アラブが見たアラビアのロレンス
1999.07.09作成
アラビアのロレンス経緯: 「アラビアのロレンス」はもとは考古学者のイギリス人で、第一次世界対戦開戦時、ドイツと同盟関係にあったトルコがアラビア半島のアラブ人たちを武力で支配していた。
ロレンスはアラビアに渡り、アラブ人の指導者フェイサルやアウドとともに駱駝に乗ってトルコ軍をきりきり舞いさせ、ついにダマスカス陥落によりほぼトルコをアラビア半島から駆逐するにいたった。特に戦略的に重要な位置にあったアカバの攻略作戦は非常に有名。
ところがロレンスを英雄扱いしている欧米諸国の様子を見たアラブ側から、あれはアラブ人の戦争であり、ロレンス一人が英雄扱いされるのは変だし、実際からは何もしなかったのだ、という論旨の「アラブから見たアラビアのロレンス」が発表されるにいたって大きな波紋を呼んだ。彼の功績は、当初彼の著作や、彼自身が語ったことがほとんど唯一の情報源だったのは確かだ。アラブ人とイギリス人のコミュニケーションは決して良好なものではなかったから。
はたしてロレンスは本当に英雄だったのか、あるいは「作家」かつ「ペテン師」だったのか?どうやら後者のほうが真実に近いらしい。
アカバ攻略作戦についても実はアラブ人の発案で、ロレンスは彼らに頼んで「連れていってもらった」程度、というのが事実なのだそうだ。
ただし、カイロのイギリス軍に報告に行って、さも自分の功績のように吹聴したのはもちろんロレンスだ。
「アラビアのロレンス」については許してあげてもよい。何と言っても彼自身、自分の偽善行為に嫌悪感を示し、非常に苦しんだ形跡がうかがえる。それに「砂漠の反乱」も「知恵の七柱」も小説としてなら十分楽しめる。ロレンスが少なくとも優れた作家で、我々はあの「フィクション」を十分楽しませてもらっていることは間違いないのだから。
ところで、何もしていないのに自分がいかにも素晴らしい功績をあげたようにふれまわる人間は日本にだってたくさんいる。特に組織ばった大企業にはごろごろしているものだ。
こういう人たちは、面倒な仕事を人に押しつけてしまうのに、自分の上司への報告だけは必ず自分でする。特にもっと偉い人がいるようなときには必ずどこからか嗅ぎ付け、しゃしゃり出てきて、まるで自分が仕事をしているような口ぶりで話す。
「仕事はあんたのもの、でも手柄は俺のもの」
というわけだ。もちろんそのプロジェクトが失敗した場合は
「これは私のせいではありません。実際にやったやつらが馬鹿だったんです。」
と主張して、どうころんでもあくまで自分の身を守ることに余念がない。
もちろんこういう自分の行動を恥ずかしいなんて思ったことは一度もない人たちだ。
天罰をうけるべきなのは、むしろこういう恥知らずな連中だろう。
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