MIAMI GUYZ
フル川 四万



 軽快なリズムに乗って『マイアミ・バイス』のテーマ曲が始まる。
 椰子の木を一巡り、走るフラミンゴの群れに続いて、高速で水面を走るカメラワーク。テーマ曲の軽快なドラミングに合わせて、ピンクと水色の文字でタイトル表示。
『MIAMI GUYZ』
 キャスト名が表示される。
 Starring
 ドン・ジョンソン アクアドラゴン
 フィリップ・マイケル・トーマス Mr.バッファロー
 サンバカーニバルだの車だのブーメランだのサンタフェの景色が次々と映し出される中、
 And also starring
 サンドラ・サンチアゴ カサンドラ・サンチアーゲ
 マイケル・タルボット 坂本 太
 ジョン・ディール ジミー・チュウ
 オリビア・ブラウン ララ・ウラジミール
 And エドワード・ジェイムス・オルモス 坂本 太(2役) as Castera
 馬だのビルだの海岸線だの鳥だのの後、夜景に変わり、ビルのシルエットの中央に背を向けた人影。四方からスポットライトが集まり、眩しげに振り返るその人影は、パステルピンクのデザイナージャケットを着用したアクアドラゴンの勇姿であった。
 音楽終わる。






 ここは、マイアミビーチにほど近いコンドミニアムの3階。広さは200平米以上。壁と天井は金粉入りのパステルブルー。床はもちろん大理石。調度品はサンタフェスタイルで纏められ、そこここにフラミンゴの置物が配されている。そしてオーシャンビューの大きなベランダからは、今まさに夏の朝日が差し込んで部屋を照らしていた。
 そんなファッショナブルな部屋で、黙々と作業を続ける男が2人。ファッショナブルと言えばこの人、人畜有害な伊達男テンプルトン・ペック氏と、ある意味ファッショナブル(今日は椰子の木柄の全身タイツ)なハウリング・マッド・マードック氏である。2人が何をしているかというと、古紙をまとめているのだ。
「ふう、これで大体終わったぞ。」
 額の汗を拳で拭いつつフェイスマンが言った。彼の前には、数十個の新聞・雑誌・段ボールの山。
「ああもう、段ボールで手、切っちったよ〜。こういう傷って痛いって言うか痒いんだよねー。」
 マードックが指の切り傷をフェイスマンの方に突き出して見せた。
「大体何で俺っちが、資源ゴミを出さなきゃいけないの? こっち来てから雑誌も新聞も読んだ覚えないのに。」
 言いつつ、"magazine"と書かれた段ボールに、プレイボーイのバックナンバーを放り込む。
「よくは知らないけど、コングが言ってたじゃない。古雑誌を売って、ボランティアか何かの資金にするって。ほら、この辺、移民の子とか多いだろ? そういう子たちの学校にサッカーゴールを買うとか何とか。ま、いいじゃん。どうせ部屋は片づけなきゃいけないし、こういう機会でもないと、本はなかなか捨てられないし。とにかく、ウダウダ言わないで手を動かす! 急がないとハンニバルたちが戻ってきちゃうだろ。」
 と、その時、カランコロン、とドアベルが鳴り、ハンニバルとコングがご帰還。登場と共に、ソファ(ハンニバル)、床(コング)に倒れ込む2人。
「オハヨ、コングちゃん。朝からお疲れじゃん?」
 うつ伏せに倒れるコングの背中に、古雑誌入り段ボールをズドンと落としてマードックが言った。しかし、反応はない。いつもなら、「何しやがんだこのスットコドッコイ」と共に拳の一つも飛んできそうなのに。
「おかえり、ハンニバル。撮影、どうだった?」
 フェイスマンの問いかけに、ハンニバルは、オットセイのようにアウッと上半身を上げ、疲れた笑顔をフェイスマンの方に向けた。
「いやあ、大変だったけど、いいシーンが撮れたよ。今日は、海中での乱闘シーンを撮影したんだが、久々にハードだった。コングは死にかけるし。」
「死にかけた?」
「ああ死にかけたぜ。ボートから海に飛び込んだんだが、着ぐるみが浸水してそのまま6メートル底まで沈んじまってな。命綱がなかった本当に危なかったぜ。その前のシーンでは、マジモンのワニに噛まれるし、俳優ってのは思ったよりハードな仕事なんだな。」
 コングはそう言うと、ジェスチャーで腰を揉んでくれ、と指示。黙って段ボールをどかし、コングの腰を踏むマードック。椰子の木柄の全身タイツのマードックがコングの背中に立つと、まるでコングの背中からヤシの木が生えているように見えて、それはそれで面白し。
「おお、踏んでやってくれ。まだ撮影は続くから、コングにゃあ頑張ってもらわなくちゃならないんでな。」
 ハンニバルは、そう言うと、再度ソファに突っ伏した。



 さて、現在の状況を説明しよう。マイアミでの仕事を終えたAチームの面々、現在、当地にて夏のバカンス中である。ハンニバルは、いくつかの仕事で手にした謝礼で、現地の映画監督兼プロデューサー(何と、『マイアミ・バイス』を1話だけ撮ったことがあるという本格派)と契約し、休暇ついでにサウスビーチでアクアドラゴンの新作を撮っているのだった。そしてコングちゃんは、何と今回、アクアドラゴンの相棒のMr.バッファロー役で映画初出演を果たしているのである。もっとも、着ぐるみの中身としてなので、顔出しはなし。
「ところでコング、言われた通り、雑誌まとめたぜ? これ、どこに持っていくの?」
 フェイスマンが、雑誌の山を指差して言った。
「ああ、そうだったな。プリストル小学校の校庭だ。おっと、こうしちゃいられねえぜ。回収は8時までだ。」
 そう言って飛び起きるコング。そしてもちろん、背中に乗っていた椰子の木はバランスを崩して倒れた。






 Aチーム4人に加えて古新聞古雑誌古段ボールをぎっしり積んだ紺色のバンは、相当暑苦しい。何とか窓を全開にして風を入れながら全速でプリストル小学校に到着したのは、古紙収集時間の午前8時ジャストだった。汗まみれの4人。しかし既に集積場に資源ゴミはなく、係員らしき男性が校庭に1人ぽつんと残っているだけである。
「畜生、遅かったか!」
 バンから飛び下りながらコングが叫んだ。
「あ、バラカスさん。古紙、持ってきてくれたんですか。」
 係員の男性が振り向いた。
「シャノン先生。ああ、持ってくるにゃあ持ってきたんだが……どうやら収集時間に間に合わなかったようだな。」
「いえ、間に合ってます。まだ業者は来てませんから。」
 係員、ではなくて、プリストル小学校の教師であるジャック・シャノンはそう言って寂しげに笑った。
「来てないって、古紙、全然出されてないじゃないか。今日は集まらなかったのか?」
 車から古雑誌の束を乱暴に投げ下ろしながら、ハンニバルが聞いた。
「いえ、夕べ確認した時はたくさん出ていたんです。多分、夜のうちに盗まれたんじゃないかと。」
「盗まれただと?」
「ええ。最近、業者が回収に来る前に、何者かがやって来て、出されている古新聞・古雑誌を勝手に持っていってしまうんです。おかげで、ここ3カ月で集まった古紙代金は、50ドルに満たない有様です。」
 シャノンは肩を落とした。
「ここで集めた資金で、クリスマスに校庭にサッカーゴールを買うんだろ? 3カ月に50ドルじゃ、ええっと、6年くらいかかるぜ?」
「だから何とかしなきゃと思って、夜中に見張りを立ててみたりしたんですけれど、敵もさるもの、いつもちょっとの隙を突いて古紙を運び出してしまうんですよね。実は、結構、組織的な犯行なのかもしれません。」
「警察には届けたの?」
「ええ。もちろん警察にも届け出てみたのですが、この辺の警察は、いつもサウスビーチの暴力事件を一杯抱えてて、古紙の窃盗なんて、後回しの後回しみたいです。あ、段ボールは分けてこっちにお願いします。新聞は、そっち。」
 喋りながらテキパキと指示を出すシャノン先生に、思わず従ってしまうAチームの面々。ほどなく、何もなかった校庭の臨時集積場には、新しく詰まれた古紙の小山ができた。
「ふぅ、これくらいあれば20ドルくらいにはなるでしょう。バラカスさん、皆さん、ありがとうございます。」
 シャノン先生は、ペコリと頭を下げた。
「いいってこと。取っておいたってオイラどうせ新聞読まないし。それにしても、古紙泥棒ってのも困ったもんだね。」
「全くだぜ。せっかく子供たちにサッカーゴールを買ってやろうってのによ。何とかならねえか、ハンニバル。」
「ふむ。次の収集はいつだ?」
「週1回なので、来週の金曜日です。」
「よし、じゃあ俺たちが木曜の夜から張り込んで、犯人を捕まえてやろう。」
 ハンニバルは、ニッカと笑ってそう言った。
「あ、ありがとうございます!」
「いや、礼には及ばんよ。ちょうど休暇で暇な奴もいるし。というわけで、フェイス、モンキー、古紙泥棒は、お前たちが捕まえろ。」
 そう言うと、ハンニバルは、フェイスマンとマードックをビシっと指差す。
「えっ、俺とモンキー2人だけ?」
「コングちゃんと大佐はどうすんのさ?」
「俺たちは、映画の撮影があるじゃありませんか。その間、暇を持て余すお前たちに、格好の余興を差し上げようと言っているんです。それに組織犯罪と言ったって、相手はチンケな紙泥棒だ。あたしが出ていくまでもありませんよ。」
「おう、しっかり捕まえてくんな。目標はクリスマスまでにサッカーゴールだからな。」
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いしますっ。」
 シャノン先生は、渋るフェイスマンとマードックの手を交互に握ってブンブン振った。
 というわけで、古紙泥棒捕獲大作戦は、フェイスマンとマードックの双肩に委ねられることになったのであった。






 アクアドラゴン最新作『マイアミ・ガイズ』あらすじ
"特殊捜査官であるアクアドラゴンとMr.バッファローは、麻薬密輸組織を潰すため、組織が運営しているカジノにボディガードとして潜入する。そこには、既にFBIの囮捜査官が潜入していたが、彼は既にマフィアに買収されて寝返っていた。以下の物語はあまりに陳腐なので省略。"



「よーい、スタートっ!」
 カチンコが鳴らされた。麻薬組織が経営する酒場。ピンクのスーツに身を包んだアクアドラゴンとMr.バッファローが、賭けポーカーのイカサマを見つけ、イカサマ師を締め上げての乱闘へと続くシーン。
 5、6人の男に取り囲まれ、次々と殴りかかってくる敵を倒していく2人。殴る振りをするアクアドラゴン。吹っ飛んでみせる敵役その1。本気で殴るMr.バッファロー。本気で吹っ飛んで本気で気絶する敵役その2。飛んだ敵役その2がぶつかって失神する敵役その3。その姿を見て、本気で引く敵役その4と5。
「コング、やりすぎだっ。」
 ハンニバルがアクションの合間にコングに囁きかける。
「す、済まねえ、ついいつものクセが……。」
「カーット!」
 監督が大声を上げた。
「ほら、言わんこっちゃない。マンフレッド、済まないもう一度……。」
「いやー、素晴らしいっ!」
 ハンニバルの謝罪を遮って、監督のマンフレッド・ムーアが叫んだ。
「すごい迫力だ、Mr.バッファロー! 君、格闘技の素質があるね! いやあ、すごいっ。これならスポンサーも大満足さ!」
 マンフレッドは、度の強い眼鏡にモジャモジャ頭、小太りのオタクそのものといった青年である。
「スポンサー? この映画、スポンサーなんかつける予定だったか?」
 ハンニバルが聞き返す。
「うん。予定はなかったんだけど、この前さ、業界のパーティにタダ飯食いに行ったんだ。そこで、映画を撮っているって言ったら、スポンサーになりたいっていう社長が現れてね。聞いて驚くな。何と、あのフラミンゴBBQソースのデロッチ社長だよ。何でも、アクション映画が大好きなんだって。これで制作費は倍増、FBI囮捜査官役の俳優も雇えるぞ!」
 興奮して捲くし立てるマンフレッド監督。
「ちょっと待て、雇えるぞ、って、まだ決まってなかったのか? FBI役。」
「うん。キャスティングの途中で制作費が尽きちゃって。エキストラから選ぼうかと思ったんだけど、坂本さんが3役やってくれるっていうから、それでもいいかと思っていたんだけど。」
 マンフレッドが、しれっと答えた。
「3役って、あれか、同僚役兼キャステラ部長役、兼FBI囮捜査官役か? 同僚と上司と敵役が、全部同じ顔の東洋人か? 無理だろ、絶対。観客が混乱する。」
「いいんだよ! そんなの観客は気にしないって! この映画の見せ場は、君たちの着ぐるみアクションだろ? それに坂本さんの本職はモノ真似タレントだ。3役くらい楽にこなせる。」
「それにしても……。」
「だから、雇うって言ってんだろ!」
 逆ギレする監督。
「えー、ゴホンゴホン。ゲフンゲフン。」
 と、そこに、わざとらしい咳払い。
「あ、社長!」
 マンフレッド監督が、くるりと踵を返し、咳払いの方へと駆け寄った。駆け寄った先には、恰幅のよい銀髪の紳士が1人。
「おお、マンフレッド君。撮影順調のようだね。……そちらが、主役の?」
「アクアドラゴン役のジョン・スミスだ。」
 ハンニバルが、紳士につかつかと歩み寄り、握手を交わす。
「フラミンゴ・コーポレーションのイーサン・デロッチだ。アクション映画をスポンサーするなんて初めての経験なので、興奮しているよ。しっかりと我が社の製品、フラミンゴBBQソースを宣伝してくれたまえ。」
「宣伝?」
 デロッチの手を握ったままのハンニバルの眉間に、加齢のせいではない皺が寄った。
「もっちろんですともっ。」
 マンフレッドが2人の間に割って入る。
「せっかく資金を出していただけるんですから、しっかりと宣伝させていただきますよ。」
「ふむ、結構結構。それじゃ、まず、あの黒いのを代えてもらおうか。」
「黒いの?」
「Mr.バッファローだ。あんな暴力的なキャラクター、うちの製品には似合わない。そうだな……彼を、Mr.フラミンゴに代えてくれ。」
「フラミンゴって。ピンクの鳥か? 冗談じゃねえぜ、俺が何で鳥なんかに……。」
 コングが社長に詰め寄る。
「そうだ、アクアドラゴンの相棒がピンク色の鳥じゃ、迫力に欠ける。」
「……フラミンゴにしてくれたら、制作費、あと5万ドル出してもいいんだが。」
「代えますっ!」
 マンフレッドが叫んだ。
「明日から、Mr.バッファローはMr.フラミンゴにします。今までに撮ったシーンは撮り直します。ええ、大丈夫です。まだ、海での乱闘シーンと、アクアドラゴンの自宅のヨットでワニのプレスリーに噛まれるシーンしか撮影してませんから。全部撮り直します。」
「撮り直しだと!? またワニに噛まれろってか! 溺れろってか!」
 コングがマンフレッドに掴みかかる。
「まあまあ、落ち着け。その程度の変更なら、こっちも考えんでもない。」
 激昂するコングを、今度はハンニバルが宥めた。
「それと、わが社のBBQソースの宣伝もしっかり頼むよ。そうだな……アクアドラゴンのエネルギーの元はフラミンゴ印のBBQなんてどうだろうか。」
「それは断る。」
 ハンニバル、そこは即答。
「ま、いい。その辺はマンフレッド君に任せるよ。それじゃ、いい映画を撮ってくれたまえ。フォッフォッフォ。」
 そう言うと、イーサン・デロッチ社長は高笑いと共に去っていった。






 数日後。サウスビーチの海岸には、『MIAMI GUYZ』撮影隊がスタンバイしていた。
 アクアドラゴンは、例によってパステル系のデザイナースーツを着込み、サングラスをかけている。その相棒、Mr.バッファロー改めMr.フラミンゴ役のコングはと言えば、黒の全身タイツの肩から上に、フラミンゴの縫いぐるみが丸々1羽乗っている状態で、不機嫌にスタンバっている。顔は、腹の部分から出ており、胴体と同じピンクに塗られている。フラミンゴの両脚は、女学生のお下げ髪のようにコングの両肩に垂れていて、コングが歩くたびにパタパタ揺れている。そして、羽はと言えば、コングが両方の羽の先についた棒を持ち、動きを作り出す文楽の人形方式だ。
「これ、大丈夫なのか? いろんな意味で。」
「大丈夫です。これなら、浸水しても溺れません。」
 マンフレッドが、力強くそう言い切った。確かに、溺れたらフラミンゴをズボッと脱げば、あとは全身タイツだけなので動きやすい。これなら少なくとも溺れることはないだろう。
「それから、これ、使ってください。Mr.フラミンゴの武器です。」
 そう言ってマンフレッドは、砂浜に投げ出された段ボールを指差した。中には、缶詰が山盛り。フラミンゴBBQソース・赤(辛口)、フラミンゴBBQソース・ピンク(甘口)、フラミンゴBBQソース・イエロー(カレー味)の缶詰である。
「何だこりゃ?」
「武器です。Mr.フラミンゴは、ピンチになったら、やたらめったら缶詰を投げるんです。ま、一種の手投げ弾ってことで。」
「はあ? フラミンゴが缶詰を投げるだあ?」
「ええ、だって、1分間に1個、フラミンゴ社の商品を映すっていう契約なんですもん。だから、武器は、缶詰で。カッコよく決めるのは難易度の高い作業になりますが、ここは一つ、役者根性見せちゃって下さい。そいじゃ、よろしく〜。」
 呆然とするコングを残し、マンフレッドは、「それじゃ、シーン6、海中の戦闘シーンから始めマース!」と明るく叫んで去っていった。






 金曜日、夜明け前。
 黒装束に実を包んだフェイスマンと、プリストル小学校の教師、ジャック・シャノンは、校庭の木の陰に停めたバンの中から、そっと集積場の様子を窺っていた。午前3時前。集積場には、夕べのうちに出された古紙が山積み。しかし、まだ動きはない。
「本当に今日も来るんでしょうか?」
「そう願いたいね。こんな時刻からゴミ置き場の見張りなんて、一度っきりで十分。あ、それからこれ、持ってて。」
 と言って、フェイスマンは、シャノンに小さな銃を手渡した。
「拳銃、ですか。」
 少し怯みながら受け取るシャノン先生。
「撃たなくていい。けど一応、ね。相手が多人数で、乱闘にでもなったら、それを構えて逃げてってこと。」
「わかりました。……あれ?」
 シャノンは、集積場の方へ身を乗り出した。
「何だか……減ってる気がしませんか?」
「何だって? どこどこ?」
「ほら、あの、古雑誌の山。さっきまで、もうちょっと高かったような。」
 見れば、確かに雑誌のエリアの山が、ほんの少しだが低くなっている。
「あ、本当だ。モンキー、聞こえる?」
 フェイスマンは、トランシーバーに向かって呼びかけた。
『あい、聞こえるよ。』
 反対側の裏門方向から集積場を見守っているマードックが、即座に応じた。
「そっち動きない?」
『全然。』
「ちょっと減ってる気がするんだけど……。」
 フェイスマンがそう言いかけた時、シャノン先生が、「あっ」と声を上げた。
「ペックさん、あそこ!」
 シャノン先生が指差す先には、小さな人影が。
「本当だ、捕まえるぞ!」
 フェイスマンは、バンから飛び下り、集積場に向かって猛ダッシュ。
 それに気づいたのか、小さな人影は、手早く本を掴み上げると、脱兎の如く走り出した。
「待て! 本泥棒!」
 シャノン先生も叫んで走り出す。しかし、校庭を走る人影は、なかなかにスピーディで、2人を寄せつけない。
「挟み撃ちだ、右行って!」
 フェイスマンの指示に、シャノン先生は大きく右に曲がって人影の横に回り込んだ。フェイスマンが、左を固める。両脇を固められた人影は、飛びかかる2人の間をするりと走り抜け、裏門の方へと走り去り……椰子の木の振りをして裏門横に仁王立ちしていたマードックにあっさり捕まった。
 駆け寄るフェイスマンとシャノン。懐中電灯で顔を照らして見れば、取り押さえられもがく人影は、まだ年端も行かぬ少年だった。



 1時間後、Aチームのアジトであるコンドミニアムの部屋では、にわかに朝食会が催されていた。食事を作っているのは、もちろんフェイスマン。そして、食べているのは、さっき捕まえた古紙泥棒の少年である。年の頃10歳前後の少年は、7つ目の目玉焼きを飲み込むように口に詰め込み、次にトマトスープをがぶ飲みし、5枚目のトーストをミルクティで流し込むと、やっと一息ついてフォークを置いた。
「お腹一杯になった?」
 優しく問いかけるシャノン先生に、少年は、コクリと頷いた。
「じゃあ、そろそろ話してもらおうか。どうして古紙泥棒なんかしてたのか、ええと……。」
「ジョゼ。俺の名前はジョゼ。」
 少年は、黒い瞳でシャノン先生を見上げてそう言った。
「ジョゼ。君は、うちの小学校の子じゃないよね。どこに住んでいるのかな?」
「俺の家……キューバ。家族……母ちゃん、弟たち……姉ちゃん。」
 ジョゼと名乗った少年は、片言の英語でそう答えた。
「キューバ、てことは、移民か?」
「この場合、不法入国者、って方が正しそうだけどね。」
 皿を下げ終わったフェイスマンが、ジョゼの前にデザートの桃を出しながらそう言った。ジョゼは、黙って、出された桃にかぶりついた。
「ジョゼ。食べながらでいいから答えて。誰と、どうやってマイアミに来たんだ? で、古紙を盗んでどうするつもりだったんだ?」
「船で、来た。1人で。潮の流れ、あるから大丈夫。姉ちゃんがマイアミにいる。探しに、来た。……紙は、売った。売って、パン買った。」
「お姉さんは、どこにいるの?」
「わからない。3カ月前まで、手紙あった。お金、送ってくれた。でも、もう手紙来ない。お金も送ってこない。だから、姉ちゃん、探しに来た。これ、姉ちゃんの手紙。姉ちゃん、この工場で働いてるって言ってた。」
 ジョゼは、そう言うと、ポケットからくしゃくしゃになった1通の封筒を取り出した。
「何々、"少しですがお金を送ります。私は、ちゃんとした工場で働いています。心配しないで。"……何だこれ?」
 フェイスマンが、封筒を逆さにして振ってみる。ハラリと落ちる便箋と、1枚のピンク色の紙。そこには、フラミンゴの絵と『フラミンゴ印のBBQソース(辛口)』の文字が。
「フラミンゴ印のBBQソースって、スーパーの特売で見た気がするな。ここでジョゼの姉さんは働いてるの?」
 フェイスマンの言葉に、ジョゼは、こっくりと頷いた。
「この工場には行ってみた?」
「行った。いないって言われた。ライラなんて知らないって。もう一度行った。でも、いなかった。姉ちゃんのこと、誰も知らなかった。」
「うーん、不法入国の若い女の子の失踪かあ。何か匂うよね、その感じ。安いBBQソースの匂いがプンプンする。」
 引き続き椰子の木ルックのマードックが、桃の汁を顎に垂らしながらそう言った。
「そうだね。ハンニバルたちが帰ってきたら、相談してみよう。ジョゼ、君はしばらくここにいていいよ。」
 フェイスマンの言葉に、ジョゼは、ほっとした表情で頷いた。






 軽快なリズムに乗って『マイアミ・バイス』のテーマ曲が始まる。
 椰子の木を一巡り、走るフラミンゴの群れに続いて、高速で水面を走るカメラワーク。テーマ曲の軽快なドラミングに合わせて、ピンクと水色の文字でタイトル表示。
『MIAMI GUYZ』
 キャスト名が表示される。
 Starring
 ドン・ジョンソン アクアドラゴン
 フィリップ・マイケル・トーマス Mr.フラミンゴ
 再び走るフラミンゴの群れ。延々と走るフラミンゴの群れ。いろいろな角度のフラミンゴのアップ。
 And also starring
 サンドラ・サンチアゴ カサンドラ・サンチアーゲ
 マイケル・タルボット 坂本 太
 ジョン・ディール ジミー・チュウ
 オリビア・ブラウン ララ・ウラジミール
 エドワード・ジェイムス・オルモス 坂本 太(2役) as Castera
 特別出演 ジャン・クロード・ヴァン・ダム
 もうひたすら走り回るフラミンゴの群れ。(よく見ると、その中に1羽、縫いぐるみが混じっているが、気にしないこと。)次から次へとフラミンゴの後、唐突に夜景に変わり、ビルのシルエットの中央に背を向けた人影。四方からスポットライトが集まり、眩しげに振り返るその人影は、パステルピンクのデザイナージャケットを着用したアクアドラゴン。の、足元にカメラがズームイン。フラミンゴ印のBBQソース・ピンク(甘口)のアップ。音楽終わる。



 酒場のシーン。次から次へと敵を投げ飛ばすアクアドラゴンとMr.フラミンゴの姿が、酒場のテーブル越しに映っている。テーブルには、フラミンゴ印のBBQソースの缶。もちろん、ピントは缶詰に合っている。
 海の乱闘シーン。雄々しく戦うアクアドラゴン。Mr.フラミンゴは、プカリと波間に浮いている。その下には、明らかにフラミンゴとは分離している全身タイツのコングが、フラミンゴBBQソースの缶を、ボートから機関銃を撃ってくる敵に向かって投げつけている。羽の位置と本当の手の位置が棒1本分ズレているため、フラミンゴの腋の下から缶詰がヒュンヒュン飛び出してくるという不思議な構図。敵の船に当たって爆発する缶詰。吹っ飛ぶ敵。吹っ飛ぶ間際の敵の台詞、「うわー、やられたー、アクアドラゴン、強いぜ。しかし、BBQソース・ピンク(甘口)は旨いな。」
 敵であるFBI捜査官との対決シーン。バーンと扉を蹴破り登場するアクアドラゴンとMr.フラミンゴ。襲いかかってくる敵(エキストラ)たち。突然画面が切り替わり、ジャン・クロード・ヴァン・ダム登場。明らかに背景が違う。エキストラ相手に華麗なアクションを決めるヴァン・ダム。また画面が切り替わり、アクアドラゴンとMr.フラミンゴのアクションシーン。これまたエキストラ相手にアクションを決め、最後にアクアドラゴンが、ジャン・クロード・ヴァン・ダムと同じ服装のマネキン人形を一本背負いで投げ飛ばす。画面切り替わり、ジャン・クロード・ヴァン・ダムのアップ。「俺の負けだぜ、アクアドラゴン」と(明らかに吹き替えで)呟き、なぜかサムズ・アップするヴァン・ダム(どことなく北島三郎似)。〜Fin〜



 試写室の明かりが点いた時、ハンニバルは怒りに震えていた。その横で、コングも頭を抱えている。
「マンフレッド! これはどういうことだ!」
 ハンニバルが叫んだ。楽しげな足取りで寄ってくるマンフレッド・ムーア監督。
「いい出来だろ? 新進俳優のヴァン・ダムのアクションも素晴らしいし。あ、もちろん君たちもね。」
 マンフレッド監督は、悪びれもせずにそう言った。
「どういうことだと聞いているんだ。これじゃまるで、フラミンゴBBQソースの宣伝映画じゃないか。それに、あれは何だ? 何でヴァン・ダムだけ別撮影なっちゃってるの。ちゃんとこっちに来て撮影するんじゃなかったのか?」
「仕方ないだろ、向こうは売れっ子なんだから。ハリウッドから出てこられないんだよ。いいじゃないか、ちゃんと出てくれたんだし。それとも、坂本さんが3役やる方がいいって言うの?」
「そういう問題じゃない。これはアクアドラゴンの尊厳の問題だ。」
「尊厳も何も、スポンサーの意向が最優先なのは当たり前のこと! 商業的に成功したきゃ、もうちょっと大人になりなよ、アクアドラゴン。」
 マンフレッド監督は、うすら笑いを浮かべてそう言うと、「じゃ、これから編集があるから」と言って、そそくさと去っていった。
「話にならん! 帰るぞコング!」
 ハンニバルは、怒りに震える拳を握り締めつつ、そう叫んで乱暴に席を立った。






 数十分後、ハンニバル&コング、超不機嫌なままAチームのアジトにご帰還。
「全く、あたしのアクアドラゴンを何だと思ってるんだ。」
「確かに、ありゃひど過ぎる。」
「ひどいなんてもんじゃありませんよ。あれは芸術に対する冒涜行為ですよ……って、おや、シャノン先生。」
 コングと共に愚痴りながら居間まで入ってきて、シャノンの存在に気づいたハンニバル。続いて、ソファでマードックとおもちゃのヘリで遊んでいるジョゼにも気づく。
「そっちの子供は、教え子かい?」
 コングが、シャノン先生に問う。
「いや、この子、古紙泥棒。」
 シャノンの代わりにフェイスマンが、ごく普通の顔で答えた。
「古紙泥棒か。……古紙泥棒だと!? このチビがか!」
「うん、いろいろ事情あってね。で、疲れてるとこ悪いんだけど、ハンニバル、ちょっとこの子の話を聞いてやってくんない?」


*****


「……というわけで、ジョゼは、キューバから出稼ぎに来たまま行方不明になった姉のライラを探しに来たってわけ。」
 手短に話を纏めた後、フェイスマンはそう締め括ると、1枚の紙をテーブルに投げ出した。
「それで、唯一の手がかりが、これ。」
「これ……フラミンゴ社のBBQソースのラベルじゃないか。何でこんなタイムリーかつ腹立たしいものがここに?」
 ハンニバルが忌々しげにラベルを摘み上げる。
「しかもピンクだから甘口だな。」
「何でBBQソースに詳しいの、コングちゃん。」
「詳しくなりたかなかったけどよ。一日中こいつが目に入るところにいやがるから、嫌でも覚えちまったぜ。この会社、アクアドラゴンの新作のスポンサーなんだ。」
「もう、無体なことばかり言ってくる酷いスポンサーでな、一応、全部撮り終わって今日試写だったんだが、このソースの会社のおかげで映画はメチャクチャ、それで今日も監督と喧嘩をしてきたところなんだ。」
 ハンニバルはそう言って溜息をついた。
 と、フェイスマンは横のテレファクシミリに手を伸ばし、先刻からブリブリと吐き出されていた長い紙をピッと取り上げ、ざっと目を通した。
「どうも胡散臭いんじゃないかと思って、さっきエンジェルに依頼しておいた調査結果だ。じゃ、読むよ。」
 そう言うと、フェイスマンは、エンジェルの声真似でFAXを読み上げ始めた。
「ハーイ、みんな、久し振り。元気? ハンニバルったら『マイアミ・バイス』に出演するって聞いたけど本当?」
「『マイアミ・バイス』じゃない。『マイアミ・ガイズ』だ。」
 律儀に訂正するハンニバル。
「すごいじゃない。ねえ、ドン・ジョンソンのサイン貰ってきてよ。エイミーへ、って名前入れてもらって。それから、ワニのエルビスの手形も欲しいわ。私、彼の大ファンなの。」
「だから、バイスじゃなくてガイズだから。ワニはエルビスじゃなくてプレスリー。」
「……ところで、ご依頼のフラミンゴ・コーポレーションだけど、あんまり評判はよくないわね。叩けば埃が出そう。キューバやプエルトリコからの不法入国者を最低賃金に満たない給料で働かせてボロ儲けしてるみたい。社長のデロッチは、NYではそれで前科がついてる。だからマイアミに移ってきたのね。それに、女の子たちを第三国の売春宿に斡旋してるっている噂もあるわ。こっちの方は、あくまで噂だけどね。じゃあ、ドン・ジョンソンのサイン、頼んだわよ。じゃね。エイミー。以上。――というわけで、突っついてみる価値はありそうだね。どうする、ハンニバル?」
「行きましょう。是非行きましょう。ジョゼの姉さんを探しに。そして、あたしの鬱憤を晴らすために。」






〈Aチームのテーマ曲、かかる。〉
 アクアドラゴンの衣装をうんしょっと着込むハンニバル。フラミンゴを被るコング。フェイスマンは、マイアミ・バイスのドン・ジョンソンばりのデザイナースーツにサングラス。マードックは、引き続き椰子の木の全身タイツに、縫いぐるみのワニを引き綱で引きずっている。そんな風体で、いつものように紺色のバンに乗り込む4人。
 車は、コーラル・スプリングスの外れにある、フラミンゴ・コーポレーションのソース工場に到着。コングが窓から警備員にソースの缶を投げつけて失神させると、難なく正門を突破し、工場の真横でドリフト停車する紺色のバン。
〈Aチームのテーマ曲、終わる。〉



「頼もう!」
 両開きの扉をバーンと蹴破り、勇猛果敢にソース工場に突入するアクアドラゴン一行。工場内は、ソースの甘ったるい匂いが充満しており、数十人のヒスパニック系労働者が、無言で鍋を掻き混ぜたり、缶にラベルを貼ったりしている。
「だ、誰だ、お前たち!」
 物音に気づいた工員の1人が駆け寄ってくる。
「えーと、この格好見てわかんない? こういう者だけど。」
 と言ってフェイスマンが、身分証明書(偽)を相手の顔の前に突き出した。
「げ、移民局!?(←絶対見てわからない。)みんな、逃げろ! 捕まると殺されるぞ!」
 男がスペイン語でそう叫ぶと、作業をしていた人々は、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。が、裏口は既にマードックが張ったネットで塞がれており、表玄関には立ち塞がるドラゴンとフラミンゴと優男。どこにも逃げ場はない。たちまち、数十名の不法就労者が捕獲されてしまった。
「心配ないよ。君たちを助けに来たんだ。傷つけたりはしない。」
 フェイスマンがスペイン語で叫んだ。工場の片隅に身を寄せ合う工員たちは、不審げに4人を見ている。
「ライラって子はいるか? ライラ・オルディス。」
 ハンニバルの呼びかけに、1人の美しい少女がおずおずと手を挙げた。しかし、コングと視線が合った瞬間、人影に隠れてしまう。
「君がライラか! 怖がらなくていい。俺たちは、ジョゼの頼みで君を探しに来たんだ。」
「何ですって、ジョゼの? ジョゼがこっちに来ているの? なぜ? どうして?」
 ジョゼの名前を聞いた途端、ライラ・オルディスは、思わず、といった具合で人を掻き分け、Aチームの前に走り出た。


*****


 2時間後。ジョゼとライラは、Aチームのアジトで、久し振りの再会を喜んでいた。
「そうですか。お金、届いていなかったの……。」
 ジョゼから事情を聞いたライラは、がっくりと肩を落とした。
「手紙を出したり、送金したりしたら、そこから足がついて捕まってしまうから、国への送金分は、給与から天引きして会社が送っておく、っていう話だったので、すっかり信じてしまって。」
「それは、誰が言ったの?」
「社長です。社長の、デロッチさん。そう言えば、実家の住所も聞かれてなかったのに、お金、届くわけないわよね。もっと早く気づくべきだったわ。ごめんね、ジョゼ。」
 そう言うと、ライラはジョゼを抱き寄せた。
「ふむ、デロッチの野郎、やっぱりそんな不正をしていやがったのか。最初からいけ好かない奴だと思ってましたよ。」
「ああ、何がフラミンゴだ。俺はもう金輪際、フラミンゴの着ぐるみなんざあ着ねえぜ。」
「でも大丈夫。もう移民局には通報したから、今頃当局が移民法違反で逮捕に向かってるよ。」
 フェイスマンが得意気に言った。そういうところ、抜かりはない彼氏。
「となると、映画のスポンサーの話は、なし、だな。ヴァン・ダムのギャラはどうやって払うんだ?」
「知るか、そんなもん。マンフレッドがあたしに無断で勝手に契約したんだ。資金があろうとなかろうと、ヴァン・ダムがいようといまいと、映画はキッチリ完成させてもらいますよ。」
 ハンニバルは、葉巻を取り出して銜えると、ニヤリと笑った。



10


 軽快なリズムに乗って『マイアミ・ガイズ』のテーマ曲が始まる。(版権の関係で『マイアミ・バイス』のテーマ曲は使用できず。結局、マードック作曲のガムラン風スチャラカ・カントリー・ミュージックで代用。)
 椰子の木を一巡り、走るフラミンゴ水牛の群れに続いて、高速で水面を走るカメラワーク。テーマ曲の絶妙なシタールに合わせて、ピンクと水色の文字でタイトル表示。
『MIAMI GUYZ』
 キャスト名表示。
 Starring
 ドン・ジョンソン アクアドラゴン
 フィリップ・マイケル・トーマス Mr.バッファロー
 再び走る水牛の群れ。延々と走る水牛の群れ。いろいろな牛のアップ。明らかに、アニマル・プラネットからパクってきた映像。
 And also starring
 サンドラ・サンチアゴ カサンドラ・サンチアーゲ
 マイケル・タルボット 坂本 太
 ジョン・ディール ジミー・チュウ
 オリビア・ブラウン ララ・ウラジミール
 And エドワード・ジェイムス・オルモス 坂本 太(2役) as Castera
 特別出演 坂本 太 as ジャン・クロード・ヴァン・ダム(←最早、役名ですらない。)
 もうひたすら走り回る牛の群れ。(よく見ると、スペイン・牛追い祭の映像。7時のニュースから映像を拾ってきたと思われるが、気にしないこと。)次から次へと牛の後、唐突に夜景に変わり、ビルのシルエットの中央に背を向けた人影。四方からスポットライトが集まり、眩しげに振り返るその人影は、パステルピンクのデザイナージャケットを着用したアクアドラゴン。の、足元にカメラがズームイン。ビン牛乳(スーパーで売ってる普通の牛乳)のアップが、唐突にカットイン。アクアドラゴンの決めポーズと共に、スチャラカ音楽、終わる。



 アクアドラゴン新作映画『MIAMI GUYZ』は、観客動員数1週間で6人という大記録を叩き出した後、翌週の月曜日にひっそりと打ち切られた。
【おしまい】
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