静かであるべき空間
1999.03.04記入

不届きな野郎が図書館内で携帯電話で話している。
金髪に染めた髪に背広を着た、いかにも無教養そうな見かけから、どこかのいかれた営業マンだろう。
図書館は静かでなければならない空間だ。
当然、図書館員から「電話は外でしていただけますか?」と注意される。

で、思い出してしまったのが私が京都大学を受験した二日目の英語の試験でのこと。
前日の数学で6問中5問が解け、合格を確信して英語の試験に望んだ。
ところが宿泊先の聖護院御殿荘で同室だった奴に悪い風邪をうつされてしまった。そいつは一日目の試験の前日から「具合が悪い」とぐったりしていた。
さいわい英語の試験の時点では熱はでていなかったものの、すっごく苦しそうな咳がとまらない。生まれつきのどが弱いせいか、いったん咳が出はじめると周りの人が「こいつ死ぬんじゃないか?」と心配するほど苦しそうな、激しい咳をする。

さていよいよ英語の試験。
「ごほん!!、ごほん!!」苦しそうな自分の咳が、京都大学でももっとも広い大教室の一つ、法経8番教室にこだまする。
本来試験場も静かでなければならない空間のはず。でも私一人のせいで随分うるさかった。

試験問題。
問題はなんと三問中二問が英文解釈、一問が英作文。いただきだ。
咳はでるものの問題には集中できた。特にわからない部分はない。完璧なできだ!!あらためて合格を確信する。

試験終了。
試験は午前中で終わりだったので京都見学でもしていこうと南禅寺方面に歩き始めるが妙に体がだるくて歩くのがつらい。「どうせ受かったから大学に入学してから見ればいいや」と新幹線に乗って家に戻る。

帰宅。
家に着くと母から、おばあちゃんが亡くなったと聞かされる。どうりで父がいないはずだ。
で、具合が悪いにも関わらず、家に着くとまもなく、母と一緒に父の実家の長野県は篠ノ井に向かう。電車に乗ったとたん、たちまち熱がでる。半端な熱じゃない。座っているのも辛い。座席に横たわらせてもらう。

なんとか実家にたどり着く。
もうだめだ。高い熱をだして寝込む。結局4〜5日実家に滞在したが、帰ろうという当日になってようやく熱が下がる。結局、葬式にも列席できず、ずっと父の実家で寝ていたことになる。


考えたこと

1.風邪をうつされても試験が終わるまで熱を出さなかったのは我ながら大したもの。精神力のなせる技だろう。

2.私のひどい咳のせいで試験に集中できず、不合格となった人はどれだけいただろう。その人たちは私を恨むとよい。ただし、私の咳のおかげで合格になった人もいるだろう。その人たちは私に感謝しなければならない。

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