盗賊の女王
1999.10.09作成

つい最近のインド総選挙で国会議員に再当選したという「盗賊の女王」プーラン=デヴィ女史の半生記。1983年に投降するまで、山賊(ダコイット)として、評判の悪い悪徳地主だけを狙っては襲撃、虐げられた農民たちに還元した、というまさに現代の「ねずみ小僧」(手口は多少手荒だが)=民衆のヒーローである。

悪習と無知、そして貧困が支配するインド農村に、低カーストの貧しい農民として生まれ、母親譲りの勝ち気な性格が災いして次々と不幸な経験を味わう。
痛めつけられれば、痛めつけられるほど「何が何でも生き残って必ず復讐してやる!」と復讐心を燃え上がらせる不屈の精神には頭が下がるが、なんといっても彼女が生まれてきた社会が悪すぎる。

インドでも中国でも、その他の遅れた国々でもそうなのだろうが、農村の生活はまるで中世そのままらしい。この本の中で「違法」という単語が何個所か登場するが、「こんなところに法律なんてものがあるのか?」と思わず違和感を感じてしまうほど。
学校にも行かずに働き始めるので字はもちろん読めないし、権力や横暴に対する戦い方も知らないし、ひどい目に合わされても無知ゆえに「そんなものなのだろう」と納得してしまう。

こんな社会に生まれれば、たとえどんなに才能を持った人間でも、その才能を開花させることは不可能に近いだろう。
カースト制度の改革にはマハトマ=ガンジー他名だたる指導者が挫折している、とすればまず改革すべきなのは農村社会にはびこる無知だろう。

プーラン・デヴィ女史はいまでは結婚して子供もいらっしゃるとか。
読み書きができずにどうやって国会議員が勤まるんだろう、と余計な心配をしてしまうけれど、彼女には十分その資格があるだろう。
強いだけではなく、賢い人のようだから、いろいろと勉強してインドの農村社会、および女性の地位を少しでも改善できるよう努力して欲しい。

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