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Last Updated 1998.11.13

 一時は予算の大幅な削減にどうなることかとも思われていた第11回東京国際映画祭も盛大に行われました。「盛大に」という意味ではブラッド・ピットが来場した時の騒動は本当にすさまじいものがありましたね。
 とはいえ、やはり映画祭は映画を観てナンボの世界です。そんなわけで、今回の映画祭で観てきた映画(協賛企画含む)について簡単に感想など書いてみますね。

「オープン・ユア・アイズ」(仮題) (コンペティション部門)
 今回の映画祭のグランプリ受賞作品。
 夢と現実の境目が実にあいまいな世界、更にそこにバーチャル・リアリティまでが表れだし…。以前にフランスの映画雑誌にちょこっと記事が出てた時に目に入っていた作品だったのですけど、観てみて大当たり、大満足の一本でした。現実や夢などが混在するなど少々難解にも思えるところもあるのですが、それすらもこの作品の魅力と言ってもいいのではないでしょうか。観終わった後に、今自分のいる世界は果して現実の世界なのか、なんてことを考えずにはいられませんでした。
 来年日本公開予定。また、ハリウッドでのリメイク(トム・クルーズ主演!)も既に決まっているそうです。

「ゴールデン・ボーイ」 (コンペティション部門)
 ブラッド・レンフロが主演男優賞を受賞。
 原作スティーブン・キング、監督ブライアン・シンガーという組み合わせ。あらかじめ原作を読んでいて映画化された作品を観る、ってのは私にとっては実は珍しい経験なのです。物語の前半はむしろ意外なほど原作に忠実なのですが、後半部分になるに至って物語は原作とは異なった様相を呈してきます。結果的には、様々な意味で監督の色の強い作品という印象を受けました。原作が読んでいてずしりと来る恐怖なら、映画の方はじわじわ迫る恐怖といえるかもしれません。そういう意味ではシンガー監督のデビュー作の「パブリック・アクセス」にも似たものはあるかもしれません。とはいえ、結局悪い出来ではないと思うのですが、今一歩かな…という思いもあります。
 これは余談になるのですが、コンペティション部門ではおそらく一番の人気作品だったこの作品。だからというわけでもないのでしょうけど、上映後のティーチイン(観客からの質問に監督が答えるコーナー)での質問はあまりにひどかった…。
 来年日本公開予定。

「ザ・ジェネラル」 (英国映画祭)
 今年のカンヌでジョン・ブアマン監督が監督賞を受賞した作品。北アイルランドのある街で強盗団のリーダーとしてのし上り、「ジェネラル」と呼ばれた男の一代記。ということで「ゴッドファーザー」や「カジノ」などのような内容を予想していたところ、実際にはコミカルなシーンも多く、観る前に思っていたよりもずっとエンタテインメント性の強かった作品。冒頭の数十年に渡る年月の経過とその間の経緯を一気に見せてしまうシーンを始めとして、見事なシーンも多かったですね。とはいえ、今一歩食い足りない点があったのも確か。観終わって、必ずしも文句無しに大満足、という感じではなかったものの観て損をする作品ではなかったかな。
 現時点では日本公開の予定は無し。公開するだけの価値はあると思うのだけど…。

「ワイルド・シングス」 (東京国際ファンタスティック映画祭)
 キャストがわりと好みだし、ファンタも一回は行くかな、という軽い気持ちで行ったのだけど、十分に楽しめました。どんでん返しの連続する物語なんで、そこら辺のストーリーに関する説明はちょっとしづらいのですけども。でもまぁ、本当にキャストは好みで、ケビン・ベーコン(製作総指揮も兼任)、マット・ディロン、ネーブ・キャンベル、ビル・マーレーなどなどそうそうたる面々のキャスティングには本当に満足。
 来年2〜3月頃東急・松竹洋画系(丸の内ピカデリー2系)にて公開予定。

「ジャンヌと素敵な男の子」 (国際女性映画週間)
 私の最も愛する女優さんであるヴィルジニー・ルドワイヤンの主演作品。6月のフランス映画祭横浜以来の鑑賞。2回目なので細かい点にも気を配りつつ観る。でもやっぱ見とれる(笑)。何と言いますか、一つ一つの動きに本当に魅力があるんですよね。それでいて、ラストシーンなどが特に印象的なのですが、表情においてもその素晴らしさは存分に見ることが出来ます。2回目の鑑賞で改めて気付いた点としては色使いの巧みさでしょうか。特に、チャイナドレスを着る場面での赤の使い方は見事なものがあります。
 来年公開予定。

 さてさて、映画祭全体について振り返ってみると、やはり予算の大幅な縮小の影響は大きく、コンペティション部門は統合されましたし、オープニングとエンディングの2作品を別とすれば他にはゲストの招待もほとんどありませんでした。とはいえ、映画祭が定着してきたせいか、あるいは大幅に作品の質が上がったといわれる昨年に引き続いて質の高い作品が数多く上映されたからか、はたまた昨年のハリソン・フォード、レオナルド・ディカプリオに引き続いての大物ゲスト(ブルース・ウィルス他「アルマゲドン」御一行、ブラッド・ピット)招聘によっての話題性があってか、観客動員は昨年を上回るものがあったようです。作品の質も、グランプリ作品を観ているとはいえコンペティション部門の作品を2本しか観てないので一概には言えませんが、それでも世間一般での評価も含めて考えればかなり高いものがあったと言ってよいようです。不手際なども多々あったようなのですが、トータルで考えれば成功したと言ってもいいのではないでしょうか。
 来年もまた東京国際映画祭が、秋を彩る華やかな映画の祝典になることを願うばかりです。

(あんでぃのたわごと11月9日分に加筆・修正)


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