人間は邪魔!
1999.08.24作成
HOTWIREDの最近の記事によると、DARPA(米国防総省国防高等研究計画庁)の科学者デビッド・テネンハウス氏がコンピュータサイエンスの発展にとって人間は邪魔な存在でしかない、という趣旨の講演を行ったのだそうだ。
過激な意見のようであるが、彼の言いたいことがわからないでもない。
たぶん(実際彼の講演を聞いたわけではないので...)こういうことだろう。
現在のシステムの役割のほとんどがセンサーなどのインプット系のシステムからの情報を上げ、ある程度の処理までは行うが、最終的な分析や判断はほとんどの場合、人間が行っている。
このように肝心なところで人の判断が介入すると、システムによる処理が中断される。
これをインプットから処理、分析、判断すべてを一貫してシステム内で行うようにすれば、システム全体の処理能力、スピードは飛躍的に高まるだろう、というものだ。
処理能力において、システムと人間では天文学的なレベルの差があることは周知のとおり。
彼はこういう発想が実用化されているわずかな例として、自動車のアンチロックブレーキやエアバッグなどを上げているらしいが、たしかにこれらのシステムに人間の判断が介在するようではとても間に合わない。
あるいは、ビジネスの世界で人の判断を介在させないようにするとどうなるのだろう。
なんとなく実現しやすそうな分野で例えれば、証券売買について、人間のディーラーなみ、あるいはそれ以上の情報分析能力と判断力を備えたシステムが登場したとすると(将棋ほど単純ではないので難しいだろうが時間をかければやがてできないことはないだろう)どういうことになるだろう。
有望な株はシステムが全部買い占めてしまうので、人間のディーラーが買おうと思ったときにはすでに遅い。でる幕がまるっきりなくなって、ディーラーは全員失業、という事態になってしまうかもしれない。
さらにすすんで、システムが自分自身の開発を、自分自身の判断でできるようになると、システムは、人間にとってまるっきりのブラックボックスとなってしまい、システムに置き去りにされるという恐ろしい事態になるかもしれない。
映画「ターミネーター」のシナリオ=戦略防衛システムが暴走して人類に宣戦布告する、というシナリオが現実になりつつあるのかも。
サイエンスフィクション、あるいは単なる空想だよ、といわれるかも知れない。
しかし、米国国防総省の人が「人間は邪魔!」と大まじめで力説する現実を前にすると、何だかそうとばかり言っていられないような気もする。
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