column 102「音像定位の価値」10/15
 このところ、シングルコーンのスピーカーが音像の定位に勝れていて好ましい、という趣旨の投稿が幾つかあった。
 好みの問題ではあるが、ピュアオーディオの立場から眺めると少しばかり異論がある。

 ステレオ再生の教科書を開くと、その効用として「音像の定位」という項目が最初に出てくる。
 その所為か、音像の定位をひどく気にする人がいる。音像の定位は果たしてそんなに重要なことだろうか。

 小生がステレオ再生音を評価するときのポイントは

1.音のバランス(不自然さはないか)
2.音域の広さ(低音はどこまで出せるか)
3.音の分解能(合唱が人数通りか)
4.音の鮮度(みずみずしさ、鮮やかさを保っているか)
5.音の迫真力(その場にいるような感じ。プレゼンス)

の5項目で、音像の定位は

6.音像の定位

として、オマケ扱いのような位置に置かれている。
(オーディオ教室NO.902を参照)

 その理由を説明する。

 多くの人は、コンサートホールで音楽を聴くときは、音像の定位など気にすることはない。
 しかし、ミキサーは録音に当たって音像の定位に慎重に気を配り、入念に仕上げる。
 その理由は、演奏会場では、求めようとすれば視覚によって簡単に楽器の位置を認識できるのに対し、ステレオ再生では左右のスピーカー間に音像をどのように配置するかだけで、サウンドステージを表現する必要があるためで、これはプロの立場として当然要求される技術である。

 しかし、再生する側があるレベル、すなわち、ステレオの「ピンポン効果」を喜ぶレベルから卒業したならば、もっと本質的なレベルの高さを目指す必要がある。それがNO.902に説明してある評価ポイントである。

 一例を挙げよう。
 「音域の広さ」を求めるとき、現在の技術ではスピーカーはマルチウエイにするしか方法はない。そのことは必然的にLCネットワークのようなフイルターも必要とする。
 このようなフイルターはない方がよいに決まっているが、それでは、ということでシングルコーンを採用して、音域の広さ、その他諸々の性能の不満を抱え込むのは、まさに本末転倒である。

 「オーディオでは基礎が大切です」ということで、100回にわたって「HiFiオーディオ教室」を掲載してきた。
 自分の意見を発表することも大切であるが、その前に、基礎知識の充実にも少しは努力を配分することが必要ではなかろうか。

コラム目次へ