孫子の兵法
1999.11.25作成

現代、世界の戦史研究などでとりざたされる戦略理論の中心はなんと「孫子」なのだそうだ。確かにハンニバルやナポレオンが強かった理由も、日本やドイツが敗れた理由も孫子の兵法で説明が付けられる。他の兵法理論ではこうはいかない。
通常、紀元前の書物にもなると、「古典」としての取り扱いになってしまうものだけど、まさに現役バリバリの理論として大真面目に取り上げられているわけで、このようなプラグマティック(実践的で役に立つ)な内容の書物がおそらくソクラテスなどとほぼ同じ時代に書かれていたことを考えると、驚くべきことだ。「孫子の後に孫子なし」と言われるのも十分にうなずける。

5年ほど前、孫子を企業経営に活かそう、という書物が大流行したことがある。

孫子を理解しておくことは重要なことだし、孫子が偉大な著作物であることは大抵の人よりも理解しているつもりなのだけれど、「企業経営に孫子を!」という発想にははっきり言って無理があると思う。

孫子はあくまで兵法のための書物だ。一方、ビジネスは勝った負けたでけりがつく戦争ほど単純なものじゃない。そもそも消耗のみを基本原理とする戦争と、生産と消耗の両方が基本原理となっているビジネスとでは、考え方も方法もまったく違って当然なのだ。

いや、「孫子」関連の本に限らず、ビジネスマン向けの処世術の本なんて、実際役に立つはずはない。サラリーマンという巨大なマーケットを狙った、売り上げだけが目的の書物だからだ。
せいぜい、読んでいると「うん、うん」と何となく納得できて、仕事ができるようになった気にさせてくれる、あるいは少しは安心できる、ぐらいの効果しかない

(それだけで十分だとは思うけど)。

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