恐怖の蛆虫
1999.04.19作成
北海道に引っ越して間もない頃、離れの一部屋を与えられた。
まだ荷物も到着していない朝のこと、自分の部屋に言ってみた。
で、庭に面した窓を開けてみる。
北海道は寒いので窓は必ず二重になっているのだが、どういうわけだろう、その窓と窓のあいだの50cmぐらいの空間の中に蠅がたくさんいる(寒かったのでみんな大人しくしていたような気がする、どういう理由かは知らないが兄がまとめて追いやっていたものらしい。)ではないか。
好奇心旺盛な私はちり紙を持ってきて大きな奴を一匹捕まえてみる。
...とどうだろう、驚いたことにそいつの腹の中から小さくて元気なうじ虫がぞろぞろとはい出してきたではないか?幼い私にとってはなんとも恐ろしい光景だった。(調べたところによるとある程度成長するまでおなかの中で幼虫を飼う種類の蠅がいるらしい。)
「ぎゃあ!」と声を出したかどうかは覚えていないがあわてて蠅を放し、窓を元通りに閉めてその部屋を後にした。
昔からこの手のグロテスクなものに対しては結構意気地が無い私であった。
さっそく母親に訴えた。
「お母さん、僕、あの部屋嫌だ~。」
実際、なぜかかび臭い、暗い部屋だったので私の要求はあっさり受け入れられた。
私があの部屋の窓を開けることは二度となかった。
「ブリキの太鼓」だっただろうか?牛の死骸の頭の中から鰻がにょろにょろ出てくるのを目撃して以来、魚が食べられなくなってしまう女性が登場する。あの気持ちはよく解る。ああいう一瞬の恐怖の映像は深層心理の深いところに強く焼き付いてしまうものだ。
だから、恐ろしい光景、あるいはグロテスクな映像を、気の弱い人に見せようとするときは気を使ってあげなくてはいけない。
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