浮浪者
1999.07.07作成

「裸足のトンカ」というフランス映画を見る。
この映画の、印象的なヒロインは宣伝用の巨大なコカコーラ缶の中に住んでいるインド生まれの浮浪者。そういえば「モモ」も円形劇場の遺跡に住む浮浪者だった。

やはり「自由奔放」「何者からも自由」というイメージが一番ぴったり来るのが浮浪者だ。だから浮浪者はいろいろな物語の主人公になったりする。あるいは預言者とかイエス・キリストとか、非常に徳が高い人たちの職業は浮浪者、または乞食でしかありえない。イエス・キリストが靴をつくっている姿など想像したくもないではないか。


浮浪者って、社会的な評価こそ低いけれども、もっとも自然に近い生活をしている人たちだと思う。

自由、自由と言うけれども、実際には我々の生活はそんなに自由なものではない。生活の糧を得なければならない以上、どんな職業を営んでいようが何らかの制約をうける。
結局のところ「どういう不自由を甘んじて受け入れるか」を選択できる自由が与えられているにすぎないのではなかろうか。

それに対して浮浪者は何者にも依存しない。必要なものがあれば自分のものにしてしまう。それがたまたま人のものだったりすると「泥棒」と呼ばれるわけだけど、自然界にはそもそも「所有」なんていう概念はないんだから。「所有」なんて人や社会が創り出した幻想にすぎない。徳の高い人たちはそんなはかないものにこだわってはいけないのだ。

彼らに制約があるとすれば、とりあえず食べて寝て、命をつながなくてはならない、ということだけだ。なんて自由な人たち何だろう。彼らも決して楽じゃないんだろうけど...

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