特攻野郎Aチーム ハウリング・ドッグを探せ!
フル川 四万
〜1〜

 何だか足が痛いなあ、と、マリオ少年は思った。1階の裏庭に向けて開け放った大きな窓に向かう勉強机。裏庭の低い柵の向こうは、北風が吹き抜けて、通りで枯れ葉が舞い上がる夜更けの町だ。
『犬がほしい。』
 そうサンタさんにお願いしたのは、去年のクリスマス前のことだった。できれば、ウェルシュコーギーかホワイトテリアの子犬がいいなと思って、サンタさんへのお手紙に頑張って絵まで描いたのだけれど、クリスマスの朝にツリーの下で、もとい、齧り倒されたツリーの残骸の下で、家族全員分のプレゼントの箱をゴリゴリ齧っていたのは、コーギーとは似ても似つかない、子犬ですらない犬。多分、ベースはビーグル。それに、ミニチュアダックスか何か短足系が入って、あともう2種くらい目離れ系と股関節弱い系が入った、何だか残念な方に遺伝が出た感じの、がに股茶色で背中だけグレーのオス犬。確かにサンタさんへのお手紙に描いた絵の犬とは、かなり近い容姿のコだったけど、それは画力の問題であって、子供が欲しているところをもっと汲んでくれるのがサンタクロースの技量ではなかろうかとマリオは思ったものだ。
「ケンケン、やめて、脛齧らないで! 僕の脛の骨、オヤツじゃないから! まだ使ってる骨だから!」
 痛みの原因に気づいたマリオが、机の下で自分の脛に齧りついている残念な愛犬ケンケンを蹴飛ばした。構ってもらえて嬉しかったケンケンは、ウシシシシ、と犬らしくない掠れた笑い声を上げて足元から飛び退き、マリオのベッドの横に敷かれたペットシーツを上手に避けて、ベッドの下の拭きにくいところにチーをした。
「もう……。」
 マリオは溜息をついて立ち上がり、ダスターを取りに部屋を出ようとした。


「ワオーーン!」
 窓の外で、犬の遠吠えが響いた。
「野犬かな? 何かオオカミみたいな鳴き声だなあ。」
「ワオーーン!」
「ギャン! ワン! バウッ! バウッ! ワン! ワン!」
 外犬の声に釣られて、愛犬ケンケンが吠え始めた。
「あっ、ケンケン、お前は吠えちゃダメ。またママに怒られるだろ? あとさ、遠吠えには遠吠えで返すんじゃないの、犬ルールとしては。何でマジ吠えなんだよ。他のワンコとの仲間意識は?」
 と、外の犬に釣られて吠え始めたケンケンの頭を拳でグリグリするマリオ(可愛がってる)。
「ワォ〜ン!」
 と、その時、窓の外で、一際大きく綺麗な遠吠えが響き、それに反応したケンケンが、開けっ放しの窓に向かって駆け出した。驚いて追いかけるマリオ。しかし彼の愛犬は、短い脚で、椅子、机と飛び移り、開けたままの窓枠をどっこいしょと飛び越えた。
「あっ、待って!」
 伸ばしたマリオの手が、ケンケンの短い巻尾を掠めた。一瞬間に合わず、ケンケンはそのままシュタッっと裏庭に飛び降り、バウッと一声吠えると、とっとことっとこ裏庭を突っ切って柵を飛び越え、路地を走り去ってしまったのだった。
「ダメだよ、ケンケン、行っちゃダメ!」
 マリオは、ケンケンを追って窓枠を乗り越えようとした、と、その時。
「マリオ! うるさいわよ! 近所迷惑だからケンケンを黙らせなさい!」
 廊下の方からママの声。
「ママァ、ケンケンが、ケンケンが外に飛び出しちゃった!」
 慌てるマリオの声に、頭にカーラーを巻いたガウン姿のママが顔を出した。
「まあ、また? 本っ当に聞かない犬ねえ。もう放っておきなさい、どうせあの犬、ゴハンの時間になったら戻ってくるから。ケンケン待っていないで、あなたはもう寝る時間よ。」
「でも!」
 ケンケンを追って外に飛び出していく勢いのマリオだが、腕をママにガシッと掴まれて身動きが取れない。ママは窓をピシャリと閉めると、カーテンを引き、腰に手を当ててマリオを見下ろす。
「……うん……そうだよね、きっと朝には戻ってくるよね……。」
 マリオはママの威圧感に気圧され、表を気にしながらも促されるままベッドに潜り込んだ。
 そして翌日。ゴハンの時間になっても、ケンケンは戻ってこなかった。


〜2〜

 クリスマスも近い、とある夜。
「うゎああっ! やめろ、やめろっ! やめてくれえっ!」
 フェイスマンは、そう叫んで飛び起きた。午前2時。窓際のベッドにはカーテンの隙間から月の明かりが直線で差し込んでいる。
「夢か……。」
 手の甲で額の汗を拭い、時計を確認して溜息をつく。ひどい夢だった。と、そこに、コンコン、と控えめなノック。
「どうした、フェイス。」
 ハンニバルの声がした。
「ああ、うん、ごめん何でもない。」
「入っていいか?」
「うん。」
 ガチャリとドアを開け、ハンニバルが顔を出した。
「すごい声だったぞ、どうかしたのか?」
「……夢、見てた。」
「夢?」
「うん、すごく怖い夢。」
 そう言って、枕を抱き込み微かに笑ったフェイスマンの表情に、何かしら心配なものを見て取ったハンニバルは、引き込まれるように部屋に入り、ベッドの端に腰を下ろす。
「どんな夢だ? 昔の……ことか?」
 両手で肩を掴み顔を覗き込むハンニバル。フェイスマンは、フッ、と笑って視線を逸らせた。
「違うんだ。最近は、そういうのは見ないから大丈夫。今のは、もっと直接的な。」
「直接的?」
「うん……聞く?」
「ああ、聞くとも。」
「えーっと、あのね、どえらい金持ちの集まるパーティに行ったのよ、俺。西海岸にチェーン店出してる審美歯科を騙って。でね、いい女に会ったのよ。中東系の特Aランク美女、顔も体も完っ璧、服はサンローラン、宝石はポメラートかな? 時計はピアジェの総ダイヤでさ、石油王の娘だってんで、本気で口説いたんだよ。だって、石油だよ? 石油。逆玉とかあり得るじゃない。うまく行ったら油田貰えちゃうかもしんないし。でね、もう口八丁手八丁てか、口の中がカラカラになるくらい口説きまくってホテル連れ込んで、すんごい脱がせにくいドレス真剣に脱がせて、よしっ! て感じで彼女のいるベッドにダイブしたらさ。彼女だと思ってたのが、犬だったんだ。」
「はあ?」
「どでかいドーベルマン。で、いきなり首に噛みつかれて大出血。逃げようとしたら、すっごい低音、魔王みたいな低音で『待てっ』つって足首掴まれて(犬に?)、ぐるんぐるーんって振り回された。そこで目が覚めた。」
「……そりゃ災難だったな。」
 ハンニバルは、わざわざ起きて様子を見に来た自分の行為の無駄っぷりをどうしてくれようかと思う。
「うん、災難だった。まだに災いに遭った感じ。」
「フェイス、多分その夢の原因は、あれだ。」
 と、ハンニバルは窓の方を指差した。
「アオ〜ン。」
「ワオ〜ン……。」
「ウオーン……。」
「アオーン……。」
 無数の犬の遠吠えが、街に響いている。
「ああ、最近、毎晩だよね、犬の遠吠え。野犬かな?」
「にしちゃ数が多い。飼い犬も混じっているんだろう。あいつらは、仲間の遠吠えには返事をするからな、仁義として。」
 そう言うと、ハンニバルは窓を開けた。途端に、耳をつん割く犬の大合唱。
「ま、俺たちはここに長居するわけでもないし、耳栓して寝るか。」
「そうだね。」
「はい、お休み。」
「うん、お休み。ありがとね。」
「ああ、いい夢を。」
 ハンニバルは窓を閉め、フェイスマンの寝室を後にした。


 翌朝。
 居間でお茶を飲んでいるAチーム。ここは、ロス郊外の小さな町。美人姉妹が経営する町のつけ睫毛工場買収の件を手堅く片づけた彼らは、依頼主(美人姉妹)のご厚意で、しばらくこの一軒家に滞在することを許されているのだ。今は、朝8時前。ここ数日続いている犬の遠吠えパーティのせいで、ハンニバルとフェイスマンのみならず、マードックとコングも朝からお疲れ顔だ。
「しかし、最近の犬の無駄吠えはひでえよな。」
 と、コング。ホットミルクに蜂蜜(高級マヌカハニー)を垂らして混ぜている。朝だけど、それ眠くなる飲み物だぞ、コングちゃん。
「うん、オイラも負けじと遠吠えで返してるんだけど、さすがに多勢に無勢だわ。1人じゃ太刀打ちできねえや。」
「何だと!? 妙に近いところに1匹いやがると思ったら、てめえだったのか!」
「負けるもんかと思っちゃったんだよねえ。俺の中の野生が目覚めたって言うか、ここで負けたらハウリング・マッドの名が廃るって言うか。そもそも犬社会の王になりたいって言うか。それで、屋根に登ってウォーンと吠えたってわけ。」
 そもそもの動機が間違いすぎているマードックは、どこからか持ってきた犬の鼻づらのお面を被って見せる。
「何が犬社会の王だ、てめえ、俺の睡眠時間、無駄に削りやがって!」
「いや、一応、気は遣ってるよ? うるさくしたら眠れないだろうと思って、コングちゃんの部屋の鍵穴に耳栓詰めておいたの気がつかなかった?」
「俺の部屋の鍵がバカんなってたのはてめえのせいか! 何してくれてんだコンチクショウ!」


 ピンポーン。
「あ、お客さんだ。誰だろ、こんな朝早く。」
 コングとマードックの言い争いを気にも留めず朝食の準備をしていたフェイスマンが、エプロンを外しながら玄関を開ける。そこに立っていたのは、前回の依頼人、ジャシーとサラのつけ睫毛美人姉妹だ。
「おはよう、テンプルトン。」
 と、サラ。
「みんなも、おはよう。」
 サラの横で室内を覗き込んで、皆に手を振るジャシー。
「やあ2人とも。どうしたんだ、こんな早くに。」
「あの、またお願いがあって来ました。」
 フェイスマンの手を取るサラ。ラテン系の美人でつけ睫毛バッチリだが、目の下のクマがひどい。
「助けてほしいの。」
 と、ジャシー。つけ睫毛ファッサリだが、お肌は荒れて目が充血している。
「何とかしてほしいの。」
 と、声を揃える2人。
「お願い、Aチーム。あの犬どもを黙らせて!」


 2人の話は、こうだ。
 1週間くらい前から、町中の犬という犬が、夜中に遠吠えを始めるようになった。最初は、野犬の仕業かと思い、アニマル・レスキューに保護を求めたのだが、調べてみれば野犬はほんの数頭。一応、全部とっ捕まえてボランティア施設に放り込んでも夜中の遠吠えは治まらず。ということは、遠吠え祭開催中なのは、ご近所の飼い犬たち。犬は個人の所有物だし、遠吠えしてるだけで、誰かを噛んだり怪我させたわけでもないゆえ、行政は手が出せない。とにかく、犬の遠吠えのせいで町中が寝不足になっていて、サラとジャシーのつけ睫毛工場の工員も寝不足ゆえのミスが増え、睫毛プレス機に指を挟まれる等、安全衛生上の問題すら発生しつつあると言う。
「ということで、町内会の会合で、行政が手出しできないなら民間で何とかするしかないってことになりました。それで、あたしたち頼りになる人を知ってるから頼んでみるって言って、今日来ました!」
 と、明るくジャシーが言う。
「クリスマスまでに何とかしないと、子供が眠ってくれなくて、サンタクロース役が困ってしまうわ。それに、私たちのお肌も限界なの。お願い、Aチーム。犬の無駄吠えを止めさせて! 報酬は弾むから!」


〜3〜

 というわけで、「犬たちの遠吠えを止めさせる」という難易度の予測がつかない感じの依頼を引き受けたAチームである。
「大体、ここ数日の感じからすると、毎晩吠え始めるのは12時過ぎ。終わるのが2時か3時くらいって感じじゃない? 2時間も吠えると、さすがのオイラも喉が枯れるし。」
「まあ、昨日もそんな感じだったわな。」
「そもそも犬の遠吠えってえのは、何がきっかけで始まるんだ?」
「どっかで1匹目が吠えると、それに呼応して吠え出すんだよ。そういう習性なの。」
 フェイスマンがしたり顔で述べる。
「フェイスって、犬飼ったことあんの?」
「孤児院でね。バカ犬だったから、貰われてきてから逃げるまでに俺のこと20回くらい噛んだけど。だから、接し方はわかってると思う。」
 それ、接し方がわからなかったから噛まれて逃げられたんではないか?
「てことは、吠え出しっぺの1匹目が吠えないようにすりゃいいんだろ? 簡単じゃねえか。」
「どうやって探すのよ、その1匹目。」
「ふむ。地道に行くしかあるまい。まずは、遠吠えが始まる時間に町の各所で待機して、遠吠え大会が始まったら、最初に鳴き声が聞こえた方向を追っていって個体を特定する。」
「で、見つかったらどうするんだ?」
「当たり前の話だが、その犬に、夜、吠えないようにしてもらう。」
「どうやって?」
「夜だけ口輪をしてもらうか、何なら睡眠薬でもいい。その辺は飼い主との相談だな。」


〈Aチームのテーマ曲、かかる。〉
 いつものバンから、頭に懐中電灯つきのヘルメット被った4人が颯爽と降りてくる。ハンニバルから町内の地図とトランシーバーを受け取り、颯爽と3方向に散っていくフェイスマン、マードック、コング。
〈Aチームのテーマ曲、終わる。〉
*今回、これといった支度が必要ないため、恒例シーンは短縮Ver.となっております。


 深夜、街角のそこここで、トランシーバーを手に犬が鳴き始めるのを待つAチームの4人。
 そして、夜中の12時過ぎ。
「ア・オ〜〜ンン……。」
 雄々しい遠吠えが、一声、街の片隅から上がった。それに続いて、犬たちの遠吠えが増えていく。
「アオ〜ン。」
「ワオ〜ン……。」
「ウオーン……。」
「アオーン……。」
「やばい、早くもわかんなくなってきた。」
 と、フェイスマン。
「最初の一声はどっちだ? 俺は左から聞こえたぜ。」
 トランシーバーでコングが叫ぶ。
「俺っちは、前!」
「俺は後ろ!」
「ってことは……。」
 と、地図を見るハンニバル。
「あっちだ!」
「アオーン。」
「ウォーン。」
「ワオーン……。」
 増えてくる犬の遠吠えの中、駆け出す4人。
 路地を曲がり、歩道を渡り、側溝の中を踏みしめて(無駄)、全速力で走った中年男4人が落ち合ったのは、細い路地の奥にある一軒家。既に家人は寝静まっている様子で、窓に明かりはない。
「ここか?」
「確かに、この辺から聞こえてたはずだ。」
「犬、いる? 気配ないけど。」
 4人は家の周りを1周して、中の様子を窺った。
「誰も起きてないようだぜ、どうするハンニバル?」
「ふむ。こんな時間に起こすのも悪いから、今夜はここまでにして、明日の昼間に出直すとしよう。」
 ハンニバルが踵を返したその瞬間。


「アオー〜ン……」
 一際高い遠吠えが、上の方から響いた。……上? 屋根の上を見上げる4人。そこに見たのは、満月を背に、屋根の上で真っ直ぐに首を上げ、雄々しく遠吠えする狼……ではなく、しゃがんだ人間のシルエット。
「モンキー……てめえ何登って……お、モンキーここにいるじゃねえか。じゃあ、屋根の上で吠えてるあいつは誰なんでい?」
 コングは、一応横のマードックを確認してそう言った。屋根に登って遠吠えをする人間が、マードックの他にもう1人いたことに驚きを隠せない。
「てことは、俺っちのライバル出現ってこと?」
「あー、屋根に登って吠えてるって、何か近寄りたくないタイプの人かな?」
「おい、そんなところで何をしている?!」
 ハンニバルが、屋根の上の人影に向かって叫んだ。こちらに気づいた人影は、慌てて立ち上がり、逃げようと屋根の上を数歩走ったところでバランスを崩し、音もなく家の向こう側に落下していった。
「おい、落ちたぜ。」
「よし、捕まえるぞ!」
 4人は落ちた人影を確保すべく、家の裏側に回り込んだ。そして、路上に倒れ込んでいた人影を確保する。4人に囲まれた道の真ん中で、膝を擦りむいて泣いていたのは、パジャマ姿の少年だった。


〜4〜

 翌朝。
 Aチームの4人は、マリオの家の居間で、マリオ・ママ特製、醗酵バター入りココアを振る舞われていた。横でしおらしく両手でマグカップを包んで項垂れているのは、犬の遠吠え大合唱を誘発した張本人、ケンケンの飼い主のマリオ少年であった。


 昨夜は、寝ていたマリオ・ママを叩き起こし、事情を話して、膝を擦りむいたマリオを引き渡して解散。今朝、改めて詳しい事情を聴くために、お宅にお邪魔したところだ。
「……本当にごめんなさい。僕の鳴き真似が原因で、そんな問題になっていたなんて思いませんでした。」
 マリオ少年は、そう言うと、ココアをズズッと啜った。
「何で屋根の上で犬の遠吠えをしようなんて考えたんだ?」
 コングが優しく問うた。
「先々週、どっかの犬の遠吠えに反応してうちの犬が逃げちゃって……。僕は探しに行きたかったんだけど、ママが、いい機会だから、もっと可愛い、新しい犬を飼いましょう、あの駄犬のことは忘れなさいって。」
 そこまで言って、マリオは、じわりと涙ぐんだ。。
「……でも僕、ケンケンじゃなきゃ嫌なんだ。犬はケンケンがいいんだ。」
 マリオは袖で涙を拭い、隣にいるママを見上げた。マリオ・ママが、まったくしょうがないわね、と呆れ顔だ。
「ケンケンは、遠吠えの方に逃げちゃったから、僕がもっと上手く遠吠えしたら、僕のところに戻ってくるんじゃないかと思って。練習して、練習して……。」
「結果として、遠吠えが上手くなりすぎて、町内の犬全部、反応させちゃったんだね。」
 フェイスマンが、マリオの頭を撫でた。
「済みませんでした。この子には、もう遠吠えなんかしないよう、私からもきつく言っておきます。」
「いや、わかってくれればいいんだよ。で、あんたに頼みなんだが、ケンケンが戻ってきたら、黙って受け入れてあげちゃくれないか?」
「そうそう、新しい犬を飼うなんて言わないでさ。」
 マードックの言葉に、マリオ・ママは微妙な表情で頷いた。


 数日後、マリオの愛犬、ケンケンは、無事発見され、マリオ少年のところに戻された。
 迷い犬チラシを配ったら、瞬時に発見されたのだ。保護して世話をしていた人曰く、「こんなにブサイクな犬だから、このままじゃきっと保健所行きだ。殺されるのは可哀相だから、仕方ない、うちで飼おう、と思ったんだけど、躾ができてなくて飼いにくいので、どうしようかと思っていた」らしい。こんな駄犬でも待っている人がいるんだ、という発見は、彼にとって目から鱗であったらしい。


 かくして、無事依頼を完了したAチームの面々は、ジャシー&リサの美人姉妹より、弾んだ報酬“つけ睫毛1年分(×4人分)”を、ありがたく受け取ったのであった。
【おしまい】
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