車などについての解説。
・原作、アニメの設定に関する説明は赤で表記。
M
Morris Mini Cooper 1275 S Mk.1 写真
原作では「愛って何ですか」の巻(JC第8巻/文庫版第4巻)から、リョウの愛車としてミニクーパーSがしばしば登場している。
ミニは1959年に英国のBMCから発売された車で、ミニクーパー及びミニクーパーSは、その強化版である。当時のF2、F1のトップレーシングコンストラクターであったジョン・ニュートン・クーパーが、ミニという車の持っているポテンシャルに注目し、そのエンジンをチューンアップしたことがクーパーの車名の由来。特にクーパーSは、ラリーなどのモータースポーツシーンでの勝利を想定して開発された。
ミニシリーズは(基本的には)どのモデルも同じ外観をしており、製造された年代によって*Mk1、Mk2、Mk3などの区別がある。
また、BMCは販売上の新たな手法として、「オースチン」と「モーリス」の二つのブランドからミニを販売する方式をとっていた。BMCという会社はモーリスを中心とするナッフィールドグループとオースチンが合併して出来た自動車会社で、合併後も今までの販売ルートを生かしたというわけである。
*マークワン、ツー、スリーと読む。本来はロ−マ数字での表記だが、機種依存文字のためここでは
算用数字を使用。
リョウのクーパーSは「モーリス・ミニクーパーS Mk1」。1275ccのクーパーSはクーパーシリーズの最強バージョンで、1964年にラインアップに加えられたモデルである。
このクーパーSはデビュー戦でいきなり優勝するなど、当初から高性能ぶりを発揮したが、中でも伝説となっているのはモンテカルロラリーの連覇であろう。ワークスポルシェ911やランチアといった大排気量の車がライバルであったにも関わらず、クーパーSは事実上のモンテ4連覇を果たし、世界中を席巻した。
クーパー1275 S Mk1は、1967年秋にミニシリーズがMk2へとモデルチェンジするまで生産され、そのうち日本へディーラーを通じて正規輸入された台数は、(モーリスブランドのものは)たった38台だった。
ちなみに、当時のクーパーの日本での販売価格は160万円以上。新入社員の初任給が1万円くらいの時代の話である。
リョウのクーパーSの外観は、ほぼ'60年代当時のオリジナル・コンディションを保っている。ドアハンドルの形状から判断すると、'66年式か'67年式のものと思われる。色はタータンレッドのボディにブラックのルーフ。ルーフには手動式のキャンバストップが付けられているようだ。ミニクーパーの色といえば、赤いボディに白いルーフが今では一般的だが、これは本来はBMCワークスティームがラリーに参戦した時の"ワークスカラー"であり、当時のメーカー純正カラーは、赤いボディに黒いルーフの組み合わせだった。(タータンレッドは、スタビロペン68/50の色)
バンパーには、クーパーモデルには標準装備だったオーバーライダーとオーバーライダーバー(コーナーパイプともいう)が取り付けられており、ガソリンタンクも左右ツインのラリー仕様。
リアにリバースランプが取り付けられていないのは、当時の英国流?(本来は日本の法規に従って後付けされるべき)
タイヤのホイールは「コスミックMk1」で、今となっては大変珍しい代物である(クーパーS自体が希少ではあるが・・・)。タイヤはダンロップのSP3。
車体底部のオイルパンをガードするため、ラリー用のアンダーガードも付けられている。
一方、インテリアに目を向けると、その外観とは裏腹にかなり手が入っている模様。ステアリングはモトリタ風のものに替えられているし、3連センターメーターの右横にはレヴカウンター(タコメーターのこと)も設置されている。センターメーターの構成は、左から水温計、速度計、油圧計で、その真下のスイッチパネルは、同じく左からヒーターファンノブ、ワイパースイッチ、イグニッションキー、ヘッドランプスイッチ、チョークノブである。
また、センターメーター左側に、発信機からの電波をキャッチし、その位置を表示出来るパネルが組み込まれていたり、自動車電話が装備されているなど、近代的な設備も搭載している。
シートは、ヘッドレスト付きのシートに替えられ、リクライニングさせる事も可能のようだ。
水平方向にスライドさせて開閉するサイドウィンドウはそのままだが、ドアの内張りはオリジナルとは異なっている。内装の赤と銀のデュオトーンの配色は'60年代当時のカラーだ。
クーパーシリーズは、Mk3の時代の1971年に生産が打ち切られ、1990年にローバーから復活するまで19年のブランクがあった。それにも関わらず、日本ではミニクーパーの人気は高く、ミニの形をしている車はみな「ミニクーパー」と呼ばれていたものである。(ミニを生んだBMCは合併・吸収・分離などを繰り返し、ミニを販売する会社はその後、→BLMC→オースチンローバー→ローバーと変わっていった)
しかし、実はミニクーパーは'80年代に復活を遂げていた。日本のミニのスペシャルショップとして老舗的な存在の「ミニマルヤマ」が、かのジョン・クーパーと共同でスペシャルミニを作り上げ、販売していたのがそれである。ディーラーのモデルではなかったが、このスペシャルクーパーは世界的に注目され、クーパーモデルの再生産に当初は乗り気でなかったローバーを動かすまでに至ったという。
その「ミニマルヤマ」は、何と、映画「愛と宿命のマグナム」公開時に放映されたスペシャル特番にも協力していた。
原作に対し、アニメにおけるクーパーの描かれ方は、残念ながらかなり雑なものと言わざるを得ない。
CH「2」シリーズまでは、英国車らしく右ハンドル仕様だったが、フロントグリルやエンブレムが同じ話の中で変わってしまう事もあり、Mk1が忠実に描写されていなかった。
特にエンブレムは、Mk3時代の、通称「BLミニ」のものが大きくアップになったシーンすらあった。
しかし他のパーツはあくまでMk1だったりする。これはアニメ製作スタッフに、クーパーについて詳しい人間がいなかったためであろう。
「3」シリーズ以降は、劇場公開版スペシャルも含めて更に妙なクーパーになった。外車らしさをアピールするためであろうか?左ハンドル仕様車になり、ミラーもフェンダーミラーからメッキドアミラーに。フロントスポイラーや太いオーバーフェンダー、さらに2連のフォグランプ装着で、かなり戦闘的なスタイルに仕上げられている。エンブレムなどもMk1とはもはや無縁である。
無理に解釈すれば、Mk3以降の車体に所々"Mk2的なドレスアップ"を施し、全体的には現代風にアレンジされたミニクーパーと言える。
屋根に付けられたルーフアンテナはクラシカルな装備だ。
■カタログ・データ(ミニクーパーS Mk1)
| 全長 | 3050mm |
| 全高 | 1350mm |
| 全幅 | 1410mm |
| ホイールベース | 2030mm |
| フロントトレッド | 1234mm |
| リアトレッド | 1201mm |
| ホイール | 4.5×10inch |
| 車両重量 | 635kg |
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| エンジンタイプ | 12FA |
| 排気量 | 1275cc |
| ボア | 70.61mm |
| ストローク | 81.33mm |
| 圧縮比 | 9.75 |
| 最高出力 | 76PS/6000rpm |
| 最大トルク | 10.93kg-m/3000rpm |
■備考
クーパーS Mk1は、今では当然中古車でしか手に入らないが、価格は250万円〜500万以上が相場。
ミニとミニクーパー及びミニクーパーSについて詳しく知りたい方はこちら、あばうとミニへ。
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