がないことは、もう観客全員周知の事実である。予想通り、19時の時点で「アーティストはまだ会場に到着しておりません」のアナウンスが入り、場内には失笑が漏れる。その後も、「こちらに向かっている」「到着した」「準備中」...のアナウンスが続き、結果40分遅れのスタート。これでも早い方かな?

登場したジョアンは余裕の表情。観客も昨年程の緊張はなく、すんなりと演奏が始まった。
大阪でも演奏したという「Agua de Marco」でスタート、「De conversa em conversa」と続く。
しかし、どうも今日のジョアンはいつもと違う。”いつもと”なんて 言っても、私だってそんなに何度も観たことがある訳ではないが、今まで観た6回(この日で7回目)のライブとは明らかに様子が違う。喉の調子が悪いのか、低音がぜんぜん出ていないし、高い音を歌う時にすごく苦しそうな表情をする。あんな顔をして歌っているジョアンは初めて観た。ギターのミスタッチも多く、全体のフォームも左肩がいつもよりもかなり下がって、前屈みになっている。マイクの位置が少し低かったので、それが影響して前のめりになっているのかなぁとか、大阪疲れが残っているのかなぁなどと考えていたら、30分位して「Foi a noite」を歌い出した頃から少し調子が出てきたようだった。その後もお馴染みの「Saudade da Bahia」「Pra machucar meu coracao」「Dralice」「Caminhos crusados」「Corcovado」...などなどが続くが、本来のジョアンの演奏とはちょっと違う感が残る。ジョアンは途中で何度も眼鏡を取り、汗をぬぐいながら「目に汗が入ってかなわないよ」みたいな表情をした。

「Samba de uma nota so」はけっこう良かったなどとぼんやり思っていたら、もうジョアンが立ち上がる。一度退場だ。時計を見るとまだ1時間半。うーん、あっと言う間だった。
すぐにジョアンは再登場するが、いつもは1時間は演るアンコールも、この日たった30分で終了。「Chega de saudade」を最後に、結果トータル2時間弱という短さで東京初日は幕を閉じた。
翌日貼り出された曲目リストを見ると27曲もやっているのだけど、1曲1曲がいつもより短いのである。(ジョアンは自分でノッて来ると、何コーラスも繰返して1曲を歌うが、イマイチだと1コーラスで終わらせてしまったりする傾向がある。サンパウロの時なんて途中で止めてしまって「止めた。次は何にする?」みたいなことを観客に言ったりしていた)

しかしながら、この日のライブが産まれて初めて観たものだったなら、私は感激にむせっていたに違いない。だけど、今までと比べると、今日のジョアンは絶好調には見えなかった。これで感動するなんてもったいない!もっともっと素晴らしい演奏をするのがジョアンなのに!!
大阪で2日間共したという”瞑想”も東京初日にはなく、ジョアンもこの日の自分の演奏に満足していなかったのではないかと思う。明日に期待して、帰途についた。

10/7(木)東京国際フォーラム
そして2日目。
この日はなんと開演が遅れる事20分、これは驚異的な出来事である。19時に会場に到着した私は、着くなり「アーティストは出演の準備をしております」のアナウンスにびっくり、あわてた。そういう人は多かっただろう。実際に始まった時には私のまわりにはまだ座っていない席がだいぶあり、ジョアンが歌い出してから2〜30分は曲間毎にバラバラと席に着く人が目立った。

2日目のジョアンは昨日よりはだいぶ調子が戻った様子。低音の声も出ているし、なんとなくほっとして私も聴く。
ラインナップは昨日とほぼ同じだが、出来は明らかに今日の方が良い。私の隣に座っていたご夫婦(?)も、良い演奏のあとは毎回「うん!」とか「よし!」とか言いながら思いきり拍手をしていて、「昨日よりずっと良いよ〜!!」と言い合っていた。ジョアンも弾き終わった後に満足気な表情をする回数が増え、直後から次に何を弾こうかと、床に貼った選曲リストに目を凝らすようになった。

途中、ジョアンはギターを持っておもむろに立ち上がり、向かって左側のモニターを蹴ってずらし始めた。一体何をやっているのだろうと思ったら、タイトルの書いてあるその紙がそのモニターの下敷きになりよく見えなかったらしく、それをひっぱり出すために蹴っていたらしい。紙が見える様になると、嬉しそうな顔をして席に戻るという1
コマも。他にも自分の椅子の位置をズリズリとずらしたり、マイクの位置を直して歌い易く弾き易いフォームに直したり、スタッフに向かってギターのモニターがよく聴こえないというようなジェスチャーをしたりと、色々試行錯誤していた。その甲斐あってか後半からは、かなりいつもの調子が出て来たように感じた。やっぱり、昨日はマイク位置が良くなかったのかな...

この日は1時間40分の演奏の後、アンコール20分、トータル2時間。瞑想もなし。おしゃべりも一切なし。少しだけ感謝の言葉を口にした場面もあったけど、後は最初にスタッフに言ったと思われる何かの指示を出すポルトガル語のみ。うーん、2時間は短いように思うけど、いつもそうだったっけなぁ...それにしてもジョアン、どこか具合でも悪いのでなければいいけど。
金曜、土曜とゆっくり休んで、また日曜に逢いましょう。

10/10(日)
この日の開演予定は17:00。昨日が思ったより早く始まったので、警戒して早めに行くと、なんと17:10に始まった。
当たり前と言っては当たり前なのだけど、あまりの早さに会場内からどよめきが起こったほどだった。

当のジョアンは2日目よりもさらに調子が上がった様子。やはり30分くらい経過した頃から声の艶も出てきて、次から次へと曲をこなしていく。あぁ、今日がこれなら明日はもっとよくなる!と、私もとても嬉しくなる。
そして 途中、東京で初めての瞑想も入る。拍手が鳴り止まないとジョアンは動かないので、すぐに係員が飛び出してきて「一度拍手を止めてください」と言って廻っていた。その甲斐あって5分で拍手はやみ、ジョアンはまたギターを弾き出した。その後もずっと快調に飛ばし、結局この日のジョアンは2時間10分もの間、退場せずにずっと弾き続け、アンコールも25分演奏、ついにいつものパターンの2時間半
ライブとなった。
70歳を超えてこの集中力と持久力、あっぱれとしか言い様がない。2時間もずっと弾き語りをしろと言われても、そうそうできるものではない。下手でもなんでもよかったとしても、普通の人には弾き続けられないし歌え続けられないだろう。それなのに5000人もの人々に聴かせるだけのレベルのものを演奏するなんて... やっぱり凄腕ジョアンは健在だ。
特にこの日の「Meditacao」は格別!! あまりの素晴らしさにうっとりと聴き入ってしまった。

10/11(月)
そして迎えた最終日。この日は25分遅れで17時25分のスタート。ジョアンは最後の気合いを入れて?か、気持ちしっかりした足取りでステージに出て来た。
もしかしたら、もう来年は観られないかもしれない(ジョアンが来日しないかもしれないという意味です、念のため)と思うと、なぜか初めてジョアンのライブを観た昨年のサンパウロでの感動を思い出してしまい、涙が出てきた。しっかり、しっかり目と耳にこの情景を焼き付けなければ...


「Um Abraco no Bonfa」で指ならし?をして、やはり30分経過後くらいから調子が上がる。出て来た時は白人らしい真っ白な顔が次第に高揚して赤くなり、顎からは汗がポタポタと落ちている。こんな状態は絶対に体に良く無いだろうに、こんなことならスーツじゃなくてTシャツみたいな薄着で演奏した方が楽だろうに...とまた心配になるが、スーツを着てステージに立つのはジョアンなりの観客に対しての礼儀なのだろう。
1時間くらいした頃、感激した観客の拍手がまた鳴り止まなくなる。今日はラストだからか、係員もすぐには出て来ず、そのまま拍手は10分、15分...と続いた。ジョアンは下を向き、時々目を開けたり閉じたりしながら、左指をもそもそと動かしたり、右手を動かしたりしながら、そのうちまたぱったりと動かなくなってしまった。昨年は「大丈夫なのだろうか??」と本気で心配したが、弾き続けての疲労もあるだろうし、ここまで大阪、東京と6公演もやってきて大変だったなぁという感無量の部分もあるだろうし、ちょっと休憩した方がいいよなーと今年は思ってしまい、時々拍手に参加しながらも動かないジョアンをじっと見つめて待っていた。私達はいつまででも待つから、ちょっとゆっくりして下さいというねぎらいの気持ちで私は
いっぱいだったから。

20分くらいしてから係員が登場(前方の左右の扉からほぼ同時に女性係員が飛び出してきて、手のひらを床に平行にしながら小走りに後ろへ「拍手をおやめください」と言いながら走って行ったので、同行していた知人はこの様子を「なんだかヒゲダンスみたいだったね」と言っていた)しかし今日はなかなか拍手が止まない。結局25分経過して最後の1人が拍手を止めると、それを待っていたかのようにジョアンはすぐにギターを床に置いて立ち上がり、観客にむかって自分も拍手をし始めたのだった。それをみてまた観客も拍手!!そして拍手の大洪水は続き、事情がよくわからない人から観たら、「もう、一体何がどうなってるの?!」という感じだったと思う。でもこの一体感というか、これがジョアンも嬉しく楽しいのではないだろうか?

そしてそれからがすごかった。一度退場してアンコールで再登場。それが終わっても、今日は最後だから、もしかしたらもう一度出て来るかもしれないとの期待をこめて拍手をしていたら、本当にまたジョアンが帰って来たのだ! そしてそのアンコールも終わるかと思いきや、立ち上がったジョアンは観客の拍手の嵐にそのまま座り直し、また弾き始めたのである!しかも、「♪O Japao Du du du du du... Meu coracao〜」(もしくは Ao Japao, Du du du du du... Do meu coracaoだったかもしれない)と、即興で日本への感謝を込めた歌を創り、私たちに歌ってくれたのだ!これはかなり感動、鳥肌ものだった。嬉しそうに、ちょっと恥ずかしそうに歌うジョアンは、本当に日本を愛してくれているように見えた。
そして「So daco samba」「Bim bom」 など、あまりやらないような曲も演奏してくれた。この2曲はとってもシンプルなだけに、ジョアンが弾くとものすごく格好良いんだろうなと思っていただが、その通り、いや想像以上だった。

しかし、アンコールの合間合間に ジョアンはエアコンについてずっと「Sem ar condicionado, Sem ar cndicionado」(エアコンなし、エアコンなし)と文句を言っていた(笑)。たぶん、エアコンは切っているのだろうけど、送風はされていたので、それが気に入らなかったらしい。最初は「悪いけど、喉に良くないから、私にはエアコンをとてめてもらえた方が良い」という丁寧な言い方だったが、だんだん「たぶん切ってないだろう」とか「他はすべて完璧だ。エアコンを止めてくれ」「エアコンはなしにしてくれ、私は悲しいよ」とまで言っていた。でもあれだけの人数が入ったホールの送風(換気)まで止めたら大変なことになる。1階席の私はまだよかったが、2階はかなり暑かったと後で聞いた。しかも、このライブが終わったのは21時15分。計算してみて欲しい。なんと約4時間である!最後の2曲くらいは、聴いている私も熱気と集中疲れでクラクラしてきたほどだ。しかし、このまま5000人で徹夜か...と思うほど、ジョアンはノっていた。だって昔は、一晩中同じ曲を繰返し、翌日に朝から仕事がある同居人に聴かせていたくらいだから...筋金入りなんだものね。
こうして大盛況の4日目は終わったのだった。 ステージの袖に消えるジョアンの後ろ姿を、私は一生忘れないだろう。

今年は選曲ラインナップはだいたい4日とも同じで、珍しい曲の演奏が多かったのは最終日だったが、とりたてて大きな差はなかったように思う。全体的な質としては、私は3日目が一番良かった気がするが、異様なほどの盛り上がりを見せた4日目が、やはりピカイチかもしれない。うーん、でも終わってみると、どの日もそれなりの良さがあるし、その日にしか聴けないジョアンの歌があったようにも思う。

また来年も...は無理かもしれないが、ブラジルから遠く離れたこの東洋の国に、あなたのファンがこんなにいっぱいいるのだ。そして、こんなにも自分を幸せにしてくれる音楽を創ってくれた彼に、私は心から感謝したい。ジョアンの存在があっての人生を私は送っているのだし、他にもそういう人がたくさん居る。ジョアンの調子が悪かろうが良かろうが、本当はそんなことはどうでも良いことなのだ。
オンリーワンとは、こういう人のことをいうのだなあと、つくづく思った4日間であった。

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