ベストセラー
1999.04.27作成
私って、ベストセラーにほとんど興味が無い。
たとえば最近流行った「本当は恐ろしいグリム童話」。
童話が読まれること自体は悪いことではないと思うし、事実私も童話を好んで読む。
しかし、グリム童話の本なら岩波文庫の本のほうが安いし、網羅されている話もはるかに多いはずだ。この高い本をわざわざ買うことに一体何の意味があるのだろう?
「本当は恐ろしい」というタイトルがよほどうまくいったのに違いないが、読んでみればわかる。グリム童話なんて実は大して恐ろしくないのだ。
最近のベストセラーの正体なんてせいぜいこんなもので、「ベストセラー」ということと「読む価値のある本」ということにはほとんど相関関係は無いように思う。
いや、逆に、読者に思考を強いるような重たい書物は一般的に嫌われる傾向(懐かしい言葉になってしまったが「軽薄短小」がまさにそれ)のある昨今、負の相関関係のほうが強いといってもいいかもしれない。あくまで、私にとって、という条件付きだけれども。
「本当は恐ろしい...」は、出版社の意図的な戦略だったとすれば「マーケティングの勝利だ」ということになるが、こと人文、芸術の分野で、この「マーケティングの勝利」ばかりを繰り返しているとそのうち困ったことが起こる。本当に良質なコンテンツを提供する人たちが食っていけなくなると言うことだ。ちょっと大げさな言い方をすれば、結果として文明全体がどんどんと低俗な方向に向かっていくことになる。
今どきの「書籍売り上げベスト10」を見て頭を抱えてしまうのは私だけではないはずだ。
「こんなに質の低いマーケットに私はどうやって立ち向かっていったらいいのだろう?」
追記:「ベスト100」を見れば少しは安心するのでは?
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