虚栄心
1999.04.21作成

ある人が考えたことを残らず文章にできたとしたら素晴らしい傑作ができあがる、と言うようなことをモンテーニュが言っているらしい。(ごめんなさい。実は「エセー」を読んだことがないのです。)

しかし、なんらかの文章なり作品なりにまとめる場合、必ず編集という課程を得なければならないわけで、おそらく傑作にはならないと思う。
「あの女いいケツしてるな〜」「おしっこもらしそう!トイレに行きたい!」とか、そんなゴミみたいな文章の羅列が傑作になるとは私には到底思えない。

それはともかく、ここでモンテーニュが言っていることは、考えていることをそのまま文章にすることは非常に難しいということだ。
確かにこういうものを書いていると自分の虚栄心というものがよくわかる。

決して嘘を書いているわけではないが、やはり自分に都合の悪いこと、恥ずかしいことは決して書かない。書いたとしてもせいぜい笑って済ませられるぐらいのことだ。自分にとって他人に知られたくないことは書きたくないし、書く義務もないのだ。

まあいいではないか。確かに自分の醜いところ、恥部を怖れずすべてぶちまけてしまうぐらいの勇気があれば、面白い話になるかもしれない、一方で書き手にとってはそれなりのデメリットも被るのだから。

いい子ぶっていいことしか書かなければ、内容的には魅力に欠けるものになる可能性もある。しかし、それを「虚栄心」だと他人に責められるのも心外だ。

誰だって履歴書には立派なことしか書かないではないか。
自分の恥ずかしい失敗談をすすんで人に言い触らすのは道化師だけで十分だ。

虚栄心で凝り固まったような人には誰でも閉口するものだが、慎ましい虚栄心は決して恥でも罪ではない。

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