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ついに2001年7月、3rdCD『猫とボサノバ』が誕生しました。
このアルバムの制作風景をまとめた"making"、ではごゆっくりどうぞ!
[photo: akiko yanagisawa]
夏のライブが終わってから頭を「CD作るぞ〜モード」に切り替え。
ノートにイメージ構図やら何やらをいっぱい書いて、輪郭をはっきりさせていきます。
今回のアルバム・コンセプトは
”表参道の裏路地で見つけた知る人ぞ知る小粋なアジア系雑貨屋”。
この長ったらしいコンセプトを早々に決め、タイトル「猫とボサノバ」を決定。
この猫はその雑貨屋さんで飼われていて、ボサノバが好きなのです。
アルバム全体でどんな色を織り成すようにするか、あれこれ構想を練る毎日がいよいよスタートです。
イメージがはっきりしてきたところで、今までの曲を整理して収録曲を決めます。
結局、すでに作ってあった曲を使うことにしたのは「凪」と「海星」の2曲になりました。
全6曲のうち、4曲は書き下ろし。
さて、どんなのを書こうか?...と、私にとっては曲作りが一番楽しい作業です。
曲のデモはまずギターで作り、スキャットで歌ったものをラフに録音します。
それを数日かけて聞き直し、だんだんしっかりと構成を作りながら録音を繰り返し、
最終的な形が決まった段階で、今度はシーケンサーで簡単なデモを作ります。
黒猫の親子がパソコンの上からエール。
出来上がった曲たちの曲順も考慮に入れて、作詞の方向性を決めます。
今回、曲作りはT3「海星」を除く全曲が曲先(曲を先に、詩は後に)。
これは”まず詩ありき”の私としては、初めての試みです。
言葉に縛られて作曲するのも、メロディーに縛られて作詞をするのも、難しいという点では
同じですが、できあがるものの感覚は違うかもしれないなぁというのが今回の感想。
「海星」は、詩を書きながらメロディーも一緒に出来てしまったパターンで、
私の場合、そういう曲は後々もずっと気に入っていて、なぜか3拍子が多いのです。
デモができたら、とにかく作詞!ノートを何ページも使ってありったけ書いて 削って行くのが私のやり方。 2月は明けても暮れても作詞の毎日で、なんだかイっちゃった人みたいになりました(笑)。
シンガーソングライターの一番の強みは、作詞・作曲・歌のトータルで1つのイメージを
完成させ易いこと。だから、作曲の段階でだいたい「こんな感じの歌詞にしよう」というのが
なんとなく頭にあるのですが、私はタイトルに関してはなかなか決まらないことが時々あって、
そんな時はまさに七転八倒。たとえば、T6「十字架」は、最初決めたタイトルは「白い十字架の島」。
でも、全曲を並べた時に「ヴィンロンの鳥籠」の「鳥」と「島」の字が似通っているのが
ヴィジュアル的にどうしても気に入らず、さんざん考えたあげく、「十字架」に変更しました。
こんなことでも、夢に見るほど悩んでいるもんなんですよ〜
今回からレコーディングソフトはLogic Audioを使用。
操作やデモの出来上がりを試しつつ、作曲活動を同時進行させて行きます。
一番初めにアレンジをスタートさせたのがT4「私」。
打ち込みの心地よい感覚と、悩める線の妖しさを出すべく、フルートの旋律とボーカルラインと
2つのメロディーを別々に作りました。これ、けっこうアレンジは楽しかったなぁ!
今回は私のギターの師匠である高橋氏との共作を収録するという試みも。 これは師匠からもらったメロ譜と、それを元に起こしたダイヤグラム。
自作の歌ばかり歌ってきた私にとって、人の曲に歌詞をつけて歌うというのは、アマチュア時代に
やった以来。この曲を私流にどう料理するか? うむむ...です。
メロディーを消化したら、キーを調整しながら自分用の構成表を作り直し、作詞にとりかかります。
すべての譜面制作はLogicの機能を活用。最初にLogicを使ったのが譜面作成だったことに、ミュージシャン仲間は「??」の連発。でも、綺麗だし、とっても便利。
歌詞ができたらメロ譜にまず基本となるコードをふって行き、そのあと全体の構成譜面を作ります。
私は歌詞を最重要視するので、詩ができていない段階でのアレンジはしない主義(笑)。
やっぱり、言葉からのインスピレーションは大切にしたいんですよね。
この次点で、頭の中ではだいたいのアレンジのイメージが出来上がっていて、
それにどうやって近付けて行くか?が実際のアレンジでの課題になります。
アレンジを始める前に、まずは仮でギターのパートやベース、ガンザのパターンをキーボードで打ち込み、 テンポとキーをみます。写真は凪の仮アレンジ画面。
ギターで弾き語りしてちょうどよいテンポと、実際にCDとして聴いてちょうどよいテンポは
違うので、まず最初にガイドとなる楽器だけで、何度も歌ったり聴いたりしながらテンポを決めます。
キーもしかり。ほんの半音違うだけで声の艶が違ったりするので、数日かけてあらゆるパターンを
検討して一番良い音域が歌う範囲に来るように決定します。
ここでテンポとキー設定を誤るとあとあととっても大変なことになるのでものすご〜く慎重です。
特にT1「ヴィンロンの鳥籠」は、2週間くらい悩みました!
テンポとキーが決まったら、仮のアレンジを本物へ、MIDIで作成して行きます。
写真は私のギター練習時の様子。
完成とまったく同じ形に、本格的にアレンジを開始。
と同時に、差し換える生音(私の場合、ギターと歌)の猛練習に突入。
当然のことですが、レコーディングをサクッと終わらせるには、日々の鍛練が何よりの力となります。
練習、練習、練習....そして録音の繰り返しで、まずは自分のパートをできる限り先に録音。
こうしてMIDIを順次、生楽器に差し換えていきます。
かわいい!と大評判のジャケットの猫は、ぬいぐるみ作家の渡辺美奈子さんの作品。
音制作と同時進行でジャケットの撮影に入ります。
昨夏、”新CDは猫をテーマにしよう”と思っていた私は、イメージに合う猫のイラストか
オブジェを探していたのですが、偶然テレビで彼女の作品を目にして、「これだ!」と一目惚れ。
テレビ局に問い合わせてコンタクトを取り、前作CDを聴いてもらったりして出演を交渉、
晴れて黒猫に登場してもらうことになりました。
普段、渡辺さんはオーダーメイドでぬいぐるみの制作をしたり、ポストカードの作成をしたりしています。
犬も作っていて、これもとてもかわいいんですよ。
撮影は彼女の自宅で、半日かけて行いました。
実はこの時、渡辺さんは妊娠9ヶ月! 身重の所をがんばっていただいてしまいました。
でも、さすが制作者だけあって、猫の表情にはとても敏感。
彼女が毛並みを整えるだけで、猫の表情が生まれ変わるのにはびっくりです。
こうして撮った写真をもとに、ジャケットを作成。
出来上がりには、渡辺さんもとても満足してくださいました。
ジャケット撮影も無事終わり、パーカッション、フルートのレコーディング用譜面を作成。
写真はフルート用の譜面。
今回はパーカッションとフルートも生で録音。
山北さんと関さん2人にデモを聴いてもらって、メールや電話で打ち合わせをします。
フルートの旋律は私がすべてアレンジを書き、パーカッションはだいたいの
イメージを伝えて、使う楽器の方向性を決め、細かいアレンジはレコーディングしながら
相談して決めていくという方式をとりました。
どんな風になるか、ワクワクドキドキです。
パーカッショニストの山北健一氏。昼から夜中の12時過ぎまでぶっ通しのレコーディングにも疲れを見せず、
始終余裕綽々の笑顔でした。
曲ごとに方針を決めて、その場であれこれディスカッションしながらレコーディングしていきます。
組み合わせによっても表情が変わるので、それがイメージにだんだん近付いて行くのが
楽しくて、ミックスの大変さも顧みず、色々なパターンをレコーディングしちゃいました。
「十字架」のラストに入っている鳥の声は山北さんのアイディアで、
バードウォッチング用のホイッスルを使っているんですよ。
山北氏持参の楽器のごくごく一部。
我が家は足の踏み場もないほどの楽器で溢れたものの、実は、彼の車にはまだまだ沢山の楽器が
積んであるのです...スゴイ。
小物から大物まで、見ているだけでも楽しく、
今度はあれを使ってもらう曲を作ってみよう!とか、早くも次作品のことまで考えてしまいます。
次回はぜひ、壷を使うアレンジをやりましょうね、山北さん。
フルートの関寛子(ともこ)嬢。
学生時代は肺活量強化のために、八百屋でバイトをしていたとか!
フルートは私のアレンジを基本にレコーディング。
思いのほかマイク位置が難しく、次回はもっと色々と試してみたいなと思ったり、
その表現力を最大限に引き出すアレンジの勉強をせねばと思ったり...
とにかく生の音の幅広さにはあらためて感動です。
とはいえ、普段はクラシック界で活動する彼女の綺麗な音と、
まっすぐなカラーを堪能してもらえる仕上がりになりました。
そうこうしながら自分のレコーディングも。
写真は仮歌録音風景。
ボーカル録りのマイクはすべてRODEを使用。
最初に歌を録ったのはT4「私」で、これはすぐにOK。
その後日、T2「凪」、T5「稀薄な螺旋」、T6「十字架」を録音したものの、
どうもしっくり来なくて結局この3曲は3回〜4回録り直しました。
その前に仮歌も録ってるのですが、実際のテイクとは意気込みが違うので、
あがってみてから「良い」かどうかは、実際にやってみないとわからないとこって
あるんですよね。やっぱりボーカルものって歌命だし、妥協は許されないでしょう。
それがたとえ他の人には差がわからなかったとしても。
「海星」のパーカッションプログラミングは、いつもライブでパーカッションを
お願いしている村瀬彰一氏に依頼。
「海星」はもともとおとなしめのワルツにアレンジしたものが既にあったのですが、
ガラリと変えたくて、1から作り変えました。
まず全体のイメージを彼に伝えて基本のパターンを作ってもらい、
それを使って私がほとんどのアレンジをして、もう一度彼に変更箇所を依頼。
最後に私がまとめをして完成させました。
ボーカルも含めて、とても気に入っている作品です。
モニタースピーカーの上にはベトナムで買った打楽器のカエルが鎮座。
左右対象に2匹いるんですよ。
すべてのレコーディングが終わった所で、いよいよミックスへ。
ミックスは村瀬氏との共同作業です。
最初に私が大まかな流れを作り、仮ミックスの状態まで作ります。
その後「本当はこうしたいんだけど」という辿り着かなかった部分を
彼に依頼、近い形になるように持っていってもらいます。
そして最終的に私がまとめをして、CDRに仮焼き。
そのCDRを自宅のモニター、普通のラジカセ、ウォークマン、MD、カーステレオ...等々
ありとあらゆる機器と状況で何度も聴いてバランスをみて、直して、また焼いて...を繰り返します。
1日中やっていると耳が疲れて、正常な判断がつかなくなるので
ミックス作業はけっこう時間を喰いました。
そしてやっと完成!
できあがってみると、走馬灯のように巡る今までの苦労(笑)。
喜びもつかのま、聴けば聴くほど「あ〜ここはああすればよかったな」「やっぱりこの音は
ちょっと大きかったかな」とか色々考えてしまうもの。
でも、それは次作品に生かすとして、この時点での私らしさは100%出せたかなと思います。
ヴィジュアルも、ボッサ・ポップという私の音楽ジャンルにぴったりなできあがりに大満足。
ぜひぜひ、一度聴いてみてくださいね。
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