銃火器についての解説。
・原作、アニメの設定に関する説明はで表記。

C
Colt Python .357Magnum   写真
 リョウが一番よく使うハンドガンは4インチ銃身のパイソン。
 パイソンは、アメリカのコルト社が1955年に発表した*ダブルアクションリボルバーである。
口径は357マグナムで、.357Magnum弾と.38Spl.弾(=38スペシャル)を撃てる。
ハンドガン用のマグナムカートリッジはSmith&Wesson社とウィンチェスター社の共同開発によって生まれた実包で、.357マグナムカートリッジが完成したのは1935年。
 しかしコルト社が最初のマグナムリボルバーを発売したのは1954年の「トルーパー」からであり、残念ながらトルーパーは、既に発売されていたS&W社のマグナムリボルバーのバリエーションと商品的魅力を凌ぐ事は出来なかった。
 そこでコルト社は、*SAAで築いた信頼をマグナムに引き継ぐべく、自社の威信をかけてリボルバーの最高傑作を企画・開発した。そうして完成したのがパイソンなのである。
 パイソンは、フレームデザインはトルーパーに似ていたものの、マズル(=銃口)までのびたエジェクターロッドシュラウド、クーリングホール付きの*ベンチレーテッドリブ などを備え、過去に例を見ないほどに豪華で力強さを感じさせるリボルバーになった。
その豪華さは、まさにコルトのプレステージと言うにふさわしい。
 パイソンは全体的によく磨かれており、それをコルト・ロイヤル・ブルーで仕上げてある。
しかし、フレームトップと銃身上のリブ・トップのサイトラインは、光の乱反射を防ぐためにマットフィニッシュ(=艶消し)にされている。
 エッジもほとんど丸められているが、フラットなマズル先端とベンチレーテッドリブのトップはシャープなまま。
直接人の手が触れない部分にはシャープさを残し、直線と 曲線を調和させている。
  製造上のコストダウンが出来ないため価格も高い。4インチモデルは、日本円にして10万円前後の値段。パイソン1挺の値段で同口径のS&Wの銃が2挺は買える。
 そのような所から、パイソンはハンドガンのロールスロイスとまで呼ばれている。

 *ダブルアクション:トリガーを引くだけでハンマーがコックされ撃発出来る機構の事。
 *SAA:シングルアクションアーミーの略。1873年に発売された西部劇でも有名な銃 。
 *ベンチレーテッドリブ:射撃によって熱せられた銃身にかげろうがたって照準がくるうのを防ぐために取り付けられる放熱板 。

 1955年に発売された「ファースト・プロダクション・モデル」以来、パイソンは5回以上のマイナーチェンジを繰り返している。
特に'60年代のセカンドモデルを「ビンテージ・クラス」と呼ぶ。
 リョウの使うパイソンは'70年代の「ベストセラーモデル」とも言われるサードモデルを伝説的なガンスミス、故・真柴憲一郎が調整したものと思われる。
 実際のパイソンは、アクションについてはあまりよい評価がされていない。
バレル精度は優れているが、メカニズムに関しては問題があるというのが、パイソンに対する平均的な評価になっている。
 余談であるが「アクションのよくないパイソンを、殺しを生業とするような人間が使うのはおかしい、いくら漫画とは言え百発百中なのは変だ」などと言う話題で某Gun雑誌の読者欄がにぎわった事があった。
もちろんCHを弁護するファンもたくさんおり、この「CH論争」はCH'91放映当時のアニメスタッフをも巻き込んで激化した。

 パイソンのメカニズムは、基本的に100年以上前のものである。 ダブルアクションで撃つ時には、トリガーとハンマーストラット(=ハンマーをコックする部品)、リバウンドレバー(=ハンマーを定位置に戻す部品)とハンド(=シリンダーを回転させる部品)の二箇所で強い摩擦のある動きが加わる。
また、内部に使われているスプリングはリーフスプリング(=板状のスプリング)である。
以上の点はパイソンを「ダブルアクションリボルバー中、最も扱いにくい銃」と言わしめる 大きな要素であるが、トリガーを一気に引き切る場合はS&W系のリボルバーよりスムーズと言える。
(ハンマーを落すのにリーフスプリングを使う銃は、トリガーをゆっくり引いていく場合においては、コイルスプリングを使う銃に比べて、そのテンションが除々に上がっていくために扱いにくい。しかもパイソンは、シリンダーの回転が終わるのとハンマーが落ちるタイミングが同時なため、レットオフ(=ハンマーのテンションが頂点になる瞬間=ハンマーが落ちるタイミング)が掴みにくい)
 パイソンのボア・ダイアミター(=銃腔内の口径)は0.355インチ以下であり、弾頭の直径 0.357インチより0.002インチもタイトである。この0.002インチの差がバレル精度の違いになって表れるとも言われているが、それは良い事ばかりではない。パワーロスにも繋がるからだ。
しかもパイソンは、シリンダー・ギャップ(=シリンダーとバレルの間の隙間)が広いので、 射撃時にはより多くの火薬燃焼ガスがその隙間から逃げ出し、バレル内のライフリングで削られた弾丸の金属粉と共に爆風が射手の顔面や手首に当たるのである。
読み切りの「シティーハンター XYZ」の冒頭部分、ロス郊外射撃場のシーンでも、ガンショップから購入したパイソンを撃つリョウは、隣で射撃をしている清水美津子から「火薬カスが顔にビリビリ当たって痛い」と文句を言われている。

その他のポイント
●エジェクターロッドシュラウドはバランスウェイトになっている。
●ベンチレーテッドリブは、通常使用での効果は期待するほどのものではない。
●フレームの大きさは「Iフレーム」に分類される。
●ワイド・スパーのハンマー(ファストコッキングと呼ぶ。素早くシングルアクションにコック出来る大きいハンマーと言う意味)である。
●新型のパイソンと旧型のパイソンでは、ハンマーの形状にも若干の違いが見られる。
●セレイテッド・ランプ(=のこぎり状の傾斜)のフロントサイト。コンバットタイプ。
●フロントサイトは2本のピンで固定されている。最近のモデルは1本のピンで固定。
●リアサイトは、ウィンデージ(左右)とエレベーション(高さ)ともにマイクロクリックの アジャスタブル。 (レッドランプのフロントサイトもある。その場合、リアサイトにはホワイトのラインが入る)
●ファイアリングピンは、ハンマーから分離されたフローティングタイプ。
●グリップは、チェッカード・ウォールナット('90年代からはラバーグリップ)。
●ライフリングは左回り6条。ピッチは1回転14インチ。
●シリンダーの回転方向は射手から見て時計方向。
●シリンダーのラッチは後ろへ引く方法(サードモデルまで指の当たる所にグルーブなし)。
●バレル左側面の刻印は「PYTHON .357 ★.357MAGNUM-CTG.★」。CTGはカートリッジの略。
●バレル右側面の刻印は「COLT'S PT. F.A. MFG. CO. HARTFORD, CT. U.S.A.」で、コネチカット州ハートフォードのコルト・パテント・ファイアーアームズ・マニュファクチャリングカンパニーの意味。
●'80年代前半(?)からの刻印は「COLT'S PT. F.A. MFG. CO. HARTFORD, CONN. U.S.A.」
●'80年代後半からのモデルには、さらにバレル右側面の刻印の始まりと終わりに横線が引かれている。
●ブルーモデルの他に、ステンレスモデルもある。(ステンレスモデルの発売は'85年)
●バレルの長さには、2.5インチ、3インチ、4インチ、6インチ、8インチなどがあり、3インチのモデルには「コンバットパイソン」、8インチにスコープ付きのモデルには「パイソン・ ハンター」という名前が付いている。
●'98年から量産は中止され、「パイソン・エリート」という名前でオーダーメイドでのみ生産されているが、パイソン好きのガンショップには常に在庫が置いてある。

カタログ・データ(4inchブルーモデル/純正木製グリップ付き)
全長24.1cm
全高14.0cm
全幅3.94cm
重量1092g
銃身長10.1cm
適用弾.357Mag./.38Spl.
装弾数6
トリガープル・ダブルアクション4.8kg
トリガープル・シングルアクション1.8kg

備考
 CH3のCDに収録されている「A LOVE NO ONE CAN CHANGE」のセリフによると、リョウの使っている.357マグナム弾は弾丸重量10.2グラム。158グレインのカートリッジらしい。
 同じ曲内で「初速、376メートル」と言っているが、初速(=銃口から発射された直後の弾の速度。1秒間に弾がすすむ距離をあらわす)は同じ弾、同じ銃でも計測するたびに1〜5%の違いが出る。
 '99年10月、コルト社は拳銃製造のラインを整理する旨を発表。





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