51号 おわりの挨拶

The A'-Team


 お楽しみいただけましたでしょうか。
 それではまた、夏にお会いしましょう。


【おしまい】






次回予告

「フェイスです。ぶかぶかのズボンがいかに危険か、思い知らされました。」
 ずり落ちたズボンの裾を踏み、パンツ丸出しで派手にすっ転ぶフェイスマンの写真が一瞬映し出される。
「バラカスだ。だからハンニバルのズボンなんか借りるんじゃねえって言ったのによ。」
「仕方ないだろ、手近にそれしかなかったんだから。」
「オイラのズボン貸すよ、って言ったのに、いいよ、って言うから。」
「だって、お前、穿いてるズボン1本きりしか持ってないじゃん。」
「だから、それ貸すよ、って。」
「ズボンは、穿いとけ。」
 重々しくコングがマードックに言った。
「大丈夫。ズボン脱いだって、下にステテコ履いてるし、ステテコの下にパンツ履いてるし、間に魚入ってるし。」
「だから、その魚入ってるのが問題なんだろうが! 元はと言えば、てめえのせいで。」
 コングがマードックの胸倉を掴む。
「ああもう、喧嘩しないで、ほら、ぶかぶかでも、ベルトあれば大丈夫だから。ないけどさ。」
「ベルト、必要だったのか?」
 隣室に繋がるドアをバーンと開けて、ハンニバル登場。ベルトを掲げて。“ウナギ捕まえた!”にも見える。
「あ、そのベルト貸して。て言うか、それベルト? 何か動いてない?」
「これか? こりゃベルトじゃないぞ。ウナギ捕まえた。」
 見たまんまかよ、ハンニバル。
「いいなー、大佐。そのウナギ、オイラの魚(多分イワシ)と交換してくんね?」
「おお、いいぞ。」
 因みにここは、南アジア。4人のいる建物のすぐ裏は川。裏窓を開ければ、川までの距離は0フィート。したがって、窓から糸を垂らせば、魚が釣れる。
 そして、川にはワニがいる。人食いの前科つきの。
 そんな中、フェイスマンは、訳あってズボンを失ったのだった。
 ウナギとイワシを交換した2人。ハンニバルはイワシを持って隣室に戻り、マードックはウナギをズボンの中に入れた。ステテコとパンツの間かどうかは定かではない。
「で、結局、ベルトはないままなのね。」
 トホホな表情でフェイスマンが呟いた。
「ベルトくらい我慢しやがれ。てめえが勝手に川に入ってワニにズボン食われたんだからな。大体、こんな僻地で、ハンニバルが替えズボンを持ってきてたことが奇跡だぜ。」
 と、コング。
「でも何でハンニバルはズボンを余計に持ってたんだろ? 日帰りの予定だったのに……。」
「そこが大佐の大佐たる所以っしょ。何事にも万全の準備をする。だからこそ、オイラたちは今なお生きてるってわけで。」
「なら、予備のベルトも持ってきておいてほしかったよなあ。どうせ荷物持つのハンニバルじゃないんだし。って言うか、何で俺、着替え持ってこなかったんだろ?」
 反省しきりのフェイスマン。
「ところで、モンキー、何してんの?」
 見れば、マードックは窓から片足を突き出し、ズボンの裾から顔を出したウナギをゆらゆらさせている。水面で、ワニがザバンと水音を立ててマードックの足に食いつこうとした。
「ワニ、釣れねえかな、って思って。」
「その釣りが成功したら、お前、足なくすってことになるよ?」
「どうせなら、このアホンダラ、丸ごとワニのエサにしちまえ。」
「それはそうと、どうやってここから帰ろうか。屋根剥がして舟でも作る?」
「けど、工具がねえぜ。」
「魚は、ある!」
 バーン! と、さっき去ったハンニバル再登場。
「え? 魚?」
「何だって?」
「工具はねえけど、魚はあるって、どういうことでい、ハンニバル。」
「言葉の通り。魚は、ある!」
 ハンニバルが、そう言ってニカッと笑った。
 ステテコの糸を解くマードック。イワシ(マードックのズボンの中に入っていたもの)をぶつ切りにするハンニバル。家屋を探って針金を見つけ、それで釣り針のようなものを作るコング。ぶかぶかのズボンを手で押さえ、ワニに気をつけながら川に入るフェイスマン。ズボンの中に次々と入ってくる魚たち。フェイスマンを狙ってやって来た人食いワニを、拳銃で撃って仕留めるハンニバル。手榴弾を川に投げ込むコング、爆発の後、大量の魚が浮かび上がってきた。ぶかぶかでびちょびちょのズボンのまま、魚を売り歩くフェイスマン。
 日もどっぷりくれる頃には、魚もワニ肉も完売、いくばくかの現金を手に入れた4人であった。
「いやあ、売れるもんだね、元手ゼロの魚でも。」
 ホクホク顔のフェイスマン。
「元手ゼロじゃねえよ、俺っちのステテコ使ったんだし。」
「けどよ、これしきの金じゃ帰れねえぜ。」
 アメリカまで、船で。
「そもそも、金なんかなくったって、あたしたちなら何とかなるでしょ。」
 楽観的なハンニバル。確かにそうだけど。
 と、その時、フェイスマンが地面に落ちていた紙を拾い上げた。
「何だこれ……ストックウェルからの指示書だ。1、大通りのアオザイ屋に行け。そこにフェイスマンの服を用意してある。2、用意した服を着ろ。3、その隣の写真館で写真を撮って、この住所に送れ。追伸、生水に注意のこと。……俺が、アオザイ? ズボンじゃなくて?」
 危うし、フェイスマン! 果たしてアオザイは、似合うのか!?
「ってわけで、次回のAチームは『フェイス、アオザイを着て婿になる!?』、『ハンニバル、郵便局での大攻防』、『モンキー、生水は飲んじゃダメって言っただろ!』の3本だ。」
「ふんがっふっふ。」
 ぶかぶかズボンに潜んでいたハゼが最後の力を振り絞ってピョンと飛び出し、マードックの喉に詰まった。


さて、ここで問題です。フェイスマンにアオザイ(男性用)は似合うでしょうか?  






タイトルが決まるまでの紆余曲折(時系列順)
「よう食わん」(ローグ・ワン)発案される。→「ふとーんおーる」(ストーンウォール)発案される。→ ストーンウォールの写真を見てみたら、1960年代が舞台であるため、男性は皆、シャツの裾をズボンの中に入れていた。→「シャツがズボンにインしてる」が「君の瞳に恋してる」みたいだと気づく。→「ふとーんおーる〜シャツがズボンにインしてる〜」に決定されかける。→「よう食わん/スター魚津ストーリー〜誹謗では、死なない。」追加される。→ 何がどうなったんだか、「よう食わん〜シャツがズボンにインしてる〜」に変わる。→ 魚が残り、「よう食わん〜魚がズボンにインしてる〜」に決定。



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