ベンチャー企業
1999.07.21作成
最近、「私はベンチャー企業に就職したい」と、変なことを言う学生が増えたような気がする。
社会の諸事情をよく知らない学生では無理もないし、就職難といわれる今日、ちゃんとした企業がなかなか採用してくれないから、という事情も理解はできる。
ただ、「ベンチャー企業」といえば聞こえがよいが、要するに「零細企業」のことだと考えておけばよい。
実務経験や特定のスキルを身につけたい、と思うなら大企業に就職したほうがよい。
教育制度も、また新人にかまってくれるだけの人員的余裕もある。同期の人間などもたくさんいるから、自分が企業あるいは社会全体の中でどういう立場に置かれているか、についても比較的正確に把握できる。
心配してしまうのは、彼らが零細企業でなにも身につかないまま過ごしてしまい、結果として単なる役立たずになってしまうことだ。
本人に能力さえあればそれでもなんとかなるだろう。でも、もしなかった場合、どうにも身のふりようがなくなってしまう可能性がある。小さい会社から大きい会社に転職することは、逆よりはるかに難しい。
確かに米国では優秀な学生は大企業に就職せずにベンチャー企業をはじめる、と言われているのは事実だが、勘違いしないで欲しい。彼らはベンチャー企業を「始める」のであってベンチャー企業に「就職する」のではない。もちろんそういう人たちもいるのだろうが...
日本の風土の下では、学生が始めたようなベンチャー企業が大きく成功したような例は比較的少ない。自分の感覚でも、ちゃんとした企業で、十分な期間働いた経験がないような人は、どうにも何か重要なものを欠いているような気がする。
独立心旺盛でなければならない、ということはないし、仮に独立心旺盛な人が大企業に就職したところで、それが失われてしまうわけでもない。
たとえ「企業に向かない」と思われる人でも特に大企業の欠点と長所、ビジネスの仕方などを勉強しておくことはのちのち素晴らしい財産になる。
わざわざ「ベンチャー企業に就職したい」なんて、実はろくでもない企業を希望するほど自分をおとしめる必要はないのではないか?
とりあえずでも就職したいのであれば大企業に就職しよう。
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