ウミウシ
1999.09.29作成
ウミウシ・ガイドブックという本を本屋で見つけ、思わず夢中になって見入ってしまった。とりあえず図書館で借りようと思い(借りてから買っても決して遅くはない)、このたびようやく借りてきた。
ただいろいろな種類のウミウシ(名前さえついていない種類も多い)の写真が簡単な解説つきで並べられているだけなのだけど、その美しいこと、美しいこと。
一日中眺めていても、たぶん飽きることはないだろう。この美しさはショッキングだ。
ウミウシについては不思議に思っていたことがある。
ウミウシは体全体が柔らかくて外側が堅いナマコのような外敵からの防衛手段をもっていない。しかもやたらと目立つし動きが遅い、さらに毒をもつ種類もいない。真っ先に食べられてしまいそうなものだ。
ウミウシはきっと不味いのだろう...と思っていたらこの本によるとどうやら本当に不味いらしい。
「不味い」ということは一度味見したことのある捕食者には襲われにくくなるわけで、これは立派な防衛手段になる。
しかし、「毒」だとか「不味い」とか、実際に食べてみないと解らない防衛手段をとる生物の場合、目立つ格好をしていないと十分に有効な防衛手段にはならない。
たとえば、マダラチョウも不味いので有名なのだけど、まだら模様をアピールすることによって「私は不味いので食べないほうがいいですよ」と主張しているわけだ。一度マダラチョウを味見したことがある、経験豊かな鳥であれば、二度と「まだら模様の蝶」を口にしようとはしない。もし不味いマダラチョウがモンシロチョウと同じ格好をしていたら、鳥に襲われてから吐き出される、という無駄な殺生が繰り返されることになるだろう。
捕食者の魚としては「やたら派手でぐちゃぐちゃした奴」は不味くて食べられない、と覚えておけばウミウシも食べられずにすむし、魚もいちいち不味い思いをしなくてよい。
こういうわけで、蜂の黄色と黒とか、スカンクの白黒ツートンカラーとか、擬態の目的以外で派手な姿をした生物は、毒を持っているか、不味い場合が多い。
ウミウシがやたら派手で美しい姿をしているのはおそらくこういうわけだ。
「美しい薔薇には刺がある」というけれど、目立とうという意図が見え見えの美人には気をつけよう。きっと毒があるか、不味いかだ。
ナマコのように、おとなしくしている女性のほうがきっと美味しい。
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