不倫
1999.05.18作成

アンナ=カレーニナの筋を一言で言ってしまえば「逆不倫女の哀れな末路」ということになる。
この時代のロシアの社交界でも、彼女のように家庭を破壊してしまうような、本格的な不倫に対しては厳しかったようだ。

不倫を社会的に評価すると、「自分勝手な私利私欲のために、他人の正当な権利を侵害する」、という点で、盗人や人殺しとさほど性質の違うことじゃない。

不倫に対して世間が厳しいのは、もし、行きつくところまで行ってしまうと、個人、家族、社会、あらゆる局面で、誰に対しても、決していい結果をもたらさないからだ。
いまどき刑法で不倫が罰せられることはない(少なくともわが国では)ものの、社会的には立派な犯罪、なのだ。(もちろん民法上問題になるのは周知の通り。)

「失楽園」で黒木瞳さんが「私が淫乱なら女はみんな淫乱です!」と開き直っていたけれど、不倫っていうのは淫乱どうのこうのの問題じゃない。本人たちのわがままのおかげで周囲の人たちが多いに迷惑することが問題なのだ。特に奪われる立場の人たちに与える社会的、経済的、精神的な損害は深刻だ。


不倫当事者の方だって、愛するわが子を捨てたり、家族や親戚からシカトされたり、訴えられたり、賠償金や養育費を支払ったり...こういう数々の苦痛を乗り越えることは、半端な気持ちじゃできないことだ。

乗り切った元不倫のカップルは大したものだと思う。私は彼らに敬服するし、惜しみない拍手を送りたい。

ただ、不倫で突っ走ろうとするとき、自分が本当にそれだけ強い人間かどうか考えてみる必要がある。

自信がなかったり、感情に押しつぶされるあまりに、そもそもそういう諸々のことに考えが及ばないような人に、突っ走るだけの資格はない。アンナ=カレーニナのようになりたくなかったら、せいぜい遊びにとどめておくのが賢明だ。

<<戻る  <<表紙