| audio lesson 17 「CD再生のコツ」 |
| CDの基本的な原理は前回に説明しました。今回の内容はCD出現から現在までの小生の会社の経験の羅列だと考えて下さい。その中から、ひょっとして何かお役に立つヒントがあれば、小生も書いた甲斐があるというものです。 CDが大々的な宣伝で発売されたとき、勿論、即購入しました。その前にPCMプロセッサーで、デジタル録音の凄さを経験していましたから、当然その音のクォリティを期待したわけですが、それは残念ながら叶えられませんでした。不満は ▼ 音が硬質で、みずみずしさがない。 硬質という言葉は時にプラス評価とされる場合があるようですが、陶器の仮面のような無表情さと言ってもよいもので、ロボット的音質ということもできます。 ▼ 不必要に金属的な鋭い音。 ホイッスルを強く吹いた音は鋭いと表現できますが、実音を傍らで聴くときは、サワサワという空気の動きや、強弱の微妙な揺らぎを伴っていて、鋭さだけではないことが分かります。ピッコロの強奏などでも同じです。それが芯の固い、鋭さの部分だけが突き進んでくると、聴く方は閉口します。 ▼ 分解能に欠けている。 同じような癖は弦楽器の再生でも起きて、「ブリキのバイオリン」という感じの音になるものがありますが、畢竟それは分解能の不足というものです。 ここから小生の会社の研究がスタートしました。テープのPCMプロセッサーは良い音がするのに、CDはなぜ良くないのか。取った手段は次のようなものです。 1. 20kHz以上をカットするローパスフイルターの除去。 当時のプレーヤーはオーバーサンプリングがなく、ここのフイルターに10次から13次位の急峻なものを使用していました。これを外すと大分音が良くなります。その代わり、波形を見ると44.1kHzのギザギザ(量子化雑音)がはっきり見えますから、テープに録音すると問題になったでしょう。しかし、聴くだけなら支障はありません。 2. 電流/電圧変換器の交換。 DAC(デジタル/アナログ変換器)の出力は電流なので、ICを使って電圧に変換しますが、このICの選択でずいぶん変わります。このあたりはアマチュアでも出来る範囲なので、交換した人も多い部分です。 ( ICを使わずに抵抗1本で変換することも出来ますが、レベルが低くて不便なのであまり普及はしませんでした) 3. 変換抵抗の選択 ICを使用するにしろ、基本は抵抗に電流を流した時の電圧降下を利用するので、ここの抵抗の品質もものを言います。その選択です。 4. DACその他のデジタルICの選択 DACなどのデジタルICでも、当然ながら音は変わります。 5. バイパスコンデンサーの選択 デジタル回路にはかなりの数のパスコンを使用しますが、その誘電体の種類で音が変わります。最良はスチコンでしたが、全く想像外の出来事でした。 6. デジタルケーブルの試作 トランスポートとDAコンバーターを接続する1本のケーブルで、音が大きく変化するということは、1/0の信号が通るだけということからすると信じられない感じの話です。しかし、現実は大変な変わりようなのです。 などなど、デジタル信号は1と0だけのパルスだからプレーヤーで音が変わることはないという宣伝は、どうも本当ではないということが次第にはっきりしてきました。 以上述べました改良のポイントは、大部分はメーカーのエンジニアでなければ出来ることではないので、ユーザーサイドで可能なことも次にを説明します。 なお、第一世代機の問題だったローパスフイルターは、オーバーサンプリングが普及して極く低次のもので間に合うようになると、問題点ではなくなりました。 CD再生のコツ @ CDプレーヤーの選択 何と言ってもここが最重要ポイントです。コツでも何でもないではないかと言われそうですが、オーディオはマジックではないのですから、まず、良い機械を用意することが先決です。 現在のCDプレーヤーは第5世代機あたりですが、この間長足の進歩を遂げました。スピーカーなどと違って、古くても良いものがあるとは考えないようにします。 A DAコンバーターとトランスポート DAコンバーターはよくLPプレーヤーのカートリッジに例えられますが、この部分がCDプレーヤーの心臓部に相当することは確かです。メカ部分のトランスポートも勿論音質に関係しますが、比重としては少し軽い。 この二つが別々なっているものがセパレート型ですが、設計の自由度、或いは完成度としてはセパレート型の方が勝れています。勿論その分高価ですが。 トランスポートとDAコンバーターの間の相性はやはりあるもので、セパレート型のオリジナルの組み合わせが常に最良という訳ではありません。 B 音の評価基準 このオーディオ教室では番外編902で、音の評価の基準の説明をしてありますが、CDプレーヤーの良否については「音の分解能」を最重要視します。この話もカートリッジに似ています。カートリッジの振動部分の実効質量を軽くすることによって分解能が向上し、最後の頃のLP再生能力は大きく前進していました。CDプレーヤーにおける勝れた分解能は、そのまま、高音域の伸びきった感じ、透明感、鮮度につながり、アコースチック楽器を生々しく再現できるようになります。 (この「分解能」の評価の能力は個人によって、また訓練と経験によって誰もが同じとはいきません。そして、それなりに授業料、すなわち経験が必要なものです) C デジタル周りが大きな問題 当初、デジタル信号の周辺は誰がやっても同じと考えました。しかし、やがてそれが誤りであることが分かってきます。トランスポートからDAコンバーターまでのデジタルケーブルがその典型ですが、光ケーブル、同軸型のケーブル、単なる2本撚りのケーブル、銅の芯線、銀の芯線など、みんな音が違います。 また、光ケーブルもプラスチックと石英で違います。これらを聴き比べて、最善を求めることが必要です。 このデジタルケーブルの音質に対する影響力は、オーディオ信号のそれよりもずっと大きいのです。 ここで一つだけノーハウを紹介しましょう。もし同軸型のケーブルを使用しているのならば、24番程度の錫メッキ単線2本をエンパイアチューブに通してから、軽く撚りあわせて使ってみます。分解能が大きく向上する可能性があります。 D 電源の問題 プリアンプもそうですが、CDプレーヤーも電源の極性に敏感です。音のみずみずしさが相当に変化することがあります。 もう一つ、電源コードの出来の良し悪しも関係します。この二つのポイントは現在のところ、耳で判断するしかありません。 以上、小生の会社で実際に経験し、苦労した点を説明しました。これらの内の幾つかはアマチュアの方でも、熱心でさへあれば実行できますから、あまりコストの掛からない方法は実施してみると良いでしょう。 ただ、システムによっては効果がないこともあり得ることは勿論で、低コストの実験ならば、ダメもとと考えて下さい。 ● ここでヒアリングの注意を書いておきます。 @ 音楽はアコースチック楽器に限定すること。 A 曲の途中で切り換えずに、一段落してからもう一度同じ曲を聴くこと。曲の長さは30秒から長くて1分程度。小生の経験では、瞬間切換で分かるのは相当に差のあるときで、微妙な差になるほど交互に何度も繰り返して聴くようにします。 B 音楽の種類は限定しないこと。小生の会社では、バイオリン、ギター、琵琶、三味線、ピアノ、オルガン、パーカッション、木管、金管、男声、女声などを使います。意外に音の差の分かりにくいのはチェンバロ、オルゴール等です。 一つの楽器だけで満足すると落とし穴に落ちることがあります。 |