水や空気を引っ掻いて推進力を得るには、引っ掻くものの面積よりも、むしろ引っ掻くものの形状と性質、すなわち「平べったくてしかも丈夫である」ということがもっと重要、ということだ。
考えてみればスクリュー、オール、プロペラ、魚の尾ひれ、手のひら、鳥の羽根、蛙の足、虫の羽根...引っ掻いて推力を得ようとする目的をもったものはみな丈夫で平べったい。
水や空気を急激に押し広げ、そして急激に閉じることになるので平べったいほうが推力を得るには断然有利。またこのような急激な力に耐えるには丈夫であることが必要になる。(こんなことは流体力学の世界では常識なのだろうが、私はなぜか理解していなかった。)
だから人間が泳ぐ場合には体の中でこの条件を満たしている手のひらと足のひらが非常に重要になる。たとえば靴などをはいていると、平べったいと行う特性が失われてしまうので泳ぐための道具としてはほとんど役に立たない。
ここで導き出される仮定として
「平べったく丈夫な部分を多く持った動物は上手に泳げる、逆の動物は泳ぎが下手」
ということだ。たとえば金魚。立派なひれを持ってはいるが軟弱でちっとも丈夫でないので泳ぎは他の魚に比べて遅い。
さて、海に住む動物でも、うみへびは蛇なので平べったい部分を持たない。案の定泳ぎが遅く、とても無様な泳ぎ方をする。おなじくひょろながい鰻は少しでも平たいひれを持っているので上手に泳ぐことができる。
周知の通り、あらゆるうみへびはとんでもなく強い毒をもっている。
彼らが外敵が多い海の中で生き残るには強い毒でも持っていないとやっていけないのだろう。
というわけで流体力学から始まって、なぜ地上の蛇には毒を持たないものが多くいるのに、うみへびについては例外無く毒を持っているのか、と言う謎が解明された。