50号 おわりの挨拶


The A'-Team



 お楽しみいただけましたでしょうか。
 それではまた、冬にお会いしましょう。



【おしまい】









次回予告

「フェイスです。今回は30周年記念で50号記念だそうですが、次回は何でもありませんね、ハハッ。」
 カメラに向かいながらも、横目でテレビの画面をチラチラ見ているフェイスマン。画面には焼けていく肉。
「というわけで、何でか俺が、記念日ディナーを作ることになってるようなんです。……て言うか、5分前にハンニバルから電話があって、“30分後に帰るから、パーティ・ディナーを用意しとけ”って。無茶ですよね。冷凍庫の肉は、全部カチンコチンに凍っているのに。」
「パーティ・ディナーって言ったら肉だろ。」
「それとパパイヤ。」
 コングとマードックはテレビの画面を見ながら話している。話しつつも、折り紙を細く切って輪っかにしたチェーンと、ティッシュペーパーでお花を作っている。
 と、その時。ピンポーン、とドアチャイムが鳴った。
「おう、俺が出るぜ。」
 コングがソファから立ち上がり、玄関に向かう。そしてすぐに、箱を抱えて戻ってきた。満面の笑顔で。
「買っちまったぜ。」
 ニヤニヤ笑いのまま箱を床に置き、中のものを取り出す。何とそれは、今テレビでコマーシャルしている調理器具だった。
 でかいガラスのボウルの上に、何やら器械が装着してあるその調理器具は、通常100ドルするところ、何と79%オフの21ドル! しかも、今なら同じものをもう1つプレゼント、という投げ売りフェアの真っ最中で、結果、2台のハロゲンヒーターつき調理器具が届いたのであった。
「こいつがありゃ、カッチカチに凍った肉や、冷凍庫の奥の奥から発掘されたイカロールも、一瞬でパーティ・ディッシュに早変わりだぜ。」
 得意気なコング。その腕に抱えられた調理器具を指差してフェイスマンが訊く。
「ちょ……それどうしたの!?」
「昨日、テレビで見て、肉の焼けてく様子が堪んなくってよ、つい電話して買っちまったんだ。」
「代金は?」
「今、俺が払ったぜ。」
「ならよし。」
 フェイスマンにとっての問題は解決し、既に彼の手には凍った肉塊が。ニヤリと笑うコング。


〈Aチームのテーマ曲、始まる。〉
 ダイニングのカウンターの上に、調理器具をチャッチャとセットするコング。延長タップも用意し、2台の調理器具、その名もFlavor Oven Special Turbo(メイド・イン・チャイナ)をスタンバイする。
 チェーンソウが唸りを上げた。20ポンドは優にある凍った肉塊を、適当な大きさにスライスしていくコング。飛び散る肉粉を浴びながら、ニンニクを刻むマードック。その横で、取扱説明書を真剣に読み、なぜか首を傾げるフェイスマン。
〈Aチームのテーマ曲、終わる。〉


 ハンニバルがドアを開けると、チーンというやけに軽やかな音が鳴った。そう、トースターとかマイクロウェーブオーブンとかコンベックとか、何かそういう機器が一仕事終えた音だ。と同時に、うっすらと煙が。
 折り紙のチェーンとティッシュペーパーのお花が飾られた部屋に、焼けた肉の匂いと焼けすぎた肉の匂いが漂っている。
「お帰り、ハンニバル。」
 フェイスマンの眉尻が通常よりもわずかに下がっている。
「うむ。」
 ハンニバルは匂いに気を取られながらも、席に着いた。マードックが冷蔵庫から缶ビールと壜ペリエと缶ルートビアとガロン壜牛乳を持ってくる。
 と、そこにコングが、でかい皿を1つ持って現れた。
「できたぜ! 俺様特製、ベイクド・ビーフだ!」
 そう言って、ダン! とテーブルに置かれた大皿には、ほどよく焼けたステーキ肉が山積み。焼けた肉からは、香ばしい香りが漂っている。と、同時に、昨夜の火災現場の跡のような焦げ臭さも。しかしなぜ? 肉は綺麗に焼けているのに……。
 ハンニバルがコングの顔を見ると、コングはニッと笑って親指を立ててきた。次にマードックを見ると、満面の笑顔で缶ビールを手渡された。最後にフェイスマンの顔を見ると……一応笑顔をキープしているものの、よく見ると少し引き攣ってはいないだろうか。
「美味そうな肉はいいとして、この焦げ臭いのは何だ?」
 ハンニバルは率直に訊いた。
「焦げ臭い? うーん、そう言われてみればそうかもね。」
 曖昧な笑顔で答えるフェイスマン。マードックとコングはそそくさとキッチンに避難してしまっている。
「まあ、でもせっかく焼いてくれたんだしな、いただくとしよう。コング、モンキー、何してる、始めるぞ!」
 ハンニバルは、そう言いながら、大皿に添えられたトングに手を伸ばし、美味そうなステーキを1枚、自分の皿に取り分けた。肉を皿に下ろした瞬間、“コツン!”と乾いた音が響く。フェイスマンは、あちゃあ、と顔を顰めた。
「何だ、この肉、変な音がするぞ。」
 そう言って、トングで肉を引っ繰り返したハンニバル、肉の裏側を目にして固まった。
 カメラがズームで肉の裏側を映そうとしたところに、素早くフェイスマンが割り込む。
「さて、次回のAチームは、『コング、お掃除器具を買う』、『モンキーと亀の子束子』、『ハンニバルと素敵なステーキ』の3本です。」
「ふんがっふっふ。」
 肉の横で焼いたジャガイモ(半分は炭)を口一杯に頬張った挙句、喉に詰まらせたマードックが、床にばたりと倒れた。
 台所では、先ほどまで調理器具であったモノが、ぐんにゃりと溶けたプラスチックとガラスの塊となって、ひっそりとその生涯を終えていた。



さて、ここで問題です。まずはこちらの動画をご覧下さい。この動画の中で最も奇妙な点は何でしょうか?

  肉や魚がやたらと膨らむ点。
  ミスターTがドアを蹴った後、ふらついている点。
  ミスターTの横の髪がない点。
  ミスターTが余分なアクションなく滑らかに喋っている点。
  ミスターTが案外老けてない点。

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