トウガラシ
鳥や植物の巨大な地上絵で知られるナスカ文明。千年以上も昔に南米ペルーの海岸付近でナスカ人たちは高度な天体観測や測量の技術を発達させていた。
彼らにとってトウガラシはとても神聖なものであったようだ。それを示すのは遺跡から発見される数々の土器に描かれたトウガラシとそれを手にした奇妙な雰囲気の獣人(神様?)の絵である。ペルーの首都リマの国立考古学人類学歴史博物館には何百点にもおよぶトウガラシ絵柄の土器が展示されている。
それにしてもなぜ彼らは辛いだけで、主食でもなく、珍しくもないはずのトウガラシを神聖なものと考えていたのだろうか?アンデスには多くのトウガラシの物語や伝説が残されている。また何千年も前の遺跡からトウガラシの種や実が発見されている。大昔からトウガラシはアンデスの人々の暮らしに欠かせないものだったのだ。もちろんそれは今も変わらない。
リマから750キロ南下したあたり、標高2,000メートルの高原にアレキパという町がある。そこにはナスカの土器にも描かれている「ロコト」と呼ばれるピーマンを少し小型にしたような形のトウガラシがある。「ロコト」は他の品種に較べ激烈な辛さが特徴である。あまりの辛さのために他の土地には広がらなかったといわれる程だ。しかし地元の人々は「ロコト」になれると他のトウガラシでは物足りなくなってしまう
と口をそろえる。女性たちはこの「ロコト」を畑仕事のお弁当の付け合わせに必ず持っていくのだそうだ。お弁当の中身は「山のスープ」と呼ばれる伝統的なスープである。食べるころには冷たくなってしまうスープを熱くておいしいスープに変えてく
れる「ロコト」は神様の恵みに違いない。寒いときには体を温め、暑いときには汗で体温が下がる。ビタミンが豊富で、辛み成分のカプサイシンには防腐作用や血圧調整作用がある。またエネルギー消費を高める作用によって脂肪の蓄積を少なくする。
20世紀の科学で発見されたこのトウガラシの事実をナスカの人たちは既に知っていたのだろうか?あるいはまた違った効用を見い出していたのだろうか?
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