今回はトランスの話をしましょう。オーディオで使われるトランスは電源トランスと低周波トランスです。
トランスは正しくはトランスフォーマーで、動作原理は次のようになっています。
◆ 鉄心(磁性体)に相互に絶縁した2個の巻線を設ける。
◆ 片方(1次巻線)に交流電流を通ずると鉄心が磁化されるが、磁化は交流電流と同じように時間的に変化する。
◆ もう1個の巻線(2次巻線)は変化する磁界の中に置かれたことになり、巻線の中に起電力を生ずる。
そして、トランスには
● 1次側に入る電力と2次側に出て行く電力は等しい。
● 直流電流は時間的変化をしないから、2次側には出てこない。
● 2次側の起電力(電圧)は2次巻線の巻数に比例する。
という性質があって、要するに電圧と電流を自由に変換できる、という役目をする部品です。
【電源トランス】
100Vの商用電源からアンプなどを働かせる直流を作りますが、商用電源から絶縁する役目をしたり、電圧を適当に変える役目をします。アンプの中では一番大きくて目立つ存在です。
トランスの常識として覚えておく必要のあることを説明します。
1.1次側の電力と2次側の電力は等しいこと。ただし、鉄心によるロスや銅線の抵抗によるロスがあって、少し目減りします。(このロスの電力がトランスの温度を上げる)
2.2次側で使える直流電流は交流電流の60%程度です。2次側の巻線が交流1Aならば、整流した後の直流電流の目安は0.6A程度だと考えておきます。
3.トランスは唸ります。これは鉄心の締め付け不良だけでなく、磁歪と言って鉄心自体が僅かながら変形するためです。普通はアンプの近くで聞こえなければ実害はありませんが、気になるときはケースに入れてピッチを充填したものを使用します。
4.磁束が洩れます。コアの形状にもよりますが、ローコストのE I 型はその点不利です。
なお、電力的に余裕のある場合は漏れの程度は下がります。漏洩磁束が問題になるプリアンプでは、トランスを「ショートリング」という銅板の帯で巻いたり、透磁性の高い珪素鋼板で巻く「ハムプルーフベルト」を使用したりします。もっと厳重にするときは磁気シールドのケースに入れて密閉して使います。
5.巻線間の静電シールド。これは1次巻線と2次巻線の間に、薄い銅板を挟んだもので、それをアースすることにより商用電源からのノイズを減らそうというものです。プリアンプでよく使います。
6.温度はかなり上昇するもので、おおよその見当としては60度以下程度で使用するのが精神衛生上好ましい所です。60度と言うと、手を当てて少しは我慢できる位の温度です。(人にもよりますが)
7.電源トランスで音は変わります。鉄心や線材の特性によるものと思われますが、かなりの差があります。(かってのタンゴのトランスは良い音がしました)
ざっとこんなところですが、スペースに余裕があるときは電力的に余裕のあるものを使用します。
なお、トランスの容量を表示する時は、2次側の各巻線の電圧と電流の積のトータルで言います。単位は「○○VA(ボルト・アンペア)」です。
例として
2次側 巻線1:10V 3A(=30VA)
巻線2:60V 1A(=60VA)
の場合は 合計90VA
「このトランスは90ボルトアンペアのトランスです」と言うのが正しいのですが、まあ、90Wでも構いません。なぜVAを使うかは力率が関係するためです。 |