きのこの山を救え!
鈴樹 瑞穂
 朝。爽やかな朝。
 しかし、爽やかとは程遠い表情のフェイスマンは、キッチンで途方に暮れていた。
「おーいフェイスー、朝ごはんまだー?」
 ダイニングからは皿をナイフとフォークで叩く騒々しい音が聞こえてくる。次いで不機嫌なバラカスの怒号が。
「うるせえぞ、このカボチャ野郎! 皿をガチャガチャ叩くんじゃねぇ。」
「もうちょっとだから待ってて。」
 怒鳴り返すフェイスマン。
 朝食(テンプルトン・ペック作)の皿は既にカウンターに並んでいた。
 目玉2つのサニーサイドアップ白胡椒風味、ベーコン添えはハンニバル用。
 目玉3つの両面焼きケチャップマスタード浸し、赤いタコウインナ添えはマードック用。
 目玉4つの固焼きサニーサイドウスターソースがけ、ロースハムの塊添えはB.A.バラカス用。
 そして、自分用には目玉1つ(卵は10個パックだった)の半熟サニーサイドにソイソースを数滴、生ハムを添える。
 完璧と言っていい出来映えだった。あとは皿の空いた空間にプチトマトとマッシュルームを乗せれば。
 だが、昨日確かにスーパーの特売で買い込み、入れておいたはずのマッシュルームのパックは冷蔵庫から忽然と姿を消していた。
「おかしいなぁ。使った覚えはないんだけど……あんなもの誰かがつまみ食いするとも思えないし。」
 真っ先につまみ食いされそうなプチトマトの方は無事なのだ。
 眉間に皺を寄せて考え込んでいたフェイスマンであったが、そうしていてもマッシュルームが出てくるわけでもない。そこで、プチトマトを多めに盛りつけると、腹を空かせたAチームのために朝食をダイニングへと運んだ。



 一同が恐ろしい勢いで朝食を平らげ、食後のコーヒー(マードックはミロ、バラカスはコーヒー牛乳)に移った頃、電話が鳴った。
「はーい、こちらH.M.マードック研究所。」
 呑気に応対するマードックから飛びついたフェイスマンが受話器を奪う。
「いえ、今のはほんの手違いで……何だ、エンジェルか。」
「何だとはご挨拶ね、せっかく仕事の話を持ってきたのに。」
「仕事! いや〜エンジェル、今日も綺麗だねえ。」
 まだ受話器を狙っているマードックをしっしっと片手で追い払いながら、フェイスマンが営業用の声色になる。すげなく撃退されたマードック、なぜか今日は白衣を着込み、牛乳ビンの底もかくやという眼鏡をかけていた。先刻の応対からも、今回は科学者になり切っている節がある。
「電話で何言ってんのよ、この詐欺師。」
 電話の向こうでころころと笑うエンジェルに、フェイスマンがすかさず話を畳みかける。
「で、仕事ってどんな内容? 場所は? 謝礼は?」
 電話に詰め寄らんばかりのフェイスマンから、ハンニバルがひょいと受話器を取った。
「ああ、ああ、わかった。これから出る。」
 短いやり取りの後、受話器を置く。
「ちょっと、大佐! よく聞きもせずに受けちゃったわけ?」
 フェイスマンが両手を頬に当て、ムンクの『叫び』の彫像となって言う。
「ガタガタ言いなさんな、ちょうど退屈してたとこじゃないか。」
 ゆったりと葉巻の煙を吐きながら言い放つ無敵のリーダー、ハンニバル。
 ――退屈……窮乏の間違いじゃ……。
 フェイスマンの心の叫びは多分届いていない。
「よし、出かけるぞ。」
 きびきびと動き出す仲間たちの後をとぼとぼとついて行くフェイスマン。だが、その足取りはハンニバルの一言で俄然勢いを増した。
「今回の依頼人はな、そこそこ裕福な農家らしいぞ。おまけに孫娘は若くて美人だぞ。」
 なぜ会ったこともない孫娘のことまで確信ありげに言い切るのか、ハンニバル恐るべし。
 しかし、あまりにその断定的な口調に、フェイスマンは何の疑問も挟まず浮かれている。



 ロスから車を走らせること6時間。
 着いた所は確かにそこそこ裕福な農家といった風情。見渡す限りの広ーい畑の中に、ぽつんと一軒家が建っている。もちろんコンビニなどなく、街灯もまばら。隣の家まで味噌を借りに行くのも一苦労に違いない。
「よく来てくれたわ、Aチーム。」
 そこで彼らを迎えたのは、エンジェルであった。
「あれ、エンジェルまで来てたのか。」
 などと言いつつも、フェイスマンの視線は彼女を通り越してきょろきょろしている。もちろん、若くて美人の依頼人(の孫娘)を探しているのである。
「ところで、依頼人はどこなんでい?」
 よくぞ聞いてくれました、コングちゃん。フェイスマンが期待を込めて見守る中、高らかに笑ったのはエンジェルであった。
「嫌だわ、目の前にいるじゃないの。」
 ――
 いもしない透明人間の姿を探して視線を泳がせるフェイスマン。
「お祖父ちゃんはまだ起き上がれないから迎えに出られないの、悪いわね。」
 ――お祖父ちゃん……?
 フェイスマンは嫌〜な予感に、リーダーを振り返る。
「依頼人の孫娘だ。若くて美人だろう?」
 ハンニバルはにやにやしながら、顎でエンジェルを指し示した。エンジェルは両手を腰に当て、なぜかモデル立ちをしてポーズをつけている。
「えーっ!」
 思わず力の抜けた雄叫びを上げるフェイスマン。がっくりと膝をつき、両手で頭を抱えてのけ反る、いわゆる“オーマイゴッドのポーズ”。別名“アファBの負けポーズ”。大体、仕事の依頼に下心を持つのが悪い。
 だが反対に、B.A.バラカスとマードックは俄然この仕事に身を入れる気になったようである。
「そうかい、エンジェルの祖父さんの一大事とあっちゃあ、一肌脱がねぇわけには行かねぇなあ。」
「いや〜、いい農場だ。ここなら俺っちの研究も捗りそうだぜ!」
「ありがとう、みんな! この恩は忘れないわ!」
 すっかり盛り上がるAチーム−1+エンジェル。
「ち、ちょーっと待ったぁ!」
 すっくと立ち上がったフェイスマンが隙を見つけてようやく口を挟む。
「エンジェルの祖父さんが大変なのはわかったよ。俺だってできれば力になりたいとは思うさ。でも、まだ依頼の内容(と謝礼)を聞かせてもらってないぜ。それに大体、祖父さんは起き上がれないって、どうしちゃったんだよ?」
 詐欺師の演説に、その場がしーんと静まり返る。その静寂を破るかのようにカツンとヒールの音を響かせて、エンジェルが一歩進み出た。
「そうね、順を追って説明するわ。」
 おもむろに懐から“伸びるボールペン”を取り出したエンジェルは、こほんと咳払いを一つして話し出した。
「我が家は代々ここで農業を営んでいてね、この辺り一帯はアレン家の土地なの。あなたたちが20分前に車で通過したトウモロコシ畑から、あっちの山までよ。」
 伸ばしたボールペンで、背にした山をびしっと指し示す。
「で、今回の問題はあの山なの。」
「何の変哲もない山に見えるけどなぁ。なかなかいいラインしてるけどさ。あれが悪党に狙われてるってわけ?」
 おでこに手を当て、伸び上がって山を見るマードック。白衣にベースボールキャップは合わないので、今回は夏の陽差しに頭をさらしているのである。
「ええ、そうよ。あの山ではトリュフが採れるの。」
 トリュフと言えばきのこだが、世界三大珍味とまで言われる高級食材。それが何でアメリカのこんな田舎の山中に? だが本当なら、この辺りでは宝の山と言ってもいい。
「お蔭でお祖父ちゃんは腰を痛めてしまったわ。奴らに斜面から転がり落とされたの。」
「ひでえことしやがる。どんな奴らなんでい?」
「行けばわかるわ……。もう私たちの手には負えないの。それで、あなたたちに奴らを何とかしてほしいのよ。それが今回の依頼内容だわ。」
 エンジェルは白いハンカチを取り出し、大袈裟に鼻をかむ。いつの間にかボールペンを畳んでしまっている辺り、やはりエンジェル、ただ者ではない。フェイスマンが手を揉みながら、恐る恐る切り出す。
「あのー、それで謝礼の方は……。」
「奴らを追い払ってくれたら、あの山のトリュフを半分あなたたちにあげるわ。」
 ――半分? 全部じゃないのか!
 だが、滅多にありつけない高級食材を嫌になるほどたらふく食べて、残りは売っても十分お釣が来そう。目まぐるしく頭の中でソロバンを弾き、フェイスマンの頭上にOKサインが点滅する。
「やりましょう。そんな悪党をのさばらせておくわけには行かない。」
「ありがとう、頼りにしてるわ、Aチーム。」
 ハンカチを振るエンジェルに見送られながら、Aチーム一同は問題の山へと向かった。



 舗装された道は山の下で終わっていた。仕方なくバンを乗り捨て、一同は歩いて山へと登ることにした。
「で、問題の奴らって一体……。」
 フェイスマンがきょろきょろしながら呟く。
「うーむ。エンジェルは行けばわかると言ってたが。」
 腕を組みつつ葉巻を燻らすハンニバル。
「それにしてもすごいとこだなぁ。こんなに掘り返した跡があるぜ。」
 土肌の露出した斜面を指差して、マードックが言った。科学者になり切っている彼は、乾いた土塊をもっともらしく指で摘んで調べている。
「トリュフを掘り出した跡だろうな。だいぶ時間が経ってるようだけど。」
 屈み込んで調べる一同。
 と、その時である。
 一同の耳に、やけにメルヘンな歌声が響いてきたのは……。
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
 声はたちまち大合唱となり、彼らを取り巻いた。
「な、何でい、この声は?」
 流石のコングも腰を浮かして不気味そうに辺りを見回す。
「おい、あれ!」
 フェイスマンが斜面を指差した。乾いた土肌に、黒土がもこっと現れたのだ。見る間に土の畝が盛り上がり、もくもくと進んでくる。あっちでも、こっちでも、すごい数とスピードである。
 そして、彼らの足の下でも。
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
 歌声と共に地面がふわりと揺れ、次の瞬間にはAチーム一同、土と共に運ばれていた。
「な、何だこれはっ。」
「ひょーえー。」
 騒いでも甲斐なく、あっと言う間に登ってきた道を逆方向に運ばれ、彼らはぽいっ……と山の下に捨てられた、のであった。
 そして、戻っていった土の畝から、茶色い丸い頭がぽんっと覗く。
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
 斜面一面に穴が開き、無数の茶色い頭が覗いては引っ込む。
「も……もぐら……?」
 フェイスマンが呆然と呟く。
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
 もぐらの大群は、Aチームを嘲笑うかのように合唱し、誇らしげに踊っている。
「何てタチの悪ぃもぐらだ。」
 バラカスが悔しそうに舌打ちする。
 ダダダダダ……。
 いきなりハンニバルがマシンガンを乱射する。しかし、弾丸はひょっと頭を引っ込めたもぐらの穴の上を虚しく撃つばかり。
「ダグッ!」
 一斉に穴に身を隠したもぐらたちは、弾が切れたと知るや、また顔を出して合唱を始める。
「ディグダ、ディグダ。」
「ダグダグダグ。」
 どうやら山から出ていけと言っているようである。
「ううぬ、もぐらの分際で人間様を馬鹿にするか〜!」
 すっくと仁王立ちになり、負けじともぐらを睨み返すハンニバル。
「や、やばい、ハンニバルがキレそうだ!」
 フェイスマンとB.A.バラカスが顔を見合わせる。キレたハンニバルは水爆より始末が悪い。このままではもぐらどころか、山ごと滅ぼしてしまいかねない。
「一旦退却だ。」
「大佐、作戦、作戦練り直そう!」
 比較的冷静なAチーム×1/2は、もぐらを睨みつけるハンニバルと、1匹捕まえて解剖するのだと喚くマードックを引っ掴むようにして、バンに押し込み、アレン家に戻った。



「あらぁ、やっぱりダメだったのねー。」
 呑気に彼らを迎えたエンジェルに、ハンニバルが不機嫌な声で言う。
「ダメとは何だ、ダメとは。作戦を立てるために一度戻ってきただけだ。」
「エンジェル……あんなにタチの悪い奴らだなんて、一言も言わなかったじゃないか。」
 フェイスマンの抗議を、エンジェルは涼しい表情で受け流す。
「そうだったかしら。でも、頼むわよ、何とかしてちょうだい。」
「そう言われてもなぁ。」
 珍しくB.A.が溜息をつく。悪人相手なら彼の拳でどうとでもなるが、いかんせん、相手が土の中では分が悪い。
「まあ、食事でもしながらゆっくり作戦を練ったらどう? 用意できてるわよ。」
「やったぁ、俺もう腹ペコ!」
 急に元気になったマードックがテーブルに駆け寄る。と、その白衣の懐から、茶色い丸い頭が1つぴょこんと覗いた。
「あーっ!」
「きゃあっ。」
「そいつは!」
 フェイスマン、エンジェル、B.A.が一斉に指を差す。
「あ、これ? 研究材料にと思って1匹連れてきたんだわ。」
 ちょっと得意気なマードック。
「だーっ、すぐ返してこい!」
 茶色い頭などもう見たくもないフェイスマンが強い口調で言う。
「せっかく連れてきたのに。」
「す・ぐ・に・返してこい! あぁもう、俺が返して……いや、その辺に捨ててきてやる!」
 つかつかと歩み寄ったフェイスマンが、マードックの白衣からもぐらを引っ張り出す。
「全く……。」
 何気なく抱き上げたもぐらを見て、フェイスマンの手が止まる。両の前足でしっかり持って、呑気なもぐらが食べているのは……白くて丸いきのこだった。
「トリュフか!?」
「いや、違うな。」
 もぐらからそのきのこを奪ったハンニバルが、一同の眼前にそれを突きつける。
「これは、マッシュルームだ!」
「マッシュルーム!」
「そんなものをどうしてこいつが……?」
「あ、ねえ、ちょっと!」
 エンジェルが大発見をしたかのように、もぐらの前足から何かを摘まみ上げる。
「このコの足についてるの、“カリフォルニア・マッシュルーム”のシールだわ!」
 ――カリフォルニア・マッシュルーム……?
 フェイスマンの脳裏に稲妻のように過ったもの、それは今朝冷蔵庫からなくなっていたマッシュルームのパック。
 こそこそとみんなの輪から遠ざかろうとしていたマードックの白衣を、フェイスマンの手がむんずと掴んだ。
「犯人はお前だな!」
 もぐらをバラカスに押しつけ、空いた手で白衣の中を探る。すると予想通り、そこから“カリフォルニア・マッシュルーム”のパック(もぐらに破られ、齧られた跡あり)が出てきた。
「何すんだよ、俺っちの研究材料!」
 マッシュルームで何をどう研究するつもりだったのか、クレイジー・モンキー。
 だが、そこで冷静に事態を把握したハンニバルが大声を上げた。
「そうか!」
「な、何事……?」
 恐る恐る振り向いた一同の目に映ったもの、それはもぐらの首根っこを掴んでぷらーんとぶら下げるハンニバルの勇姿であった。
「トリュフを持ってこい、エンジェル。」
「はいっ。」
 有無を言わせぬ命令に、キッチンに駆け込むエンジェル。
「そいつを寄越せ、フェイス。」
 ハンニバルはマッシュルームのパックを取り上げた。そして、一同の顔を見回し、おもむろに口を開く。
「これから1つ、実験をしようじゃないか。」
 そう言って、エンジェルから受け取ったトリュフをテーブルの右隅に、そしてパックに残ったマッシュルームを左端に置いた。そうしておいて、真ん中にもぐらを下ろす。
「私の仮説によれば! もぐらはマッシュルームが好きだ。トリュフよりも!」
 左右を見回し、もぐらは鼻をひくひくさせている。そして、迷わずマッシュルームの方へと進むもぐら。トリュフには見向きもしない。
「本当だ!」
 指差して驚く一同。高らかに笑い、胸を張るハンニバル。
「この事実さえわかれば、手の打ちようも決まってくるな。」
「ええ、ちょうどいいことに、隣の山ではマッシュルームの栽培を始めたばかりよ。」
 エンジェルが瞳をきらきらさせて両手を組み合わせた。



 その後、トリュフ山に住むもぐらの群れは、道に撒いたマッシュルームに釣られて、無事に隣のマッシュルーム山への引っ越しを果たした。
 作戦に要した時間、一昼夜。かかった費用、囮用マッシュルームのパック、1グロス分。武器弾丸の消費はなし。
「今回の作戦はなかなか美味しかったね。」
 アレン家のダイニングで、ビールのジョッキを傾けながらフェイスマンは上機嫌だった。
「ええ、本当に。それに、更にいいことがわかったのよ。」
 輪をかけて上機嫌なエンジェルが、祖父の座る車椅子を押しながら入ってくる。
「何でい?」
「もぐらたちが耕してくれたおかげで、あの山の土壌がすっかり軟らかくなってたの。肥えてるし、畑に最適だわ。」
「何だって、じゃトリュフは!?」
 思わず立ち上がるフェイスマン。
「トリュフも悪くないけどのう、わしゃきくらげがごっつう好きなんじゃわ。」
 皺だらけの顔でふごふごと言うエンジェルの祖父。言い出したら聞かない頑固爺である。
「そゆことだから、あの山は今後きくらげ畑として使うことにしたの。あ、心配しないでね。約束通り、収穫したきくらげは半分あなたたちにあげるから。」
 にっこり微笑むエンジェル。
「きくらげの研究……マッシュルームよりいいかもしんない。」
 既にマードックは懐柔されかけている(いつもわけのわからない無駄遣いをする張本人のくせに!)。
「俺ぁどっちでも構わねえぜ、依頼人は他でもねえエンジェルの祖父さんなんだし、謝礼なんていらねえくらいだ。」
 どうしてそう無欲なんだ、コング(人一倍大食らいの食費減らしのくせに!)。
「まあいいじゃないか。あいつらに勝って、私ゃ満足だ。」
 そういう問題か、ハンニバル(あんたの葉巻代だって馬鹿になんないんだよ!)。
 が、フェイスマンの心の叫びも虚しく、他の仲間たちはすっかり満足げで和んでいた。
「さあさあ、一杯食べてね。マッシュルームもきくらげも一杯あるから。トリュフもこれが食べ納めだしぃ。」
 にこやかに勧めるエンジェルに、フェイスマンの肩ががっくりと落ちる。
「あぁ、もう、ヤケ食いしてやるっ。せめてトリュフを腹一杯……。」
 籠一杯に盛られたきのこを残らず口に放り込み、フェイスマンがばったりと倒れる。
「あらやだ、何か違うきのこが混じってたかしら。みんなー、注意してねー。」
 エンジェルの言葉に、残る3人は元気よく返事をしたのであった。
【おしまい】
[編註/きくらげは畑で栽培するものではありません。]
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