ブウの視点


ラーメン博物館の「ラーメン登竜門」について

ラーメン博物館の期間限定店を選ぶ企画「ラーメン登竜門」に一般審査員として参加してきました。以下、そのレポートです。

最終審査まで残ったのは落合康友氏@宇都宮どる屋の主人、野本栄二@縁や主人、海老名東人@沼津あまから屋(カレー屋)主人の3人。まず、食べた順番にそれぞれのラーメンの評価と感想。

落合氏のラーメン

5/BAC

麺はかなり細めで微妙によりが入ったもの。最初は適度なコシがあるが、食べ進むうちにどんどん弱くなってくる。スープの絡みは特に問題なし。真意が今一良くわからないのだが麺にはサフランが練り込まれていて、所々茶色くなっていた。スープは豚骨をベースにしたスープにタイの丸干しで強めに風味付けしたもの。他にも野菜などが入っているようだが、とにかく魚介類の生臭さが強い。スープが高温のうちはそれほど気にならないが、冷めてくるとこの生臭さを中心として素材同士が喧嘩を始めてしまうのが残念。ただ、それまではなかなか美味しいスープだった。食器が陶器でなかったため、冷めやすくてちょっと不利だったかも。チャーシューは肉質はなかなかハイクオリティだが、色々とスパイスで手を加えすぎてバランスが悪い。スープに強烈な個性があるわけではないので、もうちょっと肉の質を生かすような使い方の方が良かった。

全体としてはそこそこに美味しいものだが、「金をかけたラーメン」の割にはそれぞれをコーディネートしきれておらず、まとまりのない印象。穿った見方をすれば、3ヶ月という短期出店で店の名前を売ることを目的に、商売を度外視して作ったラーメンという印象も受ける。もちろん、それでも食べる側としては一向に構わないし、問題もないと思うのだが、もうちょっとリファインしないと商品として成り立たないと思う。

野本氏のラーメン

6/ABB

麺は中位の太さの加水率低めの縮れ麺。スープの絡み、コシ、ともに合格点。スープは豚骨ベーストリガラブレンドの醤油味で、いわゆる旭川系。豚骨の押しが強い割には魚系(煮干し?海老?)を中心とする他のダシが弱いのが残念だが、まとまりは非常に良い。ただ、能書きを全然聞かされずに食べるとこれは全く普通の旭川ラーメンで、それはそれでちょっと意外。牛タンのようなチャーシューはなかなかに美味だったが、これはスープとマッチしない。

全体としては、特に目新しい点がなく、一言で言ってしまうと「美味しい旭川ラーメン」となる。もちろん、それはそれで全然構わないのだが、折角3ヶ月間、ラーメン博物館というラーメンの聖地で営業できるのだから、そして、イベントとしてやるのだから、もうちょっと目に見える、というか「舌で感じられる」工夫が欲しいところ。ただ、純粋に「ラーメン」として、味だけで評価すればそこそこにハイレベルである。

海老名氏のラーメン

4/ACA

麺は加水率が高めのやや太め。コシ、スープの絡みとも良好。スープは豚骨ベース、トリガラブレンドの「カレー」味。恐らく、カレーと醤油の風味を取り除けば大阪の「友翔」みたいな感じだと思う。かなり濃厚で面白い味だとは思うが、やはりどうしても素材同士が喧嘩をしてしまう。カレーのような「強烈なスパイス」を使っていない分、どうしても中途半端で、素材を丸め込むことが出来ていない。どうせならもっと辛くしたほうが良かっただろう。チャーシューは美味しかった。

ラーメン博物館のイベントものとして考えれば「ラーメンの性質を生かして、全く新たなアプローチを試みた作品」として、最もその主旨にあったものだと思うが、味的には全く未完成であり、とても「旨い」と言えるものではない。そして、これは僕の想像力不足なのかも知れないが、この延長線上に「新しい、そして美味しいラーメン」があるとも思えない。

食べ終えた時点での予想は武蔵いそがばまわれ系のラーメンを好む、「能書き重視派」は落合氏、とにかく美味しければ良いという「美味追求派」は野本氏、目新しいもの、及び好奇心が強い「エンターテイメント重視派」は海老名氏に投票するだろう、といったもの。審査員300人はこれらが適度にミックスされているようだったが、どれにも属さない、「ただの素人」の浮動票がどこに行くか、というのが結果を左右すると考えられた。一般的に、この「ただの素人」はどうしても味の濃いものを選ぶ傾向があるので、その点では海老名氏有利、落合氏不利が予想された。

また、ラーメンを構造的に分析すると、落合氏、野本氏のラーメンはすでに完成されているラーメン像の上に新たな付加価値を加えようとした作品、一方、海老名氏のラーメンは完成品同士(ラーメンとカレー)のキメラを作ることによって、全く新しい価値を創造しようとした、と表現できる。この視点からは、当然前2者の完成度が高くなることが予想されるが、落合氏のラーメンはコーディネートが不十分であったし、野本氏のラーメンは結果として普通の旭川ラーメンになってしまい、新たな価値を創造するには至らなかった。また、海老名氏のラーメンは確かに「新たな価値」を創造していたが、味という視点からの絶対的な評価は決して高くないものだった。

さて、投票。シンクタンクに勤務するものとして「ラーメン博物館において、3ヶ月間限定で営業するのに最も相応しいラーメン」とアドバイスするのであれば間違いなく海老名氏のラーメンを一押しにするところであるが、「審査は味だけで判断して下さい」とのこと。まぁ、これも深読みすれば、色々考えられる表現だが、単刀直入に「一番美味しいと思ったラーメン」であるところの野本氏のラーメンに投票することにした。

さて、開票。結果は海老名氏が1位。残りの二氏は同点で敗退。

海老名氏のラーメン、個人的にはまた食べたいって感じではない。カレー風味にしなければなかなか美味しそうだけど、それだとこうやとか、醤油味を強くすれば家系みたいになっちゃうだろうと思う。まぁ、これから出店までまた少し時間があるわけで、さらに完成度に磨きをかける余裕はあるということ。今後、これがどうなっていくかには、そして、3ヶ月間の営業成績には興味があるところ。

ということで、結果が出ているのだから、これに対してこれ以上あーだこーだいうのは野暮というもの。最後に個人的な希望を書かせてもらうと、

1 カレー味にしないのも出して欲しい。

2 半カレー(半チャーハンのカレー版)を出して欲しい。

ってところでしょうか(^^。

1999.5.11

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